ドル円週間見通し 日銀総裁の「チャレンジング」答弁の本意見極めへ(23/12/18)

ドル円は12月14日安値で140.99円を付けて11月13日高値151.90円以降の安値を更新した。

ドル円週間見通し 日銀総裁の「チャレンジング」答弁の本意見極めへ(23/12/18)

日銀総裁の「チャレンジング」答弁の本意見極めへ

〇先週のドル円、日銀総裁の「年末から来年はチャレンジング」発言等に12/8未明に141.67へ下落
〇その後は一旦146.58まで戻すも、FOMC後のパウエルFRB議長のハト派発言に140.99へ安値を更新
〇15日夜にはNY連銀総裁の早期利下げに対する否定的姿勢示にドル高ぶり返し142円近辺で越週
〇市場は18-19の日銀政策決定会合で「チャレンジング」の意味を確認へ、円は上下に大きく振れやすい
〇NY連銀総裁「利下げを行う議論していない」と述べ、アトランタ連銀総裁は利下げは来年後半と発言
〇時期の問題はあっても日米金利差縮小傾向により円高圧力のかかった状況続きやすいか
〇ドル円、3月からの上昇トレンドの支持線大きく割り込み、修正安レベルを超える
〇週末の持ち合い下放れで、昨年高値からの24.73円の下げと同様の足取りとなる可能性も
〇142.50超えからは143.00試し、日銀会合後勢いづく場合は144円台へ上値目途引上げ
〇140.99割れからは140円、139円を順次試す下落を想定、勢いづく場合138円以下への一段安へ向かうか

【概況】

ドル円は12月7日に日銀の植田総裁が国会答弁において金融緩和の出口へ向けて「年末から来年はチャレンジング」と述べたことと、その後に岸田首相との会談で出口戦略を説明したとの報道で急落となり、12月8日未明には141.67円へ下落、6日夜高値147.49円からは5.82円の下げ幅となった。
日銀関係者が日銀は出口へ急いでいないとの一部メディア報道もあり売られ過ぎに対する買い戻しで12月12日未明に146.58円まで戻し、12月12日の米CPI発表直後に144.73円へ下落したところも買われて145円台でしっかりしていたが、14日早朝の米FOMCが予想通りに政策金利を3会合連続で据え置いた上で参加者の予想として来年3回の利下げを想定し、パウエル議長が利下げについて議論したと会見で述べたことでドル全面安となり、14日午後には140.99円を付けて11月13日夜高値151.90円以降の安値を更新した。

12月14日夜にはECBと英中銀が政策金利を据え置いた上で金融引き締めを継続する姿勢を強調したことでユーロとポンドが一段高となりドル安がさらに勢い付いたものの、ドル円は直前の大幅下落後で反応が鈍く142円を挟んだ揉み合いとなり、15日夜にNY連銀総裁が早期利下げに対する否定的姿勢を示したことでユーロとポンドが急落してドル高がぶり返したが、ドル円の反応は鈍いままで142円を挟んだ揉み合いを続けて週を終えた。

【日銀会合で「チャレンジング」の意味が問われる】

今週は12月18−19日に日銀金融政策決定会合、22日に11月の全国消費者物価指数と日銀決定会合議事要旨(10月30-31日開催分)がある。
日銀金融政策決定会合とその後の総裁会見では、12月7日の植田日銀総裁が述べた「チャレンジング」の意味も明らかになると思われ、出口戦略へ向けて前のめりの姿勢が示されるなら来年早期におけるマイナス金利解除やYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)撤廃等へ向かう可能性が高まり円高が一段と進む可能性があるが、逆に出口への具体的なプロセスや時期が示されずにあいまいな現状維持に留まるなら、12月7日の総裁発言に対して市場が過剰反応だったとして円安へ進む可能性がある。上下に大きく振れやすいところであり、年明けへの方向性を決めるきっかけとなるのではないかと思われる。

【NY連銀総裁は早期利下げ期待に釘を刺す】

NY連銀のウィリアムズ総裁は12月15日に、FOMCでは「すぐに利下げを行う議論はしていない」と述べて来年3月にも利下げが始まるのではないかとの市場の期待をけん制した。
12月14日早朝にパウエルFRB議長はFOMCにおいて利下げ開始時期について「視野に入り始めており、この日協議した」と述べているため、話がでたのは間違いなく、NY連銀総裁の発言真意は「3月会合での利下げが具体的に議論されたわけではない」ということと推察されるが、FOMC後にドル全面安へ進んだこととNYダウが史上最高値を更新して市場のリスクオン心理が増長したことに釘を刺したかったのだろうと思われる。
アトランタ連銀のボスティック総裁も15日に「2024年第3四半期には利下げを開始できる」が「利下げは差し迫っていない」と述べており、来年の利下げ局面入りは確実としても前半ではなく後半として市場の楽観を多少諫めている。

NY連銀総裁発言がFOMCと英中銀MPC及びECB理事会を通過して急激に進んだドル安に急ブレーキをかけた格好だが、インフレの鈍化傾向が着実に進んでいることを踏まえれば、来年3月の利下げ確率は低下しても5月の利下げ可能性は十分な高さを持っていると思われる。今週は12月22日にFRBがインフレ指標として最重視する米11月PCE(個人消費支出)デフレーターの発表があり、コアPCEデフレーターの事前予想は10月の3.5%から3.4%へ鈍化するとみられている。米経済指標が弱めでPCEデフレーターの鈍化が顕著となれば来年前半の利下げ期待は高まると思われる。

【米製造業の景況感は弱め】

12月15日に発表されたS&Pグローバルによる12月の米製造業PMI速報値は48.2となり市場予想の49.3を下回り11月の49.4から悪化して4か月振り低水準となった。サービス業PMI速報値は51.3となり11月の50.8から改善して市場予想の50.6を上回り5か月振り高水準となった。総合指数は51.0となり11月の50.7から上昇して5か月振り高水準となった。
NY連銀による12月の製造業景況指数はマイナス14.5となり11月のプラス9.1から低下して市場予想のプラス2.0を大幅に下回った。
FRBによる11月の米鉱工業生産指数は前月比0.2%上昇となり2か月振りにプラスとなったが市場予想の0.3%を下回り、10月は速報の0.6%低下から0.9%低下へ下方修正された。
サービス業はまだ強いが製造業の鈍化が顕著となってきている。

【米長期債利回りは大幅低下一服、ダウは連日の史上最高値更新】

12月15日の米長期債利回りは小幅まちまちだった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の3.91%で終了した。FOMC後の急落で12月13日は前日比0.18%低下、14日に0.10%低下して一時3.89%をつけて10月23日の5.02%以降の最低としたが、15日は下げ渋った。週間では12月8日の4.23%から0.32%の大幅低下だった。
30年債利回りは前日比0.03%低下の4.01%で終了した。12月13日に前日比0.13%低下、14日に0.14%低下して15日も一時4.00%をつけて10月23日に付けた5.18%以降の最低を更新、4営業日連続の低下で週間では12月8日の4.31%から0.30%低下となった。
2年債利回りは前日比0.06%上昇の4.45%で終了した。13日に前日比0.31%の大幅低下となり14日も0.04%低下で一時4.29%をつけて10月19日の5.26%以降の最低としたが、NY連銀総裁発言もあり15日は修正高となったようだ。

しかし、米FRBが利上げを終了し、時期の問題はあるものの利下げ準備段階に入ったことで米長期債利回りの低下傾向と日米金利差縮小傾向により円高圧力のかかった状況も続きやすいと思われる。

12月15日のNYダウは前日比56.81ドル高と上昇、12月7日から7連騰となり連日の史上最高値更新となった。ナスダック総合指数も52.36ポイント高と上昇して7連騰としたが、14日の年初来高値更新には至らなかった。NY連銀総裁が楽観的な早期利下げ期待に釘を刺したものの、株式市場はリセッション回避による先高への期待感が強まっている印象だ。

【日足 トレンド分析】

ドル円は12月14日安値で140.99円を付けて11月13日高値151.90円以降の安値を更新した。15日は下げ渋り程度の動きで14日の高安レンジ内に留まっており、一段安への懸念が残るところだ。
日足チャートにおけるテクニカルなポイントは以下の通り。
(1)3月24日と7月14日の安値を結んだ上昇トレンドの下値支持線を大きく割り込んでいる。
(2)3月8日から3月24日にかけての下げ幅8.28円、6月30日から7月14日にかけての下げ幅7.82円に対して11月13日高値から12月14日安値までの下げ幅は10.91円となり、上昇トレンドにおける修正安レベルを超えている。

日銀総裁の「チャレンジング」答弁の本意見極めへ

(3)11月13日高値からの下落は11月21日安値までを一段目、12月7日安値までを二段目とすれば、すでに底割れしたことで三段目の下げに入っている印象だ。より細かく見れば三段目となる12月12日未明からの下落は12月12日夜までを一段目、14日午後までを二段目とし、その後を横ばいの下げ渋り持ち合いとしているため、持ち合い下放れから三段目に入る可能性が懸念され、その三段目もさらに三段下げ型へと発展する可能性も考えられる。
(4)11月13日からの下落規模、角度は昨年10月21日高値からの下落時に近いが、その時は11月15日安値137.74円まで14.2円の下げ幅となった後に11月20日高値142.25円まで4.51円の戻りを入れてから一段安を繰り返して今年1月16日安値127.22円まで24.73円の下げ幅に拡大しており、今回も同様の足取りとなる可能性も残るところだ。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月14日午後安値140.99円を下値支持線、143.00円を上値抵抗線とする。
(2)142.50円超えからは143.00円試しとする。143円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、日銀金融政策決定会合後に円安が勢い付く場合は144円台へ上値目途を引き上げる。
(3)140.99円割れからは140.00円、139.00円を順次試す下落を想定する。日銀金融政策決定会合から円高が勢い付く場合は138円以下へ下値目途を引き下げ、売り一巡で戻してからの下落再開でさらに一段安へ向かう可能性を警戒する。

【当面の予定】

12/18(月)
日銀・金融政策決定会合初日
18:00 (独) 12月 IFO企業景況感指数 (11月 87.3)
22:30 (欧) シュナーベルECB理事、パネル討論会
24:00 (米) 12月 NAHB住宅市場指数 (11月 34、予想 38)
24:00 (欧) レーンECB理事、パネル討論会

12/19(火)
日銀金融政策決定会合、 政策金利発表 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
06:45 (NZ) 11月 貿易収支 (10月 -17.09億NZドル)
09:00 (NZ) 12月 ANZ企業信頼感 (11月 30.8)
09:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
15:30 (日) 植田和男日銀総裁、記者会見
19:00 (欧) 11月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (10月 2.4%)
19:00 (欧) 11月 コアHICP・改定値 前年同月比 (10月 3.6%)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数 年率換算件数 (10月 137.2万件、予想 136.0万件)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数 前月比 (10月 1.9%、予想 -0.9%)
22:30 (米) 11月 建設許可件数 年率換算件数 (10月 148.7万件、予想 146.0万件)
22:30 (米) 11月 建設許可件数 前月比 (10月 1.1%、予想 -2.5%)
26:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

12/20(水)
08:50 (日) 11月 通関貿易収支・季調前 (10月 -6625億円)
08:50 (日) 11月 通関貿易収支・季調済 (10月 -4620億円)
16:00 (独) 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 -0.1%)
16:00 (独) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -27.8)
16:00 (英) 11月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (10月 0.0%)
16:00 (英) 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 4.6%)
16:00 (英) 11月 コアCPI 前年同月比 (10月 5.7%)
16:00 (英) 11月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (10月  6.1%)
18:00 (欧) 10月 経常収支・季調済 (9月 312億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.4%)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前年同月比 (9月 -0.3%)

22:30 (米) 7-9月期 経常収支 (4‐6月 -2121億ドル)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数・年率換算 (10月 379万件、予想 378万件)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数 前月比 (10月 -4.1%、予想 -0.3%)
24:00 (米) 12月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (11月 102.0、予想 103.4)
24:00 (欧) 12月 消費者信頼感・速報値 (11月 -16.9)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札

12/21(木)
22:30 (米) 7-9月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 5.2%、予想 5.2%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 3.6%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 2.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.6万人)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 -5.9、予想 -3.0)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 -0.4%)
25:00 (欧) レーンECB理事、講演[ダブリン]
27:00 (米) 5年インフレ連動債入札

12/22(金)
英国 株式市場短縮取引、米国 債券市場短縮取引
08:30 (日) 11月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 3.3%)
08:30 (日) 11月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (10月 2.9%)
08:30 (日) 11月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (10月 4.0%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨・10月30-31日分
16:00 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.3%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -2.7%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 -0.1%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (10月 -2.4%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.0%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.6%)
16:00 (英) 7-9月期 経常収支 (4‐6月 -253億ポンド)

22:30 (米) 11月 耐久財受注 前月比] (10月 -5.4%、予想 2.2%)
22:30 (米) 11月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (10月 0.0%)
22:30 (米) 11月 個人所得 前月比 (10月 0.2%、予想 0.4%)
22:30 (米) 11月 PCE(個人消費支出) 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 PCEデフレーター 前年同月比 (10月 3.0%)
22:30 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前月比 (10月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (10月 3.5%、予想 3.4%)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数・年率換算 (10月 67.9万件、予想 68.7万件)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数 前月比 (10月 -5.6%、予想 1.2%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 69.4、予想 69.4)


注:ポイント要約は編集部

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