ドル円見通し 日銀政策修正後に円安加速、FOMC後に反落、151円台後半の壁は厚い(24/3/21)

ドル円は3月19日の日銀金融政策決定会合におけるマイナス金利等解除発表後の急伸で150円を超え、20日未明には150.95円まで高値を伸ばし2月13日高値150.88円を上抜いた。

ドル円見通し 日銀政策修正後に円安加速、FOMC後に反落、151円台後半の壁は厚い(24/3/21)

日銀政策修正後に円安加速、FOMC後に反落、151円台後半の壁は厚い

〇昨日ドル円、午前序盤に151円台到達、夜に151.79へ続伸
〇日銀、マイナス金利解除で17年振り利上げするも当面は緩和的政策継続とし、円独歩安に
〇3/21未明、米FOMC発表直後に150.73へ急落、151.40まで戻したものの午前序盤151円を再び割り込む
〇米FOMC、年内3回利下げ想定堅持でドル全面安に
〇米10年債利回りは続落、NYダウ、ナスダックは史上最高値更新
〇151.50以下での推移中は下向きとし、150.50割れからは150円前後への下落を想定
〇151.50超えからは20日夜高値151.79試しとする

【概況】

ドル円は3月19日の日銀金融政策決定会合におけるマイナス金利等解除発表後の急伸で150円を超え、20日未明には150.95円まで高値を伸ばし2月13日高値150.88円を上抜いた。3月20日の日中は日本市場が祝日だったものの午前序盤には151円台に到達し、午後には151.50円を超えた。
日銀のマイナス金利解除は17年振りの利上げだったものの、当面は緩和的な政策を継続するとされたことで円買いイベント通過と市場は受け止めて円売りが勢い付きクロス円は総じて急伸し、ユーロ円は昨年11月高値を超えて2012年7月以降の最高値を更新、ポンド円の2020年3月以降の最高値を更新するなど円の独歩安という印象が強まった。

ドル円は3月20日夜に151.79円へ続伸して2022年10月23日高値151.94円と2023年11月13日高値151.90円に迫ったが届かず、21日未明の米FOMCが政策金利を現状維持としたものの参加者によるドットプロットで年内3回利下げ想定が維持されたことでドル売りとなったために発表直後に150.73円へ急落し、21日早朝にいったん151.40円まで戻したものの21日午前序盤に151円を再び割り込んでいる。
日米金融政策決定会合を通過したわけだが、3月11日までは日銀のマイナス金利等解除見通しで円高となり、3月12日からは米国の利下げ開始先送り感で円安に転じ、日銀の政策修正については「知ったら終い」で円安がさらに加速したが、米国の利下げ想定は変わらないとして3月11日安値からの円安も一巡した印象だ。

【日銀、マイナス金利解除で17年振り利上げ】

日銀は3月19日の金融政策決定会合で黒田前総裁時代から続いてきた異次元金融緩和政策としてのマイナス金利を解除して17年振りに利上げした。日銀は2016年2月以降、金融機関が日銀に預け入れる当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用してきたが今回の修正で0.1%に引き上げ、短期金利の無担保コール翌日物レート誘導基準を「0〜0.11%程度」とした。
2016年9月に導入された長期金利上昇の抑制策としてのYCC(イールドカーブコントロール)も撤廃され、急激な長期金利上昇を抑制する姿勢は継続するとして今後も大量の国債買い入れを続けるとし、購入規模は従来と同様の月間6兆円程度としたが、植田総裁は「将来どこかの時点で買い入れ額を減らしていくことも考えたい」と述べた。また株価を下支えしてきたETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の新規購入も終了し、社債等の購入については段階的に減らして1年後を目途に終了するとした。
植田総裁は「緩和的な金融環境が継続するため、短期金利の急激な上昇という経路は避けられ、預金・貸出金利が大幅に上昇するとはみていない」としたが、長期金利水準は市場が決めると述べた。

【米FOMC 年内3回利下げ想定を維持】

米FRB(米連邦準備制度理事会)は3月21日未明にFOMC(連邦公開市場委員会)結果を発表、予想通りに政策金利を5.25〜5.50%として5会合連続で据え置いたが、2024年内の3回利下げ想定を維持した。
FOMC参加者の政策金利見通しでは2024年末で4.50〜4.75%とされ0.25%ずつ3回の利下げ想定が示されたが、政策金利の2025年末と26年末及び長期見通しはわずかに上方修正された。

パウエルFRB議長は会見で「年内のある時点で金融引き締めを緩め始めるのが適切」とした。現状では「性急な利下げと利下げ遅れの両サイドにリスクがある」とし、「経済状況は良く」「インフレ低下は過去1年で大きな進展」があり、インフレ鈍化については「十分な進展が続く」とし、2月のCPI等が上振れしたことについては「ひどく高いわけではなく、インフレ低下のストーリーが変わったわけではない」としたが、「指標をもっと確認したい」とした。
今回のFOMCについては12月会合で示された2024年3回利下げ想定が後退するのではないかと懸念されていたため、3回利下げ想定が堅持されたことで市場はドル全面安となり、金利先物市場における6月利下げ開始期待度は発表前の6割弱から7割強へ上昇した。

【米10年債利回りは続落】

3月20日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の4.28%となった。FOMC声明発表後の乱高下で一時4.23%へ低下してから4.32%まで戻したものの再び低下して3月19日の前日比0.04%低下から続落した。3月11日から6連騰して3月18日は4.35%をつけて3月8日に付けた4.04%以降の高値を更新し、2月22日に付けた直近のピークである4.35%に並んだが、FOMCを通過して低下に転じ始めた印象だ。
30年債利回りは前日比0.02%上昇の4.46%となり、4.42%へ低下してから4.48%へ上昇して再び低下したが、前日比プラス圏を維持して終了した。政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.08%低下の4.61%となり19日から続落した。
一方、FOMCの年内3回利下げ想定を好感して3月20日のNYダウは前日比401.37ドル高と上昇、18日から3連騰とし、高値で39529.13ドルを付けて2月23日高値を超えて史上最高値を更新した。ナスダック総合指数も前日比202.62ポイント高と上昇して3月18日から3連騰となり3月8日の史上最高値に迫った。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は3月19日の日銀会合を通過して急伸したが、FOMC後の反落により上昇一巡として下落期に入った印象のため、151.50円を下回るうちは22日午前から26日午前にかけての間への下落を想定する。151.50円を超える場合は20日夜高値151.79円試しとし、ダブルトップ形成からの下落再開を警戒する。ただし、20日夜高値を上抜く場合は新たな上昇期入りとみて25日夜から27日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では、3月20日夜高値からの下落により26本基準線を割り込み、遅行スパンは一時悪化してから持ち直したものの再び悪化しつつあるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンへ潜り込む場合は先行スパンからの転落へ進む可能性ありとし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。連続的な上昇で26本基準線を超える場合は20日夜高値試しとし、高値更新からは新たな上昇期入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は3月19日から20日夜にかけての上昇時に指数のピークがほぼフラットとなる弱気逆行を見せてから40ポイント割れへ急低下したため、60ポイントを超える反騰がみられないうちは20ポイント以下への一段安警戒とする。60ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持しつつ指数のピークを切り上げる場合は上昇再開から一段高へ進む可能性ありとみて70ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、150.50円を下値支持線、151.50円を上値抵抗線とする。
(2)151.50円以下での推移中は下向きとし、150.50円割れからは150円前後への下落を想定する。150円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、150円割れから下げ足が速まる場合は149円台中盤へ下値目途を引き下げる。
(3)151.50円手前は戻り売り有利とみるが、151.50円超えからは20日夜高値151.79円試しとする。20日夜高値とのダブルトップに終わる可能性もあると注意するが、151.79円超えからは152円台序盤への上昇を想定する。

【当面の予定】

3/21(木)
休場 南ア
17:30 (独) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 42.5、予想 43.1)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 48.3、予想 48.8)
18:00 (欧) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 46.5、予想 47.0)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 50.2、予想 50.5)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調済 (12月 319億ユーロ)
18:30 (英) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 47.5、予想 47.8)
18:30 (英) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 53.8、予想 53.8)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.25%)
21:30 (米) 10-12月期 経常収支 (7‐9月 -2003億ドル、予想 -2090億ドル)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 5.2、予想 -2.3)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件、予想 21.5万件)

21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 181.1万人、予想 182.0万人)
22:45 (米) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 52.2、予想 51.7)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 52.3、予想 52.0)
23:00 (米) 2月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (1月 -0.4%、予想 -0.2%)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数・年率換算 (1月 400万件、予想 394万件)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数 前月比 (1月 3.1%、予想 -1.5%)

3/22(金)
06:45 (NZ) 2月 貿易収支 (1月 -9.76億NZドル)
08:30 (日) 2月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (1月 2.2%、予想 2.9%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食品除く 前年同月比 (1月 2.0%、予想 2.8%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 3.5%、予想 3.3%)
09:01 (英) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 -21、予想 -19)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 3.4%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 0.7%、予想 -0.8%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 3.2%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (1月 0.7%、予想 -0.9%)
18:00 (独) 3月 IFO景況指数 (2月 85.5、予想 85.9)
26:00 (欧) レーンECB理事、講演
29:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会議参加


注:ポイント要約は編集部

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