ドル円見通し 米経済指標低調で146円を試し、FOMC後に急伸するも147円台を維持できず(24/2/1)

FOMC声明発表直後の安値146.00円から147.44円へ急伸したが、米長期債利回りの上昇反応は一時的なものにとどまって低下したために147円を再び割り込んだ。

ドル円見通し 米経済指標低調で146円を試し、FOMC後に急伸するも147円台を維持できず(24/2/1)

米経済指標低調で146円を試し、FOMC後に急伸するも147円台を維持できず

〇ドル円、米ADP・シカゴPMI等の低調受け3月利下げ期待が再燃、2/1未明146.06まで急落
〇FRB議長の3月利下げに否定的な発言を受けてドル高ぶり返し、147.44へ急伸
〇その後、米長期債利回り低下でドル高の勢い鈍り、2/1午前序盤は146.72まで下げ反騰一巡
〇市場の5月利下げ開始期待度は9割、労働市場急速鈍化の場合、FRBは前倒し検討の可能性も
〇米10年債利回りは3営業日連続低下、NYダウは5日ぶりに反落
〇146.50を上回るうちは上昇余地ありとし、147.44超えからは148円手前を目指す上昇を想定
〇146.50割れからは下向きとして146円試しとし、146円割れからは145円前後を目指す下落を想定

【概況】

ドル円は1月31日午前に公開された日銀1月会合における主な意見でマイナス金利解除等への言及があったことで147.17円へ下落したが、市場の反応は限定的でその後は147円台後半中心の揉み合いとなった。
1月31日夜の米ADP民間雇用者数が予想を下回る低調さとなり、四半期の雇用コスト指数が予想を下回り、シカゴPMIが改善予想に反して悪化したことから2月1日早朝のFOMCを前にして3月利下げ期待が再燃してドル全面安となりドル円は1日未明に146.06円まで急落した。1日早朝のFOMCが3月利下げに否定的な姿勢だったことでドル高がぶり返し、声明発表直後の安値146.00円から147.44円へ急伸したが、米長期債利回りの上昇反応は一時的なものにとどまって低下したために147円を再び割り込んだ。
パウエルFRB議長は3月会合での利下げに否定的な発言をしたものの市場の5月利下げ開始期待度は9割とかなり高く、米国のインフレ鈍化が続けば利下げ局面に入るとの基本的な流れは変わらないと市場は受け止めているようだ。

【米FOMC、3月利下げに否定的だったが5月以降の利下げ条件は整いつつある印象】

FRB(米連邦準備制度理事会)は1月30日と31日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)の結果を2月1日早朝に発表し、市場予想通りに政策金利を4会合連続で据え置いた。政策金利は年5.25〜5.50%で2001年以来23年振りの高水準が続くこととなった。
FOMC声明では「インフレが持続的に2%へ向かうと一層確信を得るまで、利下げは適切と予想しない」とし、「経済見通しは不透明でインフレリスクに引き続き大いに注意している」として市場が期待してきた3月会合での利下げ開始に否定的姿勢を示した。
パウエルFRB議長はFOMC後の会見において、インフレ率が2%へ低下すると確信しているが、利下げ開始にはさらに大きな確信が求められるとし、「3月までに確信する水準に達成する可能性があるとは考えていない」と述べた。議長は「適切ならより長期にわたって金利を据え置く用意がある」、「今回の会合では利下げの提案はなかった」として市場の早期利下げ期待をけん制しつつ、労働市場が急速に鈍化すれば利下げの前倒しを検討する可能性があるとも述べた。

3月利下げに対する市場の期待度はFOMC前には6割前後へ上昇していたが、FOMC後には3割台へ低下した。しかし5月利下げに対する期待度は9割を維持している。米国の利下げ開始への準備段階は整っており、あとはタイミングの問題で利下げに踏み切る確信が持てればいつでも利下げを開始できる状況にあると市場は認識しているようだ。

【米ADP雇用、予想外に低調】

米民間雇用サービス会社ADPによる1月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比10万7000人増となり12月の15万8000人増(速報の16万4000人増から下方修正)及び市場予想の14万5000人増を下回った。2月2日夜の米労働省による1月雇用統計(非農業部門就業者数については12月の21.6万人増から17.8万人増へ減速予想)も低調な可能性があると市場は受け止めてドル安反応を招いた。
米労働省による2023年10−12月期の雇用コスト指数は162.1となり前期比0.9%上昇だったが、伸び率は7−9月期の1.1%上昇から2期ぶりに鈍化して2021年4−6月期の0.7%上昇以来の低水準となった。前年同期比も4.2%上昇で7−9月期の4.3%上昇から減速した。賃金上昇によるインフレ圧力の後退を意味している。
MNIインディケーターズによる1月のシカゴ購買部景況指数(シカゴPMI)は46.0となり12月の47.2から低下して市場予想の48.0を下回った。50割れの状況が続いていることは利下げを躊躇することによる景気減速リスクを意識させるものと思われる。

【米10年債利回りは3営業日連続低下、NYダウは5日ぶりに反落】

1月31日の米長期債利回りは総じて低下した。米ADP統計等をきっかけに低下し、FOMCが3月利下げ開始に否定的見通しを示したことで一時的に上昇したものの早々に低下に転じた。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.12%低下の3.91%となり1月29日から3営業日続落した。30年債利回りは前日比0.08%低下の4.17%となり10年債と同様に3営業日続落、2年債利回りは前日比0.13%低下して4.21%となった。3月利下げへの期待度は大幅に低下したものの5月利下げ開始期待はかえって強まる内容だったため、政策金利動向に敏感な2年債利回りの低下が目立った。

NYダウは1月30日に前日比133.86ドル高と上昇して4営業日連続で史上最高値を更新したが、31日は38588.86ドルまで史上最高値を更新してからFOMC後に売られて前日比317.01ドル安と5日ぶりの反落となった。3月利下げ期待後退でひとまず売られた印象だが、5月以降の利下げ期待は変わらないため調整をこなしながら一段高を伺う流れと思われる。ナスダック総合指数も1月29日に2022年10月以降の最高値を更新してから上げ渋っていたが、31日は前日比345.89ポイント安となり30日からの続落となった。米長期債利回り低下は株式市場にはプラスだが、5月利下げ期待を背景に債券買い(利回り低下)・株売りの動きが影響したと思われる。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は2月1日早朝に146.00円まで一段安してから147.44円へ急伸し、その後に147円を割り込んでいる。1月24日深夜安値から5日を経過した2月1日早朝安値で目先のボトムを付けて戻しており、底割れを回避するうちは1日の日中から5日午前にかけての間への上昇余地ありとみるが、146.50円割れからは下向きとし、146.00円割れからは新たな下落期入りとみて6日早朝から8日早朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、2月1日早朝への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。1日早朝の反騰時には遅行スパンが好転に至らず先行スパン下限の手前で失速しているので、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、26本基準線を下回っての推移中は下向きの展開と考える。26本基準線を上回っての推移が続く場合は上向きとし、遅行スパン好転からは高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は2月1日未明の30ポイント割れから反騰したものの50ポイント前後が抵抗となっており、1日午前序盤は50ポイントを下回っている。55ポイント超えからは上向きとして60ポイントに迫る上昇を想定するが、40ポイント割れからは下落再開とみて20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146.50を下値支持線、2月1日早朝の反発時高値147.44円を上値抵抗線とする。
(2)146.50円を上回るうちは上昇余地ありとし、147.44円超えからは148円手前を目指す上昇を想定する。148円手前は反落注意とするが、147円以上を維持しての推移なら2日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)146.50円割れからは下向きとして146円試しとし、146円割れからは145円前後を目指す下落を想定する。145円台序盤は買われやすいとみるが、146円を割り込んだ後も146.25円以下での推移なら2日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

2/1(木)
休場 マレーシア
10:45 (中) 1月 財新製造業PMI (12月 50.8、予想 50.6)
17:55 (独) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 45.4、予想 45.4)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 46.6、予想 46.6)
18:30 (英) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 47.3、予想 47.3)
19:00 (欧) 1月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (12月 2.9%、予想 2.8%)
19:00 (欧) 1月 コアHICP・速報値) 前年同月比 (12月 3.4%、予想 3.2%)
19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 6.4%、予想 6.4%)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%。予想 5.25%)

22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・速報値 (7−9月 5.2%、予想 2.5%)
22:30 (米) 10-12月期 単位労働コスト・速報値 (7−9月 -1.2%、予想 1.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 21.2万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.3万人、予想 184.0万人)
23:45 (米) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 50.3、予想 50.3)
24:00 (米) 1月 ISM製造業景況指数 (12月 47.4、予想 47.0)
24:00 (米) 12月 建設支出 前月比 (11月  0.4%、予想 0.5%)

2/2(金)
06:45 (NZ) 12月 住宅建設許可件数 前月比 (11月 -10.6%)
08:50 (日) 1月 マネタリーベース 前年同月比 (12月 7.8%)
09:30 (豪) 10-12月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (7-9月 1.8%)
09:30 (豪) 10-12月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (7−9月 3.8%)
22:30 (米) 1月 非農業部門雇用者数 前月比 (12月 21.6万人、予想 17.8万人)
22:30 (米) 1月 失業率 (12月 3.7%、予想 3.8%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前月比 (12月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前年同月比 (12月 4.1%、予想 4.1%)
24:00 (米) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 2.6%、予想 0.3%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 78.8、予想 78.8)


注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る