先週末からのリバウンド続くが追加介入警戒感で動きは慎重
〇ドル円、当面のドル売り円買い一巡感で買い戻し優勢、5/8午前序盤154.80台へ続伸
〇ユーロ・ポンドの上昇が下落に転じ、ドル高感がややぶり返したことでジリ高でのリバウンド続く
〇5/7、植田総裁と岸田首相が会談。円安けん制を目的とした会談と市場受け止めるが反応は鈍い
〇ミネアポリス連銀総裁、年内利下げ見送る可能性に言及。米長期債利回り一時上昇するも低下に終わる
〇市場は9月利下げ開始、年内2回利下げの楽観が優勢
〇5/3夜安値からの戻り幅凡そ3円、戻り一巡から下落再開しやすい局面と注意
〇弱い米雇用統計や米10年債利回り5営業日連続低下も円高に振れやすいところ
〇154円台を維持するうちは上昇余地あり。155.50以上は反落警戒
〇153.80割れから戻り一巡による下落期入りとみて153円前後への下落想定。153円前後は買われやすい
【概況】
ドル円は4月29日高値160.16円を起点として二度の大規模覆面介入とみられる急落と5月3日夜の米雇用統計が弱かったことによる米長期債利回り低下を見て151.85円へ下落してこの間の下げ幅は8.31円となったが、その後は当面のドル売り円買い一巡感で買い戻し優勢となり、6日に154.00円まで戻してから153.39円まで下げたところを押し目買いされて7日午後に154.64円へ上昇し、8日午前序盤には154.80円台へ続伸している。
5月7日は日銀の植田総裁と岸田首相が会談して円安けん制の連携姿勢を示したものの反応は鈍く、米10年債利回りが9月利下げ開始期待を優勢とみて5営業日連続低下したもののミネアポリス連銀総裁が年内利下げを見送る可能性に言及したこと、4月後半から続いていたユーロやポンドの上昇が5月3日夜を境に下落に転じてドル高感がややぶり返したことによりドル円はジリ高でのリバウンドを続けた印象だ。
しかし4月29日の祝日取引での5兆円規模の覆面介入(直前高値160.16円から154.50円まで5.66円の下落幅)、5月2日早朝に3兆円規模とされる二度目の覆面介入(5月1日高値157.98円から2日早朝安値153.01円へ4.97円の下落幅)で大幅下落したことによる不意打ち的な介入だったことの心理的影響が残り、追撃的な市場介入を続ける可能性も示唆されていることでリバウンドの値動きは慎重な印象だ。
米雇用統計が弱めだったことや米10年債利回りが5月1日から5営業日連続低下していることも円高に振れやすい状況のため、4月29日の介入時安値154.50円から5月1日高値157.98円まで3.48円の戻りを入れてから一段安したパターンを再現する可能性も警戒される局面と思われる。
【日銀総裁と首相会談で円安けん制姿勢】
5月7日に日銀の植田総裁と岸田首相が首相官邸で会談した。3月の日銀金融政策決定会合後の3月19日にマイナス金利等を解除した政策変更を説明して以来だが、最近の円安と市場介入を踏まえて円安けん制を目的とした会談と市場は受け止めている。
植田総裁は「最近の円安について日銀の政策運営上、十分に注視することを確認した」とし、「基調的な物価上昇率にどういう影響が出てくるか注意深く見ていく」、「政府と日銀が密接に連携を図り政策運営に努めていく点を確認した」と述べた。円安が継続して物価上昇への影響が顕著となれば日銀の政策修正=追加利上げや量的緩和政策における国債大量購入の縮小等を検討する姿勢を示したものと思われる。
【ミネアポリス連銀総裁、年内利下げ見送りの可能性に言及】
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は5月7日に6月FOMCでは自身の年内利下げ想定回数を3月の2回から1回ないしゼロとする可能性もあると述べた。同総裁は3月FOMCにおいて年内2回利下げを想定したが、今後のインフレ指標は定かではないとし、「2回の想定を維持するかもしれないし、1回もしくはゼロとする可能性もある」と述べた。ゼロ回もあり得るとされたことで利下げ先延ばし感が強まったものの、債券・株式市場は9月利下げ開始、年内2回の利下げはあり得るとの楽観が優勢のようでNYダウが連騰、米10年債利回りは5月1日からの低下を続けている。
当面する米国のインフレ指標は5月14日のPPI(生産者物価指数)、15日のCPI(消費者物価指数)となる。
【米10年債利回りは5営業日連続低下、ダウは5連騰】
5月7日の米長期債利回りは米経済指標がなく手掛かりに欠け、ミネアポリス連銀総裁が年内利下げ無しに言及したことで一時上昇する場面も見られたものの総じて低下に終わった。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.49%へ上昇したものの前日比0.03%低下の4.46%で終了し、5月1日から5営業日連続低下となり4月25日に付けた直近のピークである4.74%以降の最低を更新した。
30年債利回りは前日比0.04%低下の4.60%となり、5月1日から5営業日連続低下して4月25日につけた直近のピークである4.85%以降の最低とした。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは5月1日から3日へ3営業日続落した後の5月6日に前日比0.02%上昇と下げ渋ったが7日は前日比0.01%低下の4.83%と再び低下した。
一方でNYダウは米長期債利回り低下を好感して前日比31.99ドル高と上昇して5営業日続伸したが、ナスダック総合指数は16.69ポイント安と小反落に終わった。ナスダックは年内利下げ期待が優勢ではあるが利下げ先送り感もあり史上最高値更新へ進むには時期尚早として上値が重くなった印象だ。S&P500指数も4連騰したが6.96ポイント高の小幅上昇にとどまっている。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は5月3日夜安値151.85円からリバウンドに入ったとして目先の高値形成期を7日午前から8日午後にかけての間と想定した。8日午前序盤へ続伸しているのでまだ上昇途中とみるが、3日夜安値からの戻り幅も凡そ3円となり戻り一巡から下落再開しやすい局面と注意し、153.80円割れからは下落期入りとして8日夜から10日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月3日夜安値からの反発により遅行スパンが好転して7日午後への続伸で先行スパンを上抜いた。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下落再開とみて先行スパン下限を試すとみる。
60分足の相対力指数は5月7日午後から8日午前にかけて相場が高値を切り上げているものの指数のピークが切り下がり気味のフラットな動きに留まる弱気逆行気配がみられるので、50ポイント以上を維持する内は上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下落再開とみて30ポイント前後への低下へ進むと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、153.80円を下値支持線、155.00円を上値抵抗線とする。
(2)154円台を維持するうちは上昇余地ありとみる。155円前後は売られやすいとみるが、155円超えから続伸の場合は155.50円前後へ上値目途を引き上げる。155.50円以上は反落警戒とし、直前高値から1円を超える反落発生から下げ再開とみる。
(3)153.80円割れからは戻り一巡による下落期入りとみて153円前後への下落を想定する。153円前後は買われやすいとみるが、三度目の市場介入ないし介入警戒感による売りの連鎖で急落する場合は5月3日安値151.85円割れを試す下落規模となる可能性もあると注意する。
【当面の予定】
5/8(水)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 2.1%、予想 -0.6%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -4.9%、予想 -3.6%)
17:30 (日) 植田日銀総裁、都内で講演
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 2.3%、予想 0.8%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (米) ジェファーソンFRB副議長、講演
24:45 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札(420億ドル)
26:30 (米) クックFRB理事、講演
5/9(木)
休場 ノルウェー、スイス、インドネシア、ロシア
未 定 (中) 4月 貿易収支・米ドル建て (3月 585.5億ドル、予想 813.5億ドル)
08:30 (日) 3月 毎月勤労統計・現金給与総額 前年同月比 (2月 1.8%、予想 1.4%)
08:50 (日) 4月 外貨準備高 (3月 1兆2906億ドル)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合・主な意見(4月25-26日分)
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI速報値 (2月 111.8、予想 111.1)
14:00 (日) 3月 景気一致指数CI速報値 (2月 111.6、予想 114.0)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.25%)
20:30 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
21:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.8万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 177.4万人、予想 178.5万人)
26:00 (米) 財務省30年債入札(250億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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