『ドル円は日米金融政策イベント通過で急伸するも昨年高値に一歩届かず』
〇今週のドル円、週初148.90まで下落後、週央にかけ151.88まで急伸
〇日銀政策決定会合後の材料出尽くし感と緩和継続観測、米指標の堅調等が背景
〇その後はFOMCのハト派的内容等に150.27まで反落するもその後の米指標の強さに151円台を回復
〇ユーロドル、欧州指標好調、米金利低下に1.0943に上昇後、ECB早期利下げ観測再燃し1.0805に反落
〇ドル円、年初来高値を更新するも、依然として昨年高値151.91の突破に失敗、上値の重さ再確認
〇ファンダメンタルズもドル円相場の下落を連想させる材料揃う
〇来週は東京都区部3月CPIや米PCEコアデフレーターに注目
〇引き続き、ドル円相場の一巡後の急反落をメインシナリオとして予想、ユーロドルは弱気に変更
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.50ー152.50、(EURUSD):1.0675−1.0925
今週のレビュー(3/18−3/22)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初149.01で寄り付いた後、早々に週間安値148.90まで軟化しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)日銀金融政策決定会合通過に伴う材料出尽くし感(日銀は「マイナス金利政策の解除」「イールド・カーブ・コントロールの撤廃」「リスク資産の買い入れ終了」を決定しつつも、「国債買い入れの継続」を強調すると共に、声明文へも「当面緩和的な金融環境が継続する」と言及)や、(2)上記1を背景とした円売り圧力(市場はハト派的・利上げと解釈→円金利は当面上がらないとの見方から、円金利低下・円売りの流れに波及)、(3)日経平均株価の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(4)米2月建設許可件数(結果151.8万件、予想149.6万件)の市場予想を上回る結果、(5)米2月住宅着工件数(結果152.1万件、予想144.0万件)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週央にかけて、年初来高値151.88まで急伸しました。
その後は、(6)米FOMCのハト派的な結果(米FOMCは5会合連続となる政策金利の据え置きを決定するも、同時に発表されたドットチャートで2024年末時点の中央値を年3回・75bpの利下げ予想で据え置き→一部で2024年末時点の中央値が引き上げられるとの思惑があったことから市場は米ドル売りで反応)や、(7)日本経済新聞社による「円安進行の影響で日銀は7月や10月に追加利上げを検討している」とのサプライズ的な観測報道、(8)鈴木財務相による「為替、高い緊張感もって動きを注視」との円安牽制発言を背景に、一時150.27まで下落する場面も見られましたが、150円台前半では押し目買い意欲も根強く、下げ渋ると、
(9)米3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果+3.2、予想▲2.5)の市場予想を上回る結果や、(10)米新規失業保険申請件数(結果21.0万件、予想21.3万件)の良好な結果、(11)米3月製造業PMI速報値(結果52.5、予想51.8)の市場予想を上回る結果、(12)米2月中古住宅販売件数(結果438万件、予想394万件)の市場予想を上回る結果、(13)米2月景気先行指数(結果+0.1%、予想▲0.1%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間3/23午前2時30分現在)では、151.35前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0893で寄り付いた後、(1)フィンランド中銀レーン総裁による「最初の利下げは夏近くになるだろう」との発言や、(2)アイルランド中銀マクルーフ総裁による「ECBは6月利下げが可能」との発言、(3)スペイン中銀デコス総裁による「ECBは6月に利下げを開始する可能性がある」との発言、(4)上記1、2、3を背景としたECBによる4月利下げ観測の後退、(5)ユーロ圏1月貿易収支(結果281億ユーロ黒字、前回143億ユーロ黒字)の黒字幅拡大、(6)ユーロ圏2月消費者物価指数(結果+2.6%、予想+2.6%)および、同コア指数(結果+3.1%、予想+3.1%)の予想通りの結果(市場予想を下回らなかったことに対する安堵感)、(7)ドイツ3月ZEW現況指数(結果▲80.5、予想▲82.0)の市場予想を上回る結果、(8)ドイツ3月ZEW景況感指数(結果+31.7、予想+20.5)の力強い結果、(9)欧州株の堅調推移、(9)ユーロ圏3月消費者信頼感速報値(結果▲14.9、予想▲15.0)の市場予想を上回る結果、(10)米FOMCのハト派的な結果(米金利低下→米ドル売り)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0943まで上昇しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(11)ECBによる早期利下げ観測の再燃(スイス中銀による予想外の利下げ実施や、英中銀で利上げ派と目されていたハスケル委員・マン委員による据え置き派へのスタンス転換→スイス中銀・英中銀などヨーロッパ各国が緩和姿勢に転換したことで、ECBによる早期利下げ観測が再燃)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0805まで値を崩しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/23午前2時30分現在)では、1.0807前後で推移しております。
来週の見通し(3/25−3/29)
<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は週央にかけて年初来高値を更新するも、依然として昨年高値151.91の突破には成功できておらず(3/20高値151.88、3/21高値151.80、3/22高値151.87)、結果として上値の重さを再確認する展開となりました。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による年内追加利上げ観測の台頭(日銀は今週「マイナス金利政策の解除」「イールド・カーブ・コントロールの撤廃」「リスク資産の買い入れ終了」を決定→日経新聞は3/21に7月や10月の追加利上げの可能性を報道→円金利上昇)や、(2)米FRBによる早期利下げ観測の再燃(ドットチャートのハト派な結果→6月FOMCでの利下げ観測再燃→米金利低下)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(利上げ局面の日本と、利下げ局面の米国とのコントラスト→日米金利差縮小期待→円キャリートレード巻き戻しの思惑)、
(4)年末に向けたレパトリ観測(日系金業の円買い圧力)、(5)政府・日銀による為替介入警戒感(鈴木財務相は「為替、高い緊張感もって動きを注視」と牽制)など、ドル円相場の下落を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記1を見極める目的で3/29に予定されている本邦の東京都区部3月消費者物価指数に注目が集まります。市場予想を上回る結果となれば、日銀による追加利上げ期待が高まることから、円金利上昇→円買いの経路でドル円に下押し圧力が加わりそうです。
また、来週は上記2を見極める目的で、3/26に予定されている米3月消費者信頼感指数や、3/28の米10ー12 月期GDP確定値、3/29の米2月PCEコアデフレーターに注目が集まります。市場予想を下回る結果となれば、米FRBによる早期利下げ観測→米金利低下→米ドル売りの経路でドル円に下押し圧力を加えそうです。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の一巡後の急反落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):148.50ー152.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は週末にかけて急落し、3/1以来、約3週間ぶり安値圏へと値を崩しました。日足ローソク足が主要サポートポイント(21日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線、一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド)を下抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります(来週は1.0800近辺に位置する一目均衡表雲下限を下抜けられるか否かに注目→下抜ける場合はロング勢のロスカットを通じてもう一段下げ足を速める恐れあり)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、ECBによる早期利下げ観測の高まり(スイス中銀や英中銀など近隣諸国が緩和姿勢へ転換→ECBによる早期利下げ観測再燃)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。来週予定されているユーロ圏3月欧州委員会景況指数が市場予想を下回る場合や、欧州当局者(オーストリア中銀ホルツマン総裁、チポローネECB専務理事、フランス中銀ビルロワドガロー総裁など)よりハト派的な発言が見られる場合には、ECBによる4月利下げの可能性を織り込む形で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方ではユーロドル相場の短期見通しを、ブル(強気)からベア(弱気)へと変更いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0675−1.0925
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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