ドル円見通し 日銀マイナス金利解除への地ならし続き一時147.50円台へ下落
〇ドル円、3/7午前に日銀の中川審議委員発言を受け148.50を割り込み、夜147.58まで安値を切り下げる
〇3/7の日銀の中川審議委員の発言等、マイナス金利解除への地ならし的な発言や報道続く
〇FRBパウエル議長は利下げに対して前向き、昨日発言した他のFRB関係者はまだ慎重姿勢示す
〇米長期債利回りは総じて低下、米株価は続伸、ナスダックは史上最高値更新
〇148.50以下での推移中は下向きとし、147.50割れからは147円前後試しを想定する
〇147円台中盤でしっかりし、148.50を超えるところから149円前後への上昇を想定する
【概況】
ドル円は3月6日夕刻に一部メディアが「日銀の3月会合で一部出席者がマイナス金利解除が妥当と意見表明する見通し」と報じたことをきっかけに149円台序盤へ下落し、6日夜の米2月ADP全米雇用報告での就業者数が予想を下回り、パウエルFRB議長が下院議会証言で年内の利下げ姿勢を示したことによるドル全面安で7日未明には149.09円まで一段安していたが、7日は午前に日銀の中川審議委員がマイナス金利解除へ向けた前向き姿勢を示したことで148.50円を割り込み、7日夜には147.58円まで安値を切り下げた。
FRBのパウエル議長は前日の下院議会証言に続いて上院で議会証言を行い、インフレ低下の確信を得るまでにはそう遠くないと述べたことで6月利下げ開始期待度が高まり、ECB理事会が政策金利を据え置いて政策修正議論を開始する姿勢を示したものの今回は利下げ議論をしなかったと述べたことでユーロドルが急伸、ドル円の急落も重なりポンドや豪ドルも大幅上昇してドル全面安となった。
【日銀のマイナス金利解除への動き強まる】
日銀の中川審議委員は3月7日の講演と会見で、「2%の物価安定目標の実現に向けて着実に歩を進めている」「目標実現が見通せる状況になればマイナス金利政策の解除とともに長短金利操作や上場投資信託(ETF)の買い入れなどについて修正要否を判断する」と述べ、軌道修正に前向きな姿勢を示した。
時事通信社が3月6日に3月会合(3月18-19日)にマイナス金利解除について少なくとも1名の委員が提起して議論されると報じたが、3月7日はブルームバーグ通信が「日銀が3月か4月にマイナス金利解除を判断することを一部政府関係者が容認姿勢」と報じた。
日銀の植田総裁は7日の参院予算委員会で「物価目標の実現が見通せる状況に至ればマイナス金利など大規模緩和策の修正を検討する」と改めて述べて春闘結果に注目しているとしたが、連合は3月7日夕に傘下労組の要求賃上げ率が平均5.85%となり30年振りに5%を超えたと発表し、賃上げ進展により日銀のマイナス金利解除の条件が整いつつある印象を与えた。
2月29日の高田審議委員によるマイナス金利解除へ向けた検討が必要との発言から連日にわたりマイナス金利解除への地ならし的な発言と報道が続いているため、早ければ3月会合、遅くとも4月会合で日銀が利上げに踏み込む可能性が濃厚となりつつある印象だ。
【FRBの利下げ、議長は前向き、他はまだ慎重姿勢】
パウエルFRB議長は3月6日の下院議会証言で年内の利下げが適切と述べたが、7日の上院証言では利下げ開始の条件となるインフレ低下を確信するまで「そう遠くない」、「インフレは極めて急速に低下した」と述べたことで6月利下げ期待度は高まっている。
ただし、クリーブランド連銀のメスター総裁は7日に年内のある時点で利下げに踏み切るとの見通しをしめしつつも、「現時点でより大きなリスクは性急すぎる利下げだ」と述べて早計な利下げをけん制した。FRBのボウマン理事もインフレ低下で利下げへ向かうというベースラインは変わらないとしたものの「利下げすべき段階にまだ至っていない」「将来的に一段の利上げが必要になる可能性がある」とけん制している。
【米10年債利回りは3営業日連続低下、ダウは続伸、ナスダック総合指数は史上最高値更新】
3月7日の米長期債利回りは総じて低下した。3月8日の米雇用統計が低調なら利下げ期待が一段と強まる可能性があるとみて債券買い・利回り低下の動きがみられた。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%低下の4.09%となり、3月5日の0.06%低下、6日の0.05%低下から続落となり、一時4.05%をつけて2月22日に付けた4.35%以降の最低を更新した。
30年債利回りは3月5日に0.06%低下、6日に0.06%低下とし、7日も一時4.20%をつけて2月22日につけた4.51%以降の最低としたがその後持ち直して前日比0.01%上昇の4.25%で終了した。
2年債利回りは0.05%低下の4.51%となり、一時4.50%をつけて2月23日に付けた4.76%以降の最低を更新した。
一方でNYダウの3月7日は前日比130.30ドル高と上昇して6日の75.86ドル高からから続伸したが3月5日の前日比404.64ドル安の解消には至らず、ナスダック総合指数は241.84ポイント高と上昇して6日の91.95ポイント高から連騰となり、高値で16309.02を付けて史上最高値を更新した。いずれも楽観的な上昇基調の範囲にあり、今夜の米雇用統計から上昇が勢い付くか注目される。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は2月29日未明高値150.84円で2月14日早朝高値150.88円に迫ったところから下落に転じ、3月1日未明安値149.20円までを一段目の下げとし、3月1日深夜高値150.71円まで戻したところを起点として二段目の下落期に入っている。今夜の米雇用統計次第では一段安へ進む可能性があるが、連日の下落に対する修正高も入りやすいところであり、直前安値から1円を超える反発がみられる場合や148.50円を超えるところからはいったん戻しに入るとみて8日の日中から12日の日中にかけての間への上昇を想定するが、戻した後にこの間の安値を更新するところからは新たな下落期入りとなる点に注意する。米雇用統計前に買い戻されてから一段安する場合には3月13日から15日にかけての間へ下落期が長引くことも考えられる。
60分足の一目均衡表では、3月5日夜の下落時に遅行スパンが悪化して5日深夜には先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、遅行スパンが好転するところからはいったん戻しに入るとみる。ただし先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開と一段安を想定する。
60分足の相対力指数は3月7日夜に20ポイント弱まで下げてから戻したものの40ポイントに届かずにいる。40ポイントを下回るうちは20ポイント以下を再び試すとみるが、相場が一段安する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰入り注意とし、45ポイント超えからは60ポイント前後への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、147.50円を下値支持線、148.50円を上値抵抗線とする。
(2)148.50円以下での推移中は下向きとし、147.50円割れからは147円前後試しを想定する。147円前後は買われやすいとみるが、147円割れからさらに続落する場合は146円台中盤(146.65円から146.35円)へ下値目途を引き下げる。
(3)147円台中盤でしっかりし、148.50円を超えるところからは反騰入りとみて149円前後への上昇を想定するが、一時的な反騰後に反騰幅の半値以上を解消する場合は戻り一巡による下げ再開を疑う。
【当面の予定】
3/8(金)
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI・速報値 (12月 110.2、予想 109.7)
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI・速報値 (12月 115.9、予想 110.2)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー現状判断 (1月 50.2、予想 50.6)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー先行判断 (1月 52.5、予想 52.2)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.6%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -3.0%、予想 -4.8%)
16:00 (独) 1月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (12月 -1.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・確定値 前期比 (改定値 0.0%、予想 0.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・確定値 前年同期比 (改定値 0.1%、予想 0.1%)
21:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会
22:30 (米) 2月 非農業部門雇用者数 前月比 (1月 35.3万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 3.7%、予想 3.7%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.6%、予想 0.3%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 4.5%、予想 4.4%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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