ドル円見通し 米長期債利回りの上昇一服、149円に届かず仕切り直し(24/2/7)

先週末からの米長期債利回り急伸とドル高反応もひとまず消化された印象であり、目先は揺れ返し的な円高ドル安へ傾斜しやすいところと思われる。

ドル円見通し 米長期債利回りの上昇一服、149円に届かず仕切り直し(24/2/7)

米長期債利回りの上昇一服、149円に届かず仕切り直し

〇ドル円、149円乗せへの抵抗感から伸びきれず148円割り込み、2/7午前序盤147.70台へ安値切り下げる
〇米地銀株急落によるリスク回避感で米長期債利回りが低下したことが背景
〇米地区連銀総裁ら、年内利下げ開始を想定しつつも早期利下げへの過度の期待をけん制する発言続く
〇2/6米長期債利回りは総じて低下。10年債利回りは前日比0.06%低下の4.10%で終了
〇NYダウ前日比141.24ドル高と上昇。ナスダック総合指数も小幅ながら上昇し高値圏を維持
〇148円以下での推移中は一段安余地あり、147.50割れからは147.25から147.00への下落想定
〇148.25超えからは反騰入りの可能性ありとし148.50試し。超えると148.89超え目指す上昇想定

【概況】

ドル円は2月2日夜の米1月雇用統計が予想を上回る堅調さだったことをきっかけとした米長期債利回りの急上昇により直前の146.50円台から2月3日未明高値148.58円まで凡そ2円規模の急伸となり、2月5日の米ISMサービス業景況指数が前月から上昇したことによる米長期債利回りの続騰を見て6日未明には148.89円を付けて1月19日高値148.80円を超え昨年12月28日安値140.24円以降の高値を更新した。
しかし149円乗せに対する抵抗感から伸びきれず、6日夜は主要な米経済指標がなかったものの米地銀株の急落によるリスク回避感で米長期債利回りが低下したのを見て7日未明には148円を割り込んだ。2月7日午前序盤には147.70円台へ安値を切り下げている。

日銀は2月6日に内田副総裁が8日の奈良における金融経済懇談会に出席した後に記者会見をすると発表したが、日銀のマイナス金利解除へ向けた姿勢等への注目が再び集まりやすい状況といえる。米地区連銀総裁らによる米国の早期利下げ期待に対するけん制発言は続いているが、先週末からの米長期債利回り急伸とドル高反応もひとまず消化された印象であり、目先は揺れ返し的な円高ドル安へ傾斜しやすいところと思われる。

【米地区連銀総裁らの利下げ期待けん制発言続く】

クリーブランド連銀のメスター総裁は2月6日に米経済が予想通りに推移すれば利下げへの道が開かれるとしたものの、物価情勢が不透明な状況が続く中では利下げが実施される具体的な時期を示す用意はできていないと述べた。同総裁は「インフレ率が2%へ持続的に低下するとのより大きな確信が得られるまで政策金利引き下げは適切ではない」、「性急過ぎる利下げを行うのは間違いだ」として早期利下げに否定的な姿勢を示したが、「年内にこうした確信を得られ利下げを開始できる」と述べており、年内利下げ開始については同意している。ただ利下げ開始後については「利下げペースは緩やかなものになる」とも述べている。

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は2月6日に「インフレ率は急速に低下しているが仕事はまだ終わっていない」と述べて早期利下げ期待をけん制した。同総裁は2月5日にも現状は必ずしも引き締め的になっていないとし、利下げ開始の決断前にはさらに指標を精査する時間があると指摘している。
FRBのパウエル議長は2月4日のCBSニュース番組において、3月19、20両日の次回会合までに利下げ開始を確信する可能性は小さいとし、年内利下げ開始へ向けた正しいタイミングを捉えようと努めているところだと述べている。12月FOMC後の会見内容と変わらない姿勢で、年内利下げ開始を想定しつつも早期利下げへの過度の期待をけん制していることは他の地区連銀総裁らも同じだ。

【米10年債利回りは3日ぶり低下、NYダウは上昇】

2月6日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.06%低下の4.10%で終了した。2月2日に米雇用統計をきっかけとして前日比0.14%上昇し、2月5日も米ISMサービス業景況指数の上昇を見て前日比0.14%上昇と2連騰して一時は4.18%をつけたが1月19日の4.20%には届かず、2月6日は連騰一巡感と米地銀株急落によるリスク回避感から債券買い・利回り低下の流れとなり一時4.08%まで低下する場面も見られた。
30年債利回りは前日比0.04%低下の4.30%、2年債利回りは0.07%低下の4.41%だった。
ニューヨーク州の地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)株価が再び下落したことが米地銀に対する経営不安もたらしているが、イエレン米財務長官が2月6日の議会証言で商業用不動産セクターの損失に対する懸念を表明したこともリスク回避的な債券買いを助長したようだ。
米財務省が2月6日に行った3年債入札(540億ドル)は堅調だったが、7日に10年債(420億ドル)、8日に30年債(250億ドル)の入札予定がある。

一方、2月6日のNYダウは前日比141.24ドル高と上昇した。2月2日に史上最高値を更新したものの米長期金利の連騰を嫌って2月5日に274.30ドル安と下げたが先高期待を波形としてしっかりしている。ナスダック総合指数も前日比11.32ポイント高と小幅ながら上昇して2月2日に2022年10月以降の最高値を更新した後も高値圏を維持している。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は2月2日未明に145.89円まで下げて1月19日高値148.80円以降の安値を更新したが、2日夜の米雇用統計をきっかけに急伸して2月6日未明には148.89円まで高値を伸ばした。しかし149円には届かずに反落しており、目先の上昇一巡により下落期入りしている。安値形成期は2月7日午前から9日未明にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとみるが、148.25円超えからは強気転換注意とし、148.50円超えからは上昇再開として2月8日深夜から13日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では、2月6日夜の下落で遅行スパンが悪化して先行スパンに潜り込んでいる。遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まると注意する。ただし、先行スパンの下限近辺から持ち直して26本基準線を上抜く場合は反騰入り注意とし、先行スパンの上限に迫りつつ遅行スパンが好転するところからは上昇継続とみて高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月3日未明から6日未明にかけて相場が高値を更新した際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられ、6日夜からの急落で30ポイント台へ低下した。50ポイントを下回るうちは一段安警戒とするが、50ポイント超えからは上昇再開として60ポイント台への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、147.50円を下値支持線、148.25円を上値抵抗線とする。
(2)148円以下での推移か一時的に148円を超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、147.50円割れからは147円台序盤(147.25円から147.00円)への下落を想定する。147.25円以下は反騰注意圏とするが、148円を下回っての推移なら8日も安値試しを続けやすいとみる。
(3)148.25円超えからは反騰入りの可能性ありとして148.50円試しとする。148.50円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、148.25円以上での推移なら8日も高値試しへ向かう可能性ありとし、148.50円超えからは2月6日未明高値148.89円超えを目指す上昇を想定する。

【当面の予定】

2/7(水)
14:00 (日) 12月 景気一致指数CI・速報値 (11月 114.6、予想 116.1)
14:00 (日) 12月 景気先行指数CI・速報値 (11月 107.6、予想 109.3)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -0.7%、予想 -0.4%)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -4.8%、予想 -2.4%)
17:40 (英) ブリーデン英中銀副総裁、講演
22:30 (米) 12月 貿易収支 (11月 -632億ドル、予想 -622億ドル)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) クーグラーFRB理事、講演
25:30 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演
26:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年債入札
28:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
29:00 (米) 12月 消費者信用残高 (11月 237.5億ドル、予想 160.0億ドル)

2/8(木)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調前 (11月 1兆9256億円、予想 1兆1000億円)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調済 (11月 1兆8854億円、予想 1兆9320億円)
08:50 (日) 12月 貿易収支・国際収支ベース (11月 -7241億円、予想 1831億円)
10:30 (中) 1月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (12月 -0.3%、予想 -0.5%)
10:30 (中) 1月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (12月 -2.7%、予想 -2.6%)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー現状判断 (12月 50.7、予想 50.3)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー先行判断 (12月 49.1、予想 49.3)

22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.4万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 189.8万人)
24:00 (米) 12月 卸売売上高 前月比 (11月 0.0%)
24:00 (英) マン英中銀委員、講演
24:30 (欧) レーンECB理事、講演
26:05 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省30年債入札


注:ポイント要約は編集部

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