来週の為替相場見通し:『来週は日米の金融政策イベントに注目。ドル円は反落リスクに要警戒』(3/16朝)

ドル円は今週初に記録した約1カ月半ぶり安値146.48をボトムに切り返すと、週末にかけて149.18まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『来週は日米の金融政策イベントに注目。ドル円は反落リスクに要警戒』(3/16朝)

『来週は日米の金融政策イベントに注目。ドル円は反落リスクに要警戒』

〇今週のドル円、日銀のマイナス金利解除観測、日経平均大幅下落等に週明け早々146.48まで下落
〇売り一巡後は米指標の強さからの米利下げ後ずれ観測広がり、週末にかけ149.18まで急伸
〇時事通信等から日銀のマイナス金利解除への観測記事出るも円買い反応は限定的
〇ユーロドル、週前半は1.09台で推移するも、週末にかけ米長期金利上昇に1.08台後半に反落
〇ドル円、主要テクニカルポイントを上抜け、買いシグナルも成立、地合いの好転期待される
〇ファンダメンタルズは日米金利差縮小期待がドル円の下落要因
〇来週は日米の金融政策イベントに注目、日銀の政策修正からの円買い要警戒
〇FOMCではドットチャートの据え置きを予想、週後半はドル売り活発化も
〇ドル円相場の一巡後の反落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):145.50ー150.50、(EURUSD):1.0775−1.1075

今週のレビュー(3/11−3/15)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初147.04で寄り付いた後、(1)経団連十倉会長による「昨年以上の賃金引き上げのモメンタムを感じる」とのタカ派的な発言や、(2)日銀によるマイナス金利の解除観測(円金利上昇に伴う円買い圧力)、(3)日経平均株価の大幅下落(リスク回避の円買い圧力)、(4)米金利低下に伴うドル売り圧力(バイデン米大統領は東部ペンシルベニア州での演説にて「FRBが利下げに踏み切ることは間違いない」と異例の発言)が重石となり、週明け早々に、週間安値146.48まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)サマーズ元財務長官による「米FRBは中立金利の水準を大きく見誤っている」「結局年内に政策金利を引き下げない可能性が高まっている」との発言や、(6)米ニューヨーク連銀2月期待インフレ率(3年先:前月の2.4%から2.7%へ上昇、5年先:前月の2.5%から2.9%へ上昇)の前回比上昇、(7)米2月消費者物価指数(結果+3.2%、予想+3.1%)および、同コア指数(結果+3.8%、予想+3.7%)の市場予想を上回る結果、(8)岸田首相による「日本経済はデフレ脱却には至っていない」との慎重な発言、(9)米新規失業保険申請件数(結果20.9万件、予想21.8万件)の力強い結果、(10)米2月生産者物価指数(結果+1.6%、予想+1.2%)および、同コア指数(結果+2.0%、予想+1.9%)の市場予想を上回る結果、(11)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米長期金利急上昇→対主要通貨でドル独歩高)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値149.18まで急伸しました。

引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間3/16午前5時15分現在)では、149.05前後で推移しております。尚、今週は植田日銀総裁より「物価安定目標2%見通しが持てればマイナス金利解除・YCC、そのほかの大規模緩和策の修正を検討」とのタカ派的な発言が見られた他、時事通信より「日銀が3/18ー3/19に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する方向で調整に入った」との観測報道も見られましたが、円買いでの反応は限定的となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0944で寄り付いた後、(1)スロバキア中銀カジミール総裁による「現時点での利下げは時期尚早」「利下げへの自信は6月にしか出てこない」とのタカ派的な発言や、(2)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「ECBの利下げは4月よりも6月の可能性の方が高い」とのタカ派的な発言、(3)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(4)欧州株の堅調推移が支援材料となり、週央にかけて、週間高値1.0964まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)ギリシャ中銀ストゥルナラス総裁による「夏季休暇前に2度の利下げが必要」「我々はすぐに利下げを開始する必要がある」「2024年内に4度の利下げが合理的と考える」とのハト派的な発言や、(6)レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミストによる「ディスインフレの進行が続いている」とのハト派的な発言、(7)米2月生産者物価指数および、同コア指数の市場予想を上回る結果、(8)上記7を背景とした米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米長期金利急上昇→米ドル急伸)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0873まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/16午前5時15分現在)では、1.0890前後で推移しております。

来週の見通し(3/18−3/22)

<ドル円相場>
ドル円は今週初に記録した約1カ月半ぶり安値146.48をボトムに切り返すと、週末にかけて149.18まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(90日移動平均線→一目均衡表転換線→一目均衡表基準線)を上抜けしたことや、ダウンサイドから一目均衡表の分厚い雲が切り上がってくること、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いの好転が期待されます。但し、ファンダメンタルズ的に見ると、日米金融政策の方向性の違い(金融引き締め方向に舵を切る日銀と、金融緩和のタイミングを探る米FRB)や、それに伴う日米金利差縮小期待(円キャリートレードの巻き戻しリスク)など、ドル円相場の下落を連想させる材料が揃っています。

こうした中、来週は日米の金融政策イベントに注目が集まります。ここ最近の大手メディアによる踏み込んだリーク報道(時事通信の報道)や、賃金上昇期待の高まり(労働組合の賃上げ要求に対する満額回答)を踏まえれば、3/18ー3/19の日銀金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除とセットで、YCC(イールド・カーブ・コントロール)撤廃や、ETF買い入れ停止が同時決定される可能性は相応に高く、週前半は円金利上昇→円買いの経路に警戒が必要と考えられます(今後の利上げペースについてある程度踏み込んだ発言が見られる場合には、ドル円相場が予想以上に急落する恐れあり)。

一方、3/19ー3/20の日程で開催される米FOMCについては、政策金利の据え置きが見込まれているため、市場の焦点は同時に発表される「経済・金利見通し」に移っています。直近の米CPI・米PPIの上振れを受けて、市場ではドットチャート(FOMCメンバーによる政策金利予想分布図)の上方修正が期待されていますが、当方は上方修正はなされず、中央値は据え置かれると予測しています。この為、今週見られた米金利上昇→米ドル買いの流れは終了し、週後半にかけて、一転して米金利低下→米ドル売りの流れが活発化するシナリオを想定しています。3月末に向けては、日系企業のレパトリフローも見込まれることから、当方では引き続き、ドル円相場の一巡後の反落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):145.50ー150.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、3/8に記録した直近高値1.0982をトップに反落に転じると、今週末にかけて一時1.0873まで反落しました。日足ローソク足が主要サポートポイント(一目均衡表雲上限→一目均衡表転換線)を下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化が警戒されます。但し、ファンダメンタルズ的に見ると、ECBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(ECB高官発言を見る限り、6月まで見極める意向を示唆)や、米FRBによる利下げ開始時期の前倒し期待(米CPI・米PPIが市場予想を上回ったことで、今週は米金利上昇・米ドル買いの流れが活発化しましたが、来週は米FOMC後に米金利低下・米ドル売りの流れが再開する恐れあり)など、ユーロドル相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。

来週予定されている欧州経済指標(ドイツ3月ZEW調査、ユーロ圏3月消費者信頼感指数、ユーロ圏3月PMI速報値、ドイツ3月IFO景況感指数など)が市場予想を上回る場合や、欧州高官(デギンドスECB副総裁、ラガルドECB総裁、レーンECB専務理事、シュナーベルECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁)より早期利下げに慎重な発言が見られる場合には、ユーロドルが再び上昇に転じるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ユーロ買い・ドル売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0775−1.1075

注:ポイント要約は編集部

『来週は日米の金融政策イベントに注目。ドル円は反落リスクに要警戒』

ドル円日足

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