米求人件数増で一時上昇するもFOMC待ちで148円から失速
〇ドル円、米長期債利回り低下で1/30午前から147円台前半中心で推移、深夜147.09まで下げる
〇12月JOLTS非農業部門が予想超え2か月連続で増加、米長期債利回り上昇で147.92へ反騰
〇米長期債利回りが再び低下に転じ戻り売り優勢に。1/31朝147.50近辺へ下落
〇2/1早朝に政策発表と議長会見のあるFOMC及び週末の米雇用統計を控え、市場は慎重な動き
〇パウエル議長、5月利下げに含みか、政策金利当面維持を強調し利下げ開始下半期へ先送りか 会見注視
〇米長期債利回りはまちまちの動き、NYダウは4営業日連続で史上最高値更新
〇147.75以下で推移中は下向き、147円試し。147円割れから続落は146.65から146.35への下落想定
〇FOMC後に急落商状の場合、146円前後試しへ下値目途を引き下げる
〇147.75から148円手前は売られやすいが、148円超えから続伸なら1/19高値148.80超え目指す上昇想定
【概況】
ドル円は1月23日の日銀金融政策決定会合と植田総裁会見を挟んだ乱高下が落ち着いた1月24日深夜安値146.65円から上昇してきたが、29日午前に148.33円を付けたものの148円台を維持できず、米長期債利回りの低下を見て30日午前からは147円台前半中心で推移し、30日深夜には147.09円まで下げた。
1月30日24時発表の米12月雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を上回る増加となり、コンファレンス・ボードの1月消費者景気信頼感指数も前月から改善したため、発表直後は米長期債利回りが上昇したことでドル円は31日未明に147.92円へ反騰したが、米長期債利回りが再び低下に転じたために戻り売り優勢となり31日朝には147.50円近辺へ下落した。
2月1日早朝に政策発表と議長会見のあるFOMCを控え、週末には米雇用統計もあるため市場はそれらを見定めたいとして慎重な動きを見せている。
【米求人件数増、消費者信頼感も改善】
1月30日深夜に米労働省が発表した昨年12月の雇用動態調査(JOLTS)では非農業部門求人数が前月比10万1000件増の902万6000件となり2か月連続で増加した。市場予想は875万件で11月から減少するとみていたために若干のサプライズとなり発表後の米長期債利回り上昇とドル高反応に寄与した。
同時に発表された米コンファレンス・ボードによる1月の米消費者景気信頼感指数は114.8となり市場予想の115.0をわずかに下回ったものの12月の108.0から大幅に改善した。内訳では現況指数が前月の147.2から161.3へ上昇、期待指数は81.9から83.8へ上昇し、向こう半年間の景気見通しは「改善する」が16.6%で前月の18.7%から低下したが、「悪化する」も前月の17.8%から16.0%へ低下しており、改善と悪化の見通しは拮抗している。
【利下げへの催促と急ぐべきではないとのけん制】
米FRBは1月30-31日開催の米FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)の結果を2月1日4時に発表し、4時半からパウエルFRB議長が会見する。市場の事前予想は政策金利の現状維持で一致しているが、昨年12月会合で2024年3回利下げ想定を示した状況から利下げへの前傾姿勢が強まるのか後退するのか見定めたいところだ。
市場の3月会合における利下げ期待度は5割を切っており、年明け以降にFRB高官らの早期利下げ期待へのけん制発言が繰り返されたことで昨年末にかけて9割に達していた期待は冷やされているが、5月会合での利下げ期待度はかなり高いままだ。パウエル議長が5月利下げの可能性に含みを持たせるか政策金利を当面維持する姿勢を強調して利下げ開始が下半期へ先送りされるのかにより市場も大きく揺れる可能性があるだろう。
米上院銀行委員会のブラウン委員長(与党民主党)は1月30日付けのパウエル議長宛て書簡において、景気抑制的な金融政策はもはや適切な措置ではないとして年内の早期利下げを求め、金利を高く維持することは米国の労働者や家族にとって有害だと批判した。一方で国際通貨基金(IMF)は1月30日に発表した世界経済見通しにおいて、米FRBとECB(欧州中銀)や英中銀はいずれも政策金利を2024年下半期まで現行水準で据え置くとの見通しを示し、チーフエコノミストのグランシャ氏は「市場は利下げ見通しについて過度に楽観的だ」と諫めている。
【米10年債利回りは一時上昇後に低下して続落、NYダウは4営業日連続で史上最高値更新】
1月30日の米長期債利回りはまちまちの動きだった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の4.03%で終了したが、米求人件数発表後には4.04%から4.10%へ一時的に急伸し、その後の低下で1月29日の0.06%低下からの続落となった。
30年債利回りも前日比0.07%低下の4.25%となり29日の0.05%低下から続落した。一方で2年債利回りは前日比0.02%上昇の4.34%だったが、一時4.39%まで上昇してからは低下している。
前日は米財務省の四半期債券発行予定が下方修正されたことで債券買い・利回り低下となったが、30日はFOMCを控えつつ前日からの流れを継続した印象だ。
一方でNYダウは前日比133.86ドル高と上昇して4営業日連続で史上最高値を更新しており、米国景気の堅調さと先行きの利下げによる先高感を継続している。ナスダック総合指数は118.14ポイント安と下げたが、1月29日に2022年10月以降の最高値を更新したところで利益確定売りから上げ渋っているものの高値水準を維持している。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は1月24日深夜安値146.65円からの戻りが一巡して1月29日午前高値148.33円を目先のピークとして下落してきたが、24日深夜安値から4日目となる30日深夜安値で目先のボトムを付けて戻した印象だ。148円には届かずに失速しているが、2月1日早朝のFOMCとパウエル議長会見を挟んで乱高下する可能性もある。
148円超えからは上昇継続とみて2月1日午前から5日午前にかけての間への上昇を想定するが、147円割れから続落する場合は2日夜から6日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、1月30日深夜安値からの反騰時に遅行スパンが好転したもののその後の失速で再び悪化しつつあり、31日未明への反騰時は先行スパンを突破しきれずに再び転落状態となっている。147円割れを回避しつつ148円に届かない範囲にあるため、148円超えからは上昇が勢い付くとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落中は下向きとし、147円割れからは下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30日深夜安値からの反騰で60ポイントまで戻してから再び低下して50ポイントを割り込んでいる。50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは30ポイント前後への低下を想定するが、55ポイント超えからは上昇再開とみて60ポイント台後半への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、147.00を下値支持線、148.00円を上値抵抗線とする。
(2)147.75円以下での推移中は下向きとして147円試しとする。147円台序盤は買われやすいとみるが、147円割れから続落する場合は146円台中盤(146.65円から146.35円)への下落を想定し、FOMC後に急落商状の場合は146円前後試しへ下値目途を引き下げる。
(3)147.75円から148円手前は売られやすいとみるが、148円超えから続伸に入る場合は1月19日高値148.80円超えを目指す上昇を想定し、148円台を維持しての推移なら2月1日の日中から夜に欠けても高値試しを続けやすいとみる。
【当面の予定】
1/31(水)
10:30 (中) 1月 国家統計局製造業PMI (12月 49.0、予想 49.2)
14:00 (日) 12月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (11月 -8.5%、予想 -6.2%)
14:00 (日) 1月 消費者態度指数・一般世帯 (12月 37.2、予想 37.5)
16:00 (独) 12月 小売売上高 前月比 (11月 -2.5%、予想 0.6%)
16:00 (独) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 -2.0%、予想 -1.9%)
17:55 (独) 1月 失業者数 前月比 (12月 0.50万人、予想 1.10万人)
17:55 (独) 1月 失業率 (12月 5.9%、予想 5.9%)
22:00 (独) 1月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (12月 0.1%、予想 0.2%)
22:00 (独) 1月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (12月 3.7%、予想 3.0%)
22:15 (米) 1月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (12月 16.4万人、予想 14.5万人)
22:30 (米) 10-12月期 雇用コスト指数 前期比 (7−9月 1.1%、予想 1.0%)
23:45 (米) 1月 シカゴ購買部協会景気指数 (12月 46.9、予想 48.0)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
28:00 (米) FOMC(連邦公開市場委員会)・政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
28:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見
2/1(木)
休場 マレーシア
09:30 (豪) 10-12月期 輸入物価指数 前期比 (7−9月 0.8%、予想 0.6%)
09:30 (豪) 12月 住宅建設許可件数 前月比 (11月 1.6%、予想 0.0%)
10:45 (中) 1月 財新製造業PMI (12月 50.8、予想 50.9)
17:55 (独) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 45.4、予想 45.4)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 46.6、予想 46.6)
18:30 (英) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 47.3、予想 47.3)
19:00 (欧) 1月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (12月 2.9%、予想 2.7%)
19:00 (欧) 1月 コアHICP・速報値) 前年同月比 (12月 3.4%、予想 3.2%)
19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 6.4%、予想 6.4%)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 5.25%。予想 5.25%)
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・速報値 (7−9月 5.2%、予想 2.1%)
22:30 (米) 10-12月期 単位労働コスト・速報値 (7−9月 -1.2%、予想 1.8%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 21.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.3万人)
23:45 (米) 1月 製造業PMI・改定値 (速報 50.3)
24:00 (米) 1月 ISM製造業景況指数 (12月 47.4、予想 47.3)
24:00 (米) 12月 建設支出 前月比 (11月 0.4%、予想 0.6%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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