ドル円見通し 150円割れを買い戻されたが3月1日深夜高値超えには至らず
〇ドル円、3/4午前に149.82まで下げたものの150円割れは買い戻される
〇米長期債利回りが低下一巡で反発したこと、アトランタ連銀総裁発言等により夜に150.56まで戻す
〇アトランタ連銀総裁、7月利下げ後の連続利下げに対する否定的見解示す
〇米長期債利回りは先週末にかけての低下が一巡し総じて上昇、NYダウ・ナスダックともに下落
〇150.56超えからは、150.70台、150.80台を順次試す上昇を想定する
〇149.82割れからは、149円台中盤(149.65から149.35)への下落を想定する
【概況】
ドル円は2月29日未明に150.84円を付けて2月14日早朝高値150.88円に迫った後、神田財務官による円安けん制と日銀の高田審議委員によるマイナス金利解除へ向けた議論を始める必要性への言及をきっかけに150円を割り込み、29日夜の米1月PCEデフレーターが鈍化したことで3月1日未明安値149.20円まで大幅下落したが、急落後の反動高と日銀の植田総裁による「物価の目標の達成は見通せる状況に至っていない」との発言で3月1日夜高値150.71円まで戻した。
3月1日深夜の米ISM製造業景況指数やミシガン大消費者信頼感指数が予想以上に悪化したことによるドル売りで2日早朝に150円台序盤へ下落し、週明けの3月4日午前に149.82円まで下げたものの150円割れを買い戻され、米長期債利回りが低下一巡で反発したことやアトランタ連銀総裁のタカ派的発言等により4日夜には150.56円まで戻した。
3月4日は主要な米経済指標の発表がなく手掛かりに欠けたが、3月6日と7日にはパウエルFRB議長による議会証言があり、ADP民間雇用、JOLTS求人件数、ISMサービス業景況指数、8日の米2月雇用統計へと重要指標の発表も相次ぐ。
【アトランタ連銀総裁、7月利下げ後は様子見との姿勢】
3月1日夜の米ISM製造業景況指数とミシガン大消費者信頼感指数の悪化により米金利先物市場における6月利下げ期待が高まったが、FRB内でタカ派として知られるアトランタ連銀のボスティック総裁は3月4日に「米国の堅調な労働市場と経済を踏まえればFRBに利下げを急がせる圧力なく、勝利宣言は時期尚早」とし、「インフレ率が2%に向けて低下するとの確信を得て初めて利下げ開始が適切となる」と慎重姿勢を改めて強調した。
同総裁は「今年7‐9月期に利下げを始めるのが適切」とし、最初の米利下げ後には利下げを休止するのが適切として連続利下げに対する否定的見解を示し、量的引き締めのペースを段階的に落とすテーパリングも急いで始める必要はなく当面は現行ペースを続ける方が良いとした。
昨年末に3月利下げ期待が9割を超えてマックスとなり、その後のFRB高官や地区連銀総裁らによる早期利下げ期待へのけん制が相次いだことと1月の米CPI上昇率が予想を上回ったことで3月利下げ期待はほぼ消えた。しかし5月利下げへの期待は多少残り、6月利下げ開始期待は高水準を保っている。
ドル円としては遅かれ早かれ米国が利下げ期に入り、日銀がマイナス金利解除等へ向かうとの見通しを踏まえれば円高へ傾斜してもよいところであり、151円手前の上値抵抗感は大きいままだが、2月29日午前から3月1日未明にかけての急落でも149円台序盤を維持して持ち直したように、日銀がマイナス金利等を解除しても金融緩和的な状況は暫く続くとの見方や株高によるリスクオン優勢の市場心理を背景とした円売り圧力も健在のため、149円台から151円手前までのレンジで持ち合いを続けているという印象だ。日米金融政策の差がドル円を持ち合い放れへ進ませる水準に達するか試されるところだ。
【米長期債利回りは反発、ダウは反落】
3月4日の米長期債利回りは先週末にかけての低下が一巡したことで総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.04%上昇の4.22%となった。2月28日から3月1日まで3営業日連続の低下で3月1日には4.18%をつけて2月22日の4.35%以降の安値としたが、今後の重要イベントを控えて低下一巡とし、アトランタ連銀総裁のタカ派的発言もあって戻した。
30年債利回りも同じく3営業日続落して3月1日に4.33%へ低下したが3月4日は前日比0.03%上昇の4.36%とし、2年債利回りは先週末比0.07%上昇の4.61%へ戻した。
一方で3月4日のNYダウは先週末比97.55ドル安と下落、ナスダック総合指数は67.43ポイント安と下落した。先週末までの上昇一服による修正安だが、欧州委員会が巨額制裁金を科すIT大手アップルが急落、格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスが地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)の長期発行体格付けを4段階引き下げたことで同社株が23.1%安と急落したことも影響したようだ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は3月1日未明安値149.20円から反騰し、3月4日午前の150円割れを買い戻されているため、3月4日午前安値149.82円を割り込まないうちは3月5日の日中から7日未明にかけての間への上昇余地ありとするが、150.15円割れを弱気転換注意とし、3月4日午前安値割れからは戻り一巡による下落期入りとして5日夜から8日未明にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、3月4日午前の下落時は先行スパンからの転落を回避して3月4日夜への上昇で遅行スパンが好転したが、2月29日未明高値からは戻り高値切り下がり基調にあるため遅行スパンは再び悪化しやすい位置にある。
先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後の好転から上昇再開とみるが、先行スパンから転落する場合は3月1日未明からの戻り一巡による下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月5日早朝に60ポイントまで戻したものの50ポイント割れに余裕が乏しい。50ポイントを割り込んでも早々に回復するうちは上昇余地ありとし、次の60ポイント超えからは70ポイントに迫る上昇を想定するが、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月4日午前安値149.82円を下値支持線、3月4日夜高値150.56円を上値抵抗線とする。
(2)150.15円を上回るうちは反騰継続の可能性ありとし、150.56円超えからは150.70円台、150.80円台を順次試す上昇を想定する。150.70円以上は反落注意とするが、150.15円を上回っての推移なら6日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)150.15円割れからは下向きとし、149.82円割れからは149円台中盤(149.65円から149.35円)への下落を想定する。149.50円以下は買われやすいとみるが、150.15円以下での推移なら6日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
3/5(火)
中国、全国人民代表大会(全人代)開幕
米大統領選挙「スーパーチューズデー」
10:45 (中) 2月 財新サービス業PMI (1月 52.7)
13:00 (日) 植田日銀総裁、会合挨拶
17:55 (独) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.2、予想 48.2)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 50.0、予想 50.0)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 54.3、予想 54.3)
19:00 (欧) 1月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (12月 -0.8%、予想 -0.1%)
19:00 (欧) 1月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (12月 -10.6%、予想 -8.1%)
23:45 (米) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 51.3、予想 51.4)
24:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 0.2%、予想 -2.9%)
24:00 (米) 2月 ISM非製造業景況指数 (1月 53.4、予想 53.0)
26:00 (米) バーFRB副議長、討論会参加
3/6(水)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前期比 (7‐9月 0.2%、予想 0.2%)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7‐9月 2.1%、予想 1.5%)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 222億ユーロ、予想 215億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -0.8%、予想 -1.3%)
22:15 (米) 2月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (1月 10.7万人、予想 14.5万人)
23:45 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.00%)
24:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 0.7%)
24:00 (米) 1月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (12月 902.6万件、予想 890.7万件)
24:00 (米) パウエルFRB議長、下院金融委員会証言
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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