ドル円週間見通し 日銀政策修正見通しと米6月利下げ観測で4営業日連続陰線で下落

ドル円は3月5日から8日まで4営業日連続の日足陰線で下落し、2月13日高値150.88円から3月8日安値146.48円までの下げ幅は4.40円となった。

ドル円週間見通し 日銀政策修正見通しと米6月利下げ観測で4営業日連続陰線で下落

日銀政策修正見通しと米6月利下げ観測で4営業日連続陰線で下落

〇先週のドル円、3/8の時事通信社のYCC撤廃報道、米2月雇用統計結果受け一時146.48まで下落
〇米2月雇用統計、NFPは事前予想上回るも、直前2か月分を下方修正、失業率悪化、平均時給伸び率鈍化
〇金利先物市場における米国6月利下げ期待度は7割強、日銀はマイナス金利解除へ徐々に前傾姿勢か
〇147.50超えからは148円前後への上昇を想定するが、148円以上は反落注意
〇146.48割れからは146.00円前後、145.00円前後、144.00円前後を順次試して行く下落を想定する。

【概況】

ドル円は3月8日午後に時事通信社が日銀のYCC撤廃と新たな国債購入枠組みを検討と報じたことで147円を割り込み、8日夜の米2月雇用統計発表後のドル売りで146.48円まで下落し、その後は売り一巡で147円を挟んだ揉み合いの下げ渋りとなった。
日銀によるマイナス金利やYCC撤廃へ向けた地ならし的な発言とそれに同調した報道が続いており、3月6日に時事通信社が「少なくとも1名の委員がマイナス金利解除を提起して議論となる」と報じたことで円高が加速し始め、3月7日には日銀の中川審議委員や植田総裁発言で149円を割り込んだが、8日の時事通信社によるYCC撤廃見通しとの報道が147円割れへのきっかけとなった。
3月8日夜の米2月雇用統計では非農業部門就業者数が予想を上回ったものの直前2か月分が下方修正され、失業率が悪化してインフレ指標の平均時給伸び率が低下したことで6月利下げ期待度が高まりドル安反応を招いたが、日銀による金融緩和からの出口へ向けた動きと米国の利下げ観測がドル円を交互に押し下げている。

【2月米雇用統計、6月利下げ判断に寄与】

3月8日に米労働省が発表した2月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比27万5000人増となり、1月の22万9000人増及びし市場予想の20万人増を上回った。しかし昨年12月分については当初発表から4万3000人下方修正の29万人増とされ、1月分も当初の35万3000人増から12万4000人下方修正されて22万9000人増とされた。2月は堅調だったものの直前の2か月合計で16万7000人の下方修正だったことも踏まえればFRBの利下げ判断を妨げる数字ではないと市場は受け止めた。
失業率は昨年11月から1月まで3.7%が続いていたが2月は3.9%へと悪化しており、昨年4月に3.4%へ低下した後は徐々に悪化している印象を与えた。

インフレ指標である平均時給伸び率は前月比0.1%となり1月の0.5%(速報の0.6%から下方修正)から大きく鈍化して市場予想の0.3%を下回り、前年同月比は4.3%で1月の4.4%(速報の4.5%から下方修正)から鈍化して市場予想の4.4%を下回った。
賃金上昇と帰属家賃及びサービス業のインフレ率高止まりが1月の米CPI上昇率の上振れ要因だったが、賃金上昇が鈍化すれば全体のCPI鈍化傾向もより顕著になり、FRBがインフレ指標として最重視しているPCE(個人消費支出)デフレーターも鈍化を続けて利下げ開始条件を満たして行くのではないかと思われる。パウエルFRB議長は3月6日と7日の議会証言で利下げ判断への慎重さをしめしつつ、確信が深まれば利下げ判断が早まる可能性も示唆している。金利先物市場における6月利下げ期待度は7割強、8日の米雇用統計発表直後は8割に達した。

【日銀はマイナス金利解除へ徐々に前傾姿勢】

日銀によるマイナス金利やYCCの撤廃へ向けた地ならし的な動きが続いている。
2月8日に内副総裁がマイナス金利解除に言及、解除後も短期政策金利の連続的な利上げを想定せずに緩和的な金融環境を維持していくと述べたが、過度の連続利上げへの懸念を抑えつつマイナス金利解除後の具体的なイメージを示したことで利上げへの現実味が高まった。
2月29日には高田審議委員がマイナス金利解除へ向けた検討が必要と述べた。
3月6日には時事通信社が3月会合(3月18-19日)にマイナス金利解除について少なくとも1名の委員が提起して議論されると報じ、3月7日にはブルームバーグ通信が「日銀が3月か4月にマイナス金利解除を判断することを一部政府関係者が容認姿勢」と報じた。

3月7日には日銀の中川審議委員が「2%の物価安定目標の実現に向けて着実に歩を進めている」「目標実現が見通せる状況になればマイナス金利政策の解除とともに長短金利操作や上場投資信託(ETF)の買い入れなどについて修正要否を判断する」と述べて政策転換への前傾姿勢を強く示したが、植田総裁も3月7日の参院予算委員会で「物価目標の実現が見通せる状況に至ればマイナス金利など大規模緩和策の修正を検討する」と言明した。
3月8日に時事通信社は日銀は早ければ3月18-19日の会合でマイナス金利解除と長期金利を0%程度に誘導するYCC(長短金利操作)を撤廃する見通しと報じた。YCC撤廃後は現行の月間で凡そ6兆円規模を継続しつつ、金利急騰局面では大量の国債買い入れを行うことで抑制する方策とするようだが、長期金利目安を0%前後とするような特定水準に対する強固な介入は行わないことになりそうだ。

【米10年債利回りは4営業日連続低下、ダウは頭打ち傾向】

3月8日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の4.08%で終了したが、一時は4.04%まで低下して2月22日に付けた直近のピークである4.35%以降の最低とし、3月5日から4営業日連続低下となり週間では3月1日の4.19%から0.11%低下した。
30年債利回りは前日比0.01%上昇の4.26%で終了した。2月22日の4.51%から低下に転じ、3月7日は一時4.19%まで低下したが8日はやや乱調ながら下げ渋った。
2年債利回りは前日比0.03%低下の4.48%で終了したが、一時は4.41%まで低下して2月23日に付けた直近のピークである4.67%以降の最低とし、週間では3月1日の4.53%から0.05%低下した。
今週は3月12日の米2月CPI発表後の騰落が注目されるが、米国債大量入札もあり、3月11日に3年債(560億ドル)、12日に10年債(390億ドル)、13日に30年債(220億ドル)の入札が予定されている。

一方でNYダウは前日比68.66ドル安と3日ぶりに下落したが、2月23日に39282.28ドルの史上最高値を付けた後は上昇も頭打ちであり、8日は半導体大手エヌビディア株の下落などハイテク株の下落が目立ち、不動産融資で信用不安に陥っている米地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)が6.6%安となり預金流出が始まっているとの報道もあり、昨年10月後半からの上昇一巡感も出ている。ナスダック総合指数も188.27ポイント安で3日ぶり反落、3月7日に史上最高値を更新したばかりだが高値警戒感も出やすい水準と思われる。米国株安が日本株安に波及すればドル円の下落圧力になる。

【昨年12月28日以降の上昇一巡感、二重のダブル天井を形成か】

【昨年12月28日以降の上昇一巡感、二重のダブル天井を形成か】

ドル円は3月5日から8日まで4営業日連続の日足陰線で下落し、2月1日の反落時に下値支持線となった26日移動平均を3月6日に割り込み、8日は52日移動平均も割り込み2月13日高値150.88円から3月8日安値146.48円までの下げ幅は4.40円となった。
昨年の1月16日安値127.22円から3月8日高値137.91円まで10.70円の上昇幅となったところからの下落時は、下値支持線の26日移動平均割れから52日移動平均割れへ進み、3月24日安値129.63円まで8.28円の下げ幅となった。昨年6月30日高値145.06円から反落した際も26日移動平均と52日移動平均を順次割り込んで7月14日安値137.24円までの下げ幅は7.82円となった。

昨年12月28日から今年2月13日までの上昇幅は10.64円であり、現状は26日移動平均、62日移動平均を割り込んで直前の上昇幅に対して凡そ4割を削ったところだが、昨年3月と7月の下落規模を踏まえれば、今回も8円前後規模の下落幅とすれば143円前後へ続落する可能性もあり得るところと思われる。
しかし、より中期的に見れば2022年10月21日高値151.94円と2023年11月13日高値151.90円がダブル天井型となり、ダブル天井の右側もまた昨年11月13日高値と今年2月13日高値150.88円がダブル天井型となり、二重のダブル天井形成により下落規模が昨年11月13日高値から12月28日安値までの下げ幅11.66円、あるいは2022年10月21日高値から2023年1月16日安値までの下げ幅24.73円等のような規模へ拡大してゆく可能性も考えておく必要があるかもしれない。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月8日夜安値146.48円を下値支持線、147.50円を上値抵抗線とする。
(2)大幅下落後の反動高もあり得るところとし、147.50円超えからは148円前後(147.80円から148.20円)への上昇を想定するが、148円以上は反落注意とし、その後に147円を割り込むところからは一段安へ向かう流れとみる。
(3)146.48円割れからは146.00円前後、145.00円前後、144.00円前後を順次試して行く下落を想定する。

【当面の予定】

3/11(月)
米予算教書
中国の全人代閉幕
08:50 (日) 10-12月期 GDP・改定値 前期比 (速報 -0.1%、予想 0.3%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP・改定値 年率換算 (速報 -0.4%、予想 1.1%)
欧米は特に無し

3/12(火)
OPEC月報
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.0%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 0.2%)
08:50 (日) 1-3月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (10-12月 4.8)
08:50 (日) 1-3月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (10-12月 5.7)
09:30 (豪) 2月 NAB企業景況感指数 (1月 6)
16:00 (独) 2月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (1月 0.4%)
16:00 (独) 2月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (1月 2.5%)
16:00 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 3.8%)

21:30 (米) 2月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (1月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (1月 3.1%、予想 3.1%)
21:30 (米) 2月 コアCPI・食品・エネルギー除く 前月比 (1月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 コアCPI・食品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 3.9%、予想 3.7%)
26:00 米財務省10年債入札
27:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -219億ドル)

3/13(水)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 -0.1%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.6%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 0.6%)
16:00 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.8%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -139.89億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支 (12月 -26.03億ポンド)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 2.6%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 1.2%)
23:30 EIA週間石油在庫統計
26:00 米財務省30年債入札

3/14(木)
21:30 (米) 2月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (1月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (1月 0.9%)
21:30 (米) 2月 コアPPI・食品・エネルギー除く 前月比 (1月 0.5%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 コアPPI・食品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 2.0%)
21:30 (米) 2月 小売売上高 前月比 (1月 -0.8%、予想 0.6%)
21:30 (米) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 -0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 190.6万人)
23:00 (米) 1月 企業在庫 前月比 (12月 0.4%、予想 0.3%)

3/15(金)
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 0.7%)
21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 -2.4、予想 -8.0)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 0.8%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 輸出物価指数 前月比 (1月 0.8%、予想 0.1%)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.0%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 78.5%、予想 78.4%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (2月 76.9、予想 77.5)

注:ポイント要約は編集部

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