米CPI後の米長期債利回り急伸で152円の壁超え153円台序盤へ到達
〇ドル円、昨夜発表の米3月CPI好調により長期債利回り上昇、ドル全面高に
〇これを受けて152円の壁を超え急伸、4/11早朝153.22まで高値伸ばす
〇投機的な円の独歩安ではないため、152円突破での政府・日銀の実弾介入はなし
〇本日朝神田財務官の発言あるも、今夜米3月PPIも上振れの場合、ドル高さらに加速の可能性も
〇このまま実弾介入がなければ154円台から155円超えを目指すか
〇米インフレ高止まりで利下げ開始は9月以降の可能性も、年2回以下に留まるとの見方優勢に
〇米3月コアPCEデフレーターと、比較的ハト派のFRB議長がややタカ派的に変わるか注目
〇米長期債利回りは急上昇、ダウは大幅続落
〇4/11早朝高値153.22超えからは153.50前後への上昇を想定
〇152.50割れから続落の場合は152.0前後への下落を想定
【概況】
ドル円は4月10日夜発表の米3月CPI上昇率が予想を上回ったことをきっかけとした米長期債利回りの急伸とドル全面高により直前の151.77円から152円の壁を超えて急伸し、4月11日早朝には153.22円まで高値を伸ばした。インフレ高止まりにより米国の6月利下げ開始期待が大幅に後退して9月以降へずれ込み利下げ回数も3回ではなく2回以下に留まるとの見方が優勢となった。
発表後はユーロ、ポンド等が急落してドル全面高となり、ドル円は日米金利差の急拡大という根拠=ファンダメンタルズを反映して急伸した。ユーロ円やポンド円、豪ドル円等も下落しているため投機的な円の独歩安ではないことで152円突破における政府・日銀による実弾介入はなく、介入を匂わせるレートチェック等の動きは見られなかったようだ。
153円台は1990年4月2日天井160.36円直後の1990年6月以来34年振りの高水準であり、市場介入がみられなかったことでこのまま実弾介入がなければ154円台から155円超えを目指して行くのではないかとの声も高まっている。
4月11日朝、神田財務官は「足元の動きは急だ」、「為替の過度な変動は国民経済に悪影響」、「あらゆる手段を排除せずに適切に対応を取っていく」と語ったが、今夜は米3月PPI(生産者物価指数)の発表もあるため、PPIも上ブレする場合にはさらにドル高が加速することも考えられ、岸田首相が訪米中ということも足かせとなって介入が見送られるようだと、市場はさらに挑発的な円安を試して行くこともあり得るところと思われる。
【米CPI上昇率は予想を上回る】
4月10日に発表された米3月CPI(消費者物価指数)上昇率は前月比0.4%で2月と変わらなかったが市場予想の0.3%を上回り、前年同月比は3.5%で2月の3.2%から伸びが加速して市場予想の3.4%を上回って2か月連続で加速した。コアCPIの上昇率は前月比0.4%で2月と変わらなかったが予想の0.3%を上回り、前年同月比は3.8%で2月と変わらなかったが予想の3.7%を上回った。
CPIが予想を上回ったことで、6月FOMCにおける利下げ開始期待度は発表前の6割近辺から2割台に急低下した。7月も見送りとなり利下げ開始が9月以降へずれ込む可能性も高まったと市場は受け止めている。利下げ回数についても昨年12月と今年3月のFOMCにおける参加者予想中央値の3回利下げではなく2回以下に留まる可能性も高まり、一部では年内の利下げが見送られる可能性も指摘され始めている。
4月11日未明に公開された3月19-20日開催のFOMC議事要旨では「ほぼすべての参加者が経済動向が予想通りなら年内ある時点での利下げ開始が適切との判断を示した」とされたが、米CPIが2か月連続で伸びを再加速させたことにより、議事要旨で「一部参加者が最近の根強いインフレに警戒感を表した」ことを裏付けている印象だ。
しかし、インフレ鈍化傾向について議事要旨は「幾分スムーズではない道筋」ながら継続するとしており、今回のCPIでもコア指数は2月と変わらず2022年10月の6.6%をピークとした低下傾向の範囲にある。FRBがインフレ指標として最重視しているコアPCE(個人消費支出)デフレーターの前年同月比も2022年3月の5.4%をピークとして直近の2月には2.8%まで鈍化傾向を続けているため、3月のコアPCEデフレーターがこの間の最低を更新する鈍化を見せれば、6月の利下げが見送られたとしても年内3回利下げの可能性が再浮上することも考えておく必要がある。当面、地区連銀総裁らFOMC参加者は利下げ慎重姿勢を5月までは続けると思われるが、比較的ハト派姿勢のパウエルFRB議長が年内3回利下げを否定する程度にややタカ派的に変わるのかどうかも注目してゆきたい。
【米長期債利回りは急上昇、ダウは大幅続落】
米CPI上昇率が予想を上回ったことで米長期債利回りは総じて急上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.19%上昇の急伸で4.55%とし、一時4.57%をつけて昨年12月27に付けた3.78%以降の高値を更新した。30年債利回りは0.13%上昇の4.63%となり一時4.64%をつけて昨年12月27日の3.94%以降の高値を更新した。政策金利動向に敏感な2年債利回りは0.23%上昇の4.98%となり1月12日の4.12%以降の高値を更新した。いずれも1日の上昇幅としては直近で最大級だった。
一方、米国の利下げ開始先送り感と米長期債利回り急伸を嫌気してNYダウは前日比422.16ドル安と下落して4月8日から3営業日続落となり3月21日の史上最高値以降の安値を更新し、ナスダック総合指数も136.28ポイント安と下落した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は4月5日午前安値150.80円を起点に反騰したが、高値は4月8日夜と9日夕の151.93円の同値で戻り一巡となり9日深夜安値151.55円まで下げたため、10日午前時点では151.93円を超えないうちは一段安余地ありとし、151.93円を超える場合は新たな上昇期入りとみて12日の日中から16日夕にかけての間への上昇を想定するとした。
4月10日夜に152円の壁を超えて急騰したため、9日深夜安値を起点とした上昇期に入ったと思われる。市場介入への警戒感や利益確定売りに圧されつつも実弾介入がなかったことで154円台を目指す可能性もあるため、152.50円を上回るうちは一段高余地ありとし、152.50円割れからはいったん修正安に入るとみて12日夜から16日夜にかけて間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、4月10日夜からの急騰で遅行スパンが好転して先行スパンも大幅に上抜いた。両スパンともに実線との乖離が大きいため、26本基準線を上回るうちは上昇余地ありとするが、26本基準線割れからはいったん下げに入ると警戒し、遅行スパン悪化からは安値試し優先とする。ただし、先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開しやすいと注意する。
60分足の相対力指数は4月10日深夜から11日早朝への高値更新に際して指数のピークが90ポイントに迫ってから切り下がる小規模の弱気逆行がみられるので、60ポイント以上を維持する内は75ポイント超えから80ポイント台後半への上昇を想定するが、60ポイント割れからは下向きとして50ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、152.50円を下値支持線、4月11日早朝高値153.22円を上値抵抗線とする。
(2)152.50円を上回るか一時的に割り込んでも早々に回復するうちは一段高余地ありとし、11日早朝高値153.22円超えからは153.50円前後への上昇を想定する。153.50円以上は反落注意とするが、11日夜の米経済指標等で急伸する場合は154円に迫る可能性もあるとみる。152.50円を上回るか直前高値から0.70円を超える反落が発生しないうちは12日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)152.50円割れから続落の場合は152.0円前後への下落を想定する。152円台序盤は買われやすいとみるが、152.50円を下回っての推移なら12日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
4/11(木)
休場 マレーシア、インドネシア、インド、トルコ
10:30 (中) 3月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (2月 0.7%、予想 0.4%)
10:30 (中) 3月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (2月 -2.7%、予想 -2.8%)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀行) 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
21:30 (米) 3月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (2月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (2月 1.6%、予想 2.2%)
21:30 (米) 3月 コアPPI・食品・エネルギー除く 前月比 (2月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 コアPPI 前年同月比 (2月 2.0%、予想 2.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.1万人、予想 180.0万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
21:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
25:00 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札
26:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会合参加
4/12(金)
休場 トルコ、インドネシア
未 定 (中) 3月 貿易収支・米ドル建て (2月 1251.6億ドル、予想 702.0億ドル)
13:30 (日) 2月 鉱工業生産・確報値 前月比 (1月 -0.1%)
13:30 (日) 2月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (1月 -3.4%)
13:30 (日) 2月 設備稼働率 前月比 (1月 -7.9%)
15:00 (独) 3月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.4%)
15:00 (独) 3月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.2%)
15:00 (英) 2月 月次GDP 前月比 (1月 0.2%、予想 0.1%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.2%。予想 0.0%)
15:00 (英) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 0.5%、予想 0.6%)
15:00 (英) 2月 貿易収支・商品 (1月 -145.15億ポンド、予想 -145.00億ポンド)
15:00 (英) 2月 貿易収支 (1月 -31.29億ポンド、予想 -31.00億ポンド)
21:30 (米) 3月 輸入物価指数 前月比 (2月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 輸出物価指数 前月比 (2月 0.8%、予想 0.3%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (3月 79.4、予想 79.0)
27:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
28:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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