ドル円見通し 米CPI発表後に146.40円へ上昇するも12日午前には145円を割り込む
〇ドル円、1/11夜の米12月CPI発表後に146.40へ上昇、1/5夜高値145.96を超えて年初来高値更新
〇その後買い一巡後の反落で1/12朝に145円台序盤へ下落、8時台には145円を割り込む
〇昨日発表の米12月CPI、全体は市場予想を上回る上昇率、ドル高反応に寄与
〇米長期債利回りは総じて低下、10年債は急伸に低下、米国株高は継続
〇145.55以下での推移中は一段安余地ありとし、144.75割れからは144円台序盤への下落を想定する
〇145.55超えからは上昇再開とみて、146円前後への上昇を想定する
【概況】
ドル円は1月11日未明に145.82円へ上昇して1月5日夜の米雇用統計発表後に付けた高値145.96円に迫った後は11日夜の米CPI発表を控えて上げ渋っていたが、米12月CPIと米新規失業保険申請件数の発表後のドル高局面で146.40円へ上昇して1月5日夜高値を超えて年初来高値を更新した。
米12月CPIは全体の前年比が3.4%となり11月の3.1%を超えたがコア指数の伸びは11月の4.0%から3.9%へ鈍化したため、米長期債利回りはCPI発表後にいったん上昇したものの早々に低下して上昇幅を削ったため、ドル円は買い一巡後の反落で12日朝には145円台序盤へ下落し、12日8時台には145円を割り込んだ。
CPI全体の上昇率は予想を大きく超えたもののFRBによる年3回ないしそれ以上の利下げとなる期待は変わらず、3月の利下げ開始確率についても年末の9割から6割台へ低下したもののCPIに対する反応はさほど見られなかった。ユーロドルもいったん下落後に反騰するなどCPI通過後はドル安優勢となりつつある印象だ。
【米12月CPI、全体は予想以上の上昇率】
1月11日に米労働省が発表した新規失業保険申請件数は1月6日までの週間で前週比1000件減の20万2000件となり2週連続で改善して市場予想の21.0万件を下回った。失業保険受給者総数は12月30日までの週間で183万4000人となり前週から3万4000人減少して市場予想の187.1万人を下回った。CPI全体の上昇率が予想を上回ったこととともに、22時半発表後のドル高反応に寄与した。
米労働省による12月CPI(消費者物価指数)上昇率は全体の前月比が0.3%となり11月の0.1%から伸びが加速して市場予想の0.2%を上回り、前年同月比は3.4%となり11月の3.1%及び市場予想の3.2%を上回った。しかしコア指数では前月比が0.3%で予想と一致して11月と変わらず、前年同月比は3.9%で市場予想の3.8%を上回ったものの11月の4.0%から低下した。前月比ではPCE(個人消費支出)デフレーターでは比重の低い帰属家賃の0.5%や航空運賃の1.0%と中古車の0.5%などが上昇要因だったようだ。
CPI発表を受けて金利先物市場における3月利下げの期待確率は若干低下したとはいえまだ6割台にとどまり、政策金利は現行の5.25〜5.50%から4%以下へ低下するとの期待を反映した動きとなっている。
クリーブランド連銀のメスター総裁はCPI発表後のインタビューで「3月利下げは早過ぎる」としたが、「年内に2%の目標は達成しないにせよインフレ低下は続く」との見通しを示し、成長維持とインフレ抑制を両立するソフトランディングが自身の基本予想だとした。またシカゴ連銀のグールズビー総裁は「2023年はインフレ率が低下した殿堂入りの年であり、この傾向が続く限り2024年に数回の利下げが行われる道が開かれる」と述べたが、「現時点で利下げ開始時期を3月や6月などと判断することはない」と述べた。
いずれも利下げへ向かう流れを前提としており、市場のやや過剰な楽観に対してはけん制的ではあるものの、12月FOMCで示された今年3回の利下げ想定を堅持している。
【米長期債利回りは上昇後に低下、米国株高継続】
1月11日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の米10年債利回りは前日比0.06%低下の3.97%となった。米CPI発表後に直前の3.97%から4.07%へ一時的に急伸したものの早々に低下して上げ幅を解消している。
30年債利回りは前日比0.04%低下の4.17%、2年債利回りは0.11%低下の4.25%となった。米30年債入札が堅調だったこともあるが、CPIに対する債券市場の反応は鈍かったといえる。大幅低下後の修正で年末から上昇していたものの戻り一巡感がみられている。
一方でNYダウは前日比15.29ドル高と上昇、高値で37801.90ドルを付けて史上最高値を更新した。ナスダック総合指数は0.54ポイント高とわずかな上昇だったものの1月5日からの連騰を5営業日に伸ばした。米国株式市場における金融緩和時代到来を先取りした先高期待が続いている印象だ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は1月9日午前安値143.41円からの反騰入りしてきたが、1月11日夜高値から1円を超える反落となっており、11日夜高値を目先のピークとして下落期に入っている。9日午前安値を基準として目先の安値形成期を12日の日中から16日午前にかけての間と想定し、11日夜高値からの下げ幅に対する半値戻しを超える反発がみられないうちは週明けも安値試しを続けやすいとみる。
60分足の一目均衡表では1月11日夜高値からの反落で遅行スパンが悪化して12日午前には先行スパンに潜り込んでいるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。ただし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は1月11日未明に80ポイントに迫ったが、11日夜の一段高では指数のピークが切り下がる弱気逆行となり12日午前には40ポイント割れへ急低下した。50ポイント以下での推移中は一段安警戒とし、20ポイント以下への低下余地もあるとみる。強気転換は55ポイントを超えてからも50ポイント台を維持して指数の高値を切り上げてゆく上昇が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、144.75円を下値支持線、145.55円を上値抵抗線とする。
(2)145.55円以下での推移中は一段安余地ありとし、144.75円割れからは144円台序盤(144.25円から144.00円)への下落を想定する。144円台序盤では買われやすいとみるが、145円を下回っての推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)145.35円から145.55円手前では戻り売り有利とみるが、145.55円超えからは上昇再開とみて146円前後への上昇を想定する。145.55円を超えた水準を維持するなら週明けも高値試しへ向かう可能性があるとみる。
【当面の予定】
1/12(金)
未 定 (中) 12月 貿易収支・米ドル建て (11月 683.9億ドル、予想 747.5億ドル)
10:30 (中) 12月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (11月 -0.5%、予想 -0.4%)
10:30 (中) 12月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (11月 -3.0%、予想 -2.6%)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー現状判断DI (11月 49.5、予想 49.8)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー先行判断DI (11月 49.4、予想 49.5)
16:00 (英) 11月 月次GDP 前月比 (10月 -0.3%、予想 0.2%)
16:00 (英) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.8%、予想 0.3%)
16:00 (英) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 0.4%、予想 0.7%)
16:00 (英) 11月 貿易収支・物品 (10月 -170.32億ポンド、予想 -157.00億ポンド)
16:00 (英) 11月 貿易収支 (10月 -44.80億ポンド、予想 -30.00億ポンド)
22:30 (米) 12月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (11月 0.0%、予想 0.1%)
22:30 (米) 12月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (11月 0.9%、予想 1.3%)
22:30 (米) 12月 コアPPI 前月比 (11月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 コアPPI 前年同月比 (11月 2.0%、予想 1.9%)
24:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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