ドル円見通し トランプ氏のドル高けん制と河野デジタル相の円安けん制で急落、市場介入との声も(24/7/18)

ドル円は、17日夕刻に156.09円へ急落した。

ドル円見通し トランプ氏のドル高けん制と河野デジタル相の円安けん制で急落、市場介入との声も(24/7/18)

トランプ氏のドル高けん制と河野デジタル相の円安けん制で急落、市場介入との声も

〇ドル円、覆面介入による続落後いったん158円台後半へ戻すも、7/17夕刻156.09へ急落
〇河野デジタル相の利上げ求める旨の発言、トランプ氏のドル高けん制発言等が背景
〇NY連銀総裁らの発言を受け、FRB9月利下げ期待が増したこともドル売り円買い材料に
〇ドル円一段安で円高継続感強まり、7/18午前序盤に155円台突入
〇昨年末以降の上昇トレンド支持線を割り込む
〇米10年債利回りは小動き、ダウが連騰する一方でナスダックが急落
〇156円台前半は戻り売り有利とし、155円割れからは154円台前半への下落を想定
〇156.50超えからは157円前後への上昇を想定

【概況】

ドル円は政府・日銀の覆面市場介入により7月11日夜に161円台から157.42円へ急落し、12日夜も連日の覆面介入とみられる急落で157.37円へ安値を切り下げ、7月16日未明に157.17円まで続落してからいったん158円台後半へ戻していたが、17日午後に河野デジタル相が日銀へ利上げを求める旨の発言をしたとの一部メディア報道をきっかけとして再び下落に転じ、夕刻の英6月CPIが高止まりしたことで英中銀の利下げ期待が後退したこと、トランプ氏がドル高をけん制する発言を行ったこと等が重なり17日夕刻に156.09円へ急落した。
ポンドドルやユーロドルの上昇と同調した円高だったものの、急落幅が大きかったことで覆面市場介入だったのではないかとの声も聞かれるが、12日夜から16日未明への下落時に157円割れを回避していたところから一段安したために円高継続感が強まっており、18日午前序盤には155円台に突入している。

トランプ氏はメディアインタビューで「現在は大幅なドル高・円安、ドル高・元安であり我々は大きな通貨問題を抱えている」としてドル高をけん制した。
河野大臣は円安による日本への恩恵は限られている、「円は安過ぎる。価値を戻す必要がある」等と述べたため、7月末に日銀が追加利上げに踏み切るとの見方が強まった。
7月17日にウォラーFRB理事が「利下げが妥当となる時期が近づいている」と発言し、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も数カ月以内に利下げが正当化される可能性があると述べたことでFRBの9月利下げ期待が増したこともドル売り円買い材料とされた。
米商務省による6月住宅着工件数(年換算)が前月比3.0%増の135万3000戸となり市場予想の130万戸を大幅に上回り、先行指標の住宅着工許可件数も前月比3.4%増の144万6000戸で市場予想の139万5000戸を上回ったが市場の反応は限定的だった。

【昨年末以降の上昇トレンド支持線を割り込む】

ドル円は7月16日未明安値157.17円を割り込んで一段安に入ったが、昨年12月28日安値140.24円、今年3月11日安値146.46円を結ぶ上昇トレンドの下値支持線を割り込んだ。
3月11日への下落時は2月13日高値150.88円から4.42円の下げ幅で52日移動平均を割り込んだところからV字反騰に入り、5月3日と6月4日の下落時は52日移動平均に到達したところから切り返しているが、今回は52日移動平均を割り込んでさらに続落している。
4月29日と5月2日の市場介入による急落時は4月29日高値160.16円から5月3日安値151.85円まで8.31円の下落だったが、今回は7月3日高値161.94円から18日8時台安値155.71円まで6.23円の下落幅であり、同規模の下落を想定すればあと2円強の下げ幅が残っている可能性も考えられる。仮に6月4日安値154.54円を割り込む場合には昨年12月底以降の底上げ基調も崩れるため、昨年11月から12月末にかけての下落時に近い展開へ進むことも警戒しておきたい。

【米10年債利回りは小動き、ダウが連騰する一方でナスダックが急落】

7月17日の米長期債利回りは総じて小動きだった。英6月CPIが高止まりしたことで一時上昇したものの米住宅指標発表後に上昇一巡して低下に転じている。
長期金利指標の10年債利回りは前日比変わらずの4.16%で終了し、一時4.14%をつけて4月25日に付けた年初来ピークである4.74%以降の最低を更新した。30年債利回りは前日比0.01%上昇の4.38%となったが、一時4.36%をつけて7月1日に付けた4.66%以降の最低とした。
2年債利回りは前日比0.02%上昇の4.44%となった。16日に4.41%をつけて4月30日に付けた年初来ピークである5.05%以降の最低を4日連続で更新し、17日は一時4.48%まで戻したものの上昇幅の大半を削った。
一方で米国株式市場は明暗が分かれた。NYダウは利下げ期待とトランプ氏勝利の場合に規制緩和が進むとの見方を背景に前日比243.60ドル高と上昇して6連騰とし、史上最高値を3日連続で更新したが、ナスダック総合指数は半導体取引規制への懸念により前日比512.42ポイント安と急落し、前日に史上最高値を更新した。S&P500も前日比78.93ポイント安と急落した。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は7月16日未明安値157.17円から16日夜高値158.85円まで戻したものの17日午後からの下落で16日未明安値を割り込み、18日午前序盤には156円を割り込んでいる。目先は下落継続とみて18日夜から23日未明にかけての間への下落を想定するが、急落後の反動高も大きくなる可能性があると注意し、156.50円超えからは157円前後への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では7月17日午後からの急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみるが、先行スパンからの転落状況が続くうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は7月16日午後から16日夜にかけての高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられ、17日夕に10ポイント台へ急落した。その後も30ポイント前後までで上値が重くなっているため再び10ポイント台へ低下する可能性があるとみる。強気転換には40ポイントを超えて50ポイントに迫る反騰が欲しいところだ。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、155.00円を下値支持線、156.50円を上値抵抗線とする。
(2)156円台前半は戻り売り有利とし、155円割れからは154円台前半への下落を想定する。154円台序盤は反騰注意とするが、156円以下での推移か直前安値から1円を大幅に超える反騰がみられないうちは19日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)156.50円超えからは157円前後への上昇を想定するが、157円前後からの反落を警戒し、その後に戻り幅の半値を削るところからは次の下落期入りとなる可能性もあると注意する。

【当面の予定】

7/18(木)
15:00 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 4.4%、予想 4.4%)
21:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 4.25%、予想 4.25%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 23.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 185.2万人、予想 185.5万人)
21:30 (米) 7月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (6月 1.3、予想 2.9)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
23:00 (米) 6月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (5月 -0.5%、予想 -0.3%)
26:45 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、開会挨拶

7/19(金)
07:05 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会
08:01 (英) 7月 GFK消費者信頼感 (6月 -14、予想 -12)
08:30 (日) 6月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (5月 2.8%、予想 2.9%)
08:30 (日) 6月 全国CPI(生鮮食料品除く) 前年同月比 (5月 2.5%、予想 2.7%)
08:30 (日) 6月 全国CPI(生鮮食料品・エネルギー除く)  前年同月比 (5月 2.1%、予想 2.2%)
08:30 (日) ボウマンFRB理事、講演
15:00 (英) 6月 小売売上高 前月比 (5月 2.9%、予想 -0.4%)
15:00 (英) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 1.3%、予想 0.2%)
15:00 (独) 6月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (5月 0.0%、予想 0.1%)
17:00 (欧) 5月 経常収支・季調済 (4月 386億ユーロ)
23:40 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、パネル討論会
26:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、閉会挨拶


注:ポイント要約は編集部

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