ドル円見通し 目先のドル売り材料通過と米長期債利回りの反発で戻す(23/12/1)

当面のインフレ指標への反応とドル売り材料を消化したとして再び買い戻し優勢となり、30日深夜には29日深夜高値を上抜いて148.51円まで戻した。

ドル円見通し 目先のドル売り材料通過と米長期債利回りの反発で戻す(23/12/1)

ドル円見通し 目先のドル売り材料通過と米長期債利回りの反発で戻す

〇ドル円、11/30日中は147円を挟んだ揉み合いにとどまり、夜にかけて買い戻し優勢で147.70台へ戻す
〇経済指標の結果を受け147.21へ反落するも、目先のドル売り材料通過で買い戻され、深夜148.51へ戻す
〇PCEデフレーターは市場予想と一致、インフレ鎮静化の傾向が改めて確認されるもサプライズ感なし
〇地区連銀総裁らの発言、早期利下げへの期待をいさめるものが多い
〇米長期債利回りは続落後の反発、ダウは大幅上昇、3営業日続伸
〇147.50以上での推移中は一段高余地あり、148.51超えからは149円前後への上昇を想定する
〇147.50割れからは、146.67試しへ向かうとみる

【概況】

ドル円は11月29日午前に146.67円まで下落して11月21日夕安値147.15円を割り込み11月13日夜の年初来高値151.90円以降の安値を更新し、147円割れに対する売られ過ぎ警戒感で29日深夜に147.90円まで戻してから再び下げたものの、30日の日中は夜の米PCE(個人消費支出)デフレーター発表を控えて147円を挟んだ揉み合いにとどまり、30日夜にかけては買い戻し優勢で147.70円台へ戻していた。
11月30日22時半発表の米10月PCEデフレーターは全体及びコア指数の前月比と前年同月比が予想と一致したため、いったんインフレ鈍化として147.21円まで反落したものの、当面のインフレ指標への反応とドル売り材料を消化したとして再び買い戻し優勢となり、30日深夜には29日深夜高値を上抜いて148.51円まで戻した。その後の148円割れも買われて12月1日朝は148円台序盤に付けている。

11月14日の米10月CPIの伸びが大幅に鈍化したことで米国のインフレ低下傾向が顕著となり、米FRBによる追加利上げの可能性が後退して来年前半の利下げ期待が強まり、米長期債利回りが低下して全般ドル安となり、ドル円も昨年10月21日高値151.94円を超えられなかったことでいったん円高へ揺れ返す流れに入ったのだが、11月30日は米長期債利回りが前日までの3営業日続落から反発したため、ドル円も下げ一服の様相となっている。

【米10月PCEデフレーターは鈍化傾向だが予想と一致でドル高反応】

米商務省が11月30日に発表した10月のPCE(個人消費支出)は前月比0.2%増で9月の0.7%増から低下したが市場予想と一致した。PCEデフレーター伸び率は前年同月比3.0%となり9月の3.4%から鈍化して市場予想と一致した。変動の激しい食品やエネルギーを除いたコア指数の伸び率は前月比が0.2%で9月の0.3%から鈍化して市場予想と一致、前年同月比は3.5%で9月の3.7%から鈍化して市場予想と一致した。
PCEデフレーターの前年同月比は4か月振りの鈍化で2021年3月以来2年7か月振りの低水準となり、コア指数の前年同月比は3か月連続で鈍化した。米国のインフレが鎮静化の傾向を示していることが改めて確認されたが、予想と一致したことでサプライズ感はなく、発表後は米長期債利回り上昇・ドル高へ進んだ。

米労働省による新規失業保険申請件数は11月25日までの週間で前週比7000件増の21万8000件となり2週ぶりに悪化したが、4週平均では22万件で前週比500件減だった。失業保険受給者総数は11月18日までの週間で192万7000人となり前週から8万6000人増加した。
米MNIインディケーターズによる11月のシカゴ購買部景況指数は55.8となり10月の44.0から大幅に改善して市場予想の45.4を上回った。
10月の米住宅販売保留指数は前月比1.5%低下で9月の1.0%上昇から悪化したが市場予想の2.0%低下を上回り、前年同月比は6.6%低下で9月の13.3%低下から改善して市場予想の8.8%低下を上回った。

【地区連銀総裁らは早期利下げへの慎重姿勢を繰り返す】

11月28日にタカ派とされるウォラーFRB理事が「インフレ低下を確信できるなら政策金利を引き下げ始めることができる」と利下げに言及したことが注目されたが、29日の米地区連銀総裁らの発言は早期利下げへの期待をいさめるものが多かったが30日も同様だった。
NY連銀のウィリアムズ総裁は30日の米PCEデフレーターの低下を踏まえて「インフレ率が3%に低下したことは重要で歓迎すべきこと」としたが、「我々の仕事は終わっていない」、「将来は相当不確実、今後の決定は経済指標次第」、インフレが再燃した場合には「追加利上げが必要になる」と述べた。
サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も利上げサイクル終了についての問いに「分かるのは時期尚早」、「インフレは依然高水準であり利下げを巡る議論は有益ではない」と述べたが、インフレ再燃による追加利上げについては「現時点では基本シナリオではない」とも述べた。

イエレン米財務長官は30日に、これ以上の大幅な金融政策の引き締めは必要なく、力強い雇用を伴うソフトランディングを達成する軌道にあるとし、過去には「FRBが金融政策を大幅に引き締めて米経済がリセッションに陥ったこともあった」と述べて利上げ状態が長引かないようにすべきとの認識を示した。
FRBは市場が早期利下げを期待することを戒める姿勢を繰り返しているが、市場は利上げの終了と早ければ来年春の利下げ開始への期待を示しているが、米財務長官も同様の認識という印象だ。
12月1日はパウエルFRB議長がトークイベントに出席するため討論会での発言が注目される。

【米長期債利回りは反発、ダウは大幅上昇】

11月30日の米長期債利回りは総じて反発した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の4.33%で終了した。11月27日から29日まで3営業日連続の低下で11月30日も一時4.24%をつけて10月23日の5.02%以降の最低を更新し、米経済指標発表後に当面の低下材料通過として反発したが、4.37%まで戻してからは失速している。
30年債利回りは前日比0.06%上昇の4.50%となった。10年債と同様に11月27日から29日へ3営業日連続で低下し、30日は4.43%をつけて10月23日の5.18%以降の最低を更新し、その後の反騰で4.54%まで戻してから上げ幅を削った。
2年債利回りは前日比0.04%上昇の4.69%となった。11月27日から29日まで3営業日大幅低下となり29日には一時4.61%をつけて10月19日の5.26%以降の最低としたが、30日は4.73%まで戻してから上げ幅を削る展開だった。

一方でNYダウは前日比520.47ドル高の大幅高で3営業日続伸した。米国のインフレ鈍化と利上げ終了及び来年前半の利下げ期待から楽観的に買われており、8月1日高値を超えて年初来高値を更新した。ナスダック総合指数は米長期債利回りの反発を嫌って前日比32.27ポイント安と下落し、7月19日に付けた年初来高値更新へ進めずにやや足踏みとなっているが、10月後半からの上昇基調は続いている印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は11月29日午前安値146.67円から深夜高値149.90円まで1円を超える反発を入れてから30日午前に147円を再び割り込んだが、29日午前安値割れを回避して下げ渋り、30日深夜には148.51円まで戻し、その後の148円割れも買われてしっかりしている。
11月29日午前安値で目先の底を付けてリバウンドを試しているところと思われ、底割れ回避のうちは12月4日午前にかけての間への上昇余地ありとするが、11月21日安値147.15円を割り込んで一段安した後のため、中勢の強気転換には11月23日未明高値149.74円を超える必要があると思われる。147.50円割れからは下げ再開を疑い、次の147円割れからは下落再開とみて12月4日午前から6日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月30日深夜への上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いた。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンへ潜り込む反落となる場合は下げ再開注意とし、先行スパンから転落する場合は一段安へ向かう可能性ありとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月30日深夜の上昇時に70ポイントを超え、その後も60ポイント前後の水準を維持しているのでまだ一段高余地ありとするが、相場が高値を切り上げる際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落警戒とし、50ポイント割れから続落する場合は下落期入りとみて30ポイント前後への低下へ進むとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、147.50円を下値支持線、11月30日深夜高値148.51円を上値抵抗線とする。
(2)147.50円以上での推移中は一段高余地ありとし、11月30日深夜高値148.51円超えからは149円前後への上昇を想定する。149円以上は反落注意とするが、147.50円以上での推移か、直前高値から0.70円を超える下落とならないうちは週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)147.50円割れからは11月29日午前安値146.67円試しへ向かうとみる。146.67円以下は反騰注意とするが、147.50円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすく、下げ足が速まる場合は146.50円以下を試す可能性もあるとみる。

【当面の予定】

12/1(金)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 49.5、予想 49.8)
17:55 (独) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 42.3、予想 42.3)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 43.8、予想 43.8)
18:30 (英) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 46.7、予想 46.7)
23:45 (米) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 49.4、予想 49.5)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 46.7、予想 47.6)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)
24:00 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会
25:00 (米) パウエルFRB議長、トークイベント
28:00 (米) パウエルFRB議長、クックFRB理事、討論会



注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る