日銀「主な意見」からの上昇続かず142円台中心の持ち合いを下放れ
〇ドル円、12/27深夜からの米長期債利回り低下によりドル全面安の様相、28日早朝に141.50台へ下落
〇日銀会合の「主な意見」政策正常化への前向き度は分かれる、公開後は円安反応
〇植田総裁TVインタビューも円安材料とされたものの、マイナス金利解除の可能性踏まえ反応は限定的
〇12/27深夜発表のリッチモンド連銀12月製造業景況指数は悪化、ドル安要因に
〇来春の利下げ確率上昇を受け、米長期債利回りは一段安、ダウは年初来高値更新
〇142.35以下での推移中は下向きとし、140.99割れからは140.50、140.25を順次試して行く下落を想定
〇142.35超えからは142.84試しとするが、142.84手前では売られやすいとみる
【概況】
ドル円は12月19日の日銀会合における金融緩和継続決定により19日夜高値144.95円まで上昇したが、全般ドル安基調は継続とみられて12月22日午前安値141.87円へ下落して日銀会合後の上昇幅を解消し、12月25日のクリスマス休場を挟んで142円台で小動きの持ち合いに入っていた。
12月27日は午前に公開された日銀金融政策決定会合(12/18-19開催)の「主な意見」をきっかけに142.84円まで高値を伸ばしたものの143円には届かず、27日深夜からは米長期債利回りが一段と低下してドル全面安の様相となったために22日午前安値を割り込んで28日早朝には141.50円台へ下落した。
日銀が公表した金融政策決定会合の「主な意見」ではマイナス金利解除の時期を巡って委員の意見は分かれてまだまとまった姿勢がみられず、27日にNHKが放映した植田総裁インタビューにおいても金融緩和政策の変更を急がない姿勢だったことが円売り材料となったもののいずれも反応は限定的であり、深夜からはドル全面安の流れによりドル円は下落した。
12月27日深夜発表のリッチモンド連銀の12月製造業景況指数はマイナス11となり11月のマイナス5から悪化して市場予想のマイナス3も下回ったことはドル安要因となった。
【日銀会合の「主な意見」、政策正常化への前向き度は分かれる】
日銀が公表した「主な意見」では、「来春の賃上げが予想よりかなり上振れたとしても基調的な物価上昇率が2%を大きく上回ってしまうリスクは小さい」、「少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない」との見解を示す委員がいた一方で、「2%物価目標を持続的・安定的に実現する確度はさらに高まってきており、金融正常化のタイミングは近づいている」とする委員もいた。また「YCC柔軟化措置に伴うイールドカーブのゆがみ解消でインフレ基調が過度に強まらない限りは2%目標実現の見極めは十分な余裕を持って行うことができる」、「当面は現状の金融緩和継続が適当」とする委員もいた。総じてまとまりはなく、日銀審議委員全体が出口へ向けて前傾姿勢をとっているとの印象は薄く、公開後は円安反応となった。
日銀の植田総裁は27日に放映されたTVインタビューにおいて来年マイナス金利が解除される可能性は「ゼロではない」としたものの、1月の日銀支店長会議で賃金・物価でかなりの情報が得られる可能性は「今のところそんなに高いとは思っていない」とし、春闘の結果など「大事なイベントはきちんと情報を確認していきたい」と述べた。これも出口へ急ぐ姿勢ではないとして円安材料とされたものの、春闘以降にマイナス金利が解除される可能性も踏まえて円安反応は限定的だった。
【米長期債利回りは一段安、ダウは最高値更新】
12月27日の米長期債利回りは来春の利下げ確率が高まっているとして総じて大幅低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.11%低下の3.79%となり、10月23日に付けたこれまでのピークである5.02%以降の最低を更新した。
30年債利回りは0.09%低下の3.96%となり、10月23日に付けたこの間のピークである5.18%以降の最低を更新した。
2年債利回りは0.11%低下の4.25%となり12月14日のFOMC直後に付けた4.28%を割り込んで10月19日に付けたこの間のピークである5.26%以降の最低を更新した。
米金利先物市場に織り込まれる来年3月の利下げ確率は前日の8割強から9割強へと上昇している。FOMCでは来年の利下げ回数想定を9月時点の2回から3回に引き上げたが、4回利下げを予想する向きもあり、金融引き締め期から金融緩和期への移行による長期金利低下傾向とリスク先行感による株高継続感が高まっている印象だ。
NYダウは前日比111.19ドル高と上昇、12月20日高値を超えて史上最高値を更新、ナスダック総合指数は24.61ポイント高と上昇して4連騰とし年初来高値を更新した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は12月22日午前安値141.87円から下げ渋り型の持ち合いとなり、27日午前の上昇では143円を超えられず、28日早朝への下落で141.87円を割り込んで持ち合いを下放れた。12月14日のFOMC後に付けた安値140.99円割れには至らずにいるものの、ドル安感が強まっていることで12月14日安値を割り込んでいく懸念も強まりつつあるようだ。
12月22日午前安値を基準として目先の安値形成期は28日午前から29日午前にかけての間と仮定するが、持ち合いからの下放れのため下落基調のまま越年する可能性もあるとみる。
142.35円超えからは強気転換注意とし、27日午前高値142.84円超えからは143円台序盤への上昇を想定するが、143円台では再び売られやすいとみる。
60分足の一目均衡表では12月28日早朝への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は両スパンそろって好転するところからとし、先行スパンからの転落中は遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は12月27日に繰り返し60ポイントを超えたものの70ポイントには届かず、深夜からの下落で30ポイントを割り込んでいる。40ポイント以下での推移中は一段安警戒とし、10ポイント台への低下もあり得ると注意する。ただし、相場が小反発後に一段安する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、45ポイント超えからは50ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月14日安値140.99円を下値支持線、142.35円を上値抵抗線とする。
(2)142.35円以下での推移中は下向きとし、12月14日安値140.99円割れからは140.50円、140.25円を順次試して行く下落を想定する。140.50円以下は反騰とするが、直前安値から1円を超える反騰へ進めないうちは29日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)142.35円超えからは27日午前高値142.84円試しとするが、142.84円手前では売られやすいとみる。
【当面の予定】
12/28(木)
22:30 (米) 11月 卸売在庫 前月比 (10月 -0.2%、予想 -0.2%)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 20.5万件、予想 21.0万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 186.5万人、予想 187.5万人)
24:00 (米) 11月 住宅販売保留指数 前月比 (10月 -1.5%、予想 1.0%)
24:00 (米) 11月 住宅販売保留指数 前年同月比 (10月 -6.6%)
25:00 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省7年債入札
12/29(金)
16:00 (英) 12月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (11月 0.2%)
23:45 (米) 12月 シカゴ購買部協会景況指数 (11月 55.8、予想 50.5)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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