ドル円見通し 世界連鎖株安による大幅下落一服だが波乱継続に注意
〇ドル円、8/5は日経平均が過去最大の下げ幅で急落する中、午後141.69まで暴落的な下落に見舞われる
〇金融市場全般のパニックがやや落ち着いき、8/6未明144.86へ上昇、午前序盤に145円台へ高値を伸ばす
〇8/5午後からの反発が続かず安値更新の場合は、2021年1月以降の長期上昇トレンドからの転落の警戒も
〇8/5の日経平均は前日比4451.28円安で過去最大の下落、世界連鎖株安の様相
〇米長期債利回りは急落後、ISMサービス業景況指数の改善等で落ち着きプラス圏へ戻す
〇144円を上回るうちは反騰継続余地ありとするが、147円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる
〇144円割れからは下落再開として、8/5安値141.69試しとする
【概況】
ドル円は8月2日夜の米雇用統計が予想以上に悪かったことをきっかけとした米国株安・長期債利回り大幅低下を見て149円を挟んだ揉み合いから147円割れへ急落し、安値で146.41円を付けて146.51円で週を終えたが、週明けの8月5日は日経平均が過去最大の下げ幅で急落する中で午後に141.69円まで暴落的な下落に見舞われた。
142円割れに対する売られ過ぎ警戒感と大証日経平均先物が反発したことで142円を挟んで下げ渋り、5日深夜の米7月ISMサービス業景況指数が51.4となり6月の48.8から大幅に改善して市場予想の51.0を上回ったことで続落していた米長期債利回りが反発に転じたことや、一時1200ドル安を超える大幅続落だったNYダウがやや戻し、シカゴ連銀のグールズビー総裁が「まだ景気後退ではないが、雇用情勢などが一段と悪化すればFRBは金融緩和で対応する」旨を述べたことで金融市場全般のパニックがやや落ち着いたため、ドル円は6日未明に144.86円へ上昇して6日午前序盤には145円台へ高値を伸ばしている。
ドル円の下落規模は7月3日高値161.94円から8月5日安値141.69円まで20.25円となり、2023年11月13日高値151.90円から12月28日安値140.24円までの11.66円を超え、2022年10月21日高値151.94円から2023年1月16日安値127.22円までの下げ幅24.72円に近付いた。
2023年1月16日安値と2023年12月28日安値を結ぶ上昇トレンドから転落しており、8月5日午後からの反発が続かずにさらに安値を更新する場合は2021年1月以降の長期上昇トレンドからの転落へ進むことも警戒される。
【世界連鎖株安、為替市場とコモディティは混乱】
日経平均の8月5日は前日比4451.28円安となり下落幅は一時は4753円安に達した。1987年10月のブラックマンデー翌日の下げ幅を超えて過去最大の下落となり、下落率の12.4%安は過去2番目となり、7月11日に4万2224.02円まで史上最高値を更新してきたややバブル的な大上昇から3週で1万円を超える下落となった。
日経平均の大幅下落からアジア株が総じて急落となり、上海総合株価指数が1.54%安となり5月20日高値以降の最安値を更新、韓国や台湾の株価指数も8%安を超え、英FTが2.04%安、独DAXが1.82%安と下げて欧州株も全面安、米国市場もNYダウが1033.99ドル安(2.60%安)、ナスダック総合指数が576.08ポイント安(3.43%安)と連鎖暴落が続いたが、大証日経平均先物が2000円近くを戻し、ナスダック総合指数も安値から500ポイント近くを戻してやや落ち着きも見せた。
金融市場全般のパニックにより、為替市場ではユーロドルが一段高、円が急騰、ポンドドルは乱高下、豪ドル米ドルは国際商品下落を見て一段安、新興国通貨はリスク回避的な手仕舞いで急落するなどドルの強弱はまちまちだった。コモディティは株安に対応するための換金売りでゴールドやプラチナ、原油が急落して資源通貨安と同調した。
【米長期債利回りは急落後にプラス圏へ戻す】
8月5日の米長期債利回りは一時大幅低下したもののISMサービス業景況指数の改善等で落ち着いてから反騰した。世界連鎖株安に対する逃避買いで債券高・利回り低下で開始したがその後に反転した。
長期金利指標の10年債利回りは先週末と同じ3.79%で終了したが、一時3.67%へ低下して2023年6月以降の最低を更新したところから低下幅を解消した。30年債利回りは先週末比0.04%低下の4.07%となったが、一時4.01%をつけて4月25日に付けた年初来ピークである4.85%以降の最低としたところから低下幅を削った。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは先週末比0.04%上昇の3.92%となり、一時3.65%へ低下して2023年4月以降の最低としてからプラス圏まで戻した。
8月2日の米雇用統計が予想よりも悪かったことでこれまでの米国景気がソフトランディングしてから金融緩和期に入るとの見方が崩れてリセッションへの懸念が強まったことで世界連鎖株安を招いた。8月5日の米ISMサービス業景況指数が予想を上回ったことでこの懸念は一服したが、今後の米経済指標悪化が続けば9月FOMCでの0.50%以上の利下げ期待が強まると思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は8月5日午後に141.69円へ大幅下落したものの6日午前には145円台へ戻しており、7月後半からの下落基調の中では最大の反発となったため、目先は8月5日午後安値を起点として戻りを試す局面と思われる。目先の高値形成期は8月6日の日中から8日にかけての間と想定するが、金融市場全般の波乱はまだ続くとみて戻り一巡後の反落に注意し、144円割れからは下落再開とみて8日午後から12日午後にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月5日午後安値からの反騰で遅行スパンが好転しつつあり先行スパンの下限に迫っているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパンを上抜く場合は反騰継続で上昇が勢い付く可能性もあるとみるが、先行スパン突破へ進めずに失速する場合は下落再開を警戒し、遅行スパン悪化からは下落継続と一段安へ進む流れと考える。
60分足の相対力指数は8月5日午後に10ポイントを割り込んでから6日午前序盤に60ポイント台へ切り返しているので50ポイント以上を維持する内は上昇余地ありとするが、50ポイント割れを弱気転換注意とし、45ポイント割れからは下落再開とみて30ポイント以下への低下へ進むとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、144円を下値支持線、147円を上値抵抗線とする。
(2)144円を上回るうちは反騰継続余地ありとするが147円前後は戻り売りにつかまりやすいとみてその後に145.50円を割り込むところからは下落再開を疑う。
(3)144円割れからは下落再開として8月5日安値141.69円試しとし、底割れからは140円、139円、138円等を順次試して行く下落を想定する。
【当面の予定】
8/6(火)
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 4.35%、予想 4.35%)
14:30 (豪) ブロック豪中銀総裁、会見
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 -1.6%、予想 0.5%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -8.6%、予想 -14.2%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.1%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -751億ドル 、予想 -725億ドル)
8/7(水)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル建て (6月 990.5億ドル、予想 1001.0億ドル)
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数増減 前期比 (1-3月 -0.2%、予想 -0.2%)
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数増減 前年同期比 (1-3月 1.2%、予想 0.0%)
07:45 (NZ) 4-6月期 失業率 (1-3月 4.3%、予想 4.7%)
08:50 (日) 外国為替平衡操作実施状況 (4-6月、日次)
08:50 (日) 7月 外貨準備高 (6月 1兆2315億ドル)
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI速報値 (5月 111.2、予想 108.9)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI速報値 (5月 117.1、予想 113.8)
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 249億ユーロ、予想 215億ユーロ)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札
28:00 (米) 6月 消費者信用残高 前月比 (5月 113.5億ドル、予想 100.0億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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