ドル円見通し 米雇用統計後の152円割れから反発、市場介入の繰り返しを警戒しつつ戻りを試す(24/5/7)

5月6日午後に154円をつけ、6日夜に153.39円まで小反落したところも買われて7日午前序盤には154.20円台へ戻り高値を切り上げている。

ドル円見通し 米雇用統計後の152円割れから反発、市場介入の繰り返しを警戒しつつ戻りを試す(24/5/7)

米雇用統計後の152円割れから反発、市場介入の繰り返しを警戒しつつ戻りを試す

〇ドル円、5/3夜の米雇用統計発表直後151.85まで下落したが、その後は売り一巡感で買い戻される
〇一連の重要イベント通過、覆面介入による急落がやや落ち着き、5/6午後154円をつける
〇5/6夜に153.39まで小反落したところも買われ、5/7午前序盤に154.20台へ戻り高値を切り上げる
〇ドル円は今のところ、昨年12/28安値140.24と3/11安値146.46を結んだ上昇トレンドを継続
〇米雇用統計とISMサービス業景況指数は低調な結果、米国の9月利下げの見方が強まったか
〇米10年債利回りは4営業日連続低下、NYダウ・ナスダックは連騰
〇153.39を上回るうちは上昇余地ありとし、154.50超えからは155円前後への上昇を想定する
〇153.39割れからは戻り一巡による下落期入りを疑い、153.00、152.50を順次試す下落を想定する

【概況】

ドル円は4月29日午前に160.16円を付けて1990年4月2日高値160.36円以来34年振りに160円台へ到達したところで5兆円規模と推定される覆面の市場介入で29日夕刻に154.50円へ急落し、狼狽売り一巡による買い戻しで5月1日に157.98円まで戻したものの5月2日早朝にFOMC後に下落し始めたところで3兆円規模と推定される二度目の覆面介入により153.01円まで一段安した。5月2日午前に156.27円まで戻したところを再び売られて5月3日夜の米雇用統計発表直後に米長期債利回りが低下したことで151.85円まで安値を切り下げたがその後は当面の売り一巡感で買い戻されている。
4月26日の日銀金融政策決定会合、5月2日早朝の米FOMC、3日夜の米雇用統計等と続いた一連の重要イベントを通過し、二度の覆面介入による急落がやや落ち着いたことで5月6日午後に154円をつけ、6日夜に153.39円まで小反落したところも買われて7日午前序盤には154.20円台へ戻り高値を切り上げている。

【昨年は8円前後規模の下落を押し目に上昇トレンドを継続】

4月29日高値160.16円から5月3日夜安値151.85円までの下げ幅は8.31円となったが、昨年の3月24日への下落時(下げ幅8.28円)や7月14日への下落時(下げ幅7.82円)等と同程度の規模であり、今のところは2023年12月28日安値140.24円と2024年3月11日安値146.46円を結んだ上昇トレンドの下値支持線を維持している。
4月29日の市場介入規模は日銀の資金変動により5兆円と推定され、2022年9月22日の2.8兆円を超えて同年10月21日の5.6兆円に迫る規模だったとされる。5月2日は3兆円と推定されているが、高値更新を待たずに戻りを叩いていること、4月29日の祝日と5月2日早朝に介入したことで当局としてはいつでも介入できると市場を疑心暗鬼にさせており、160円到達により1990年4月高値に並ぶ水準まで上昇してからの急落だったため、当面の高値を出し切って下落期入りするきっかけとなった可能性もある。

5月3日夜安値151.85円を割り込んでこの間の安値を更新する場合は昨年12月以降の下値支持線からの転落となりテクニカル的に下落継続しやすくなるが、米国の9月利下げ開始期待で米長期債利回り低下が続く場合や、4月後半から上昇しているユーロやポンド、豪ドル等が一段高する場合にはドル円の下落規模がさらに拡大する可能性もある。
しかし、円安そのものはまだ続くとの見方も根強く、市場介入だけでは円安を制御できないとして再び160円を目指すのではないかとの声も聞かれる。2022年10月21日天井からの下落も、同年11月10日の米CPI大幅鈍化による「逆CPIショック」と退任が迫る黒田日銀による政策修正の動きが加わって円高に転換している。円高ドル安の根拠が強まるかどうか、米長期債利回り低下が続くのかによりドル円の方向も決まってくると思われる。

【米雇用統計とISMサービス業景況指数は低調】

5月3日に米労働省が発表した4月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比17万5000人増となり3月の31万5000人から伸びが減速して市場予想の24万3000人も下回った。2月分は速報から3万4000人下方修正されて23万6000人増となる一方で3月分は速報から1万2000人上方修正された。
失業率は横ばい予想に反して3.9%となり3月の3.8%から悪化した。インフレ指標である平均時給伸び率は前月比0.2%で3月の0.3%から鈍化して市場予想の0.3%を下回り、前年同月比も3.9%で3月の4.1%から鈍化して市場予想の4.0%を下回った。
労働市場は引き続き堅調だが過熱感は後退し、失業率の悪化と平均時給の伸びが鈍化したこと、5月1日に発表されたJOLTS求人件数が予想を大幅に下回ったことも含めて先延ばしされている米国の利下げが9月にも開始されるのではないかとの見方が強まったようで、9月利下げの期待度は雇用統計前の6割台前半から8割弱へ上昇し、年内利下げ回数の期待度も1回から2回に増えている。

5月3日に発表された米サプライ管理協会(ISM)による4月サービス業景況指数が3月の51.4から49.4へ悪化して市場予想の52.0への改善期待に反したことは、5月1日に発表されたISMの4月製造業景況指数が3月の50.3から49.2へ悪化し、4月30日に発表されたコンファレンス・ボードの消費者信頼感指数が3月の103.1から97.0へ悪化したことも含めて利下げ催促要因となった印象もある。

【米10年債利回りは4営業日連続低下、ダウは4連騰】

5月6日の米長期債利回りは手掛かりに欠けてまちまちの動きだった。
長期金利指標の10年債利回りは4月25日に4.74%をつけて昨年12月27日に付けた3.82%以降の最高としたところをピークとして低下に転じており、5月1日から3日までの3業日連続低下で3日終値は前日比0.07%低下の4.51%となり一時4.45%をつけた。6日は先週比0.02%低下と4営業日連続低下となり4.49%で終了した。
30年債利回りは昨年12月27日に付けた4.07%から4月25日に4.85%まで上昇したが、その後は低下に転じて5月1日から3日まで3営業日連続低下となり3日終値は前日比0.06%低下の4.67%となった。6日は先週末比0.03%低下の4.64%となり4営業日連続低下となった。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは1月12日に付けた4.12%から上昇期に入り4月30日に5.05%をつけたが、5月1日から3営業日連続低下となり3日終値は前日比0.06%低下の4.82%で一時は4.77%をつけた。6日は先週末比0.02%上昇の4.84%となり4営業日ぶりに小反発した。

米国の早期利下げ期待後退から年内の利下げが先延ばしされるとの懸念による米長期債利回り上昇が一巡している印象であり、ドル円にとっては市場介入が繰り返されることへの警戒感と日米金利差縮小により円高バイアスがかかりやすい状況と思われる。今週は四半期財務省長期債入札があり、市場が今後の利回り低下期待を優先して債券買い・利回り低下を招きやすいかもしれない。
一方で5月6日のNYダウは先週末比176.59ドル高と上昇して5月1日から4連騰とした。米国の景況感が悪化しているものの米国の9月利下げ開始期待が高まったことで3月21日の史上最高値からの修正安が一巡して再上昇を試している印象だ。ナスダック総合指数も5月6日を先週末比192.92ポイント高と上昇して5月2日から3連騰とし、高値で16350.08ポイントを付けて3月21日の史上最高値16538.86ポイントに迫ってきておりダウよりも積極的な買いがみられる。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は5月3日夜安値151.85円への一段安が落ち着いて買い戻されている。4月29日午後の覆面介入による急落時安値から4日半となる5月3日夜安値で目先の底を付けて戻りを試しているところと思われ、5月1日午後高値を基準として目先の高値形成期を7日午前から8日午後にかけての間とし、6日夜反落時安値153.39円を割り込まないうちは上昇余地ありとするが、153.39円割れからは戻り一巡による下落再開を疑い、153円割れからは下落期入りとして8日夜から10日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月3日夜安値からの反発により遅行スパンが好転して先行スパン上限に来ているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパン突破からは上昇が勢い付く可能性もあるとみる。ただし、遅行スパンが悪化するところからは下落再開とみて安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると警戒する。

60分足の相対力指数は5月3日早朝から3日夜にかけての一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられて反発に入り、7日午前には60ポイント台後半へ上昇しているので70ポイント台前半への上昇余地ありとみるが、次に50ポイントを割り込むところからは下落再開とみて30ポイント前後への低下へ進むと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月6日夜安値153.39円を下値支持線、154.50円を上値抵抗線とする。
(2)153.39円を上回るうちは上昇余地ありとし、154.50円超えからは155円前後への上昇を想定する。155円前後は反落警戒とするが、154円台を維持しての推移なら8日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)153.39円割れからは戻り一巡による下落期入りを疑い、153.00円、152.50円を順次試す下落を想定する。152.50円以下は買われやすいとみるが、下げ足が速まる場合は3日夜安値151.85円試しへ目先の下値目途を引き下げ、底割れからは150.0円前後へ向かう流れと考える。

【当面の予定】

5/7(火)
ロシア大統領就任式
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 4.35%、予想 4.35%)
15:00 (独) 3月 製造業新規受注 前月比 (2月 0.2%、予想 0.5%)
15:00 (独) 3月 製造業新規受注 前年同月比 (2月 -10.6%、予想 -0.7%)
15:00 (独) 3月 貿易収支 (2月 214億ユーロ、予想 224億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 小売売上高 前月比 (2月 -0.5%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 -0.7%、予想 -0.2%)
24:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会
26:00 (米) 財務省3年債入札(580億ドル)
28:00 (米) 3月 消費者信用残 前月比 (2月 141.3億ドル、予想 150.0億ドル)

5/8(水)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 2.1%、予想 -0.9%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -4.9%、予想 -3.5%)
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 2.3%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (米) ジェファーソンFRB副議長、講演
24:45 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札(420億ドル)
26:30 (米) クックFRB理事、講演



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