『ハト派なFOMCを受けてドル円急落。来週は日銀会合がメインイベント』
〇今週のドル円、週初146.59まで上昇、一部観測報道による日銀緩和早期修正期待後退等が背景
〇買い一巡後は、米生産者物価の予想を下回る結果やFOMCのハト派的な結果に140.97まで急落
〇週末は輸入物価指数や米PMIの上ブレ、NY連銀総裁のタカ派発言に等に142円台に反発
〇ユーロドルFOMC後の米長期金利低下とECB理事会のタカ派的結果に一時1.1010まで急伸
〇ドル円、主要テクニカルポイントを下抜け、21日線が200日線をデッドクロスする等地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズも日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレードの解消懸念等が重石に
〇来週は12/18ー19の日銀金融政策決定会合に注目、FOMC結果を受けての政策転換あるか
〇日銀金融政策決定会合後のドル円急落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):137.50ー144.50、(EURUSD):1.0750−1.1025
今週のレビュー(12/11−12/15)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初144.85で寄り付いた後、(1)米ブルームバーグ社による「日銀は賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やイールドカーブコントロールの撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識」との観測報道や、(2)上記1を背景とした日銀による金融緩和の早期修正観測後退(植田日銀総裁によるチャレンジング発言後に増加したドル円ショートの巻き戻し)、(3)欧米株の力強い動き(リスク選好の円売り圧力)、(4)米金利上昇に伴うドル買い圧力(前週末金曜日に発表された米雇用統計が力強い結果となったことで米FRBによる早期利下げ観測が後退→米金利上昇→米ドル急伸)が支援材料となり、週明け早々に、週間高値146.59まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)米ニューヨーク連銀が公表した1年先期待インフレ率(結果3.4%、前回3.6%)の伸び率鈍化(2021年4月以来の低水準)や、(6)日本経済新聞社による「市場には12月に解除を事前予告し、政策金利の先行き指針を同時に修正するとの見方もある」との観測報道、(7)上記6を背景とした日銀による金融緩和の早期修正観測再燃、(8)米11月消費者物価指数(結果+3.1%、予想+3.1%、前回+3.2%)の伸び率鈍化、(9)イエレン米財務長官による「インフレ率がFRBの目標まで下がらない理由はない」「インフレは有意に低下している」とのハト派的な発言、(10)米11月生産者物価指数(結果+0.9%、予想+1.0%)および、同コア指数(結果+2.0%、予想+2.2%)の市場予想を下回る結果、(11)米FOMCのハト派的な結果(3会合連続となる政策金利の据え置きが決定された他、声明文には「Inflation has eased over the past year/インフレ率はこの1年で緩和した」との文言が追加。
また同時に公表されたドットチャートで来年3回の利下げが示唆された他、パウエルFRB議長からも「本日の会合で利下げのタイミングを協議した」とのハト派的な発言あり)、(12)上記11を背景とした米FRBによる早期利下げ観測再燃(米長期金利急低下→米ドル急落)が重石となり、週後半にかけて、週間安値140.97(7/31以来、約4カ月半ぶり安値圏)まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(13)急ピッチな下落に対する反動買いや、(14)米新規失業保険申請件数(結果20.2万件、予想22.0万件)の良好な結果、(15)米11月小売売上高(結果+0.3%、予想▲0.1%)の市場予想を上回る結果、
(16)米11月輸入物価指数(結果▲1.4%、予想▲2.1%)の市場予想を上回る結果、(17)米12月総合PMI(結果51.0、予想50.5)の市場予想を上回る結果、(18)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「必要なら再利上げの用意が必要」とのタカ派的な発言が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間12/16午前3時35分現在)では、142.13前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0762で寄り付いた後、早々に週間安値1.0741まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)ドイツ12月ZEW景況感指数(結果12.8、予想8.1、前回9.8)の市場予想を上回る結果や、(2)米11月消費者物価指数(CPI)の伸び率鈍化、(3)米11月生産者物価指数(PPI)の伸び率鈍化、(4)米FOMCのハト派的な結果、(5)米金利低下に伴うドル売り圧力、(6)ECB理事会のタカ派的な結果(ECBは2会合連続の政策金利・据え置きを決定しつつも、声明文に「it is likely to pick up again temporarily in the near term/インフレ率が再び一時的に上昇する可能性が高い」との文言を追加した他、今後の政策金利の水準と据え置きの期間についても「data-dependent approach/データ次第」とのスタンスを維持)、(7)ラガルドECB総裁による「We did not discuss rate cut at all/利下げについては全く議論しなかった」とのタカ派的な発言、
(8)上記6、7を背景としたECBによる早期利下げ観測後退が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.1010(11/29以来の高値圏)まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(9)11/29に記録した直近高値1.1018を背にした戻り売り圧力や、(10)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBの次の行動はサプライズなければ利下げ」とのハト派的な発言、(11)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「ECBの政策金利はターミナルレートに到達した可能性が高まっている」とのハト派的な発言、(12)フランス12月製造業PMI(結果42.0、予想43.3)および、同非製造業PMI(結果44.3、予想46.0)の市場予想を下回る結果、
(13)ドイツ12月製造業PMI(結果43.1、予想43.2)および、同非製造業PMI(結果48.4、予想49.8)の市場予想を下回る結果、(14)ユーロ圏12月製造業PMI(結果44.2、予想44.6)および、同非製造業PMI(結果48.1、予想49.0)の市場予想を下回る結果、(15)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「必要なら再利上げの用意が必要」とのタカ派的な発言が重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/16午前3時35分現在)では、1.0901前後まで値を崩す展開となっております。
来週の見通し(12/18−12/22)
<ドル円相場>
ドル円は11/13に記録した年初来高値151.91をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、一時140.97(7/31以来、約4カ月半ぶり安値圏)まで急落しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線、50日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み下抜けしたことや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「21日移動平均線と90日移動平均線のデッドクロス」が成立したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる早期利下げ観測の台頭(今週開催された米FOMCは総じてハト派的な結果→CMEが提供するFed Watchツールによると来年3月の利下げ確率は65.6%へ急上昇)や、(2)日銀による金融緩和の早期修正観測(植田日銀総裁・氷見野日銀副総裁は先週、金融緩和修正の可能性を匂わせる発言を実施)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレードの解消懸念など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は上記2を見極める目的で、12/18ー12/19の日程で開催される日銀金融政策決定会合に注目が集まります。直近の経緯を振り返ると、12/6に氷見野日銀副総裁より「出口を良い結果につなげることは十分可能」とのタカ派的な発言が見られた他、翌12/7には、植田日銀総裁からも「年末から来年にかけ一段とチャレンジングになる」とのタカ派的な発言が見られました。その後、12/11に米ブルームバーグより、日銀関係者の話として「賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やYCCの撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識」との火消し報道がなされるも、12/12には一転、日本経済新聞社より「市場には12月に解除を事前予告し、政策金利の先行き指針を同時に修正するとの見方もある」とのヘッドラインが飛び出すなど、先行きを見通しづらい二転・三転報道が続いています。
当方は、今週開催された米FOMCで早期利下げ観測が高まった影響(米国が利下げに転じる前に金融緩和脱却に着手しておきたいという気持ちの高まり)を受ける形で、来週の日銀金融政策決定会合で金融緩和の修正(声明文から追加緩和を示唆する文言が完全に削除されると共にマイナス金利解除など緩和修正の決定)に踏み切ると見ていることから、日銀金融政策決定会合後のドル円急落をメインシナリオとして予想いたします(7/14に記録した直近安値137.24を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):137.50ー144.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、12/8に記録した約3週間ぶり安値1.0723をボトムに反発に転じると、週後半にかけて、一時1.1010まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日移動平均線、50日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「強い」と判断できます。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧州経済の先行き不透明感(今週発表されたフランス・ドイツ・ユーロ圏のPMI速報値は軒並み市場予想を下回る不冴な結果)や、(2)ECBによる早期利下げ観測の台頭(今週開催されたECB理事会およびラガルド総裁記者会見は総じてタカ派寄りの結果となったが、景気減速懸念とインフレ鈍化が並走する中、ECBによる早期利下げ観測は依然残存)、(3)欧米金利差に着目した構造的なユーロ売り・ドル買い圧力(FRB・ECB共に利下げ観測が燻っているため、欧米金利差は埋まらず)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は、上記1を見極める目的で、12/18に予定されているドイツ12月IFO景況感指数や、12/21のユーロ圏12月消費者信頼感指数に注目が集まる他、上記2を見極める目的では、ECB高官発言(クロアチア連銀ブイチッチ総裁、ベルギー中銀ウンシュ総裁、シュナーベルECB専務理事、レーンECB専務理事、リトアニア中銀シムカス総裁、スロバキア中銀カジミール総裁)に注目が集まります。欧州経済指標が不冴な結果となる場合や、ECB高官よりハト派的な発言が相次ぐ場合には(特にタカ派と目されているシュナーベルECB専務理事よりハト派的な発言が出てくる場合には)、今週後半のユーロ急伸分の巻き戻しが生じる恐れもあるため(全値押しに繋がるリスクもあるため)、当方では引き続き、ユーロドル相場の「一巡後の下落」をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.1025
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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