日米金融政策決定会合で7月3日以降の円高から脱却できるか試される
〇先週のドル円、25日夕刻に151.93まで続落するも、米4‐6月期GDPが予想を上回り154円台に反発
〇週末はPCEデフレーターがインフレ鈍化傾向示し、153円台前半に反落して越週
〇米10年債利回りはPCE鈍化を受け低下、4.20%で終了
〇7/26夜反落時安値153.19を上回るうちは7/26夜高値154.73超えから155円台中盤への上昇を想定
〇153.19割れからは下向き、7/25夕安値151.93を試し、割り込む場合は151.50台への下落を想定する
【概況】
ドル円は7月11日夜と12日夜の覆面市場介入により161円台中盤から157円台前半へ下落し、日米要人による円安けん制と日銀への利上げ要請的な発言やドル高けん制発言をきっかけに7月18日に155.37円へ一段安となり、7月24日に7月18日安値を割り込んで25日夕刻に151.93円まで続落して7月3日の年初来高値161.94円からの下げ幅が10円を超えた。
大幅下落一服と7月25日の米4‐6月期GDPが予想を上回ったことによるドル高で154円台へ戻し、26日夜に154.73円まで戻り高値を切り上げたが、26日夜発表の米6月PCEデフレーターがインフレ鈍化傾向を示して米長期債利回りが低下したのを見て発表後に153.19円へ下落し、その後も153円台での推移に留まって週を終えた。
【米PCEデフレーターはインフレ鈍化傾向示唆】
7月26日夜発表の米6月PCEデフレーターは前年同月比2.5%となり予想と一致して5月の2.6%を下回り2か月連続で低下し、コアPCEデフレーターは2022年3月の5.3%以降で最低となった5月の2.5%と変わらなかったため、FOMCの9月利下げ開始判断に寄与すると市場は受け止めた。
パウエルFRB議長は利下げ開始への慎重な姿勢を示してきたが、目標の2%実現を待たずに利下げを開始できるとし、労働市場の悪化等がみられる場合も利下げを判断する姿勢を繰り返し表明してきた。7月30-31日開催のFOMC(8月1日3時声明発表、3時半議長会見)が9月利下げ開始の可能性を示し、年末までの追加利下げ期待も増すならばドル安反応を招きやすく、8月2日夜の米雇用統計が冴えない内容ならドル安円高がさらに加速すると思われるが、米大統領選挙を控えていることも踏まえて慎重で時間をかける姿勢を強調する場合はドル円の下落に対するブレーキ要因となる。
7月31日昼頃には日銀金融政策決定会合の結果発表、3時半から植田総裁会見があるが、長期金利上昇を抑制するための国債大量買い入れの減額については前回会合で方針が示されて今回会合で具体的計画を示すとしてきたので市場予想通りならサプライズを発生させないと思われるが、今回の会合では利上げには踏み込まないとしても次回会合での追加利上げが濃厚となれば円高継続の可能性を強めるかもしれない。
いずれにせよ、日米金融政策の内容と週末の米雇用統計を当面の円高イベント通過とできるか円高継続とするのかにより今秋へ向けたトレンドも決まってくるのだろうと思われる。
【米10年債利回りは低下、株価指数はまちまち】
7月26日の米長期債利回りは米PCE統計がインフレ鈍化傾向を示しているとして総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%低下の4.20%で終了した。7月17日に4.14%をつけて4月25日に付けた年初来ピーク4.74%以降の最低としてから7月24日に一時4.29%まで戻したものの、25日から26日へ続落しており、戻り一巡による低下再開気配とした。30年債利回りも前日比0.03%低下の4.45%となり25日から続落した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.05%低下の4.39%で終了し、25日に一時4.34%へ低下した水準を割り込まなかったものの、日足終値ベースでは7月16日の4.42%を下回り4月30日の年初来ピーク5.05%以降の最低とした。
一方でNYダウはインフレ鈍化と9月利下げ期待により前日比654.27ドル高と大幅上昇し、IT/ハイテク関連株の決算不調で大幅下落してきたナスダック総合指数も176.16ポイント高と4日ぶりに反発した。米国株高が再開して中長期的な上昇感を強めれば7月11日の史上最高値から大幅下落してきた日経平均の出直りに寄与してドル円も上昇しやすくなるが、米国株高が続かずに日銀がタカ派姿勢を強める場合には日経平均の一段安と共にドル円の下落も続きかねないところだ。
【2023年1月16日を起点とした長期上昇トレンドは維持】
ドル円は7月17日安値156.03円へ下落した時点2023年12月28日安値140.24円と今年3月11日安値146.46円、6月4日安値154.54円を結ぶほぼ1直線の下値支持線から転落し、7月25日安値151.93円へ続落したために7月3日高値161.94円からの下落幅は10.01円に拡大した。
2023年1月16日以降の上昇期における修正安は同年3月8日高値137.91円から3月24日安値129.63円までの下落幅8.28円、同年6月30日高値145.06円から7月14日安値137.24円までの下げ幅7.82円、今年4月29日の市場介入後の下落で当日高値160.16円から5月3日安値151.85円までの下げ幅8.31円等、8円前後規模の下落を押し目形成として上昇トレンドを維持してきたのだが、今回は10円を超える規模の下落のため、2023年11月13日高値151.90円から12月28日安値140.24円までの下落で下げ幅を11.66円としていったん上昇トレンドから転落した時に近いのではないかと考える。
2023年1月からの上昇は2023年11月13日までを一段目とし、今年7月3日高値までを二段目としており、二段目の上昇一巡による調整安を消化して中期的な押し目形成の場として三段目の上昇期に入るのではないかと考える。FOMCの9月利下げ開始想定はある程度織り込まれているため、ドル円の下落が続くとすれば日銀会合が想定以上にタカ派姿勢となるケースだが、国債買い入れ額の大幅減額計画については織り込み済のため追加利上げに踏み込まなければ当面の円買いイベント通過として上昇再開に入ってもよいと考える。
ただし、想定以上に日銀がタカ派姿勢となりFOMCが予想以上にハト派へ傾斜する場合には、下落規模が2022年10月21日の市場介入時高値151.94円から2023年1月16日安値127.22円まで下げ幅24.73円となり2021年1月以降の大上昇が一巡した時に近い展開となる可能性も多少あると注意しておきたい。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面は7月26日安値151.93円を下値支持線、155.50円を上値抵抗線とする。
(2)7月26日夜反落時安値153.19円を上回るうちは26日夜上昇時高値154.73円超えから155円台中盤への上昇を想定する。155.50円以上は反落注意とするが、日銀会合通過で上昇が勢い付く場合は156円台中盤へ上値目途を引き上げる。
(3)7月26日夜反落時安値153.19円割れからは下向きとして25日夕安値151.93円を試し、割り込む場合は151.50円台への下落を想定する。日銀会合前は151円台後半で下げ渋りやすいとみるが、日銀会合結果が従来想定よりタカ派だったとして円高が勢い付く場合は150.00円、149.00円を順次試して行くのではないかと考える。
(4)日銀会合、米FOMCを通過して上昇に転じる場合は7月19日高値157.86円を超えれば7月11日以降の右肩下がりの展開から抜け出して7月3日以降の調整安終了による上昇再開とするが、日米会合を通過して右肩下がりの展開が続く場合は円高基調が暫く続くことになりかねないと注意したい。
【当面の予定】
7/29(月)
休場 タイ、日米豪印外相会合、日米防衛相会談
23:30 (米) 7月 ダラス連銀製造業活動指数 (6月 -15.1)
7/30(火)
日銀・金融政策決定会合初日、米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
08:30 (日) 6月 失業率 (5月 2.6%、予想 2.6%)
10:30 (豪) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 5.5%、予想 -3.0%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (1‐3月 0.2%、予想 0.1%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP速報値 前年同期比 (1-3月 -0.2%、予想 0.1%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP速報値・季調前 前年同期比 (1‐3月 -0.9%)
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感・確定値 (速報 -13.0)
18:00 (欧) 7月 経済信頼感 (6月 95.9)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (1‐3月 0.3%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP速報値 前年同期比 (1-3月 0.4%、予想 0.5%)
21:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (6月 0.1%、予想 0.4%)
21:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (6月 2.2%、予想 2.2%)
22:00 (米) 5月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (4月 0.2%)
22:00 (米) 5月 連邦住宅金融局住宅価格指数 前年同月比 (4月 6.3%)
22:00 (米) 5月 ケース・シラー米住宅価格指数 前月比 (4月 1.4%)
22:00 (米) 5月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (4月 7.2%、予想 7.4%)
23:00 (米) 6月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (5月 814.0万件)
23:00 (米) 7月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (6月 100.4、予想 99.8)
7/31(水)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 0-0.1%、予想 0-0.1%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
07:45 (NZ) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 -1.7%)
08:50 (日) 6月 小売業販売額 前年同月比 (5月 3.0%、予想 3.3%)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産速報値 前月比 (5月 3.6%、予想 -4.7%)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (5月 1.1%、予想 -6.4%)
10:00 (NZ) 7月 ANZ企業信頼感 (6月 6.1)
10:30 (中) 7月 国家統計局製造業PMI (6月 49.5、予想 49.3)
10:30 (中) 7月 国家統計局非造業PMI (6月 50.5、予想 50.2)
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.6%、予想 0.3%)
10:30 (豪) 6月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 4.0%、予想 3.8%)
10:30 (豪) 4-6月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (1-3月 1.0%、予想 1.1%)
10:30 (豪) 4-6月期 CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (1-3月 3.6%、予想 3.9%)
14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (5月 -5.3%、予想 -2.2%)
14:00 (日) 7月 消費者態度指数・一般世帯 (6月 36.4、予想 36.6)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 6.0%、予想 6.0%)
18:00 (欧) 7月 HICP(調和消費者物価指数)速報値 前年同月比 (6月 2.5%、予想 2.4%)
18:00 (欧) 7月 コアHICP(食品エネルギー除く)速報値 前年同月比 (6月 2.9%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(介入実績 6月27日-7月29日)
21:15 (米) 7月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (6月 15.0万人、予想 17.0万人)
21:30 (米) 4-6月期 雇用コスト指数 前期比 (1-3月 1.2%、予想 1.0%)
22:45 (米) 7月 シカゴ購買部協会景況指数 (6月 47.4、予想 44.0)
23:00 (米) 6月 NAR住宅販売保留指数 前月比 (5月 -2.1%、予想 1.5%)
23:00 (米) 6月 NAR住宅販売保留指数 前年同月比 (5月 -6.6%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエル米FRB議長、記者会見
8/1(木)
休場 スイス
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (1-3月 -1.8%)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 57.73億豪ドル、予想 48.00億豪ドル)
10:45 (中) 7月 財新製造業PMI (6月 51.8)
16:55 (独) 7月 HOCB製造業PMI改定値 (速報 42.6、予想 42.6)
17:00 (欧) 7月 HOCB製造業PMI改定値 (速報 45.6)
17:30 (英) 7月 S&PG製造業PMI改定値 (速報 51.8)
18:00 (欧) 6月 失業率 (5月 6.4%、予想 6.4%)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.00%)
20:30 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (1-3月 0.2%、予想 1.6%)
21:30 (米) 4-6月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (1-3月 4.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 185.1万人)
22:45 (米) 7月 S&PG製造業PMI改定値 (速報 49.5)
23:00 (米) 7月 ISM製造業景況指数 (6月 48.5、予想 49.0)
23:00 (米) 6月 建設支出 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.2%)
8/2(金)
08:50 (日) 7月 マネタリーベース 前年同月比 (6月 0.6%)
10:30 (豪) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (1-3月 0.9%)
10:30 (豪) 4-6月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (1‐3月 4.3%)
21:30 (米) 7月 非農業部門就業者数 前月比 (6月 20.6万人、予想 18.5万人)
21:30 (米) 7月 失業率 (6月 4.1%、予想 4.1%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前年同月比 (6月 3.9%、予想 3.7%)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 -0.5%、予想 0.5%)
オーダー/ポジション状況
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