ドル円見通し 米ISMサービス業景況指数悪化で150円を割り込む(24/3/6)

ドル円は、3月5日夜は米長期債利回り低下を見て150円を割り込み、深夜の米2月ISMサービス業景況指数の悪化により149.69円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 米ISMサービス業景況指数悪化で150円を割り込む(24/3/6)

米ISMサービス業景況指数悪化で150円を割り込む

〇ドル円、3/5深夜 米ISMサービス業景況指数の悪化で149.69まで下落
〇3/6午前序盤、150円割り込む。149円台維持しつつ151円手前で売られる持ち合いの範囲で推移か
〇市場の関心は3/6と3/7に行われるパウエルFRB議長の議会証言に集まる
〇3/5の米長期債利回り、ISMサービス業景況指数の悪化がFRBへの利下げ催促要因となり総じて低下
〇NYダウは続落、ハイテク株が総じて連鎖安。高値警戒感が強まっている印象
〇150.25以下での推移中は一段安余地あり、149.69割れからは3/1未明安値149.20前後への下落を想定
〇150.25超えを強気転換注意とし、150.50超えからは150.70台、150.80台を順次試す上昇を想定

【概況】

ドル円は2月29日の高田日銀審議委員によるマイナス金利解除への言及により3月1日未明安値149.20円へ急落したところから3月1日夜高値150.71円まで反騰し、1日深夜の米ISM製造業景況指数とミシガン大消費者信頼感指数の悪化によるドル売りで3月4日午前に149.82円まで反落したところを買われて4日夜と5日午前に150.56円を付けたもののその後は伸びず、3月5日夜は米長期債利回り低下を見て150円を割り込み、深夜の米2月ISMサービス業景況指数の悪化により149.69円まで安値を切り下げた。目先の売り一巡でいったん150.22円まで戻したものの3月6日午前序盤に150円を割り込んでいる。

市場の関心は3月6日と7日に行われるパウエルFRB議長の議会証言に集まるが、今週末の米2月雇用統計へ向けて米重要指標の発表も相次ぎ、3月6日夜には2月ADP全米雇用報告と1月JOLTS求人件数の発表がある。米国の3月利下げ期待はほぼ解消したが5月利下げの可能性がまだくすぶり6月利下げ期待度は高い。一方で日銀によるマイナス金利解除への地ならしも進んでいることやNYダウが急落したことによるリスク回避的な円高へのバイアスもかかりやすい。当面は149円台を維持しつつ151円手前で売られる持ち合いの範囲で推移すると思われるが、持ち合い放れへ進むきっかけをつかむ可能性もあるところと注目したい。

【米ISMサービス業景況指数悪化】

3月5日にISM(米サプライ管理協会)が発表した2月の米サービス業景況指数は52.6となり1月の53.4から大幅に悪化して市場予想の53.0も下回った。内訳では事業活動が55.8から57.2へ、新規受注が55.0から56.1へ改善したものの、雇用は50.5から48.0へ悪化、納品も52.4から48.9へ悪化、価格は64.0から58.6へ大幅に低下した。
3月1日に発表された2月のISM製造業景況指数が1月の49.1から47.8へ悪化して市場予想の49.5を大幅に下回ったことが1日深夜からのドル安要因だったが、製造業では強弱分岐点の50を16か月連続で割り込んでいる。サービス業のインフレ率が高いことでFRBの利下げ判断も躊躇されている状況にあるが、サービス業の景況感が悪化し始めていることでFRBの利下げ判断に寄与すると市場は受け止めた印象だ。

ISM統計前に発表されたS&Pグローバルによる2月の米サービス業PMI確報値は52.3となり速報値の51.3から上方修正されたが1月確報値52.5からは若干低下した。2月総合PMIは速報の51.4から52.5へ上方修正されて1月確報値の52.0を上回ったが、市場の反応は鈍かった。

【米長期債利回りは低下、ダウは続落】

3月5日の米長期債利回りはISMサービス業景況指数の悪化等で総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.06%低下の4.16%で終了したが、一時は4.11%まで低下して2月22日に付けた直近のピークである4.35%以降の最低とした。
30年債利回りは前日比0.06%低下の4.30%となり、一時4.27%をつけて直近のピークである2月22日の4.51%以降の最低とした。
2年債利回りは2月23日に4.76%へ上昇して直近のピークとし、2月27日から3月1日まで4営業日続落して一時4.52%まで低下し、3月4日は連続低下後の反動で0.07%上昇と戻したものの5日の反落により反騰入りへ進めずにいる。3月1日の米ISM製造業景況指数とミシガン大消費者信頼感指数の悪化、5日の米ISMサービス業景況指数の悪化がFRBに対する利下げ催促要因として米長期債利回り低下を招いており、今後の米経済指標が冴えないなら利回り低下傾向が顕著になることも考えられる。

一方でNYダウは3月5日に前日比404.64ドルの大幅下落となり一時は500ドル安を超えた。3月4日の97.55ドル安からの続落だが、4日はアップルに対する欧州委員会による巨額制裁金が売り材料となり、5日はiPhoneの販売低調でアップルが続落、ハイテク株が総じて連鎖安となりインテルが5.4%安、マイクロソフトが3.0%安、アップルが2.8%安、アマゾンが2.0%安と下げが目立っ。ナスダック総合指数も267.92ポイント安となり3月4日の67.43ポイント安から続落した。
先行きの金融緩和を楽観した上昇で米国株価指数は史上最高値更新へ進んできたが、足元の業績悪化への警戒感、米地銀不安、これまでの高金利による景気への影響も意識されて高値警戒感が強まっている印象だが、株安によるリスク回避感がドル円に波及すると円高へ進みやすくなる。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は3月1日未明安値149.20円からの反騰が3月4日夜高値150.56円で頭打ちとなり6日未明には149.69円へ急落し、その後の戻りも続かずに150円を割り込んでいる。目先は下振れしやすい局面とみて6日の日中から8日未明にかけての間への下落余地ありとするが、150.25円超えを強気転換注意とし、150.50円超えからは上昇期入りとみて7日夜から11日夜にかけての間への上昇を想定する。パウエル議長の議会証言や米経済指標内容次第では波乱もあると注意する。

60分足の一目均衡表では、3月5日夜の下落時に遅行スパンが悪化して深夜には先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇期入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は3月6日未明への下落時に30ポイントを割り込みその後の戻りも40ポイント前後で抑えられているのでまだ20ポイント前後への低下を伴う下落余地ありとみるが、50ポイント超えからは反騰入りとみて60ポイント台前半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月6日未明安値149.69円を下値支持線、150.25円を上値抵抗線とする。
(2)150.25円以下での推移中は一段安余地ありとし、149.69円割れからは3月1日未明安値149.20円前後への下落を想定する。149.20円前後は買われやすいとみるが、FRB議長講演や米経済指標次第では149円割れを試す可能性もあると注意する。
(3)150.25円超えを強気転換注意とし、150.50円超えからは150.70円台、150.80円台を順次試す上昇を想定する。150.80円以上は反落警戒とするが、150.25円を上回っての推移なら7日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

3/6(水)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 222億ユーロ、予想 215億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -0.8%、予想 -1.3%)
22:15 (米) 2月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (1月 10.7万人、予想 15.0万人)
23:45 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.00%)
24:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 0.7%、予想 0.5%)
24:00 (米) 1月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (12月 902.6万件、予想 890.0万件)
24:00 (米) パウエルFRB議長、下院金融委員会証言
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

3/7(木)
未 定 (中) 2月 貿易収支・米ドル (1月 753.4億ドル、予想 1070.0億ドル)
未 定 (中) 2月 貿易収支・人民元 (1月 5409.0億元)
06:15 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会
06:45 (NZ) 10-12月期 製造業売上高 前期比 (7‐9月 -2.8%)
08:30 (日) 1月 勤労統計-現金給与総額 前年同月比 (12月 1.0%、予想 1.3%)
09:30 (豪) 1月 貿易収支 (12月 109.59億豪ドル、予想 115.00億豪ドル)
10:30 (日) 中川日銀審議委員、講演、14:30 記者会見
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 8.9%)、予想 -6.0%
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前年同月比 (12月 2.7%、予想 -5.5%)
22:15 (欧) 欧州中銀 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)

22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 3.2%、予想 3.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 190.5万人)
22:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -622億ドル)
22:45 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、記者会見
24:00 (米) パウエルFRB議長、上院銀行委員会証言
25:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 (12月 15.6億ドル)



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