『ドル円は約34年ぶり高値圏へと急上昇。ユーロは年初来安値更新』
〇今週のドル円、米3月CPIの市場予想上回る結果等に週末にかけて、週間高値153.40まで急伸
〇ユーロドル、CPI後の米金利上昇とハト派なECB理事会の結果に週末にかけ1.0623へ急落
〇ドル円、約34年ぶり高値をつけ、主要テクニカルポイントの上で推移、買いシグナルもすべて点灯
〇ファンダメンタルズも米利下げ開始後ずれ観測、介入見送りの失望感等が重石に
〇来週は米3月小売売上高、本邦3月CPI、米FRB関係者発言等に注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):150.50ー155.00、(EURUSD):1.0500−1.0775
今週のレビュー(4/8−4/12)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初151.57で寄り付いた後、(1)前週末金曜日以降のドル買いの流れの継続(米雇用統計の力強い結果)や、(2)植田日銀総裁による「当面は緩和的な金融環境が継続すると考えている」とのハト派的な発言、(3)米3月消費者物価指数(結果+3.5%、予想+3.4%)および、米3月消費者物価コア指数(結果+3.8%、予想+3.7%)の市場予想を上回る結果、(4)上記3を背景とした米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米2年債利回りが昨年11/14以来の高水準となる5.00%へ急上昇。米10年債利回りが昨年11/14以来の高水準となる4.59%へ急上昇)、
(5)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り(RKO=リバースノックアウトオプションのトリガーヒットを切掛としたオプション勢による大型ストップBUY)、(6)米新規失業保険申請件数(結果21.1万件、予想21.5万件)の良好な結果、(7)日本政府・日銀が実弾介入に踏み切らなかったことに対する失望感が支援材料となり、週末にかけて、週間高値153.40(1990年6月以来、約34年ぶり高値圏)へと急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間4/13午前2時00分現在)では、153.06前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0843で寄り付いた後、(1)ドイツ2月鉱工業生産(結果▲4.9%、予想▲6.8%)の市場予想を上回る結果や、(2)ユーロ圏4月投資家信頼感指数(結果▲5.9、予想▲8.3)の市場予想を上回る結果、(3)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(4)欧州株の堅調推移が支援材料となり、翌4/9にかけて、週間高値1.0886まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)米3月消費者物価指数および米3月消費者物価コア指数の市場予想を上回る結果や、(6)上記5を背景とした米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米長期金利急上昇→米ドル買い)、(7)ECB理事会のハト派的な結果(ECB理事会は5会合連続で主要政策金利の据え置きを決定する一方、声明文に「インフレ見通し、基調的なインフレ動向、金融政策の伝達の強さに関する理事会の最新の評価が、インフレが持続的に目標に収斂しているとの確信をさらに強めるものであれば、現在の金融政策の制約レベルを下げることが適切になる(If the Governing Council’s updated assessment of the inflation outlook, the dynamics of underlying inflation and the strength of monetary policy transmission were to further increase its confidence that inflation is converging to the target in a sustained manner, it would be appropriate to reduce the current level of monetary policy restriction.)」とのハト派的な文言追加)、
(8)ラガルドECB総裁による「新たな検証によってインフレが目標に回帰しつつあるとの確信が強まれば金利を引き下げることが適切になる」とのハト派的な発言、(9)上記7、8を背景としたECBによる6月利下げ観測再燃、(10)中東情勢緊迫化(イランとイスラエル)に伴うリスク回避のドル買い圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0623(昨年11/23以来、約5カ月ぶり安値圏)へと急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間4/13午前2時00分現在)では、1.0642前後で推移しております。
来週の見通し(4/15−4/19)
<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は週末にかけて約34年ぶり高値153.40(1990年6月以来の高値圏)まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」の全てが成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(利下げ回数も従来予想されていた年3回から年2回へ減少)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は今週「当面は緩和的な金融環境が継続すると考えている」と発言→早期利下げ観測後退)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大→円キャリートレード再開)、(4)政府・日銀の実弾介入見送りに対する失望感(心理的節目152.00突破後にドル売り介入が入るとの見方が強かったが、神田財務官、鈴木財務相、林官房長官による口先介入に留り実弾介入は入らず→介入を見越してショートに振っていた投資家勢のストップBUYを誘発)、(5)中東情勢緊迫化(イラン・イスラエル問題)に伴う地政学的リスクのドル買い圧力など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は4/15に予定されている米3月小売売上高や、4/19に予定されている本邦の3月消費者物価指数に加えて、米当局者発言(ダラス連銀ローガン総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、ジェファーソンFRB副議長、クリーブランド連銀メスター総裁、ボウマンFRB理事、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁など)に注目が集まります。米3月小売売上高が堅調な結果を示す場合や、米当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ場合、本邦CPIが市場予想を下回る場合には、日米金利差拡大→円キャリートレード再開の経路で、ドル円にもう一段強い上昇圧力が加わるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。但し、日本政府・日銀による介入警戒感が燻っているため、過度なロングポジションも保有しづらく、上昇ペースは緩やかなものに留まりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):150.50ー155.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は3/8に記録した高値1.0982をトップに反落に転じると、週末にかけて、約5カ月ぶり安値となる1.0623まで急落しました。この間、日足ローソク足が全てのテクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲下限)を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「短期線と中長期線のデッドクロス」「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「ダウ理論の下落トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となっております。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(リセッション懸念)や、(2)近隣中銀(スイス中銀、英中銀、ノルウェー中銀、スウェーデン中銀)の相次ぐハト派化、(3)ECBによる早期利下げ観測再燃(今週開催されたECB理事会、ラガルドECB総裁記者会見は予想以上にハト派的な内容)、(4)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測、(5)上記3、4を背景とした欧米金融政策の方向性の違いなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は上記1を見極める目的で4/16に予定されているドイツ4月ZEW景況感指数に注目が集まる他、上記3を見極める目的で欧州当局者発言(レーンECB専務理事、フィンランド中銀レーン総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、クロアチア中銀ブイチッチ総裁、チポローネECB専務理事、スペイン中銀デコス総裁、シュナーベルECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ポルトガル中銀センテノ総裁、リトアニア中銀シムカス総裁など)に注目が集まります。ドイツ4月ZEW景況感指数が市場予想を下回る場合や、欧州当局者よりハト派的なコメントが発される場合には、ユーロドルにもう一段強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(心理的節目1.0500や、昨年安値1.0448に向けて下げ足を速めるシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500−1.0775
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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