ドル円見通し 米CPI通過後のドル売り一巡で153円台中盤から反騰
〇ドル円、5/16午前153.60まで一段安したが、当面のドル売り一巡で買い戻され夜には155.52へ戻す
〇その後も155円台を維持、米長期債利回りの反発などによるドル安の一巡感でドル円も戻した印象
〇5/3安値151.85割れ回避からV字反発、5/14夜高値156.75超えへ挑戦する可能性も
〇昨日発表の米経済指標はまちまちの結果、FRB高官らの利下げ開始に対する慎重姿勢は継続
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウとナスダックは史上最高値更新後に反落
〇154.50を上回るうちは上昇余地あり、156円超えから続伸の場合156円台中盤へ上値目途を引き上げる
〇154.50割れからは下落再開を疑い154.00、5/16午前安値153.60を順次試してゆくとみる
〇中勢としては、156.75超えから157円台前半への上昇、153.60割れから151.85割れへ向かうと考える
【概況】
ドル円は5月15日夜発表の米4月CPIが鈍化したことや4月小売売上高が前月から悪化したことによる米長期債利回りの大幅低下により155円を割り込み、16日午前には153.60円まで一段安したが、当面のドル売り一巡で買い戻されて16日夜には155.52円へ戻し、その後も155円台を維持している。
5月16日夜の米新規失業保険申請件数が改善して輸入物価指数の伸びが凡そ2年振りの上昇率となったことで米長期債利回りが反発してユーロ等が下落したことによるドル安の一巡感でドル円も戻した印象だ。
【5月3日安値割れ回避からV字反発】
4月29日高値160.16円から5月3日夜安値151.85円まで8.31円の大幅下落となり、その後の揺れ返し型の上昇で半値戻しの156円を超えて5月14日夜に156.75円まで高値を伸ばし、この間の戻り幅は4.90円となったが、16日午前安値153.60円まで3.15円の下落幅となり5月3日からの戻り幅の凡そ3分の2を削った。
16日夜高値への反騰で直前の下げ幅に対して6割を戻すV字反騰となり、5月3日夜安値から底上げをして切り返したことにより5月14日夜高値超えへ挑戦する可能性を示しているが、戻り高値が切り下がって16日午前安値を割り込む場合は円高期に入る可能性が優勢となりかねないところだ。
【米経済指標はまちまち、FRB高官は利下げ開始への慎重姿勢を繰り返す】
5月16日にFRBが発表した4月鉱工業生産指数は前月と変わらずの102.8となり、前月比は市場予想の0.1%を下回り、3月分は速報の0.4%上昇から0.1%上昇へ下方修正された。製造業は前月比0.3%低下、設備稼働率は78.4%で3月の78.5%を下回った。
米労働省による新規失業保険申請件数は5月11日までの週間で前週比1万件減の22万2000件となり3週ぶりに改善した。失業保険受給者総数は5月4日までの週間で179万4000人となり前週から1万3000人増加した。
米フィラデルフィア連銀による5月製造業景況指数は4.5となり4月の15.5から大幅に低下して市場予想の8.0を下回った。支払価格は4月の23.0から18.7へ低下したが受取価格は5.5から6.6へ上昇し、雇用はマイナス10.7からマイナス7.9へ改善、6か月見通しは34.3から32.4へ低下した。
4月の米住宅着工件数(年換算)は136.0万件で3月の128.7万件を上回ったが市場予想の142万件を下回り、先行指標の着工許可件数は144万件で3月の148.5万件から低下して市場予想の148万件を下回った。
米FRB高官らの利下げ開始に対する慎重姿勢は続いている。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は16日に「CPIの鈍化については全体的な傾向としてかなり良い」としたもののすぐに利下げするには十分ではないとし、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「政策金利を現行水準でより長期に暫くは維持する必要がある」と強調した。リッチモンド連銀のバーキン総裁もインフレ率が持続的
に目標の2%に向かう「正しい道にある」としたものの「若干時間がかかる」、「問題はどれくらい長く金利を維持しなければならないかだ」と述べて暫く現状維持が続くとの見方を示した。
クリーブランド連銀のメスター総裁は「インフレ鈍化の確信が得られるまで政策金利を据え置き続けるのが賢明」、「最近の指標はインフレ鈍化への確信をもたらすものではなく、さらにデータを集める必要がある」と慎重姿勢を示した。
【米長期債利回りは総じて反発、ダウとナスダックは史上最高値更新後に反落】
5月16日の米長期債利回りは前日の大幅低下の反動により総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは5月15日に前日比0.10%低下の4.34%となり、4月25日に付けたこの間のピークである4.74%以降の最低を更新し、16日は4.31%まで続落してから持ち直して前日比0.04%上昇の4.38%とした。30年債利回りは15日に前日比0.09%低下の4.50%となり4月25日に付けた4.85%以降の最低を更新し、16日は4.47%まで低下してから持ち直して前日比0.01%上昇の4.51%とした。2年債利回りは15日に前日比0.09%低下の4.73%となり4月30日に付けた5.05%以降の最低を更新し、16日は4.71%までさらに低下したところから戻して前日比0.07%高の4.80%とした。いずれも前日の低下幅解消には至らず、4月後半からの低下基調の範囲にある。
一方でNYダウは5月16日に40051.05ドルを付けて初めて4万ドルに到達して史上最高値を更新したがその後の反落で前日比38.62ドル安の39869.39ドルに終わった。ナスダック総合指数も16797.83まで史上最高値を更新してからの反落で前日比44.07ポイント安に終わった。いずれも9月利下げ開始期待による楽観的な先高感により3月21日高値を超えて一段高に入っており、当分は株高基調が続きそうだ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は5月10日午前安値155.23円を起点とした上昇が14日夜高値156.75円でピークとなり下落期に入ったとして安値形成期を16日午前から17日午前にかけての間と想定し、155円台回復からはいったん戻しに入るとしたが、16日よるに155円を超えたため16日午前安値を起点として上昇期に入ったとみて17日夜から21日夜にかけての間への上昇を想定する。ただし戻りは短命の可能性もあるので154.50円割れからは下落再開を疑い5月16日午前安値153.60円試しを想定する。
60分足の一目均衡表では5月16日午前安値からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンを突破しつつあるため遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、遅行スパンが再び悪化するところからは下落再開とみて安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は5月15日夜の急落から16日午前への一段安に際して指数のボトムがほぼフラットとなる強気逆行型を示して16日よるに60ポイント台へ反騰したため、50ポイントを上回るか一時的に割り込んでも回復する内は70ポイント台への上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下落再開とみて20ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、154.50円を下値支持線、156.00円を上値抵抗線とする。
(2)154.50円を上回るうちは上昇余地ありとみる。156円前後では売られやすいと注意するが、156円超えから続伸の場合は156円台中盤(156.35円から156.65円)へ上値目途を引き上げる。
(3)154.50円割れからは下落再開を疑い154. 00円、5月16日午前安値153.60円を順次試してゆくとみる。
(4)中勢としては、5月14日夜高値156.75円超えから157円台前半への上昇を想定し、16日午前安値割れからは5月3日夜安値151.85円割れへ向かう流れと考える。
【当面の予定】
5/17(金)
休場 ノルウェー
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 3.1%、予想 3.7%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 4.5%、予想 5.5%)
18:00 (欧) 4月 HICP(調和消費者物価指数)改定値 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.4%)
18:00 (欧) 4月 コアHICP(食品エネルギー等除く)改定値 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.7%)
23:00 (米) 4月 コンファレンスボード 景気先行指数 前月比 (3月 -0.3%、予想 -0.3%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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