『日米金融政策イベント通過後のドル買い・円売りトレンド再開を想定』
〇今週のドル円、週初157.63まで上昇後、週後半にかけ週間安値151.94まで急落
〇バイデン米大統領の選挙戦からの撤退、株価の下落、日銀追加利上げ観測、円ショート解消等が背景
〇週末にかけては反動買いも入り153円台後半で越週
〇ユーロドル、週初の高値1.0904から週央に1.0826まで下落、米金利低下等に1.0862まで持ち直し越週
〇ドル円、3週間で10円を超える暴落、主要テクニカルポイントを下抜け売りシグナルも点灯
〇テクニカルの地合い悪化する中で、5/3安値151.87を死守、ダウ理論の上昇トレンド崩壊は回避
〇ファンダメンタルズも円キャリートレード、トランプトレードの再開期待がドル円をサポート
〇来週は米FOMC、日銀金融政策決定会合に注目集まる
〇ドル買い・円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):152.50ー156.50、(EURUSD):1.0700−1.0950
今週のレビュー(7/22−7/26)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初157.45で寄り付いた後、早々に週間高値157.63まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)バイデン米大統領の選挙戦からの撤退報道に端を発したトランプトレードの巻き戻し(ドルロング解消の動き)や、(2)日経平均株価の大幅下落(リスク回避の円買い圧力)、(3)米7月フィラデルフィア連銀非製造業活動指数(結果▲19.1、予想+2.9)の市場予想を下回る結果、(4)米6月中古住宅販売件数(結果389万件、予想398万件)の市場予想を下回る結果、(5)米7月リッチモンド連銀製造業指数(結果▲17、予想▲7)の市場予想を下回る結果、(6)米金利低下に伴うドル売り圧力、(7)一部メディアによる「日銀が来週の政策決定会合で利上げを検討している」「今後数年間で債券購入を半減する計画」との観測報道、
(8)茂木自民党幹事長による「経済再生で強くて安定した円を作ることが必要」とのタカ派的な発言、(9)上記7、8を背景とした日銀による追加利上げ観測(歴史的高水準に積み上がっていた円ショートの解消を誘発)、(10)米6月新築住宅販売件数(結果61.7万件、予想64.0万件)の市場予想を下回る結果、(11)テクニカル的な地合いの悪化(仕掛け的なドル売り・円買い)が重石となり、週後半にかけて、週間安値151.94(約2カ月半ぶり安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(12)5/3安値151.87を背にした押し目買い圧力の高まりや、(13)急ピッチな下落に対する反動買い(俄かショートの巻き戻し)、(14)米4ー6月期実質GDP速報値(結果+2.8%、予想+2.0%)の市場予想を上回る結果、(15)米4ー6月期個人消費(結果+2.3%、予想+2.0%)の市場予想を上回る結果、(16)米4ー6月期コアPCE(結果+2.9%、予想+2.7%)の市場予想を上回る結果、(17)米新規失業保険申請件数(結果23.5万件、予想23.8万件)の良好な結果、(18)株式市場の持ち直し(リスク回避ムード後退→ドル円・クロス円反発)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/27午前2時20分現在)では、153.85近辺まで持ち直す動きとなっております。尚、週末に発表された米6月PCEコアデフレーター(結果+2.6%、予想+2.5%)は市場予想を上回る結果となりましたが、ドル円相場の反応は限定的となりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0881で寄り付いた後、早々に週間高値1.0904まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)日銀による利上げ観測に端を発した円キャリートレードの巻き戻し(ユーロ円が171.68から164.82まで急落→ユーロドル連れ安)や、(2)デギンドスECB副総裁による「9月は意思決定するには適した月である」とのハト派的な発言、(3)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(4)欧州株の冴えない動き(リスク回避のユーロ売り圧力)、(5)ドイツ7月製造業PMI(結果42.6、予想44.0)の市場予想を下回る結果、(5)ドイツ7月非製造業PMI(結果52.0、予想53.3)の市場予想を下回る結果、(6)ユーロ圏7月総合PMI(結果50.1、予想50.9)の市場予想を下回る結果が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0826まで下落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(7)株式市場の持ち直し(リスク回避ムード後退)や、(8)ユーロ円相場の急反発(ユーロ円が164.82から168.01まで急反発→ユーロドル連れ高)、(9)米金利低下に伴うドル売り圧力が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間7/27午前2時20分現在)では、1.0862前後まで持ち直す動きとなっております。尚、今週発表されたドイツ7月Ifo景気動向指数(結果87.0、予想89.0)は市場予想を下回る結果となりましたが、市場の反応は限られました。
来週の見通し(7/29−8/2)
<ドル円相場>
ドル円は7/3に記録した約38年ぶり高値161.99をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、一時151.94まで急落しました(僅か3週間で10円を超える暴落劇)。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、今回の暴落局面において、5/3安値151.87を死守できたことは、ダウ理論の上昇トレンド崩壊を回避できたという点で見ても、大きな意味があったと判断できます(当方は7/25に記録した安値151.94がクライマックス・セリングと整理)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による追加利上げの難しさ(河野太郎デジタル相や茂木敏充自民党幹事長が相次いで追加利上げを求める発言をしたことで、市場では追加利上げ観測が俄かに高まりましたが、実質賃金低下の流れが続いていることや、来月より始まる電気・ガス料金の低減措置が物価に下方圧力を加える可能性が高いこと等を踏まえると、物価動向の見極めが可能となる年末・年始より前のタイミングで安易に追加利上げに踏み切ることは現実的に想定し難い)や、(2)米FRBによる早期利下げの難しさ(米経済に依然として力強さが残っていることや、米大統領選を控えていること等を踏まえると、9月FOMCでの25bp利下げは容易ではない→事実、9月FOMCでの利下げ織り込み度合は週後半にかけて96%から87%へ低下)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方からドル買い・円売りが再開する可能性)、
(4)トランプトレードの再開期待(トランプ氏優勢の状態は変わらないとの見方から財政出動→インフレ再燃→米金利上昇→米ドル買いのトランプトレード再開)、(5)政府・日銀による為替介入の難しさ(イエレン米財務長官は7/25に「市場介入はパートナー国と協議した上で、過度の変動があると判断される場合にのみ稀に行うべきだ」と日本の為替介入を牽制)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記2を見極める目的で米FOMC、上記1を見極める目的で日銀金融政策決定会合に注目が集まります。米FOMCについては、「政策金利の据え置き」+「声明文およびパウエルFRB議長記者会見で初回利下げ時期に関するヒントを与えない(あくまでデータ次第とのスタンス継続)」というタカ派シナリオを想定しているため、直後の反応としては、9月FOMCの利下げ織り込み剥落→米長期金利急上昇→米ドル買いの波及経路が警戒されます。
また、日銀金融政策決定会合については、「追加利上げ見送り」+「国債買い入れは2年程度先に3兆円規模に半減」というシナリオを想定しているため、追加利上げ見送りを失望する形で、円金利低下→円売りの波及経路が強まる展開を見ています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開(タカ派な米FOMC、ハト派な日銀金融政策決定会合の組み合わせ)をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は日米の金融政策イベント以外にも、米7月ISM製造業景況指数や、米7月雇用統計などの重要イベントが複数予定されているため、週を通してボラティリティの高い1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):152.50ー156.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は7/17に記録した約4カ月ぶり高値1.0948をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、一時1.0826まで下落しました。日足ローソク足が一目均衡表転換線を下抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化が警戒されます(1.08台前半に一時している21日移動平均線やボリンジャーミッドバンド、200日移動平均線や一目均衡表基準線を下抜けできれば、ロング勢のロスカットを巻き込みながらもう一段下げ足を速める恐れあり)。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力(今週はデギンドスECB副総裁より「9月は意思決定するには適した月である」とのハト派的な発言が見られた他、ドイツ連銀ナーゲル総裁からも「経済データが今の路線通りであるならば利下げが可能なはず」とのハト派的な発言あり)や、(2)欧州経済の先行き不透明感(今週発表されたドイツ7月製造業PMI、ドイツ7月非製造業PMI、ユーロ圏7月総合PMI、ドイツ7月Ifo景気動向指数はいずれも市場予想を下回る冴えない結果)、
(3)フランスを巡る政局不透明感(格付け会社ムーディーズは7/9にフランス国民議会総選挙の結果は同国の信用格付けにとってマイナスであると警告)、(4)欧州域内の財政悪化リスク(欧州委員会は6/19にフランスやイタリアを含む7カ国に「過剰財政赤字手続き」開始を勧告→9/20までに構造改革案を示す必要性あり)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。来週7/30に予定されているユーロ圏4−6月GDP速報値や、7/31のユーロ圏7月HICP速報値が市場予想を下回る場合には、欧州経済の先行き不安と欧州圏のインフレ鈍化が組み合わさることで、ECBによる追加利下げ観測→欧州債利回り低下の経路で、ユーロドルに強い下落圧力が加わる恐れも出てくるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.0950
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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