ドル高基調は辛うじて継続、ただ上値重そう
〇先週のドル円、週初はおおむね右肩上がり、7/3に週間高値161.96つける
〇その後週末にかけ様相が一変、ドルは下値を試す展開で160.34まで下落
〇米6月製造業PMI、ISM、ADP悪化がドル売り要因に
〇FOMC議事要旨「利下げには一層の確信が必要」が一段のドル売りに歯止め
〇6月米雇用統計、失業率上昇するなど再び為替市場の失望を誘う
〇テクニカルには、160円割れから21日移動平均線を下回ると、ドルの下値は波乱含みか
〇今週は米CPI等の重要指標、FRB議長の議会証言、企業決算発表に要注目
〇ドル高・円安、米雇用統計発表後の高値161.30-40が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向、先週安値160.34をめぐる攻防にまずは注目
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は結果「行って来い」。一時161.96円、38年ぶりのドル高値を示現したものの維持できなかった。
前週末、6月30日に実施されたフランス下院選において、「野党極右政党が最大勢力の勢い」などと速報で伝えられるなか、月曜日の早朝5時ごろに北朝鮮がまたもや弾道ミサイルと思しき飛翔体を発射したと報じられていた。
そうした状況下、週明けのドル/円は160.75-80円で寄り付いたのち、おおむね右肩上がり。日本の当局者からは円安けん制発言こそ聞かれるが、実弾介入は観測されないなか、3日には週間高値である161.96円まで値を上げている。しかし、その後週末に掛けては様相が一変しドルは下値を試す展開に。上昇分すべてを吐き出しただけでなく、さらに売り込まれると週間安値160.34円まで下落したのち、週末NYは小戻した160.75円前後で取引を終え越週となった。
なお、ザラ場ベースではユーロ/円が174円台後半を付け、1999年に通貨ユーロが導入されて以降の最高値を示現したほか、豪ドル/円も1991年以来の高値圏へと達する局面が観測されている。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米金融政策」と「米大統領選」について。
前者は、週明けから発表される米指標は悪化が目に付く。たとえば6月の製造業PMI、同ISM製造業景況指数はともに予想を下回る内容。その後も、6月のADP雇用統計と同ISM非製造業総合指数がやはり悪化し、為替市場においてはドル売り要因に。しかし、そののち公表された6月開催分のFOMC議事要旨において、「米利下げには一層の確信が必要」といった認識が示されたことで、一段のドル売りにも歯止めが掛けていた。ただ、週末に発表された6月の米雇用統計は、失業率が予想外に上昇するなど再び為替市場の失望を誘う。米利下げに関して、市場の弱気ムードはさらに強まったようだ。
それに対して後者は、不出来を批判された6月27日の米大統領選討論会について、バイデン氏自身から「疲労が蓄積していた」とした弁明も聞かれるなか、「バイデン降ろし」の機運も。典型例はリベラル系有力米紙であるNYタイムズが「バイデン氏は再選を諦めて選挙戦から撤退するべき」などと報じ、物議を醸していたことだろう。バイデン氏本人は選挙戦をまだまだ続ける意欲を見せているものの、いわゆる「外堀」が少しずつ埋まり始めている感があり、実際ロイターが「バイデン氏撤退ならハリス副大統領が米民主党の最有力候補」と伝えるなど「後継者探し」の動きも本格化しつつあるようだ。
<< 今週の見通し >>
ドル/円相場は162円を目前にして反転すると、下値を試す動き。週足を見ても、先週は寄り引き同時線に近く、基調の転換を暗示させる。ただ、個人的には流れが変わったとまでは見ていない。引き続き底堅いイメージながら、ドルの上値を積極的に追い難くなったことは間違いないだろう。とは言え逆に160円割れ、そして足もとすでに159円台まで値を切り上げている移動平均の21日線をしっかり下回るようだと、相場観を修正する必要があるかもしれない。
市場は日米金融政策が依然として注視されるなか、冴えない米経済指標が続くこともあり、米利下げについて弱気ムードが強まりつつようだ。6月FOMCにおけるドットチャートでは、「年内利下げは1回」と予想されていたものの、市場はすでに2度の利下げを織り込みはじめた動きとなっている。そうしたなか、発表される米指標ならびにパウエル議長の議会証言には大いに注目したい。なお、それとは別に、先で指摘した「バイデン降ろし」を中心とした米大統領選に関するニュースも場合によっては波乱要因に。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場は先週160円をしっかり割り込めばドル高継続にも黄信号が点灯するところだったが、なんとか土俵際では踏みとどまった。まだドル高方向のリスクそのものは残っていると考える。
しかし、前述したように下値は移動平均の21日線が意識されている。160円に続き同レベルを下回るようだとドルの下値は一転波乱含みとなりかねない。なお、5月安値151.86円を起点とした上げ幅のフィボナッチ23.6%戻しは159.60円、38.2%戻しは158.10円だ。
そうしたなか今週は、6月の消費者物価コア指数や7月のミシガン大消費者信頼感指数速報値といった重要な米経済指標が発表されるうえ、パウエルFRB議長による半期に一度の議会証言も実施される見通しだ。また、週末に掛けては金融機関などによる米企業決算の発表も予定されており、そちらも一応要注意。
そんな今週のドル/円予想レンジは、158.90-161.90円。ドル高・円安については、米雇用統計発表後の高値である161.30-40円が最初の抵抗。超えると年初来高値161.96円が再び視界内に。
対してドル安・円高方向は、先週安値160.34円をめぐる攻防にまずは注目。下回ると160円割れも否定できず、週間を通して159円台に位置する移動平均の21日線が意識されそうだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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