ドル円見通し 米3月利下げ期待低下、米長期債利回り上昇でドル円は148円台到達(24/1/18)

ドル円、為替市場がドル全面高の様相となる中で18日未明に148.52円まで高値を切り上げた。

ドル円見通し 米3月利下げ期待低下、米長期債利回り上昇でドル円は148円台到達(24/1/18)

米3月利下げ期待低下、米長期債利回り上昇でドル円は148円台到達

〇ドル円、小売高等の米経済指標堅調により1/18未明に148.52まで高値切り上げる
〇2023年11〜12月小売売上高は過去最高を更新、消費の底堅さ示す
〇景気堅調が示されたことにより利下げ開始を急ぐ必要がない印象拡大、3月利下げ期待度は5割台に低下
〇ベージュブック、大半の地区で企業の成長見通しは前向きで改善、利下げ観測で先行きを楽観視
〇米2年債利回り大幅上昇、3月利下げ期待の大幅後退を反映か
〇147.75以上での推移中は一段高余地ありとし、148.52超えからは149円前後試しを想定
〇147.75割れからは下向きとし、147.50割れからは下落期入りとみて146円台後半への下落を想定

【概況】

ドル円は1月17日夜の米小売売上高や鉱工業生産及び住宅市場指数等が市場予想を上回る堅調さを示したことで3月利下げ期待が後退して米長期債利回りが前日から続伸となり、為替市場がドル全面高の様相となる中で18日未明に148.52円まで高値を切り上げた。前日にウォラーFRB理事が利下げを急ぐ必要はないと強調したことをきっかけとして米長期債利回りの上昇とドル高が助長されたが、17日は特に政策金利動向に敏感な米2年債利回りの上昇が目立った。
12月28日安値140.24円からの上昇を継続しており、この間の上昇幅は8.28円に拡大し、11月13日高値151.90円からの下げ幅11.66円に対して凡そ71%を戻した。

【米小売堅調】

米商務省による12月の小売売上高は前月比0.6%増となり11月の0.3%及び市場予想の0.4%増を上回った。2か月連続のプラスで消費の堅調さを示した。変動の激しい自動車・同部品を除くと0.4%増(予想0.2%増)、ガソリンを除くと0.7%増、自動車・同部品・ガソリンを除くと0.6%増だった。
全米小売業協会(NRF)がまとめた年末商戦期の2023年11〜12月小売売上高(自動車、ガソリン、外食を除く)は前年同期比3.8%増の9644億ドルとなり過去最高を更新した。インフレが鈍化し始め、これまでの金融引き締めによる景気減速も深刻にはならず消費の底堅さを示しており、パンデミック発生前の水準を超えてきている。
米FRBによる12月の鉱工業生産指数は前月比0.1%上昇となり11月の0.0%(0.2%から下方修正)及び市場予想の0.0%を上回った。
NAHB住宅市場指数は44となり12月の37及び市場予想の39を大幅に上回った。米国の利上げ打ち止めと先行きの利下げ開始期待により住宅ローン金利がピークアウトしていることで住宅市況も底固さを見せている印象だ。

米FRBによる全米12地区連銀景況報告(ベージュブック)では経済活動が大多数の地区で「ほぼ横ばい」とされて11月の景気は「鈍化した」からの悪化はなく、多くの企業は、利下げ観測が先行きを楽観視する根拠となっているとした。11月の大統領選が経済的な不透明感をもたらしているとしたものの大半の地区では企業の将来的な成長見通しは前向きで改善したとされた。
17日の米経済指標等は総じて景気の堅調さを示しており、FRBが利下げ開始を急ぐ必要がない印象を拡大した。米金利先物市場における3月利下げ期待度は昨年末のピーク時に9割に達してから低下し、1月12日の米PPI発表後に8割程度まで再上昇していたが、17日の米経済指標発表後は5割台に再び低下している。

【米2年債利回りが大幅上昇、ダウは続落】

1月17日の米長期債利回りは総じて上昇したが特に2年債利回りの上昇が目立った。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%上昇して4.11%となり、12月27日に付けた3.78%以降の最高とした。30年債利回りは0.02%上昇の4.32%となり12月27日に付けた3.94%以降の最高となった。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.15%上昇して4.37%となった。昨年10月19日の5.26%から大幅低下期に入り、1月12日の米PPI発表後の一段安で4.12%まで低下したところで下げ渋っていたが16日からの連騰で反騰感を高めている。2年債利回りはウォラー理事による利下げを急がずとの発言に対しても10年債等のような顕著な上昇反応を見せていなかったが、17日の大幅上昇をみると3月利下げ期待が大きく後退していることを反映しているようだ。

一方で早期利下げ期待の後退でNYダウは前日比94.45ドル安と下げて3営業日続落、ナスダック総合指数も米長期債利回り上昇を嫌って88.73ポイント安と下落した。これまでの金融引き締めによる景気減速感が薄れていることは株式市場にとってはプラス要素ではあるが、やや前のめりに期待度が高まっていた3月利下げの可能性が後退したことで株高にもブレーキがかかっている印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は1月13日未明安値144.35円から反騰入りしたために16日夜から18日深夜にかけての間への上昇を想定してきた。16日夕に1月11日深夜高値を超えて一段高に入ったが、18日未明への大幅続伸で148.52円を付けた後はやや下げているため連騰後の修正安が警戒されるとこであり、147.75円を上回るうちは一段高余地ありとみるが、147.75円割れを弱気転換注意とし、147.50円割れからは下落期入りとみて18日の日中から20日未明にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では1月15日深夜にかけての上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし連騰後の反動安も警戒されるため26本基準線割れを弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先とする。下落時においては先行スパン上限が下値支持線として機能するのではないかと思われ、先行スパンを上回るうちは遅行スパンが悪化後に再び好転するところから上昇再開とみる。

60分足の相対力指数は1月16日夕以降の高値切り上げに対して指数のピークは繰り返し80ポイントを超えているもののほぼフラットとなる弱気逆行を見せて60ポイント台序盤へ低下している。70ポイント超えからは再び80ポイント超えを試す可能性もあるとみるが、60ポイント割れからは下向きとし、55ポイント割れからは下落期入りとして40ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、147.75円を下値支持線、1月18日未明高値148.52円を上値抵抗線とする。
(2)147.75円以上での推移中は一段高余地ありとし、148.52円超えからは149円前後試しを想定する。149円以上は反落警戒とするが、148円台を維持しての推移なら19日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)147.75円割れからは下向きとし、147.50円割れからは下落期入りとみて146円台後半への下落を想定する。146.50円以下は反騰注意とするが、147.75円を割り込んでの推移か、直前安値から1円を超える反騰がみられない場合は19日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

1/18(木)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.9%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.4%)
13:30 (日) 11月 設備稼働率 前月比 (10月 1.5%)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 338億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前月比 (10月 -1.0%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前年同月比 (10月 -0.7%)
21:30 (欧) ECB(欧州中銀)理事会議事要旨

21:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
22:30 (米) 1月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 (12月 -10.5、予想 -7.0)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算 (11月 156.0万件、予想 142.5万件)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数 前月比 (11月 14.8%、予想 -8.7%)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算 (11月 146.0万件、予想 147.6万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数 前月比 (11月 -2.5%、予想 0.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 20.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.4万人、予想 184.5万人)
24:15 (欧) ラガルドECB総裁、WEFセッション参加
25:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年インフレ連動債入札

1/19(金)
08:30 (日) 12月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 2.8%、予想 2.6%)
08:30 (日) 12月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (11月 2.5%、予想 2.3%)
08:30 (日) 12月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (11月 3.8%、予想 3.7%)
13:30 (日) 11月 第三次産業活動指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 0.2%)
16:00 (独) 12月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (11月 -0.5%、予想 -0.4%)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前月比 (11月 1.3%、予想 -0.5%)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 0.1%、予想 1.1%)
16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 1.3%、予想 -0.6%)
16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (11月 0.3%、予想 1.4%)
19:00 (欧) ラガルドECB総裁、ゲオルギエバIMF専務理事等WEFセッション参加

24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (12月 69.7、予想 69.5)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数・年率換算 (11月 382万件、予想 383万件)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数 前月比 (11月 0.8%、予想 0.3%)


注:ポイント要約は編集部

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