ドル円見通し 米長期債利回り大幅低下で142円台へ急落、米FOMCは来年3回利下げを想定(23/12/14)

ドル円は12月14日早朝145円台序盤から143円割れへ急落、14日朝には142円台序盤へ続落した。

ドル円見通し 米長期債利回り大幅低下で142円台へ急落、米FOMCは来年3回利下げを想定(23/12/14)

米長期債利回り大幅低下で142円台へ急落、米FOMCは来年3回利下げを想定

〇ドル円、FOMCによる来年の利下げ予想回数引上げとFRB議長のハト派姿勢を受け143円割れへ急落
〇FOMC、政策金利を3会合連続で据え置き、来年の利下げ予想回数中央値を3回へ上方修正
〇米長期債利回りは大幅低下、ダウは史上最高値更新
〇12/8未明安値141.67割れからは141.00から140.50にかけての水準を試す下落を想定
〇143.50超えからはいったん戻しに入るとみて144円前後への上昇を想定

【概況】

ドル円は12月14日早朝の米FOMCによる来年の利下げ予想回数引上げとパウエルFRB議長会見のハト派姿勢により発表前の145円台序盤から143円割れへ急落、14日朝には142円台序盤へ続落した。
米FOMCは予想通りに3会合連続で政策金利を据え置いたが、参加者による2024年の利下げ予想回数中央値を9月会合時点の2回から3回へ上方修正した。パウエルFRB議長はその後の会見で利下げ開始時期が「視野に入っている」と述べたため、来年3月ないし5月の会合で利下げが始まるのではないかとの市場の期待を高めた。FOMC声明の議長会見により米長期債利回りが大幅低下し、為替市場はドル全面安となった。
米労働省が12月13日夜に発表した11月の米PPI(生産者物価指数)は前月比横ばいで市場予想の0.1%上昇を下回り、前年同月比は0.9%上昇で市場予想の1.0%を下回り10月の1.2%から鈍化した。コアPPIは前月比横ばいで予想の0.2%上昇を下回り、前年同月比は2.0%上昇で予想の2.2%を下回り10月の2.3%から鈍化した。FOMC前で限定的なドル安反応だったが、FOMCのハト派姿勢を裏付けるものとしてFOMC後のドル安を助長したと思われる。

【FOMC、来年の利下げ予想回数を増やす】

FRB(米連邦準備制度理事会)は12月12−13日開催のFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)で政策金利を年5.25〜5.50%に据え置いた。据え置きは3会合連続。参加者19人の政策金利見通しの中央値は2024年末時点で4.50〜4.75%とされて9月時点から引き下げられ、0.25%ずつの利下げが3回行われる見通しが強まった。2025年末は3.50〜3.75%、2026年末は2.75〜3.00%とされた。
2024年10−12月期のGDP成長率は1.4%と予想されて9月時点の1.5%から下方修正され、2024年末のコアPCE(個人消費支出)デフレーターの予想は9月時点の2.6%から2.4%へ下方修正、失業率予想は9月時点と変わらず4.1%だった。
参加メンバーによる2024年の政策金利予想では、5.00〜5.25%が1人(9月時点では4人)、4.75〜5.00%が5人(同4人)、4.50〜4.75%が6人(同3人)で最多となり、4.25〜4.50%も4人(同2人)いた。2025年については3.75〜4.00%が4人(同2人)、3.50%から3.75%が3人(同3人)、3.25〜3.50%が5人(同3人)で最多だった。

パウエルFRB議長は会見で「引き締め的な政策を後退させる適切な時期に関して会合参加者の個人的な見解について話し合った」と述べ、利下げの開始時期を巡って協議があったことを示唆した。議長は政策金利がピークかその近くにあるとし、「景気抑制的な領域に十分ある」とし、適切なら利上げに踏み切る選択肢も残しているとしたが、市場は来年早期の利下げ期待を高めている。

【米長期債利回りは大幅低下、ダウは史上最高値更新】

12月13日の米長期債利回りは総じて大幅低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.18%低下の4.02%となり10月23日に付けた直近のピークである5.02%以降の最低を更新、8月10日以来の低水準となった。
30年債利回りは前日比0.13%低下の4.18%となり直近のピークである10月23日の5.18%以降の最低を更新、8月10日以来の低水準となった。
2年債利回りは前日比0.31%低下の4.43%となり直近のピークである10月19日の5.26%以降の最低を更新、6月以来の低水準となった。

一方でNYダウは前日比512.30ドル高と大幅上昇して5営業日続伸となり年初来高値を更新するとともに2022年1月高値を超えて史上最高値を更新した。ナスダック総合指数も200.56ポイント高と大幅上昇して12月7日から5連騰とし、7月19日高値を超えて年初来高値を更新した。
株高によるリスク選好感はドル円にとっては円安要因となるものだが、米長期債利回りの大幅低下による日米金利差縮小での円高が大きく勝る状況だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は12月8日未明安値141.67円からの反騰が12日未明高値146.58円で一巡となり、12日夜に144.73円まで下げたところから戻したものの146円に届かず、FOMC後の急落で14日午前序盤には142.06円を付けて8日未明安値に迫っている。
概ね3日から5日周期で短期的な安値を付けて戻す周期性があり、14日午前から15日午前にかけての間が目先の安値を付ける時間帯と想定されるのですでに反騰注意期にあるものの15日未明にかけて一段安しかねないところだ。
143.50円以下での推移中は一段安警戒とするが、143.50円超えからは目先の底を付けて戻りを試す流れとみて14日夜から19日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では12月14日早朝の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、両スパンと実線の乖離も大きいため、26日基準線を下回るうちは下向きとし、26日基準線超えから続伸する場合は反騰期に入る可能性ありとする。

60分足の相対力指数は12月14日朝に10ポイント台序盤へ急低下したため、40ポイント以下での推移中は一段安余地ありとみる。ただし、相場が一段安する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、その後に50ポイントを超えるところからは上昇期入りとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月8日未明安値141.67円を下値支持線、143.50円を上値抵抗線とする。
(2)143.50円以下での推移中は下向きとし、8日未明安値141.67円割れからは141.00円から140.50円にかけての水準を試す下落を想定する。141円以下は反発注意とするが、安値から1.50円を超える反騰がみられないうちは戻り一巡後の一段安に注意する。
(3)143.50円超えからはいったん戻しに入るとみて144円前後への上昇を想定する。144円台到達では売られやすいとみるが、143.50円を超えた後も143円以上を維持しての推移なら15日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の予定】

12/14(木)
政策金利発表 台湾、ブラジル、フィリピン、スイス、ノルウェー、メキシコ
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 1.0%)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 0.9%)
13:30 (日) 10月 設備稼働率 前月比 (9月 0.4%)
21:00 (英) BOE(英中銀) 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.25%)
22:15 (欧) ECB(欧州中銀) 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
22:30 (米) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.1%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 0.1%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 11月 輸入物価指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 -0.8%)
22:30 (米) 11月 輸出物価指数 前月比 (10月 -1.1%、予想 -1.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.0万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.1万人、予想 188.7万人)
22:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
24:00 (米) 10月 企業在庫 前月比 (9月 0.4%、予想 0.0%)

12/15(金)
休場 南ア
11:00 (中) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 7.6%、予想 12.5%)
11:00 (中) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 4.6%、予想 5.6%)
13:30 (日) 10月 第三次産業活動指数 前月比 (9月 -1.0%、予想 0.1%)
17:30 (独) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 42.6、予想 43.3)
17:30 (独) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 49.6、予想 49.8)
18:00 (欧) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 44.2、予想 44.5)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 48.7、予想 49.0)
18:30 (英) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 47.2、予想 47.5)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 50.9、予想 51.0)

19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調済 (9月 92億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調前 (9月 100億ユーロ)
22:30 (米) 12月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (11月 9.1、予想 2.0)
23:15 (米) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.6%、予想 0.3%)
23:15 (米) 11月 設備稼働率 (10月 78.9%、予想 79.1%)
23:45 (米) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 49.4、予想 49.1)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 50.8、予想 50.5)



注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る