ドル円見通し 米長期債利回り3連騰、ドル円も米4月CPI発表後の下落を解消(24/5/21)

156円台に乗せて21日早朝には156.30円まで高値を伸ばし、21日午前序盤にかけて156円台を維持している。

ドル円見通し 米長期債利回り3連騰、ドル円も米4月CPI発表後の下落を解消(24/5/21)

ドル円見通し 米長期債利回り3連騰、ドル円も米4月CPI発表後の下落を解消

〇ドル円、5/20の日中は156円手前での小動きだったが、夜に156円台に乗せる
〇5/21早朝には156.30まで高値を伸ばし、午前序盤にかけて156円台を維持
〇5/20に国内10年債流通利回りは0.975%つける、2013年5月以来振り高水準に達する
〇FRB高官らの利下げ判断先送り姿勢続く
〇米10年債・30年債・2年債利回り、いずれも3連騰、NYダウは下落したがナスダックは史上最高値更新
〇155.70を上回るうちは5/14夜高値156.75を試し、高値更新からは157円台前半への上昇を想定する
〇155.70割れからは、155.50試しとする

【概況】

ドル円は5月14日夜の米4月CPIが鈍化したことによる米長期債利回り大幅低下とドル売りにより5月16日午前安値153.60円へ下落したところから反騰入りして17日には155.97円を付けて156円に迫っていた。20日の日中は国内10年債利回りが11年振り高水準へ上昇したことで上値が重く156円手前での小動きだったが、20日夜はFRB高官らによる利下げ判断先送り姿勢で米10年債利回りが3連騰となり米CPI発表後の低下幅を解消したためにドル買い優勢となったために156円台に乗せて21日早朝には156.30円まで高値を伸ばし、21日午前序盤にかけて156円台を維持している。

4月29日高値160.16円から二度の市場介入により5月3日安値151.85円まで大幅下落した後は当面の円買い一巡としてリバウンドに入った。5月16日の反落に対しても大半を解消したため、5月14日夜高値156.75円を超える場合には5月3日夜安値を起点とした上昇が二段目に入ることで5月2日早朝の市場介入前高値157.58円、4月29日高値160.16円を順次目指して行く可能性も出てくるところであり、そうした流れへ進むことを拒絶するように三度目の市場介入を行うのか政府・日銀の介入姿勢が試される。
5月21日は 日銀「金融政策の多角的レビュー」第2回ワークショップがある。 米国の主要指標発表はないが、ウォラーFRB理事やウィリアムズNY連銀総裁、バーFRB副議長等の発言予定がある。

【国内10年債利回り0.975%つけ11年振り高水準に】

5月20日の本邦債券市場では、長期金利指標の10年債流通利回りが0.975%をつけて2013年5月以来11年振りの高水準に達した。
日銀がマイナス金利を解除して17年振り利上げに踏み切り、長期国債の買い入れについても変更が取り沙汰されたが、市場は日銀の国債買い入れ減額を想定して債券売り・利回り上昇反応を見せている。5月9日の4月会合における「主な意見」では月額6兆円程度とされてきた買い入れ額の見直しが検討されていることが示され、5月13日の公開市場操作では国債(償還期間5年超から10年以下)買い入れが従来よりも500億円減少して4250億円となったこともあり、6月会合ではより具体的に国債買い入れ減額が示されるのではないかと市場は受け止めている。
それでもまだ1%以下であり、日米金利差を云々するレベルではなくドル円の反応も限定的だが、仮に三度目の市場介入でドル円の戻り売りが助長されて日銀関係者からのリーク報道で金融政策正常化がさらに進む姿勢が強調されればドル円が反落するきっかけとなりえると注目したい。

【FRB高官らの利下げ判断先送り姿勢続く】

5月14日にパウエルFRB議長が「インフレ鈍化見通しについては以前よりも確信が低下した、確信が持てるまで時間がかかる」旨を述べ、5月17日にはFRBのボウマン理事はインフレ再燃なら「利上げをためらわない」と述べるなど、FRB高官による利下げ判断の下方修正的な動きが続いている。
5月20日にクリーブランド連銀のメスター総裁は「現行の金融政策スタンスは景気抑制的」とし、「基本シナリオは依然としてインフレの一段の鈍化を予想している」としたものの次回FOMCではこれまでの年3回利下げ想定が適切ではないと考えているとし、「指標次第で利下げ、据え置き、利上げのどのリスクにも対応できる良い位置にある」と述べた。

ジェファーソンFRB副議長は20日に「インフレ率が目標の2%へ低下するとの一段の確信が得られるまで利下げが適切とは考えない」と述べ、4月のコアPCE(個人消費支出)デフレーターについてのFRBスタッフによる推定は前年同月比2.75%で3月とほぼ変わらないとし、1〜4月期では年率換算で4.1%と推計しているとした。
バーFRB副議長も「インフレ鈍化の進展が1〜3月期に見られなかった」、「利下げ判断を支援するような確信をもたらさなかった」と述べて利下げへの慎重姿勢を示した。
5月22日に公開されるFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨(4月30日〜5月1日開催分)での議論内容に注目が集まる。

【米10年債利回りは3連騰、ナスダックは史上最高値更新】

5月20日の米長期債利回りはFRB高官のタカ派的発言が相次いだことで総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.03%高の4.45%となり、5月16日につけた4.31%以降の高値を更新して5月15日の米CPI発表からの低下幅を解消した。30年債利回りも前日比0.03%上昇の4.59%として5月16日に付けた4.47%以降の高値を更新して5月15日の低下幅を解消した。2年債利回りも前日比0.02%上昇の4.85%として5月15日の低下幅を解消して5月16日に付けた4.71%以降の高値を更新した。いずれも3連騰の上昇で上昇再開を伺う位置に付けている。
一方でNYダウは先週末に史上最高値を更新した後の利益確定売りに圧されて前日比196.82ドル安と下落したが、ナスダック総合指数は米長期債利回り上昇による圧迫感を超えて108.90ポイント高と上昇して史上最高値を更新している。米国の利下げ開始が遅れても米国経済は堅調を保ってソフトランディングし、先行きの金融緩和期入りで上昇基調を続けるとの楽観が優勢のようだ。
米長期債利回り上昇と米国株高はドル円を共に押し上げやすい。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は5月10日午前安値155.23円を起点とした上昇が14日夜高値156.75円でピークとなり下落期に入ったとして安値形成期を16日午前から17日午前にかけての間と想定し、155円台回復からはいったん戻しに入るとしていたが、16日夜に155円を超えたために17日午前時点では16日午前安値を起点とした上昇期入りとして17日夜から21日夜にかけての間への上昇を想定した。
21日午前へ続伸しているためまだ高値試しを続けやすいとみるが、5月14日夜高値156.75円手前では売られやすいと注意し、155.50円割れからは戻り一巡による下落期入りとして21日の日中から23日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月20日夜の一段高で遅行スパンが再び好転して先行スパンを上抜いた状況も維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、遅行スパンが悪化するところからは下落再開とみて安値試し優先とし、先行スパンへ潜り込むところからはその下限を試しに向かう流れとし、先行スパンから転落する場合は下落が長引いてゆくと考える。

60分足の相対力指数は5月20日夜の上昇で70ポイント台へ到達し、その後も70ポイントを挟んで高止まりしているため80ポイント台への上昇余地ありとするが、60ポイント割れからは反落期入りを警戒して50ポイント試しとし、50ポイント割れからは下落継続とみて30ポイント台への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、155.70円を下値支持線、5月14日夜高値156.75円を上値抵抗線とする。
(2)155.70円を上回るうちは5月14日夜高値156.75円を試し、高値更新からは157円台前半への上昇を想定する。157円前後は反落警戒とするが、市場介入なく続伸する場合は158円を目指す上昇を想定する。
(3)155.70円割れからは155.50円試しとする。155.50円前後は買われやすいとみるが、155.50円割れから続落の場合は154円台への下落を想定する。

【当面の予定】

5/21(火)
13:30 (日) 日銀「金融政策の多角的レビュー」第2回ワークショップ
15:00 (独) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 0.2%、予想 0.3%)
17:00 (欧) 3月 経常収支・季調済 (2月 295億ユーロ ―)
17:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、イベント出席
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調済 (2月 179億ユーロ、予想 200億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調前 (2月 236億ユーロ )
22:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、挨拶
22:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
22:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、挨拶
22:10 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、挨拶
24:45 (米) バーFRB副議長、討論会
26:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演

5/22(水)
休場 シンガポール
08:00 (米) ボストン連銀総裁、クリーブランド連銀総裁、アトランタ連銀総裁、討論会
08:50 (日) 4月 通関貿易収支・季調前 (3月 3665億、予想 -1030億円)
08:50 (日) 4月 通関貿易収支・季調済 (3月 -7015億円)
08:50 (日) 3月 機械受注 前月比 (2月 7.7%)
08:50 (日) 3月 機械受注 前年同月比 (2月 -1.8%)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.6%)
15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 3.2%)
15:00 (英) 4月 コアCPI 前年同月比 (3月 4.2%)
15:00 (英) 4月 RPI(小売物価指数)前年同月比 (3月 4.3%)

22:40 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、挨拶
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数・年率換算 (3月 419万件、予想 416万件)
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数 前月比 (3月 -4.3%、予想 -0.7%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC議事要旨・4月30日-5月1日分



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