日銀政策修正動向を織り込みつつ4連騰で149円台到達
〇先週のドル円、3月11日安値146.46へ下落後、米2月CPI、PPI受け週末にかけ149.16まで戻す
〇連日報じられる日銀政策修正の動きは織り込まれ、政策修正後も緩和状態続くとの思惑に円高圧力後退
〇週末NY連銀景況指数、ミシガン大消費者信頼感指数は悪化するも、FOMC前の市場の反応は限定的
〇今週、日銀政策決定会合、米FOMC開催、日銀の政策転換、FRBの金利見通し等に注目集まる
〇日米ともに株価指数が史上最高値を更新した後は上げ渋りの状況、ひびが入ると崩れやすく要注意
〇148.50割れからは148円試しとするが、148円台序盤は押し目買いされやすい
〇149.55超えからは150円前後への上昇を想定、
【概況】
ドル円は日銀の3月18-19日会合におけるマイナス金利やYCC等の解除へ向けた地ならし的な動きが続いたことで3月11日安値146.46円へ下落して2月13日高値150.88円からの下げ幅は4.42円となったが、3月12日から15日までの4連騰で149.16円まで戻し、この間の上昇幅は2.70円となり直前の下げ幅に対して凡そ6割を戻した。
3月12日夜の米2月CPIが高止まりの様相となり、3月14日の米PPIも予想を上回ったことで米国の利下げ開始が先送りされる可能性が高まり米10年債利回りが連騰で上昇したことと、日銀の政策修正への動きが連日報じられているものの材料的に消化されてきたことと、マイナス金利等を解除しても暫くは金融緩和状態が続くと見込みにより円高圧力が後退していることが4連騰の背景となった印象だ。
【NY連銀製造業景況指数は悪化】
3月19-20日に米FOMCを控えていることもあり、3月15日夜の米経済指標に対する市場反応は鈍かった。
NY連銀の3月製造業景況指数はマイナス20.9で市場予想のマイナス7.0を下回って2月のマイナス2.4から大幅に悪化し、内訳では新規受注が2月のマイナス6.3からマイナス17.2へ悪化、雇用は2月のマイナス0.2からマイナス7.1へ悪化したが、6か月後の見通しについては2月の21.5から21.6へとわずかに上昇しており先行きの改善見込みが続いている。
2月の輸入物価指数上昇率は前月比0.3%で予想と一致、1月の0.8%から大幅に低下したが輸出物価指数の上昇率は0.8%で1月の0.9%からわずかに低下したものの市場予想の0.2%を大幅に上回った。
2月の米鉱工業生産は前月比0.1%増で1月の0.5%減から回復して市場予想の0.0%をわずかに上回り、2月設備稼働率は78.3%で1月と変わらなかったものの市場予想の78.5%を下回った。
3月のミシガン大消費者信頼感指数は76.5で2月及び市場予想の76.9を若干下回った。消費者の期待インフレ率は1年先が2月と同じ3.0%。5年先も2月と同じ2.9%だった。
【日銀金融政策決定会合、米FOMCと続く】
今週は3月19日に日銀金融政策決定会合の結果発表と植田総裁会見、21日未明には米FOMCの結果発表とパウエル議長会見がある。
日銀の植田総裁は3月13日の参院予算委員会で「2%の物価目標の実現が見通せれればマイナス金利とYCCの枠組み修正を検討する」等と答弁した。時事通信社は3月14日夜には独自取材として日銀が3月18-19日の会合でマイナス金利を解除する方向で調整に入ったとし、3月15日にもマイナス金利解除で最終調整中と報じた。3月15日に連合が発表した春闘回答集計で前年を大幅に上回る賃上げ見通しとなったことを踏まえて日銀はマイナス金利とYCC(長短金利操作)を解除し、ETF買い入れを止める見通しとしている。
今回の会合でマイナス金利等の解除が決定されるのか、判断保留となっても4月会合で決断されることが濃厚となれば円高圧力がかかりやすくなるが、マイナス金利を解除した後に連続的な利上げにより金融引き締めへ向かうのではなく暫くは金融緩和状態が続くとの見方が再確認されれば円高圧力も限定的なものに留まると思われる。
米FRBは今回のFOMCで政策金利を据え置くとみられるが、昨年12月会合で示された2024年3回利下げ想定を維持するのか2回利下げに変更するのか注目されている。米国の金利先物市場では6月利下げ期待度が5割台まで低下しており、利下げ開始が第4四半期にずれ込むのではないかとの見方も出ている。
FRBとしては利下げを躊躇することでこれまでの金融引き締めによる景気への悪影響が拡大するリスクと、利下げを急ぐことによるインフレ再燃リスクを天秤にかけているところだが、米CPI上昇率の高止まり感があるもののインフレ指標として最重視されているPCE(個人消費支出)デフレーターは顕著に鈍化し、米製造業景況感の悪化も見られることや米地銀の経営不安等も無視できない状況にあり、パウエルFRB議長が3月7日の上院銀行委員会証言で利下げの前提となるインフレ鈍化への確信が得られるまで「それほど遠くない」と述べたことを踏まえれば、6月利下げの可能性も十分にあり、遅くとも7月には利下げ開始へ踏み込むのではないかと考える。
【米10年債利回りは5連騰】
先週の米長期債利回りは2月後半からの低下幅の大半を解消する上昇となった。
3月15日の米10年債利回りは前日比0.02%上昇の4.31%で終了した。2月22日に4.35%をつけて直近のピークとしたところから3月8日に一時4.04%まで低下したが、3月11日から15日まで5連騰とし、15日は一時4.32%をつけている。週間では3月8日終値4.08%から0.23%上昇だった。
30年債利回りは前日比0.01%低下の4.43%で終了した。2月22日に付けた4.51%をピークとして3月7日に付けた4.19%まで低下したところから反騰に転じて15日には一時4.45%をつけたものの揚げ幅を削って若干のマイナスに終わった。週間では3月8日終値4.25%から0.18%上昇した。
2年債利回りは前日比0.03%上昇の4.73%で終了した。2月23日の4.76%をピークに3月8日の4.41%まで低下したところから反騰入りし、3月11日から5連騰となり15日は一時4.74%をつけた。週間では3月8日終値4.48%から0.25%上昇した。
一方で3月15日のNYダウは前日比190.89ドル安と下落し、14日の137.66ドルから続落した。2月23日に39282.28ドルまで史上最高値を伸ばした後は高止まりの様相で米長期債利回りの反騰が重石となっている。ナスダック総合指数は前日比155.36ポイント安と下落、3月13日から3営業日続落となり3月8日に16449.70ポイントで史上最高値とした後は上げ渋っている。
米国の利下げが先延ばしされる中で景況感等の悪化が続いたり地銀株が下げる場合には利下げ催促的な下落に見舞われる可能性も抱えていると思われる。米国株高なら日経平均も同調して上昇することでドル円にとってはリスクオン優勢による円安要因となるが、米国株安が日経平均の下落へ連鎖する場合はリスク回避的な円高圧力が優勢となりかねない。日米ともに株価指数が史上最高値を更新した後だけにヒビが入ると崩れやすいということにも注意したい。
【26日移動平均突破で上昇継続か、戻り一巡で失速か試される】
ドル円は2月13日高値150.88円の後を上げ渋りの持ち合いで推移していたが、26日移動平均を割り込んだところから下げ足を速めて3月11日安値146.46円まで安値を切り下げた。3月12日からの連騰で戻しているところだが、26日移動平均(現在149.53円)にはまだ届いていない。
昨年11月13日高値151.90円からの下落時には、11月21日安値147.15円まで4.75円の下げ幅となった後に戻したものの26日移動平均には届かず一段安へ進んでいる。昨年7月14日安値からの反騰時は、26日移動平均到達でいったん売られて仕切り直しの後に26日移動平均を超えてから上昇が発展している。昨年3月24日への下落時も同様で、当初の反発で26日移動平均が壁となり、仕切り直し後の上昇で同線を超えてから本格的上昇期に入っている。現状から26日移動平均超えへ進めるのかどうかは3月19日昼頃の日銀金融政策決定会合結果、21日未明のFOMC結果に対する反応次第と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、148円を下値支持線、149.55円を上値抵抗線とする。
(2)日銀会合前は3月11日安値からの上昇一巡でやや修正的な下落へ進みやすいところと注意し、148.50円割れからは148円試しとするが、148円台序盤は押し目買いされやすい水準とみる。ただし、日米金融政策発表を通過して円高が勢い付く場合は147円前後への下落を想定し、先行きでは3月11日安値146.46円を試す流れと考える。
(3)149.55円超えからは150円前後への上昇を想定する。150円到達では売られやすいと注意するが、日米金融政策結果を見て急伸する場合は151円試しへ上値目途を引き上げる。ただし乱調な展開となり直前高値から1円を超える下落が発生する場合は3月11日からの上昇一巡による反落期入りを疑い、さらに1円を超える下落へ向かう可能性に注意する。
【当面の予定】
3/18(月)
休場、メキシコ
日銀・金融政策決定会合初日
08:50 (日) 1月 機械受注 前月比 (12月 2.7%、予想 -0.5%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前年同月比 (12月 -0.7%、予想 -9.6%)
11:00 (中) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 7.4%、予想 5.0%)
11:00 (中) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 6.8%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 2月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.6%)
19:00 (欧) 2月 コアHICP・改定値 [前年同月比 (1月 3.1%)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調済 (12月 130億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調前 (12月 168億ユーロ)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 48、予想 48)
3/19(火)
米FOMC(連邦公開市場委員会)初日
日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.1%)
12:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 4.35%、予想 4.35%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -7.5%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.5%)
13:30 (日) 1月 設備稼働率 前月比 (12月 -0.1%)
15:30 (日) 植田日銀総裁、記者会見
17:30 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
19:00 (独) 3月 ZEW景況感 (2月 19.9)
19:00 (欧) 3月 ZEW景況感 (2月 25.0)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算 (1月 133.1万件、予想 143.0万件)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 前月比 (1月 -14.8%、予想 7.4%)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算 (1月 147.0万件、予想 150.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 前月比 (1月 -1.5%、予想 2.0%)
3/20(水)
休場 日本
06:45 (NZ) 10-12月期 経常収支 (7‐9月 -114.65億NZドル)
16:00 (独) 2月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (1月 0.2%)
16:00 (英) 2月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (1月 -0.6%)
16:00 (英) 2月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (1月 4.0%)
16:00 (英) 2月 コアCPI 前年同月比 (1月 5.1%)
16:00 (英) 2月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (1月 4.9%)
17:45 (欧) ラガルドECB総裁、講演
18:30 (欧) レーンECB理事、講演
19:00 (欧) 1月 建設支出 前月比 (12月 0.8%)
19:00 (欧) 1月 建設支出 前年同月比 (12月 1.9%)
22:45 (欧) シュナーベルECB理事、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (欧) 3月 消費者信頼感・速報値 (2月 -15.5)
27:00 (米) FOMC(連邦公開市場委員会) 政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見
3/21(木)
休場 南ア
06:45 (NZ) 10-12月期 GDP 前期比 (7‐9月 -0.3%、予想 0.1%)
06:45 (NZ) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7‐9月 -0.6%、予想 0.1%)
08:50 (日) 2月 通関貿易収支・季調前 (1月 -1兆7583億円、予想 -6344億円)
08:50 (日) 2月 通関貿易収支・季調済 (1月 2353億円、予想 -6594億円)
09:30 (豪) 2月 新規雇用者数 (1月 0.05万人、予想 3.00万人)
09:30 (豪) 2月 失業率 (1月 4.1%、予想 4.0%)
17:30 (独) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 42.5)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 48.3)
18:00 (欧) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 46.5)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 50.2)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調済 (12月 319億ユーロ)
18:30 (英) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 47.5)
18:30 (英) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 53.8)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%)
21:30 (米) 10-12月期 経常収支 (7‐9月 -2003億ドル、予想 -2090億ドル)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 5.2、予想 -2.5)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 181.1万人)
22:45 (米) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 52.2)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 52.3)
23:00 (米) 2月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (1月 -0.4%、予想 -0.3%)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数・年率換算 (1月 400万件、予想 394万件)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数 前月比 (1月 3.1%、予想 -1.5%)
3/22(金)
06:45 (NZ) 2月 貿易収支 (1月 -9.76億NZドル)
08:30 (日) 2月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (1月 2.2%、予想 2.9%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食品除く 前年同月比 (1月 2.0%、予想 2.9%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 3.5%、予想 3.3%)
09:01 (英) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 -21)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 3.4%)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 0.7%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 3.2%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (1月 0.7%)
18:00 (独) 3月 IFO景況指数 (2月 85.5)
26:00 (欧) レーンECB理事、講演
29:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会議参加
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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2024.03.16
来週の為替相場見通し:『来週は日米の金融政策イベントに注目。ドル円は反落リスクに要警戒』(3/16朝)
ドル円は今週初に記録した約1カ月半ぶり安値146.48をボトムに切り返すと、週末にかけて149.18まで急伸しました。
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