1月19日高値を超えた一段高状態での持ち合いを維持
〇先週のドル円、日銀高田審議委員のタカ派発言、米PCEデフレーター鈍化に149.20まで下落
〇その後は植田日銀総裁のハト派発言に150.71まで切り返すも週末の米指標不冴えに150.11に下落
〇ドル円、151円手前で売られつつ149円台で買われる持ち合い続く
〇150.37超えからは反騰入り3/1深夜高値150.71から2/14早朝高値150.88にかけての水準を試す
〇149.70割れからは149円台序盤(149.25円から149.00円)への下落を想定
【概況】
ドル円は2月29日午前に日銀の高田審議委員がマイナス金利解除へ向けた議論を始める必要性に言及したことをきっかけに急落して150円を割り込み、29日夜の米1月PCEデフレーターが12月から鈍化したことで3月1日未明安値149.20円まで大幅下落したが、当面の売り一巡とG20財務相・中央銀行総裁会議後の会見で植田日銀総裁が「物価の目標の達成は見通せる状況に至っていない」と述べたことで買い戻されて3月1日夜には150.71円まで切り返した。高田審議委員発言による円高をひとまず解消したが、3月1日深夜の米ISM製造業景況指数やミシガン大消費者信頼感指数が予想以上に悪化したことによるドル売りで2日早朝に150.11円まで反落する乱調な展開となった。
【米ISM製造業景況指数とミシガン大消費者信頼感指数が悪化】
3月1日に米ISM(サプライ管理協会)が発表した2月の米製造業景況指数は47.8となり1月の49.1から悪化して市場予想の49.5を大幅に下回った。強弱分岐点の50を16か月連続で割り込んでおり、高金利状態が続く中での景気鈍化傾向が示された。新規受注は52.5から49.2へ、生産が50.4から48.4へ、雇用が47.1から45.9へ悪化し、価格も52.9から52.5へ低下した。
米ミシガン大による2月消費者信頼感指数の確報値は76.9となり速報の79.6から大幅な下方修正で市場予想の79.6を大幅に下回り、1月確報値の79.0から悪化した。現況指数は1月の81.9から79.4へ、期待指数は77.1から75.2へ悪化した。1年先期待インフレ率は1月の2.9%から3.0%へわずかに上昇し、5年先期待インフレ率は1月と変わらない2.9%だった。
【米長期債利回りは低下、ダウは連騰】
3月1日の米長期債利回りは低調な米経済指標を受けて総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.30%まで上昇したものの米経済指標発表後の反落で前日比0.07%低下の4.18%で終了した。2月28日からは3営業日続落となり、2月22日の4.35%以降の安値を更新した。
30年債利回りは前日比0.05%低下の4.33%となり、2月28日から3営業日続落で2月21日に付けた直近のピークである4.51%以降の最低とした。
2年債利回りは前日比0.08%低下の4.54%となり、2月27日から4営業日続落で2月23日に付けた直近のピークである4.76%以降の最低とした。
【151円手前で売られつつ149円台で買われる持ち合い】
2月13日夜の米1月CPI上昇率が予想を上回ったことにより米国の早期利下げ期待が大幅に後退したとして急伸して2月14日早朝に150.88円を付けた後は、2月27日未明高値150.83円、2月29日未明高値150.84円と高値更新に至らず、3月1日深夜高値も150.71円に留まり151円手前の上値抵抗感はかなり厚いが、日銀のマイナス金利解除への地ならし的な動きによる円高でも149円台序盤を維持したことで、2月13日以降は149円台を下値支持帯としつつ151円手前で売られる持ち合いを継続し、1月19日高値148.80円を超えて一段高した状況は維持されている印象だ。
2月29日の急落時安値149.20円は当日の26日移動平均(149.22円)割れを回避したが、2月1日の反落時も同線が下値支持線として機能しており、昨年12月28日安値140.24円を起点とした上昇トレンドは維持されている。ただし、149円を割り込んで続落する場合は同線による下値支持線からの転落となり昨年12月28日以降の上昇一巡としていったん大きめの調整安に入り、52日移動平均(現在147.02円)などを試す可能性が出てくると思われる。
昨年末からはFRB高官や地区連銀総裁らによる早期利下げ期待へのけん制が続いてきたが、市場はすでに織り込んでおり、先週は高官らの発言も年内利下げを肯定するようにややハト派色も見られる。3月6日と7日には米FRBのパウエル議長による米上下両院での議会証言がある。FRBとしては利下げを急ぐことによるインフレ再燃リスクと利下げを先延ばしすることによる景気悪化リスクを天秤にかけているところだが、議長証言で6月FOMCでの利下げ期待度がより高まるのか注目される。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月1日未明安値149.20円から1日深夜高値150.71円までの上昇幅に対する3分の2押しラインとなる149.70円を下値支持線とし、3月2日早朝安値150.04円までの反落幅に対する半値戻しライン150.37円を上値抵抗線とする。
(2)150.37円超えからは反騰入りとみて3月1日深夜高値150.71円から2月14日早朝高値150.88円にかけての水準を試す上昇を想定する。150.70円以上は反落注意とするが、150円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは3月4日深夜から6日深夜にかけての間への上昇余地ありとみる。米経済指標やパウエルFRB議長発言等をきっかけとして150.88円を超える場合は151円台前半へ上値目途を引き上げる。
(3)149.70円割れからは149円台序盤(149.25円から149.00円)への下落を想定する。149.20円以下は反騰注意とするが、149.70円を割り込んだ後も150円以下での推移が続く場合は5日夜から8日未明にかけての間への下落を想定する。いったん戻した後に米経済指標等により149円を割り込む場合は来週前半にかけての148円台前半への下落を想定する。
注:ポイント要約は編集部
【当面の予定】
3/4(月)
中国人民政治協商会議
豪ASEAN首脳会議(3月6日まで)
08:50 (日) 10-12月期 ソフトウェア含む全産業設備投資額 前年同期比 (7‐9月 3.4%)
08:50 (日) 2月 マネタリーベース 前年同月比 (1月 4.8%)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 -9.5%)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
3/5(火)
中国、全国人民代表大会(全人代)開幕
米大統領選挙「スーパーチューズデー」
08:30 (日) 2月 東京CPI(消費者物価指数)・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 1.6%)
09:30 (豪) 10-12月期 経常収支 (7‐9月 -2億豪ドル)
10:45 (中) 2月 財新サービス業PMI (1月 52.7)
13:00 (日) 植田日銀総裁、会合挨拶
17:55 (独) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 48.2)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 50.0)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 54.3)
19:00 (欧) 1月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (12月 -0.8%)
19:00 (欧) 1月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (12月 -10.6%)
23:45 (米) 2月 サービス業PMI・改定値 (速報 51.3)
24:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 0.2%)
24:00 (米) 2月 ISM非製造業景況指数 (1月 53.4)
26:00 (米) バーFRB副議長、討論会参加
3/6(水)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前期比 (7‐9月 0.2%)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7‐9月 2.1%)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 222億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.1%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -0.8%)
22:15 (米) 2月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (1月 10.7万人)
23:45 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.00%)
24:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 0.7%)
24:00 (米) 1月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (12月 902.6万件)
24:00 (米) パウエルFRB議長、下院金融委員会証言
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
3/7(木)
未 定 (中) 2月 貿易収支・米ドル (1月 753.4億ドル)
未 定 (中) 2月 貿易収支・人民元 (1月 5409.0億元)
06:15 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会
06:45 (NZ) 10-12月期 製造業売上高 前期比 (7‐9月 -2.8%)
08:30 (日) 1月 勤労統計-現金給与総額 前年同月比 (12月 1.0%)
09:30 (豪) 1月 貿易収支 (12月 109.59億豪ドル)
10:30 (日) 中川日銀審議委員、講演、14:30 記者会見
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 8.9%)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前年同月比 (12月 2.7%)
22:15 (欧) 欧州中銀 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 3.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 190.5万人)
22:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -622億ドル)
22:45 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、記者会見
24:00 (米) パウエルFRB議長、上院銀行委員会証言
25:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 (12月 15.6億ドル)
3/8(金)
08:30 (日) 1月 全世帯消費支出 前年同月比 (12月 -2.5%)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調済 (12月 1兆8100億円)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調前 (12月 7443億円)
08:50 (日) 1月 貿易収支・国際収支ベース (12月 1155億円)
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI・速報値
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI・速報値
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー現状判断 (1月 50.2)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー先行判断 (1月 52.5)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.6%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -3.0%)
16:00 (独) 1月 PPI(生産者物価指数)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・確定値 前期比 (改定値 0.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・確定値 前年同期比 (改定値 0.1%)
21:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会
22:30 (米) 2月 非農業部門雇用者数 前月比 (1月 35.3万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 3.7%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.6%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 4.5%)
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.03.04
ドル円 次の方向性示すような展開にも要注意(週報3月第1週)
先週のドル/円相場はドルが冴えない。150円後半からの上値が重く、週足も5週間ぶりの陰線引けを記録している。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.03.02
来週の為替相場見通し:『ドル円は上下するも方向感見出せず。来週は議会証言と雇用統計に注目』(3/2朝)
ドル円は心理的節目150.00を挟んで乱高下しましたが、週を通して方向感を見出すには至りませんでした。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。