160円に迫る、日足終値ベースでは2011年10月以降の最高値更新
〇先週のドル円、20日夕刻からの上昇で、6/14高値158.25を超え22日早朝に159.83を付け160円に迫る
〇政情不安からユーロが下落、ドル高感強まった事、米国が為替報告で日本を監視対象とした事等が背景
〇159円到達でも市場介入がみられず、160.16を試す流れへと進んでいる印象
〇テクニカルには日足終値ベースで4/29以降の三角持ち合いを上放れ
〇160.16手前では売られやすいとみるが、超えれば160.50、161円を順次試して行く可能性
〇強めの口先介入やレートチェックがある場合は159円を割り込んで158円台中盤へ下げるとみる
〇三度目の実弾介入がある場合は直前高値から3円前後規模の下落とみて157円前後試し
【概況】
ドル円は6月20日夕刻からの上昇で6月14日の日銀会合後の乱高下で付けた高値158.25円を超えて一段高に入り、21日午前に159.12円へ続伸してからいったん158.66円まで下げたものの21日夜に21日午前高値を超えて22日早朝に159.83円を付けて160円に迫った。
仏英の総選挙を巡る野党台頭見通しによる政情不安感からユーロやポンドが下落してドル高感強まったことに加え、米財務省が半期為替報告で日本を1年振りに監視対象としたことで政府・日銀による市場介入が仕掛けづらくなったとの見方により円売りが勢いを増し、159円到達でも市場介入がみられなかったために今年最初の市場介入があった4月29日高値160.16円を試す流れへと進んでいる印象だ。
6月21日の独仏欧の製造業及び非製造業のPMIが軒並み前月から悪化する一方で米6月PMIは製造業と非製造業がともに前月から改善して市場予想も上回ったことでドル高継続感が増したが、ユーロ円とポンド円がともに5連騰となりポンド円は年初来高値及び2011年9月以降の最高値を更新しているために円の独歩安感が強まっている。
6月20日に米財務省が日本を為替監視対象国としたことについて市場介入の現場責任者である神田財務官は21日に「今後も過度な変動があれば適切な対応をしっかりと取っていくという考えに変わりない」とし、「日本がリストに入ったからといって為替政策を問題視するものではない」と述べた。市場介入については「ファンダメンタルズに沿って安定的に推移している限りは介入の必要はない」が「投機による過度な変動が国民経済に悪影響を及ぼすような場合にはしっかりとした対応をとる」と述べたが、4月29日の介入前や5月2日早朝の二度目介入時に見せたような市場心理を威圧するような強い姿勢は見られなかったと感じるところだ。
【PMIで米欧の明暗分かれる】
6月21日に発表された米S&Pグローバルによる6月製造業PMIは51.7となり5月の51.3から改善して市場予想の51.0を上回り、非製造業PMIは55.1となり5月の54.8から改善して市場予想の53.7を上回った。総合PMIは54.6で5月の54.5から若干伸びて市場予想の53.5を上回り2022年4月以来の高水準となった。
一方で6月の欧州PMIは低調で、ドイツは製造業が5月の45.4から43.4へ、非製造業が54.2から53.5へ悪化、ユーロ圏は製造業が47.3から45.6へ、非製造業が53.2から52.6へ悪化、英国は製造業が51.2から51.4へ改善したものの非製造業は52.9から51.2へ悪化した。フランスも製造業が45.3、非製造業が48.8と低迷しており米国の一人勝ちの様相となった。
米コンファレンス・ボードによる5月景気先行指数は101.2となり前月比0.5%低下して4月の0.6%低下を上回ったものの市場予想の0.3%低下を下回った。また全米リアルター協会(NAR)による5月中古住宅販売戸数(年率換算)は前月比0.7%減の411万戸で3か月連続のマイナスとなったが市場予想の410万戸は上回った。これらが弱かったことで米長期債利回りの上昇が抑えたもののドル円の上昇を止めるには不足だった。
【米10年債利回りは小動き】
6月21日の米長期債利回りは総じて小動き。
長期金利指標の10年債利回りは前日比変わらずの4.26%で終了した。10年債利回りは6月11日から14日へ4営業日連続低して4.19%をつけて4月25日の4.74%以降の最低としたが、その後は大幅低下一服で下げ渋りの様相を続けている。21日は4.22%から4.28%のレンジで一時は前日比プラスとしたが勢いは鈍かった。
30年債利回りも前日比変わらずの4.26%、2年債利回りも変わらずの4.74%で終了しており、いずれも大幅低下一服での持ち合いに入っている。
米財務省は6月24日からTB(3か月物700億ドル、6か月物700億ドル)、25日の2年債(690億ドル)、26日の5年債(700億ドル)、27日の7年債(440億ドル)と大量の入札を行うため需給緩和感で入札低調なら債券売り・利回り上昇へ反応しやすくなるが6月28日に5月米PCE(個人消費支出)デフレーターの発表を控えているためそれまではやや慎重な動きを続けるのではないかと思われる。
6月21日のNYダウは前日比15.57ドル高と上昇して6月17日から4連騰としたが、前日に取引時間中の史上最高値を更新してから反落したナスダック総合指数は32.23ポイント安と続落し、同じく前日に取引時間中の史上最高値を更新したS&P500指数も8.55ポイント安と小幅続落した。株式市場はNYダウが出直ってきたことで9月利下げ期待と先高期待による楽観的な強気優勢の流れを維持している印象だ。
【日足終値ベースではすでに4月29日以降の三角持ち合いを上放れ】
6月21日の日足終値159.77円は4月26日終値158.29円を超えて2023年1月16日安値127.22円以降の最高値を更新しているが、遡れば2011年10月31日安値75.57円以降の最高値を更新している。
4月29日高値160.16円を超えていないものの、日足終値ベースでは3日連続陽線(赤三兵)で4月26日以降の三角持ち合いから上放れして一段高に入っており、概ね3か月周期(2か月半から4か月弱)で主要な安値を付けてきたリズムで見れば3月11日安値から3か月目となる6月4日安値でこの周期の底を付けて上昇期に入った印象だ。昨年12月28日安値140.24円を起点とした中期的な上昇トレンドの支持線を維持しており、今年2月13日までを一段目、4月29日までを二段目とすれば5月3日安値を起点として三段目の上昇期に入っていると思われる。
160円到達時点では三度目の市場介入への警戒感も強まるが、5月2日早朝に二度目の市場介入を行った時は一度目の介入時高値から切り下がった水準で戻り売りを誘うものだったのに対して、現状はすでに5月2日早朝の介入時水準を超えて放置されており、一度目の介入時水準に迫るところでも介入が見送られるようだと、財務官らの防衛ラインは165円前後まで切り上がっているのではないかとの憶測が強まりかねない。
5月3日以降の上昇期においては、5月14日高値156.75円から5月16日安値153.60円まで3.15円の下落が入り、5月29日高値157.70円から6月4日安値154.54円まで3.16円の下落が入っているため、市場介入への警戒感と利食い売りによる反落時には直前高値から3円強の下落が想定されるが、介入なければ突っ込んだところは買い拾われて次の上昇起点となるのではないかと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、159.00円を下値支持線、4月29日高値160.16円を上値抵抗線とする。
(2)160.16円手前では売られやすいとみるが、高値警戒感からの小反落なら159.30円から159.00円にかけての水準で押し目買いされやすく、その後に直前の下げ幅の半値を解消するところからは上昇再開とし、市場介入なければ160.16円超えから160.50円、161円を順次試して行く可能性もあるとみる。
(3)実弾介入を匂わせるかなり強めの口先介入やレートチェックがある場合は159円を割り込んで158円台中盤へ下げるとみる。158.50円以下は買い拾われやすい水準とみるが、日銀の7月会合における追加利上げ観測や大規模な国債買い入れ減額についての観測報道などで下げ幅が大きくなる場合は158円台序盤まで下値目途を引き下げる。
(4)三度目の実弾介入がある場合は直前高値から3円前後規模の下落とみて157円前後試しとするが、狼狽売りが落ち着けば上昇再開に入るとみて介入による下落幅に対する半値から3分の2戻しを想定する。
【当面の予定】
6/24(月)
07:45 (NZ) 5月 貿易収支 (4月 0.91億NZドル)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合における主な意見(6月13-14日分)
16:00 (米) ウォラーFRB理事、会合挨拶
17:00 (独) 6月 IFO企業景況感指数 (5月 89.3、予想 89.3)
19:10 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
21:30 (欧) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
23:30 (米) 6月 ダラス連銀製造業活動指数 (5月 -19.4)
24:30 (欧) シュナーベルECB理事、講演
27:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
6/25(火)
08:50 (日) 5月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (4月 2.8%)
09:30 (豪) 6月 ウエストパック消費者信頼感指数 (5月 82.2)
14:00 (日) 4月 景気一致指数CI・改定値 (速報 115.2)
14:00 (日) 4月 景気先行指数CI・改定値 (速報 111.6)
20:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
22:00 (米) 4月 FHFA住宅価格指数 前月比 (3月 0.1%)
22:00 (米) 4月 FHFA住宅価格指数 前年同月比 (3月 6.7%)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前月比 (3月 1.6%)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (3月 7.4%)
23:00 (米) 6月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (5月 102.0、予想 100.0)
23:00 (米) 6月 リッチモンド連銀製造業指数 (5月 0)
25:00 (米) クックFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省2年債入札
27:15 (米) ボウマンFRB理事、講演
6/26(水)
FRB、年次銀行ストレステスト結果公表
10:30 (豪) 5月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (4月 3.6%、予想 3.8%)
15:00 (独) 7月 GFK消費者信頼感 (6月 -20.9、予想 -19.0)
19:40 (欧) レーンECB理事、講演
23:00 (米) 5月 新築住宅販売件数・年率換算 (4月 63.4万件、予想 65.0万件)
23:00 (米) 5月 新築住宅販売件数 前月比 (4月 -4.7%、予想 2.5%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省5年債入札
6/27(木)
EU首脳会議(6/28まで)、米大統領選挙候補者第1回テレビ討論会
08:50 (日) 5月 小売業販売額 前年同月比 (4月 2.4%、予想 2.3%)
10:00 (NZ) 6月 ANZ企業信頼感 (5月 11.2)
18:00 (欧) 6月 消費者信頼感・確定値 (5月 -14.0)
18:00 (欧) 6月 経済信頼感 (5月 96.0)
21:30 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 0.2%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 1.3%、予想 1.5%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 2.0%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCEデフレーター・確定値 前期比年率 (改定値 3.6%)
21:30 (米) 5月 耐久財受注 前月比 (4月 0.7%、予想 0.0%)
21:30 (米) 5月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (4月 0.4%、予想 0.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 182.8万人)
23:00 (米) 5月 NAR住宅販売保留指数 前月比 (4月 -7.7%)
23:00 (米) 5月 NAR住宅販売保留指数 前年同月比 (4月 -0.8%)
26:00 (米) 財務省7年債入札
6/28(金)
休場 ニュージーランド
08:30 (日) 6月 東京区部コアCPI(消費者物価指数・生鮮食料品除く) 前年同月比 (5月 1.9%、予想 2.1%)
08:30 (日) 5月 失業率 (4月 2.6%、予想 2.6%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産・速報値 前月比 (4月 -0.9%、予想 2.0%)
08:50 (日) 5月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (4月 -1.8%、予想 -0.4%)
14:00 (日) 5月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (4月 13.9%、予想 -5.5%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.2%)
15:00 (英) 1-3月期 経常収支 (10-12月 -212億ポンド)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 5.9%、予想 6.0%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)
19:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
19:00 (欧) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 PCE(個人消費支出) 前月比 (4月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 PCEデフレーター 前年同月比 (4月 2.7%、予想 2.6%)
21:30 (米) 5月 コアPCEデフレーター・食品・エネルギー除く 前月比 (4月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 コアPCEデフレーター・食品・エネルギー除く 前年同月比 (4月 2.8%、予想 2.6%)
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
22:45 (米) 6月 シカゴ購買部協会景況指数 (5月 35.4)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 65.6)
25:00 (米) ボウマンFRB理事、質疑応答
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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