ドル円見通し GW中の急落に対する半値戻し156円を超える
〇ドル円、5/14未明156.24へ上昇、4/29高値から5/3安値までの半値戻し超える、その後も156円台維持
〇イエレン米財務長官、為替介入について言及、過度の介入をけん制するものと市場は受け止める
〇NY連銀の1年先期待インフレ率は予想を上回る、上昇再開の懸念を残す状況にあるとの印象与える
〇米長期債利回りは米PPIとCPI発表を控え小動き、NYダウは9日ぶり反落
〇156円台を維持する内は一段高余地ありとし、156.65超えからは157円前後への上昇を想定する
〇155.80割れからは、5/10午前安値155.23から155.00にかけての水準を試す下落を想定する
【概況】
ドル円は二度の覆面介入とみられる急落を挟み4月29日高値160.16円から5月3日夜安値151.85円まで急落してこの間の下げ幅は8.31円となったが、米雇用統計後は当面のドル売り円買いイベント通過として買い戻し優勢となり、5月9日夜に155.94円へ上昇してから10日午前に155.23円まで反落したところを買われて13日午前に155.95円へ高値を切り上げた後も156円手前の水準を維持していた。
13日は日銀が国債買い入れオペを減額したことによる国内10年債利回りの上昇により上値が抑えられたものの、13日夜発表のNY連銀4月消費者調査における1年先期待インフレ率が予想を超える上昇となったことやジェファーソンFRB副議長による早期利下げに対する否定的発言やイエレン米財務長官による為替介入への言及等により14日未明には156.24円へ上昇し、その後も156円台を維持している。
4月29日からの下げ幅に対する半値戻しが156.00円であり、市場介入への警戒感は日々強まっているもののイエレン財務長官発言により介入しづらくなったのではないかとの見方もあり、156円台中盤で介入がみられなければ157円や3分の2戻し157.39円等を目指す可能性も出てくるところだが、今夜は米4月PPI、明日夜は米4月CPIの発表があり、それらを通過して円安が加速する可能性もあるところと注意したい。
【イエレン米財務長官の市場介入への言及】
イエレン米財務長官は5月13日に為替介入については政策の根本的な変化がなければ必ずしも機能するとは限らないとし、介入実施は極めてまれにとどめるべきだと述べた。同長官はG7等主要国においては「過度な相場変動があった場合に介入は可能だ」としたものの「為替レートを市場の決定に委ねるべきだ」とし、「介入は極めてまれで貿易相手国に連絡して行われるべきだ」と述べた。また注目しているレートとして「ユーロや円、人民元といった主要通貨に対するドル」とした。4月29日と5月2日の政府・日銀による市場介入を容認しつつも過度の介入をけん制するものと市場は受け止めている。
【NY連銀の1年先期待インフレ率、予想を上回る】
5月13日にニューヨーク連銀が発表した4月消費者調査における期待インフレ率は1年先が3.26%となり3月の3.00%から上昇して市場予想の3.1%を上回った。3年先は2.76%なり1月以来3か月振りに低下した。
同銀調査の1年先期待インフレ率は2022年6月の6.8%をピークに低下傾向に入り、昨年12月に3.0%まで低下した後も横ばい推移だったが今回調査で跳ね上がった。3年先期待インフレ率が低下したことは先行きのインフレ鈍化を期待させるものだが、当面はインフレ低下が鈍り高止まりから上昇再開の懸念を残す状況にあるとの印象を与えた。先週発表されたミシガン大消費者調査における1年先期待インフレ率は4月の3.2%から3.5%へ上昇し、5年先も3.0%から3.1%へ上昇している。
FRBのジェファーソン副議長は5月13日に「インフレ率が目標の2%へ下がることを示す証拠がさらに得られるまで政策金利を据え置くことが適切」と述べている。前回FOMC以降、FRB高官や地区連銀総裁らの発言は年内利下げの可能性を示しつつもその判断にはまだ暫く時間がかかるとの慎重姿勢であり、タカ派は年内の利下げが見送られる可能性も指摘している。
今週の米PPIとCPIが顕著に低下すれば9月FOMCでの利下げ開始期待度が高まるものの予想に反して上ぶれする場合は年内1回の利下げがあるかどうかというところまで期待度が低下する可能性がある。
【米長期債利回りは小動き、ダウは9日ぶり反落】
5月13日の米長期債利回りは5月14日の米PPIと15日の米CPI発表が近づいているため慎重な小動きに留まった。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.01%低下の4.49%、30年債利回りは同0.01%低下の4.63%、2年債利回りは先週末と変わらず4.87%だった。10年債利回りは4月25日の4.74%をピークに低下に転じて5月7日に一時4.42%をつけたが、その後は下げ渋り型の持ち合いで推移している。
一方で先週末まで8連騰してきたNYダウは前日比81.33ドル安となり9日ぶりに反落したが、ナスダック総合指数は47.37ポイント高と上昇した。ダウとナスダックはともに3月21日に史上最高値を付けてから下落したが4後半から反騰入りして最高値に迫った状況にある。今週の米CPI等をきっかけとして9月利下げ期待度が高まれば一段高もあり得るところだが、株高がリスクオン優勢の市場心理を助長すればクロス円全般の上昇に寄与することも考えられる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は5月10日午前安値155.23円へ小反落したところから156円台序盤へ上昇している。5月9日夜高値を基準として目先の高値形成期は14日夜から16日夜にかけての間と想定されるので、米PPIやCPIを強気で通過すれば16日にかけて一段高へ進む可能性があると思われるが、それらを弱気で通過しながら5月10日午前安値を割り込む場合は5月3日夜からの上昇一巡による下落期入りとみて15日午前から17日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月14日未明への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上回った状況も維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンからの転落を回避する内は遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月14日未明への上昇で70ポイント台に到達し、その後も60ポイント台後半を維持しているので80ポイント超へ上昇する可能性があるとみる。ただし、60ポイント割れからは50ポイント前後への低下を想定し、50ポイント割れから反騰する場合は上昇継続とするが、50ポイント割れから続落に入る場合は上昇一巡により30ポイント台への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、155.80円を下値支持線、156.65円を上値抵抗線とする。
(2)156円台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は一段高余地ありとし、156.65円超えからは157円前後への上昇を想定する。157円前後は反落警戒とするが、156円台を維持しての推移なら15日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)155.80円割れからは5月10日午前安値155.23円から155.00円にかけての水準を試す下落を想定する。155.23円割れを回避して156円台へ切り返す場合は上昇継続とするが、155.23円を割り込んでからも155.50円以下での推移なら15日も安値試しを続けやすいとみる。
【当面の予定】
5/14(火)
休場 イスラエル
OPEC月報
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (3月 2.2%、予想 2.2%)
15:00 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 4.2%、予想 4.3%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感 (4月 42.9、予想 46.0)
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 2.1%、予想 2.2%)
21:30 (米) 4月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (3月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.4%)
23:00 (米) パウエルFRB議長、講演
5/15(水)
休場 香港、韓国
10:30 (豪) 1-3月期 賃金指数 前期比 (10-12月 0.9%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.8%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -6.4%、予想 -1.8%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 3.5%、予想 3.4%)
21:30 (米) 4月 コアCPI(食品、エネルギー除く) 前月比 (3月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 コアCPI(食品、エネルギー除く) 前年同月比 (3月 3.8%、予想 3.6%)
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.7%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 1.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (4月 -14.3、予想 -10.0)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.4%、予想 0.0%)
23:00 (米) 5月 NAHB住宅市場指数 (4月 51、予想 51)
23:05 (英) バーナンキFRB元議長、英議会財務委員会証言
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、座談会
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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