ドル円週間見通し 5月3日夜安値を起点とした上昇を継続しつつ市場介入姿勢を試す

ドル円は5月16日にいったん下げたところを押し目形成として5月23日夜高値157.19円へ一段高となり、5月3日からの上昇は二段目に入った。

ドル円週間見通し 5月3日夜安値を起点とした上昇を継続しつつ市場介入姿勢を試す

5月3日夜安値を起点とした上昇を継続しつつ市場介入姿勢を試す

〇先週のドル円、23日深夜に157.19まで高値を伸ばした後157円挟みでもみ合い
〇FOMC議事要旨のタカ派的内容、米5月PMIの予想を大幅に上回る結果等がドル円をサポート
〇G7「過度の変動が経済に悪影響を与える」との認識を共有
〇神田財務官「今後も必要に応じていつ何時でも適切な措置をとっていきたい」とコメント
〇今週月曜は米休場、5/31発表予定の4月PCE(個人消費支出)デフレーター要注視
〇156.51を上回るうちは上昇余地ありとし、157.19超えからは157円台中盤への上昇を想定
〇156.51割れからは156円前後への下落を想定

【概況】

ドル円は5月15日の米4月CPI鈍化による米長期債利回り低下局面で153.60円へ下落したところから反騰に転じて156円台へ乗せ、5月23日未明のFOMC議事要旨がタカ派姿勢だったことで23日午前に156.90円を付けて5月14日夜高値156.75円を超え5月3日夜安値151.85円以降の高値を更新した。23日夜にはS&Pグローバルによる米5月PMIが予想を大幅に上回る堅調さを示したことによる米長期債利回りの一段高で23日深夜に157.19円へ高値を伸ばし、その後は市場介入への警戒感と米国市場3連休を控えて米長期債利回りの上昇が一服したことで高値更新へは進まなかったものの157円を挟んだ揉み合いでしっかりし、156.96円で週を終えた。

5月24日に米商務省が発表した4月耐久財受注額は前月比0.7%増で市場予想の0.8%減に反して改善し、設備投資の先行指標である航空機除く非国防資本財受注は前月比0.3%増で市場予想の0.1%増を上回った。
米ミシガン大の5月消費者信頼感指数確報値は69.1となり4月の77.2から低下したが市場予想の67.5を上回った。消費者の期待インフレ率は1年先で4月の3.2%から3.3%へ上昇し、5年先は4月と変わらず3.0%だった。米国市場が3連休前だったこともありドル円の反応は鈍かった。

【神田財務官、いつでも何時でも必要に応じて適切な措置(介入)する】

イタリアで開催されたG7財務相・中銀総裁会議では為替に関し「過度の変動が経済に悪影響を与える」との認識が共有されたが、鈴木財務相や植田日銀総裁による積極的な円安けん制は見られなかった。ただし市場介入の現場指揮官である神田財務官は為替動向及び市場介入について、「とりわけ米国とはこれまで極めて緊密な意思疎通を続けてきた」、市場介入が「まれであることが望ましいのは言うまでもない」が、「過度な変動が投機などで発生して経済に悪影響を与える場合には適切な措置を取る必用がある」、「今後も必要に応じていつ何時でも適切な措置をとっていきたい」と述べた。
イエレン米財務長官は5月23日に「為替介入はめったに使用されない手段であるべき」等と述べたことで日本政府は市場介入しづらいのではないかとの市場の見方をけん制したものと思われる。

【FOMC議事要旨でのタカ派姿勢、PCEデフレーターで変わるか?】

5月23日未明に公開されたFOMC議事要旨(4月30−5月1日開催分)ではインフレが従来想定よりも鈍化していないことにより政策金利の維持=引き締め状態が長期化するとの認識が強く示され、インフレ再燃の場合には利上げすべきとの一部意見も見られたため、年内利下げが大幅に遅れるかあるいは年内利下げが見送られるのではないかとの懸念を市場にもたらした。
6月11日-12日の次回FOMCでは参加者による政策金利予想などのドットプロットが示されるが、最近のインフレ率動向を踏まえて先行きの利下げ回数が従来の年内3回から1回ないし2回に下方修正されて2024年末や2025年の金利水準が上方修正されるのではないかとみられている。
FOMC内のタカ派による利下げ判断の先延ばしや年内利下げ不要論は今後も続くと思われるが、5月31日発表予定の4月PCE(個人消費支出)デフレーターが鈍化傾向を示し、9月FOMC(9月17日-18日)までに発表されるインフレ指標が現状よりも低下傾向をしっかり示せば9月利下げ開始の可能性はまだあると思われる。

【米長期債利回りは週間で上昇、NYダウは急落一服、ナスダック最高値更新】

5月24日の米長期債利回りは短縮取引で連休前ということもあり値動きは慎重で終値ではまちまちだった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%低下の4.46%で週を終えたが一時は4.50%をつけて5月16日の4.31%以降の高値を更新した。週間では5月17日終値4.42%から0.04%上昇した。
30年債利回りは前日比0.01%低下の4.57%で終了したが、23日と24日に一時4.60%をつけて5月16日に付けた4.47%以降の高値とし、週間では5月17日終値4.56%から0.01%上昇した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.01%上昇の4.95%で終了したが、23日と24日に一時4.96%をつけて5月16日の4.71%以降の高値とし、週間では5月17日終値4.83%から0.12%上昇した。利下げ先延ばし感に反応しているために10年債や30年債の上昇よりも2年債の上昇が顕著となっている。

一方でNYダウの前日比は4.33ドル高と小幅上昇したが、FOMC議事要旨による利下げ先送り感を嫌って5月22日に前日比201.95ドル安、23日に同605.78ドル安と大幅続落したことで5月20日に付けた史上最高値40077.40ドルから下落期入りしている可能性が懸念される。ただしナスダック総合指数は24日に前日比184.76ポイント高の1万6920.79で終了し、23日に付けた取引時間中の史上最高値16996.39を超えなかったものの終値ベースでは史上最高値を更新している。米半導体大手エヌビディアの好決算による連想買いでダウの下落に反して上昇基調を維持している。為替市場から見ればダウの下落とナスダックの上昇が交錯しているので今のところは大きなリスク回避要因にはなっていない印象だ。

【市場介入による急落幅解消を試す、当面のポイント】

【市場介入による急落幅解消を試す、当面のポイント】

ドル円は4月29日高値160.16円で1990年4月2日高値160.36円に迫ってから二度の覆面市場介入により5月3日安値151.85円まで大幅下落し、この間の下げ幅は8.31円となったが、5月14日高値156.75円へ切り返し、5月16日にいったん下げたところを押し目形成として5月23日夜高値157.19円へ一段高となり、5月3日からの上昇は二段目に入った。
4月29日からの下げ幅に対する半値戻しライン156.00円を超えたことで3分の2戻しラインの157.39円と5月2日早朝に二度目の市場介入をした直前高値157.58円が当面の上値抵抗線と思われるが、5月3日夜から5月14日夜までの一段目の上昇幅4.90円と同規模の二段目上昇とすれば上値計算値は158.50円、5月16日への下落幅3.15円の倍返しなら159.90円が上値計算値となり、4月29日高値160.16円へ迫る可能性も考えられる。

今のところは@昨年の上昇時における3月24日への下落時(3月8日高値からの下げ幅8.28円)や7月14日への下落時(6月30日高値からの下げ幅7.82円)と同程度の修正安を消化して上昇再開に入っている印象であること、A日本の新発10年債利回りが1%に到達したものの絶対的な水準では日米金利差拡大状態のままであること、BFOMC内タカ派の利下げ不要論が繰り返されていることを踏まえれば、政府・日銀が二度目の市場介入水準を超えても三度目の介入に踏み込まない場合には160円を再び目指して行くことも十分にありえると思われる。

ドル円が下落基調に転じるためには158円に届かずに156円割れへ失速すること、テクニカルな中勢の円高転換には5月16日安値153.60円を割り込む必要があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月23日夜安値156.51円を下値支持線、23日深夜高値157.19円を上値抵抗線とする。
(2)156.51円を上回るうちは上昇余地ありとし、157.19円超えからは157円台中盤(157.35円から157.65円)への上昇を想定する。157.50円以上は反落警戒とし、5月30日の米GDP改定値や31日の米PCEデフレーター発表前にはいったん修正安が入りやすいとみるが、それらを強気で通過して市場介入がなければは158円台へ乗せ、先行きは160円を再び目指す流れと考える。
(3)156.51円割れからは156円前後への下落を想定するが、156円前後は買われやすい水準とし、その後に157円へ切り返すところからは一段高へ進むとみる。ただし、米GDPの下方修正や米PCEデフレーターが予想以上に低下して米長期債利回り低下とドル安が加速する場合には155円割れを試す下落を想定する。

注:ポイント要約は編集部

【当面の予定】

5/27(月)
休場(米国、英国)、日中韓首脳会談
09:05 (日) 植田和男日銀総裁、日銀金融研究所主催会合挨拶
11:00 (日) 内田日銀副総裁、講演
14:00 (日) 3月 景気一致指数CI・改定値 (速報 113.9)
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI・改定値 (速報 111.4)
17:00 (独) 5月 IFO企業景況指数 (4月 89.4、予想 90.0)

5/28(火)
08:50 (日) 4月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (3月 2.3%)
10:30 (豪) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -0.4%、予想 0.3%)
13:55 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演(日銀主催イベント)
14:00 (日) 日銀・基調的なインフレ率を捕捉するための指標
22:00 (米) 3月 FHFA住宅価格指数 前月比 (2月 1.2%、予想 0.5%)
22:00 (米) 3月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (2月 7.3%)
22:55 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、スピーチ
23:00 (米) 5月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (4月 97.0、予想 96.0)
24:30 (米) 財務省2年債入札
26:00 (米) 財務省5年債入札
26:05 (米) クックFRB理事、講演

5/29(水)
休場(南ア)
10:00 (NZ) 5月 ANZ企業信頼感 14.9
10:30 (豪) 4月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比(3月 3.5%、予想 3.3%)
10:30 (日) 安達日銀審議委員、講演、会見(14:00〜)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 38.3)
15:00 (独) 6月 GFK消費者信頼感 (5月 -24.2、予想 -22.0)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (4月  0.5%、予想 0.1%)
21:00 (独) 5月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (4月 2.2%、予想 2.4%)
23:00 (米) 5月 リッチモンド連銀製造業指数 (4月 -7)
26:00 (米) 財務省7年債入札
26:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

5/30(木)
休場(マレーシア、ブラジル)
07:45 (NZ) 4月 住宅建設許可件数  前月比  -0.2%
08:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (10-12月 0.8%、予想 0.3%)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 1.9%)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感・確定値 (速報 -14.3)
18:00 (欧) 5月 経済信頼感 (4月 95.6)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 6.5%)

21:30 (米) 1-3月期 GDP・改定値 前期比年率 (速報 1.6%、予想 1.2%)
21:30 (米) 1-3月期 個人消費・改定値 前期比年率 (速報 2.5%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCEデフレーター・改定値 前期比年率 (速報 3.7%)
21:30 (米) 4月 卸売在庫 前月比 (3月 -0.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.4万人)
23:00 (米) 4月 全米リアルター協会 住宅販売保留指数 前月比 (3月 3.4%、予想 0.5%)
23:00 (米) 4月 全米リアルター協会 住宅販売保留指数 前年同月比 (3月 -4.5%)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
29:30 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演

5/31(金)
マレーシア休場
07:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、スピーチ
08:30 (日) 5月 東京区部CPI(消費者物価指数)・生鮮食料品除く 前年同月比 (4月 1.6%、予想 1.9%)
08:30 (日) 4月 失業率 (3月 2.6%、予想 2.6%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産・速報値 前月比 (3月 4.4%、予想 1.7%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (3月 -6.2%、予想 -1.2%)
08:50 (日) 4月 小売業販売額 前年同月比 (3月 1.2%、予想 1.9%)
10:30 (中) 5月 国家統計局 製造業PMI (4月 50.4)

14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -12.8%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 5月 HICP(調和消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (4月 2.4%、予想 2.6%)
18:00 (欧) 5月 コアHICP 前年同月比 (4月 2.7%、予想 2.8%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(4月26日-5月29日)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.5%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCE(個人消費支出) 前月比 (3月 0.8%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) 4月 コアPCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 コアPCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 2.8%、予想 2.8%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 37.9、予想 40.4)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る