ドル円見通し FOMC後のドル安一巡で反騰、3月20日夜高値に迫る
〇ドル円、米FOMC後のドル安により3/21午前150.26まで下げるも、午後には151円到達へ戻す
〇ドル高がぶり返し、3/22未明には151.74を付けて3/20夜高値151.79に迫る
〇日米金融政策発表を通過し円安継続感、米FOMC後もドル安が加速してゆく懸念もまだ薄い印象
〇昨日発表の米経済指標は概ね強め、ドル高がぶり返すきっかけに
〇米10年債利回りは3営業日続落、NYダウ・ナスダックともに4連騰で史上最高値更新
〇151円以上での推移中は上昇余地あり、152円を超えから勢い付く場合は152円台中盤への上昇を想定
〇151円割れから続落する場合は、3/21午前安値150.26試しとする
【概況】
ドル円は3月19日の日銀金融政策決定会合後の急伸で3月20日夜に151.79円へ上昇し、2022年10月23日高値151.94円と2023年11月13日高値151.90円に迫ったものの一歩届かず、21日未明の米FOMC後のドル安により151円を割り込み21日午前には150.26円まで安値を切り下げた。しかし150円台序盤を買われると午後には151円到達へ戻し、21日夜の米経済指標が予想よりも強めだったことでユーロやポンドが下落してドル高がぶり返したため、22日未明には151.74円を付けて20日夜高値に迫った。
【日米金融政策発表を通過して円安継続感】
日銀は3月19日の金融政策決定会合で黒田前総裁時代から続いてきたマイナス金利とYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)を撤廃し、事実上の株価対策であったETF(上場投資信託)とREIT(不動産投資信託)の買い付けを止めた。17年振りの利上げだったものの連続的な利上げによる引き締めへ向かわず、今後も金融緩和状態は続き国債大量買入れによる長期金利上昇抑制も変わらないとされたことで政策発表及び植田総裁会見から円安が勢い付いた。
日銀が今後も連続的な利上げへ進むなら長短金利が揃って上昇して日米金利差縮小による円高基調へ進むと思われるが、今のところはマイナス金利解除後は暫く様子見となる模様のため、日米金利差もさほど縮小せず、今後の欧米金融緩和を先取りして株高が続けばリスク先行的な円安も続きやすいところだ。政府・日銀による市場介入への警戒感もあるため、152円を突破してさらに円安が勢い付くとみるのは時期尚早と思われる。
FOMCは3月21日未明に政策金利を5会合連続で据え置いたが昨年12月会合で示した2024年3回利下げ想定が維持されたために6月利下げ期待度が高まって米10年債利回りが低下、為替市場はドル安となったが、21日夜からドル高がぶり返している。NYダウが史上最高値を更新する中では米経済指標が顕著に悪化し始めない限りは米国の利下げペースも緩いとしてドル安が加速してゆく懸念もまだ薄い印象だ。
【3月21日夜の米経済指標は概ね強め】
3月21日夜に発表された米経済指標は概ね市場予想よりも強めだった。
フィラデルフィア連銀の3月製造業景況指数はプラス3.2となり2月の5.2から低下したものの市場予想のマイナス2.3への悪化に反してプラス圏に留まった。6か月後の見通しは2月の7.2から38.6へ大幅に改善した。
米労働省による新規失業保険申請件数は3月16日までの週間で前週比2000件減少の21万件となり2週ぶりの改善で市場予想の21万5000件を下回った。失業保険受給者総数は3月9日までの週間で180万7000人となり前週から4000人増加したが市場予想の182万人を下回った。
全米リアルター協会(NAR)による2月米中古住宅販売戸数(年率換算)は前月比9.5%増の438万戸となり昨年2月以来の高水準で市場予想の394万戸を大幅に上回った。
米商務省による2023年10-12月期経常赤字は1948億ドルで7‐9月期の1964億ドルを下回った。2023年通年の経常赤字は8188億2300万ドルで前年から15.7%縮小した。
米コンファレンス・ボードによる2月景気先行指数は102.8となり前月比0.1%上昇し、1月の0.4%低下から改善して市場予想の0.2%低下を上回った。
3月の米製造業PMI速報値は52.5で2月の52.2から改善して市場予想の51.7を上回ったが、サービス業PMIは51.7で2月の52.3から低下して市場予想の52.0を下回った。
【米10年債利回りは続落】
3月21日の米長期債利回りはまちまちの動き。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の4.27%となった。米経済指標が強めだったことで一時4.29%まで上昇する場面も見られたものの勢いを欠いて19日から3営業日続落となり、FOMCを通過して低下に転じている印象だ。
30年債利回りは0.02%低下の4.44%、2年債利回りは0.03%上昇の4.64%だった。
一方でNYダウは前日比269.24ドル高と上昇、4営業日続伸で史上最高値を更新した。ナスダック総合指数も32.43ポイント高と上昇して18日からの4連騰で史上最高値を更新した。
景気悪化への警戒感が薄く、年内利下げによる先高期待から株高が勢い付いているが、株買い・債券売りにより米長期債利回りが上昇しやすい側面もあるため、FOMC後の長期債利回り低下がさほど勢い付いていないという印象もある。また米国株高が日本株高を助長すれば円安バイアスがかかりやすくなる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は日銀会合後の急伸で20日夜に151.79円をつけ、21日未明のFOMC後の下落で150.26円まで下げてから再び20日夜高値に迫っている。市場介入警戒水準でもあるため152円手前での抵抗感が出やすく、20日夜高値とのダブルトップに終わる可能性もあるが、20日夜高値を超えると勢い付くことも考えられるため、151円台を維持する内は21日午前安値を起点とした上昇期とし、20日夜高値超える場合は25日夜から27日夜にかけての間への上昇を想定する。151円割れから続落の場合はダブルトップ形成による下落期入りを警戒し、21日午前安値を割り込む場合は26日午前から28日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、3月22日未明への反騰で遅行スパンが好転して先行スパンからも上抜けているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は3月21日午前の30ポイント台序盤から60ポイント台へ戻しているため、50ポイント以上を維持する内は70ポイント台への上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、151.00円を下値支持線、152.00円を上値抵抗線とする。
(2)151円以上での推移中は上昇余地ありとみる。152円手前は反落警戒水準とするが、152円を超えから勢い付く場合は152円台中盤(152.35円から152.65円)への上昇を想定し、3月20日夜高値151.79円を超えた後も151円を上回っての推移が続く場合は週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)151円割れから続落する場合は21日午前安値150.26円試しとする。150.35円以下は反騰注意とし、150.26円を割り込まない場合は151円を挟んだ高値圏持ち合いを形成する動きと考えるが、150.26円を割り込む場合は来週前半への続落で149円台前半へ向かう流れとみる。
【当面の予定】
3/22(金)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 3.4%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 0.7%、予想 -0.8%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 3.2%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (1月 0.7%、予想 -0.9%)
18:00 (独) 3月 IFO景況指数 (2月 85.5、予想 85.9)
22:00 (米) ウエルFRB議長、イベントで発言
25:15 (米) バーFRB副議長、討論会参加
26:00 (欧) レーンECB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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