ドル円見通し 153円台へ急伸後も徐々に高値を切り上げ市場介入姿勢を試す(24/4/12)

いったん152.79円まで下げたものの米長期債利回り上昇基調が続いたことで12日未明には153.31円まで高値を切り上げ、12日朝にかけて153円台を維持している。

ドル円見通し 153円台へ急伸後も徐々に高値を切り上げ市場介入姿勢を試す(24/4/12)

ドル円見通し 153円台へ急伸後も徐々に高値を切り上げ市場介入姿勢を試す

〇ドル円、4/11午前152.73へ小反落するも夕刻153.28へ上昇、米PPI上昇率のあと一旦152.79へ下げる
〇しかし米長期債利回りの上昇基調継続で4/12未明153.31まで高値を切り上げ、朝にかけて153円台維持
〇財務官や財務相による円安をけん制発言相次ぐも、実弾介入の気配見られず
〇ECBは政策金利据え置き決定、6月利下げの可能性
〇米PPI上昇率は前月比が予想を下回るも、前年同月比は2月から伸びが加速
〇米10年債・30年債利回りは連騰するも2年債利回りは急伸一服、NYダウは4日続落
〇152.73を上回るうちは一段高余地あり、153.31超えから153.50、153.70台を順次試す上昇を想定する
〇152.73割れからは下落期入りとして、152.50、152.30を順次試す下落を想定する

【概況】

ドル円は4月10日夜の米3月CPI上昇率が予想を上回ったことによる米長期債利回り急伸とドル全面高により直前の151.77円から152円の壁を超えて急伸し、4月11日早朝には153.22円まで高値を伸ばした。152円突破に際して市場介入はなく、11日午前に152.73円まで小反落してから夕刻に153.28円へ高値を切り上げ、11日夜の米PPI上昇率が予想を下回ったことでいったん152.79円まで下げたものの米長期債利回り上昇基調が続いたことで12日未明には153.31円まで高値を切り上げ、12日朝にかけて153円台を維持している。
ドル円が急伸した4月11日朝に神田財務官は「足元の動きは急だ」、「為替の過度な変動は国民経済に悪影響」、「あらゆる手段を排除せずに適切に対応を取っていく」と円安をけん制し、鈴木財務相も11日午前に「行き過ぎた動きに対してはあらゆるオプションを排除せず適切に対応していきたい」、「私と財務官の間では頻繁に連絡を取り合っている」と述べた。しかし実弾介入の気配は見られず、介入を匂わせるレートチェック等の動きも報じられていない。

米CPIの上ブレをきっかけにした米長期債利回り上昇による日米金利差拡大という円安ドル高の根拠があり投機的な円の独歩安ではないことと、岸田首相訪米中を考慮したという印象もある。円安を放置するわけにもいかず週末ないし週明けの実弾介入も警戒されるが、介入なければ155円、156円、、、160円と上値目途が切り上がってゆくことも考えられる。

【ECB、6月利下げか】

ECB(欧州中銀)は11日の理事会で5会合連続の政策金利据え置きを決定したが、インフレが持続的に目標に収斂する確信が強まるなら金融緩和が適切になるとしたため6月理事会での利下げ決定の可能性が意識されてユーロドルの一段安を誘った。
3月のユーロ圏消費者物価指数上昇率は3か月連続で低下して前年同月比2.4%となり、ラガルド総裁は「少数の理事会メンバーが4月会合での利下げを支持したが、大半は6月までに入手できる賃金交渉の結果などを見極めた上で確信を強める必要があるという意見であり、自身もそうした意見に賛同した」と述べた。

【米PPI上昇率は予想を下回るも前年比は2月から伸びが加速】

4月11日に発表された3月の米PPI(生産者物価指数)上昇率は全体の前月比が0.2%となり2月の0.6%から大幅に鈍化して市場予想の0.3%を下回ったが、前年同月比は2.1%で市場予想の2.2%を下回ったものの2月の1.6%から伸びが加速した。コア指数の上昇率は前月比0.2%で予想と一致して2月の0.3%を下回ったが、前年同月比は2.4%で予想の2.3%を上回り2月の2.1%から伸びが加速した。
全体の前月比と前年同月比が予想を下回ったことは10日発表の米CPI上昇率が予想を上回ったことによる利下げ開始先送り感をやや緩めたため、一部では7月会合での利下げ可能性を指摘する声も出ているが、コアPPIの伸びを踏まえれば利下げ開始は9月以降にずれ込むのではないかとの見方が優勢であり、米長期債利回りは前日から連騰している。

米労働省による新規失業保険申請件数は4月6日までの週間で前週比1万1000件減少の21万1000件となり市場予想の21万5000件を下回って2週ぶり改善となった。失業保険受給者総数は3月30日までの週間で181万7000人となり前週から2万8000人増加して市場予想の180万人を上回った。
ボストン連銀のコリンズ総裁は11日の講演で「インフレ率は平たんでないながらも持続的に2%の目標へ向かって低下し、年内の利下げ開始は適切と予想している」としたものの、最近の統計を踏まえれば今年想定されている金融緩和が減じる(利下げ回数は減る)可能性があるとし、引き締め過ぎのリスクは減じていると述べた。

【米10年債利回りは連騰するも2年債利回りは急伸一服】

長期金利指標の米10年債利回りは米CPI後に急伸して4月10日は前日比0.19%上昇の4.55%となったが、11日も一時4.51%まで低下する場面があったものの前日比0.04%上昇の4.59%となった。30年債利回りは10日の0.13%上昇から11日も0.05%上昇と連騰して4.68%となった。政策金利動向に敏感な2年債利回りは10日に0.23%上昇の4.98%となり1月12日に付けた4.12%以降の最高値を更新したが、11日は5.01%まで続伸してから上げ幅を削って前日比0.01%低下の4.97%に終わった。
一方でNYダウは前日比2.43ドル安と小幅な下げだったものの4月8日から4日続落となり3月21日の史上最高値からの下落が続いた。しかしナスダック総合指数は前日比271.84ポイント高と上昇して3月21日の取引時間中の史上最高値に迫り終値としては史上最高値を更新した。エヌビディア等半導体株が急伸したことで買われたようだ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は4月10日午前時点では4月8日と9日に付けた高値151.93円を超える場合は新たな上昇期入りとみて12日の日中から16日夕にかけての間への上昇を想定するとしていたが、4月10日夜に152円の壁を超えて急騰したために11日午前時点では9日深夜安値を起点とした上昇期入りとした。
4月12日未明へ高値を切り上げているのでまだ上昇余地ありとするが、市場介入への警戒感もあるため急落にも注意がいるところとし、11日午前の反落時安値152.73円を割り込む場合は下落期入りとして12日夜から16日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、4月10日夜からの急騰で遅行スパンが好転して先行スパンも大幅に上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を続けているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込み始める場合は下落期入りを疑い遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパン下限を試す下落を想定する。先行スパンから転落する場合は上昇一巡後の下落期として下げが長引く可能性があると注意する。

60分足の相対力指数は4月10日深夜から11日早朝への高値更新に際して指数のピークが90ポイントに迫ってから切り下がる弱気逆行がみられ、12日未明への高値更新でも指数のピークが切り下がっている。50ポイント以上を維持する内は70ポイント超えから80ポイントを目指す上昇となる可能性があるとみるが、50ポイント割れから続落の場合は下落期入りとして30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4月11日午前安値152.73円を下値支持線、4月12日未明高値153.31円を上値抵抗線とする。
(2)152.73円を上回るうちは一段高余地ありとし、153.31円超えからは153.50円、153.70円台を順次試す上昇を想定する。153.70円以上は反落注意とするが、152.73円を上回っての推移が続くなら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)152.73円割れからは下落期入りyとして152.50円、152.30円を順次試す下落を想定する。152.30円以下は買い戻されやすいとみるが、152.73円以下での推移なら週明けも安値試しへ進みやすいとみる。市場介入等で急落する場合は152円割れを試す可能性もあると注意する。

【当面の予定】

4/12(金)
休場 トルコ、インドネシア
未 定 (中) 3月 貿易収支・米ドル建て (2月 1251.6億ドル、予想 702.0億ドル)
13:30 (日) 2月 鉱工業生産・確報値 前月比 (1月 -0.1%)
13:30 (日) 2月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (1月 -3.4%)
13:30 (日) 2月 設備稼働率 前月比 (1月 -7.9%)
15:00 (独) 3月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.4%)
15:00 (独) 3月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.2%)
15:00 (英) 2月 月次GDP 前月比 (1月 0.2%、予想 0.1%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.2%。予想 0.0%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 0.5%、予想 0.6%)
15:00 (英) 2月 貿易収支・商品 (1月 -145.15億ポンド、予想 -145.00億ポンド)
15:00 (英) 2月 貿易収支 (1月 -31.29億ポンド、予想 -29.50億ポンド)

21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 輸出物価指数 前月比 (2月 0.8%、予想 0.3%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (3月 79.4、予想 79.0)
27:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
28:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会



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