ドル円見通し 日銀のゼロ回答で145円手前へ急伸したが、まだ右肩下がりの範囲(23/12/20)

ドル円は145円に届かないまま20日未明には143.52円まで下げた。20日午前は144円台回復を試している。

ドル円見通し 日銀のゼロ回答で145円手前へ急伸したが、まだ右肩下がりの範囲(23/12/20)

日銀のゼロ回答で145円手前へ急伸したが、まだ右肩下がりの範囲

〇ドル円、日銀会合の実質ゼロ回答で12/19昼に直前安値142.24から143.77へ急伸
〇植田総裁「チャレンジング」発言は仕事の姿勢の問題だったと弁明、19時台終盤144.95へ一段高
〇FOMC後の下げ幅はほぼ解消。ユーロやポンド、豪ドル等が上昇しドル安感強まり、143.52まで下げる
〇金融緩和政策の出口判断には慎重姿勢。5月以降、春闘やインフレ動向見ての判断で当面は現状維持か
〇米長期債利回りは大幅低下後の下げ渋り。ダウは9連騰、史上最高値を5営業日連続で更新
〇市場は来年3回の利下げ期待を高め、米金利先物市場の来年3月の利下げ確率は7割を超える
〇12/20未明安値143.52割れからは下向き、143円割れからは戻り一巡による下落期入りとする
〇143.52割れを回避するうちは上向きとし、144.50超えからは12/19夜高値144.95試しとする

【概況】

ドル円は日銀金融政策決定会合が現状維持とされて出口戦略へ向けたプロセス提示等がなく実質ゼロ回答だったことで19日午前の直前安値142.24円から昼高値143.77円へ急伸、15時半の植田総裁会見を見ながら一時142.49円まで下げたところを買われ、植田総裁が12月7日の国会答弁で「チャレンジング」と述べたことは仕事への姿勢の問題だったと弁明したことで19時台終盤高値144.95円へ一段高した。
12月14日早朝の米FOMCが来年3回の利下げ想定を示したことで145円台序盤から14日昼過ぎ安値140.99円まで大幅安となった下げ幅をほぼ解消したが、19日深夜にかけてユーロやポンド、豪ドル等が上昇してドルストレートでのドル安感が強まったため、ドル円は145円に届かないまま20日未明には143.52円まで下げた。20日午前は144円台回復を試している。

12月19日夜に米商務省が発表した11月の住宅着工件数(年換算)は前月比14.8%増の156万戸となり市場予想の136万戸を大幅に上回り、先行指標の住宅着工許可件数は前月比2.5%減の146万戸で市場予想の146.5万戸をわずかに下回ったが、市場の反応は限定的だった。

【日銀 出口への前傾姿勢見られず】

日銀は12月18-19日に開催した金融政策決定会合において、マイナス金利とYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)等の大規模金融緩和策の維持を全員一致で決定した。YCCについては前回会合で1.0%を上限としつつ1%を一定程度超えることを容認する柔軟性を持たせたが追加の修正はなく、賃金上昇を伴う2%物価目標の持続的・安定的な実現を目指して「粘り強く金融緩和を継続していく」とした。
植田総裁は会見において2%の物価上昇目標に対しては持続的・安定的な達成に向けて確度は引き続き少しずつ高まっている」としたが、「賃金と物価がともに上昇する好循環の実現についてはなお見極める必要がある」と述べて金融緩和政策の出口への判断については慎重な姿勢を示した。

12月7日の参院答弁において植田総裁が出口戦略についての質問に対して「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と述べ、その後に岸田首相との会談で出口戦略についての考え方を示したと報じられたことで、今回の会合では何等かの出口戦略へ向けた姿勢が示されるのではないかと市場は警戒し、12月7日午前の147円台序盤から12月8日未明安値141.67円まで大幅下落したことも踏まえて会見では「チャレンジング」の真意を見定めたいと市場は構えていたのだが、植田総裁は「チャレンジング」発言については仕事への取り組み姿勢として「一段と気を引き締めてというつもりだった」と弁明した。
日銀が金融政策の現状維持を「全会一致」で決定したこと、追加の修正がなかったこと、総裁会見では出口へ進み始めているとの具体的な前傾姿勢がみられなかったことは、金融政策の早期正常化を期待して一段の円高を警戒していた市場にとってはゼロ回答であり、「チャレンジング」発言は肩透かしとなった。

日銀は来年5月に多角的レビューの二回目会合を開催して金融緩和政策の総括を行うとしており、春闘結果やインフレ動向を見て5月以降に出口へ向けた姿勢を強めるのかどうか判断してゆくと思われるが、当面は現状維持が続くのだろうと推察される。

【米長期債利回りは大幅低下後の下げ渋り、ダウは5営業日連続で史上最高値更新】

12月19日の米長期債利回りは概ね小幅低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の3.93%で終了した。FOMC後の急低下で13日に前日比0.18%低下、14日に0.10%低下となり一時3.89%をつけたがその後は下げ渋りが続ており、15日から18日までは13日のレンジ内に留まっている。
30年債利回りは前日比0.01%低下の4.04%で終了した。FOMCを通過して13日から15日まで3営業日連続で低下し、18日も一時3.997%をつけて10月23日の5.18%以降の最低とし、19日も安値圏での推移を続けた。
2年債利回りは前日と変わらずの4.45%で終了した。FOMC後の大幅低下で14日に4.28%をつけて10月19日に付けた5.26%以降の最低としてから戻したものの勢いを欠いている。
12月15日にNY連銀総裁が早期利下げ期待に釘を刺す発言を行ったことで長期債利回りの大幅低下に若干ブレーキがかかったものの効果は限定的で、市場は来年3回の利下げ期待を高めており、金利先物市場における来年3月の利下げ確率は7割を超えている。

一方で12月19日のNYダウは前日比251.90ドル高と上昇、12月7日から9連騰で史上最高値を5営業日連続で更新した。ナスダック総合指数も98.03ポイント高と上昇して年初来高値を更新、12月7日から9連騰として2022年1月以来の15000ポイント台到達とした。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は12月19日夜高値で144.95円まで戻したが、12月6日夜高値147.49円と12日未明高値146.58円を結ぶ右肩下がりの上値抵抗線に戻りを抑えられている。12月14日の急落分をほぼ解消しているものの、まだ戻り高値は切り下がり基調にあり、米国の来年利下げ期入りを想定したドル安感も継続しているため、11月13日高値151.90円からの下落一巡による上昇として勢い付くためには12月12日未明高値146.58円を超えて右肩下がりの流れから抜け出す必要があると思われる。
12月20日未明へ反落してから戻し気味のため、144.50円超えからは上昇再開とみて21日深夜から26日午前にかけての間への上昇を想定するが、20日未明安値143.52円割れからは下向きとし、143円割れからは戻り一巡による下落期入りとして22日午前から26日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12月19日夜への一段高とその後の反落でも遅行スパンの好転と先行スパンを上抜いた状況を維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とみる。先行スパンから転落する場合は戻り一巡による下落期入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は12月19日夜の上昇時に80ポイントに到達してから反落したものの50ポイント台を維持して持ち直しつつあるため、60ポイント超えからは再び80ポイントを目指す上昇を想定する。ただし、相場が一段高する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落警戒とし、50ポイント割れから続落する場合は30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月20日未明安値143.52円を下値支持線、144.50円を上値抵抗線とする。
(2)12月20日未明安値割れを回避するうちは上向きとし、144.50円超えからは19日夜高値144.95円試しとする。145円前後は反落注意とするが、高値更新から勢い付く場合は145円台中盤へ上値目途を引き上げる。
(3)143.52円割れからは下向きとし、143円割れからは戻り一巡による下落期入りとして19日午前安値142.24円試しとし、143.52円を下回っての推移なら21日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

12/20(水)
16:00 (独) 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 -0.1%、予想 -0.3%)
16:00 (独) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -27.8、予想 -27.0)
16:00 (英) 11月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (10月 0.0%、予想 0.1%)
16:00 (英) 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 4.6%、予想 4.4%)
16:00 (英) 11月 コアCPI 前年同月比 (10月 5.7%、予想 5.6%)
16:00 (英) 11月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (10月  6.1%、予想 5.7%)
18:00 (欧) 10月 経常収支・季調済 (9月 312億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.4%)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前年同月比 (9月 -0.3%)

22:30 (米) 7-9月期 経常収支 (4‐6月 -2121億ドル、予想 -1960億ドル)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数・年率換算 (10月 379万件、予想 378万件)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数 前月比 (10月 -4.1%、予想 -0.4%)
24:00 (米) 12月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (11月 102.0、予想 104.0)
24:00 (欧) 12月 消費者信頼感・速報値 (11月 -16.9、予想 -16.4)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札

12/21(木)
22:30 (米) 7-9月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 5.2%、予想 5.2%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 3.6%、予想 3.6%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 2.3%、予想 2.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.6万人、予想 187.8万人)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 -5.9、予想 -3.0)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 -0.4%)
25:00 (欧) レーンECB理事、講演[ダブリン]
27:00 (米) 5年インフレ連動債入札



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