米CPI発表後の円売り一巡、151円台へ乗せには慎重
〇ドル円、CPI後の急伸を受けた円安けん制発言で円売りが一巡した後、ジリ安推移で150.34まで下落
〇本日未明150.75まで戻すも高値更新へは進めず、再び150.34まで下げるなど上値重い
〇CPI上昇、FRB高官ら反応に温度差、シカゴ連銀総裁は利上げ状態が長引くことへの懸念を示す
〇米10年債利回りは急上昇後の修正安、NYダウ、CPI受けた大幅下落後の買い戻し
〇今夜は米1月小売等の重要指数発表相次ぐ、景気減速感を示す内容の場合ドル安へと進みやすいか
〇150円以上での推移中は一段高余地ありとし、150.88超えからは151円台前半への上昇を想定
〇150.30割れからは下向きとし、150円割れから続落の場合は149.50前後への下落を想定
【概況】
ドル円は2月13日夜の米CPI発表後に直前安値149.26円から14日早朝高値150.88円へ急伸して昨年12月28日安値140.24円以降の高値を更新したが、14日朝の神田財務官による円安けん制もあり円売り一巡として14日夕刻にかけてはジリ安の推移で150.34円まで下げ、15日未明に150.75円まで戻したものの高値更新へは進めず再び150.34円まで下げるなど上値が重くなっている。
米1月CPI上昇率が前月比で全体及びコアの両方で市場予想を上回って前月から伸びが加速したことと、前年比でも全体は12月の3.4%から3.1%へ低下したもののコア指数が12月と同じ3.9%で高止まりの様相となったために米国の早期利下げ期待がさらに後退したと市場は受け止めてドル全面高となった。しかし豪ドルが14日早朝から戻し、ユーロドルも14日夕刻に1.070ドルを割り込んでから反発するなど米CPI後のドル高反応に一巡感がみられ、米長期債利回りも急上昇一服で反落している。
今夜は米1月小売売上高、2月NY州製造業景況指数、2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米週間新規失業保険申請件数、1月米輸出入物価指数など注目される経済指標の発表も相次ぐため、景気減速感を示す内容の場合は米CPI発表後のドル高に対する揺れ返しでドル安へと進みやすいかもしれない。
【神田財務官の円安けん制で151円へ進めず】
神田財務官は2月14日朝、ドル円の急上昇について「年初来約10円も円安になっている」、「こういった急速な変動は経済にとってよくない」、「ファンダメンタルズに沿った部分と明らかに投機的な動きと両方ある」、「高い緊張感を持って為替市場を注視する、必要があれば適切な対応を取る」と市場介入をちらつかせて円安をけん制した。
神田財務官けん制発言からドル円はジリ安となったが、2022年10月21日高値151.94円と2023年11月13日高値151.90円によるダブルトップラインもあり、市場心理としてもそれらを超えてゆくには推進力不足として150円台で足踏みしている印象だ。
林官房長官も2月14日の会見で最近の円安について「為替相場はファンダメンタルズを反映し、安定的に推移することが重要。政府としては為替市場の動向を高い緊張感を持って注視していく」と述べたが、定型的な答えで市場介入への強い姿勢は見られなかった。
【シカゴ連銀総裁は利上げ状態が長引くことへの懸念を示す】
米地区連銀総裁やFRB高官らは昨年末から繰り返し市場の早期利下げ期待をけん制する発言を行ってきたが、1月の米CPIが予想を上回ったことに対する彼らの反応に温度差も見られ始めた。
FRBバー副議長は2月14日に、「インフレ率が目標の2%に向かって低下すると確信しているものの、利下げプロセス開始前に良い指標を引き続き確認する必要がある」とし、パウエル議長の慎重姿勢を支持すると述べた。1月のCPIについては「2%目標への道が平坦ではないことを想起させた」とし、従来の早期利下げ期待へのけん制的な姿勢を踏襲した。
しかし一方でシカゴ連銀のグールズビー総裁は14日に「インフレ率が過去3か月や6か月を年率換算で見れば低下しているのはまったく明らかだ」とし、現在の堅調な景気を過熱と見誤って非常に抑制的な政策金利を維持し続ければ雇用情勢を不必要に悪化させるリスクがあると指摘した。また中国の不動産不況について「世界第2位の経済大国が深刻な景気後退に陥っても米国に景気後退のリスクをもたらさないとするのは非現実的」として中国の景気悪化が「脅威」とも指摘した。内外情勢を踏まえて利下げを躊躇し過ぎないことの必要性を強調したものであり、早期利下げけん制一色だった流れに変化が出ている印象を与えた。
FRBとしては、中国のデフレ不況懸念、米地銀の経営悪化への懸念再燃、米連邦政府債務膨張と利払い拡大等が利下げを躊躇するリスクであり、CPI発表後にNYダウが急落反応を見せたことも気がかりと思われる。
【米10年債利回りは急上昇後の修正安、NYダウは大幅下落後の買い戻し】
2月14日の米長期債利回りは米CPI発表後の急騰一巡により総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは2月13日に前日比0.14%上昇と急伸したが、14日は一時4.33%をつけて昨年12月1日以来の高水準としたがその後はシカゴ連銀総裁発言等により低下に転じて前日比0.06%低下の4.26%で落ち着いた。
30年債利回りは2月13日に前日比0.08%上昇したが、14日は0.02%低下の4.44%となり、2年債利回りは2月13日に前日比0.18%上昇したが14日は0.08%低下の4.58%となった。今後の米経済指標でさらに水準を切り上げてゆくのか、CPI反応一巡から低下に転じるのか試されるところだ。
米国の金利先物市場において3月の利下げ期待はほぼなくなり、5月利下げ期待もCPI発表前の6割台から3割台へ低下しており、6月利下げ開始見通しが優勢となっている。
一方、NYダウは2月13日の米CPIをきっかけに早期利下げ期待が大幅に低下したことで前日比524.63ドル安となり一時は700ドル安を超える急落となったが、14日は急落商状が落ち着いてバーゲンハント買いにより前日比151.52ドル高と反発、ナスダック総合指数も2月13日は前日比286.95ポイント安と大幅下落したが14日は203.55ポイント高と巻き返した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は2月7日深夜安値147.62円を起点とした上昇で2月9日高値149.57円へ上昇したところで上昇一服に入っているがジリ安程度の動きで150円台前半を維持している。151円手前まで急伸した後のため、一段高へ進むには新たな推進力が欲しいところであり、目先は15日夜から16日深夜にかけての間へ安値試しを続けやすいとみる。ただし、2月14日早朝高値超えからは新たな上昇期入りとして17日未明から21日早朝にかけての間への上昇と昨年11月13日高値151.90円試しを想定する。
60分足の一目均衡表では、2月14日早朝高値からジリ安の推移に入ったために遅行スパンが悪化して先行スパンの上限に来ている。遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンへ潜り込むところからはその下限を試し、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まると警戒する。ただし、先行スパンからの転落を回避するうちは上昇基調そのものは継続するとみて遅行スパンが好転するところから上昇再開、一段高へ進むとみる。
60分足の相対力指数は2月14日早朝への急伸で80ポイントを超えてから低下に転じて50ポイントを割り込んできているので30ポイント前後への低下余地ありとするが、60ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとして70ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、150.00円を下値支持線、2月14日早朝高値150.88円を上値抵抗線とする。
(2)150円以上での推移中は一段高余地ありとし、150.88円超えからは151円台前半への上昇を想定する。151.50円前後は反落警戒とするが、150円以上を維持しての推移なら16日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)150.30円割れからは下向きとし、150円割れから続落の場合は149.50円前後への下落を想定する。149.50円以下は反騰注意とするが、150円を割り込んでの推移なら16日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
2/15(木)
休場 中国
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 1.8%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -0.7%)
13:30 (日) 12月 設備稼働率 前月比 (11月 0.3%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP・速報値 前期比 (7−9月 -0.1%。予想 -0.1%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP・速報値 前年同期比 (7−9月 0.3%、予想 0.1%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 0.3%、予想 -0.1%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -0.1%、-0.4%)
16:00 (英) 12月 貿易収支・物品 (11月 -141.89億ポンド、予想 -149.00億ポンド)
16:00 (英) 12月 貿易収支 (11月 -14.08億ポンド、予想 -24.00億ポンド)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 148億ユーロ、予想 156億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 203億ユーロ、予想 215億ユーロ)
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 -43.7、予想 -15.0)
22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 0.6%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 0.4%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 0.0%、予想 0.0%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -0.9%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.1万人、予想 188.0万人)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 78.6%、予想 78.8%)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 -0.1%、予想 0.4%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 44、予想 46)
2/16(金)
休場 中国
09:00 ボスティック・アトランタ連銀総裁、経済見通しと政策について講演
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 -0.7%、予想 0.2%)
16:00 (英) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -3.2%、予想 1.5%)
16:00 (英) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 -2.4%、予想 -1.6%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -3.3%、予想 1.9%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (12月 -2.1%、予想 -1.3%)
22:30 (米) 1月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.1%)
22:30 (米) 1月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (12月 1.0%)
22:30 (米) 1月 コアPPI 前月比 (12月 0.0%、予想 0.1%)
22:30 (米) 1月 コアPPI 前年同月比 (12月 1.8%)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数・年率換算 (12月 146.0万件、予想 146.5万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数 前月比 (12月 -4.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 建設許可件数・年率換算 (12月 149.5万件、予想 151.5万件)
22:30 (米) 1月 建設許可件数 前月比 (12月 1.9%、予想 1.5%)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (1月 79.0、予想 80.0)
26:10 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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