ドル円見通し 米長期債利回り低下と日銀国債買い入れ減額予想で154円台へ急落(24/6/5)

ドル円は、4日夜の米JOLTS求人件数が予想を大幅に下回り米10年債利回りが4営業日連続低下したために4日深夜安値154.54円へ急落した。

ドル円見通し 米長期債利回り低下と日銀国債買い入れ減額予想で154円台へ急落(24/6/5)

米長期債利回り低下と日銀国債買い入れ減額予想で154円台へ急落

〇ドル円、6/4夜の米JOLTS求人件数が予想大幅に下回り安値154.54へ急落
〇その後、安値更新回避し6/5午前序盤155円台回復。5/30未明高値から6/4深夜安値までの下げ幅3.16
〇JOLTS求人件数、2021年2月以来3年2か月振り低水準。労働市場のひっ迫感後退し減速期入りの印象
〇JOLTS発表後、米長期債利回り総じて低下。10年債利回り4営業日連続低下
〇FF市場利下げ期待度、先週末4割台からISM製造業景況指数悪化で5割超え、JOLTS発表後6割まで上昇
〇今週、重要指標続く。米経済指標弱く米長期債利回り低下とドル円下落が長引く可能性に注意
〇155.30以下での推移中は一段安警戒、154.54割れからは154.00、153.70等を順次試す下落想定
〇155.30超えからはいったん戻しに入るとみて155.50から155.90への上昇想定、戻りは短命の可能性も

【概況】

ドル円は5月30日深夜安値156.37円から持ち直し、31日の米4月PCEデフレーター発表後の乱高下を通過して6月3日午後高値157.47円まで戻していたが、6月3日夜の米サプライ管理協会(ISM)5月製造業景況指数が予想外に悪化して米長期債利回りが大幅低下したことで4日未明に155.95円へ下落した。
6月4日午前に156.48円までいったん戻していたものの、来週の日銀金融政策決定会合で長期金利抑制のための国債買い入れを減額するとの観測報道等により4日未明安値を割り込んで一段安に入り、4日夜の米JOLTS求人件数が予想を大幅に下回り米10年債利回りが4営業日連続低下したために4日深夜安値154.54円へ急落した。その後は安値更新を回避して5日午前序盤は155円台を回復している。
5月30日未明高値157.70円から4日深夜安値154.54円までの下げ幅は3.16円となり、5月14日夜高値156.75円から米CPI減速により5月16日午前安値153.60円まで急落した時の下げ幅3.15円とほぼ同規模となった。

今夜はADP民間雇用者数、米ISMサービス業景況指数、6日夜にはECB政策金利発表や米労働生産性と週間新規失業保険申請件数、7日夜に米5月雇用統計と重要指標が続くが、米経済指標が総じて弱く米長期債利回りの低下とドル円の下落が長引いてゆく可能性もあると注意したい。

【日銀の国債買い入れ減額見通し】

複数の通信社が来週6月13-14日の日銀金融政策決定会合で長期国債の買い入れの減額が議論されるとし、月間6兆円規模の現状からの減額及び段階的な縮小姿勢が示される可能性があると報じた。日銀は3月会合でマイナス金利解除を決定した際に国債買い入れをこれまでと概ね同程度の金額で継続するとしたが、5月13日の国債買いオペでは5〜10年物国債の買い入れを従来から500億円減額して国内10年債利回り上昇を招いている。
日銀の氷見野副総裁は6月4日に「金融政策で為替レート自体をターゲットにするのは適切ではない」としたものの「物価に幅広く持続的な影響が起こる可能性もある。非常に注意を払ってしっかり分析していかなければならない」と述べて円安へのけん制姿勢を示したが、政府サイドからの円安けん制姿勢も踏まえて日銀政策が円安を招くような状況にはしたくない姿勢を示したと思われる。

【米JOLTS求人件数が大幅減少】

6月4日に米労働省が発表した4月雇用動態調査(JOLTS)における求人件数は29万6000件減少の805万9000件となり市場予想の835万5000件を大幅に下回って2021年2月以来3年2か月振りの低水準となった。3月分は速報の848万8000件から835万5000件に下方修正されたが、2022年3月の1200万件をピークとして減少傾向を続けている。
4月の失業者1人当たりの求人件数も1.24件となり3月の1.30件から減少して2021年6月以来最低となったことも含めて労働市場のひっ迫感が後退して減速期に入っている印象を強めた。

【米10年債利回りは4営業日連続低下】

6月4日の米長期債利回りはJOLTS求人件数の減少により総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.06%低下の4.33%となり5月30日から4営業日連続低下した。30年債利回りも前日比0.06%低下の4.48%となり4営業日連続低下し、2年債利回りも0.04%低下の4.77%となり4営業日連続低下した。
FOMCは先の議事要旨において労働市場の悪化による利下げの可能性も示唆しているため、市場は早期利下げ期待度を増して米長期債利回り低下を招いたが、金利先物市場における9月会合での利下げ期待度は先週末の4割台から6月3日のISM製造業景況指数悪化で5割を超え、4日のJOLTS求人件数発表後に6割まで上昇したようだ。
一方で米長期債利回り低下を好感してNYダウは前日比140.26ドル高、ナスダック総合指数は28.38ポイント高と上昇した。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は5月30日夜安値からの戻り一巡で一段安に入ったため、6月4日午前時点では6月3日午前高値を目先のピークとした下落期として4日夜から6日夜にかけての間への下落を想定した。
6月4日夜安値154.54円へ大幅続落してから5日午前序盤に155円到達まで戻しているため、155.30円を超えないうちは一段安余地ありとするが、155.30円超えからはいったん戻しに入るとみて5日の日中から10日午前にかけての間への上昇を想定する。ただし強気転換した後の反落で4日以降の安値を更新する場合は新たな下落期入りとして7日夜から11日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月4日未明への急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は一段安警戒とするが、4日夜安値割れを回避して戻す場合は遅行スパンが好転しやすくなると注意して遅行スパン好転からは高値試し優先とする。ただし、先行スパンからの転落が続く内は遅行スパンが好転した後に再び悪化するところから下落再開と考える。

60分足の相対力指数は6月4日夜から5日未明にかけて指数のボトムが切り上がる強気逆行気配がみられるため、50ポイント以下での推移中は一段安警戒とするが、50ポイント超えからは戻りを継続するとみて60ポイント前後への上昇を想定する。ただしいったん50ポイントを超えてから40ポイント割れへ失速する場合は下落再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月4日夜安値154.54円を下値支持線、155.30円を上値抵抗線とする。
(2)155.30円以下での推移中は一段安警戒とし、154.54円割れからは154.00円、153.70円等を順次試す下落を想定し、今夜の米経済指標等をきっかけに下げ足が速まる場合は153円台前半への下落を想定する。
(3)155.30円超えからはいったん戻しに入るとみて155円台後半(155.50円から155.90円)への上昇を想定するが、戻りは短命の可能性もあると注意して戻り幅の3分の2を削るところからは下げ再開と仮定し、4日夜安値割れからは戻り幅の倍返しを超える下落を想定する。

【当面の予定】

6/5(水)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 0.2%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 1.5%、予想 1.2%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 52.5、予想 52.5)
16:55 (独) 5月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 53.9、予想 53.9)
17:00 (欧) 5月 HOCB サービス業PMI・改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
17:30 (英) 5月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 52.9、予想 52.9)
18:00 (欧) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 -0.4%、予想 -0.4%)
18:00 (欧) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 -7.8%、予想 -5.3%)

21:15 (米) 5月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (4月 19.2万人、予想 17.5万人)
22:45 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 5.00%、予想 4.75%)
22:45 (米) 5月 S&Pグローバル サービス業PMI・改定値 (速報 54.8、予想 54.8)
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 49.4、予想 50.8)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計

6/6(木)
休場 韓国
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 50.24億豪ドル、予想 55.00億豪ドル)
10:30 (日) 中村日銀審議委員、講演、14:30〜会見
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 -0.4%、予想 0.6%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前年同月比 (3月 -1.9%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.8%、予想 -0.2%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 0.7%、予想 0.3%)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀)政策金利 (現行 4.50%、予想 4.25%)

21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -694億ドル、予想 -764億ドル )
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.9万件、予想 21.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.1万人、予想 179.4万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、会見



注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る