米長期債利回り上昇、ウォラーFRB理事発言で147円台到達
〇ドル円、ウォラーFRB理事の利下げ急がずとの発言で、ドル高勢い付き1/17未明147.30へ一段高
〇金利先物市場、ウォラー理事発言後も3月利下げ期待度は6割台を維持
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウは1/12からの続落
〇1/13未明安値144.35から反騰入り、1/16夕から一段高で12/29未明安値140.24起点の上昇基調維持
〇146.70以上での推移中は一段高余地ありとし、147.70超えからは148円前後試しを想定
〇146.70割れからは下向きとし、146.30割れからは下落期入りとみて145円台後半へ向かう下落を想定
【概況】
ドル円は1月11日夜の米CPIが予想を上回る上昇率だったところで146.40円へ上昇し、12日夜の米PPIが顕著に鈍化したことで13日未明安値144.35円まで下げたが、昨年末からの上昇基調は継続とみて買い戻され、15日は米国市場休場で手掛かりにかけたために146円手前で足踏みしたものの、16日は休場明けの米長期債利回りが上昇開始したことで146円台に乗せ、夕刻からユーロやポンドなどの下落でドル高感が強まる中で11日夜高値を超えて一段高に入った。
16日夜のNY連銀景況指数が悪化したことで一時的に下げる場面もあったが、ウォラーFRB理事が利下げを急がずと発言したことによりドル高が勢い付いたため17日未明には147.30円へ一段高した。
NY連銀の1月製造業景況指数は12月のマイナス14.5からマイナス43.7へ大幅に悪化して市場予想のマイナス5.0を大幅に下回ったが市場の反応は一時的だった。
【ウォラーFRB理事、利下げを急がず】
FRBのウォラー理事は16日に利下げ開始前には「より多くの証拠を確認したい」、「最悪なのは利下げを始めたのにインフレがぶり返すことだ」とし、景気指標が悪化すれば速やかな利下げも可能としたが「そんな事態には直面していない」、「我々はゆっくりと実質金利の引き下げを図ることができる」と述べた。利下げ開始時期と回数に関しては「指標次第」とし、過去の利下げ期のように「速やかに利下げを行う理由はない」と強調した。
インフレ指標は鎮静化傾向を示しており、これまでの金融引き締めによる悪影響としての景気後退も見られず、労働市場もまだ堅調な状況にあるため、景気対策的に利下げを急ぐ必要はないということだが、利上げ状態を長引かせれば景気悪化をもたらすことも踏まえてFOMCは昨年12月会合で2024年3回利下げ想定を示しており、ウォラー理事発言もこの流れに沿ったものだと思われる。ただし金利先物市場における3月利下げ開始期待度が極めて高いことはFOMCメンバーにとっては過剰な期待と映るのだろう。
アトランタ連銀のボスティック総裁も1月14日の英紙インタビューにおいて「時期尚早な利下げはインフレ率を不安定にする可能性がある」として市場の早期利下げ開始期待を諫めている。
12月FOMCでは2024年に0.25%ずつ3回の利下げで合計0.75%の利下げ想定を示したが、市場は年内に合計1.5%の利下げまで織り込もうとしている。ウォラー理事発言後も3月利下げ期待度は6割台を維持している。
【米10年債利回りは上昇、ダウは続落】
1月16日の米長期債利回りは総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.12%上昇の4.06%となったが、一時は4.08%台を付けて12月27日に付けた3.78%以降の高水準とした。10月23日の5.02%をピークとした大幅低下が一服して低下し過ぎに対する修正で上昇している印象だ。
30年債利回りは先週末比0.12%上昇の4.30%となり、12月27日に付けた3.94%以降の高水準とし、10月23日に付けた5.18%以降の大幅低下に対する修正高を続けた。
2年債利回りは0.07%上昇の4.22%となった。10月19日の5.26%から大幅低下に入り、1月12日の米PPI鈍化による一段安で4.12%まで低下したところで一服している。10年債や30年債の利回り上昇に対しては利下げ開始を意識して2年債利回りの上昇は鈍い。
一方でNYダウは先週末比231.86ドル安と下落して12日からの続落となった。12日は37825.27ドルを付けて史上最高値を更新しており、上昇一服で利益確定売りに圧されていることと米航空機大手ボーイング社の大幅安が売りを誘った。ナスダック総合指数は先週末比28.41ポイント安と下落したが、12日まで6営業日続伸したことによる利食い売りと米長期債利回り上昇を嫌気して7日ぶりに下げたようだ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は1月13日未明安値144.35円から反騰入りし、16日夕から一段高に入り12月29日未明安値140.24円を起点とした上昇基調を維持している。1月11日夜高値を基準として目先の高値形成期は16日夜から18日深夜にかけての間と想定されるのですでに反落注意期にあるため、146.70円以上を維持するうちは上昇余地ありとみるが、146.70円割れを弱気転換注意とし、146.30円割れからは下落期入りとみて17日夜から20日未明にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月15日深夜にかけての上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが悪化するところからはいったん下げに入るとみるが、その際は先行スパン上限を試すとみる。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とみる。
60分足の相対力指数は1月16日夕刻と17日未明に80ポイントを超えておりかなり買われ過ぎ警戒圏にある。60ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとするが、相場が高値を更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落注意とし、60ポイント割れからは下落期入りとみて40ポイント台前半への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、146.70円を下値支持線、147.70円を上値抵抗線とする。
(2)146.70円以上での推移中は一段高余地ありとし、147.70円超えからは148円前後試しを想定する。148円以上は反落警戒とするが、147円台を維持しての推移なら18日も高値試しへ向かいやすく、147円台後半での推移なら上値目途も148円台中盤へ切り上がるとみる。
(3)146.70円割れからは下向きとし、146.30円割れからは下落期入りとみて145円台後半へ向かう下落を想定する。145.70円以下は反騰注意とするが、146.30円を割り込んでの推移なら18日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
1/17(水)
11:00 (中) 10-12月期 GDP 前期比 (7-9月 1.3%、予想 1.0%)
11:00 (中) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7−9月 4.9%、予想 5.3%)
11:00 (中) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 10.1%、予想 8.0%)
11:00 (中) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 6.6%、予想 6.6%)
16:00 (英) 12月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 3.9%、予想 3.8%)
16:00 (英) 12月 コアCPI 前年同月比 (11月 5.1%、予想 4.9%)
16:00 (英) 12月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (11月 5.3%、予想 5.1%)
19:00 (欧) 12月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 2.9%)
19:00 (欧) 12月 コアHICP・改定値 前年同月比 (速報 3.4%、予想 3.4%)
22:30 (米) 12月 小売売上高 前月比 (11月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 輸入物価指数 前月比 (11月 -0.4%、予想 -0.5%)
22:30 (米) 12月 輸出物価指数 前月比 (11月 -0.9%、予想 -0.6%)
23:00 (米) バーFRB副議長、講演
23:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
23:15 (米) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 0.2%、予想 0.0%)
23:15 (米) 12月 設備稼働率 (11月 78.8%、予想 78.7%)
24:00 (米) 11月 企業在庫 前月比 (10月 -0.1%、予想 -0.1%)
24:00 (米) 1月 NAHB住宅市場指数 (12月 37、予想 39)
24:15 (欧) ラガルドECB総裁、WEFセッション参加
27:00 (米) 財務省20年債入札
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
29:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
1/18(木)
08:50 (日) 11月 機械受注 前月比 (10月 0.7%、予想 -0.8%)
08:50 (日) 11月 機械受注 前年同月比 (10月 -2.2%、予想 0.2%)
09:30 (豪) 12月 新規雇用者数 (11月 6.15万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 12月 失業率 (11月 3.9%、予想 3.9%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.9%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.4%)
13:30 (日) 11月 設備稼働率 前月比 (10月 1.5%)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 338億ユーロ)
21:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
21:30 (欧) ECB(欧州中銀)理事会議事要旨
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算 (11月 156.0万件、予想 142.5万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算 (11月 146.0万件、予想 147.8万件)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 20.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.4万人、予想 185.0万人)
24:15 (欧) ラガルドECB総裁、WEFセッション参加
25:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年インフレ連動債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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