ドル円見通し 148円手前へ戻してから失速、米国利上げ打ち止め感による下落基調継続(23/11/30)

ドル円は、米7-9月期GDP改定値の前期比年率上方修正発表後に147.90円へ上昇したが、148円には届かずに戻り売り優勢となり、30日午前には147円を割り込んでいる。

ドル円見通し 148円手前へ戻してから失速、米国利上げ打ち止め感による下落基調継続(23/11/30)

148円手前へ戻してから失速、米国利上げ打ち止め感による下落基調継続

〇昨日のドル円、米7-9月期GDP改定値前期比年率の上方修正を受け上昇するも148円には届かず
〇PCEデフレーター下方修正、ベージュブックの景気判断下方修正を受け、11/30午前は147円割り込む
〇地区連銀総裁らは早期利下げに慎重発言、ただ、市場はウォラー理事の利下げ言及のインパクトを優先か
〇米長期債利回りは続落、ダウは上げ渋る
〇146.67割れを回避して147.50を超えるところからは11月29日夜高値147.90試しとする
〇146.67割れからは146.00前後試しとみる

【概況】

ドル円は11月13日夜の年初来高値151.90円から11月21日夕安値147.15円まで大幅下落した後のリバウンドで11月23日未明高値149.74円まで戻し、その後は149.50円を挟んだ揉み合いとなっていたが、今週は27日に149円を割り込んでから下落再開感が強まり、28日午前安値147.98円へ一段安してからの戻りも続かずに29日午前には146.67円まで安値を切り下げて11月21日安値147.15円を割り込んだ。その後は147円割れに対する突っ込み警戒感から戻し、11月29日夜の米7-9月期GDP改定値の発表で前期比年率が上方修正されたことから発表後に147.90円へ上昇したが、148円には届かずに戻り売り優勢となり、30日午前には147円を割り込んでいる。
GDP改定値では四半期PCE(個人消費支出)デフレーターが下方修正され、30日早朝発表のベージュブック(米地区連銀報告)で景気判断が下方修正されたことにより、米国の利上げ打ち止めと来年前半の利下げ開始への期待感は変わらないとして米長期債利回りの低下傾向は続き、ドル円も買い戻し一巡後に売り優勢となった印象だ。

【米7-9月期GDP、成長率は上方修正、PCEデフレーターは下方修正】

11月29日に米商務省が発表した2023年7-9月期実質GDP(国内総生産)改定値は季節調整済み年率換算で前期比5.2%増となり、速報値の4.9%増から上方修正されて市場予想の5.0%増を上回った。5四半期連続のプラスであり、金融引き締めが長期化したものの景気の底固さを維持していることが示された。
内訳では住宅投資が6.2%増(速報は3.9%増)、設備投資が1.3%増(速報は0.1%減)と上方修正されたが、個人消費は3.6%増で速報の4.0%増から下方修正された。FRBがインフレ指標として注視しているPCE(個人消費支出)デフレーターは年率2.8%上昇へ下方修正され、食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターも2.3%上昇へ下方修正された。
米FRBによる全米12地区連銀景況報告(ベージュブック)では「全般的に経済活動は減速した」とされて前回報告の「ほぼ横ばい」から景況判断が下方修正された。

【地区連銀総裁らは早期利下げに慎重】

11月28日にFRB内ではタカ派とされるウォラー理事が「十分にインフレが低下すれば現行の高水準での政策金利を維持する必要はなくなる」、「ディスインフレが数カ月以上続いてインフレ低下を確信できるなら政策金利を引き下げ始めることができる」と講演で述べたことが利下げへの言及として米長期債利回り低下とドル安の材料とされたが、29日の地区連銀総裁らの発言は早期利下げ期待へ釘を刺すものが多かった。
クリーブランド連銀のメスター総裁は29日、「現行の政策金利水準は見通しに変化があれば素早く行動に移す上で良い位置にある」とし、追加利上げをせずに状況を見守る姿勢を示した。同総裁はインフレ鈍化の進展がみられるものの、「インフレ率を2%へ低下させるには暫くかかる」とした。

リッチモンド連銀のバーキン総裁は「インフレがスムーズに低下するなら金利に関しては何もやる必要はない」として据え置き姿勢を強調したが、FRBは利上げの可能性を残しておくべきとの見解も示した。
アトランタ連銀のボスティック総裁は「米景気の鈍化に伴いインフレ減速も続く」としたが、「目標の2%にはっきり向かうまでは休まない」とした。
各総裁ともに早期利下げに釘を刺している印象だが、市場は28日のウォラー理事による利下げ言及のインパクトを優先しているようだ。

【米長期債利回りは続落、ダウは上げ渋る】

11月29日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%低下の4.26%となり27日から3営業日連続の低下で10月23日の5.02%以降の最低を更新、9月14日以来の低水準となった。30年債利回りは前日比0.07%低下の4.44%となり10月23日の5.18%以降の最低を更新した。
2年債利回りは前日比0.09%低下の4.65%となり10月19日の5.26%以降の最低とし、7月14日以来の低水準となった。
米長期債利回りは全般的に低下しているが、特に政策金利動向に過敏な2年債利回りの低下が目立つ。12月のFOMCで利上げ見送りとなるのはほぼ確実視されているが、来年3月の利下げ期待はまだ低いものの5月利下げへの期待はかなり高まっている。米10年債利回りの低下が小幅でも2年債利回りが大きく低下する場合にはドル円への売り圧力も増す。

一方、NYダウは前日比13.44ドル高と上昇し、28日の83.51ドル高からの連騰で35579.13ドルまで高値を伸ばして8月1日の年初来高値35679.13ドルに迫っているが高値警戒感も出始めて勢いがやや鈍っている印象だ。ナスダック総合指数は高値で14423.22を付けて7月19日に付けた年初来高値14446.55に迫ったところで失速して前日比23.27ポイント安と小幅下落で終了した。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は11月29日午前安値146.67円から深夜高値147.90円まで1円を超える反発を入れてから30日午前序盤に147円を再び割り込んでいる。11月27日以降の下落過程での戻りとしては昨夜の反発が28日夕への反発時を上回っているため、短期的には29日午前安値で目先の底を付けたと思われる。底割れ回避のうちは30日の日中から12月4日午前にかけての間への上昇余地ありとするが、底割れからは新たな下落期入りとして12月6日午前にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月29日深夜への反発では遅行スパンが好転できず、先行スパンの下限にも届かなかった。先行スパンへ潜り込むところからは反騰継続の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンからの転落中は一段安警戒とし、遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開と考える。

60分足の相対力指数は11月29日夜の反騰時に50ポイントを超えたもののその後の反落で40ポイントを割り込んでいるため、すでに戻り一巡から新たな下落期入りしている印象だ。55ポイントを超えないうちは一段安警戒として20ポイント割れを試す可能性もあるとみる。ただし、55ポイント超えからは反騰期とみて60ポイント台後半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月29日午前安値146.67円を下値支持線、11月29日深夜高値147.90円を上値抵抗線とする。
(2)146.67円割れを回避して147.50円を超えるところからは11月29日夜高値147.90円試しとするが、その手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし米PCEデフレーター等をきっかけとして147.90円超える場合は148円台後半への上昇を想定する。
(3)146.67円割れからは146.00円前後試しとみる。146円前後はいったん買い戻しも入りやすいとみるが、147円以下での推移なら12月1日も一段安へ進む可能性ありとみる。米PCEデフレーター等をきっかけとして下げ足が速まる場合には145円台後半へ下値目途を引き下げる。

【当面の予定】

11/30(木)
OPECプラス閣僚級会合
10:30 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 49.5、予想 49.7)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 35.7、予想 35.6)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -6.8%、予想 -6.8%)
14:30 (日) 中村日銀審議委員、記者会見
17:55 (独) 11月 失業者数 前月比 (10月 3.00万人、予想 2.20万人)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.8%、予想 5.8%)
19:00 (欧) 11月 HICP(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (10月 2.9%、予想 2.7%)
19:00 (欧) 11月 コアHICP・速報値 前年同月比 (10月 4.2%、予想 3.9%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 6.5%、予想 6.5%)

22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 184.0万人、予想 187.2万人)
22:30 (米) 10月 個人所得 前月比 (9月 0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 PCE(個人消費支出) 前月比 (9月 0.7%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 PCEデフレーター 前年同月比 (9月 3.4%、予想 3.0%)
22:30 (米) 10月 コアPCEデフレーター 前月比 (9月 0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 コアPCEデフレーター 前年同月比 (9月 3.7%、予想 3.5%)
23:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部景況指数 (10月 44.0、予想 45.4)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 1.1%、予想 -2.0%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 -13.1%、予想 -8.8%)

12/1(金)
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 2.6%、予想 2.6%)
08:50 (日) 7-9月期 全産業設備投資額 前年同期比 (4-6月 4.5%、予想 3.4%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 49.5、予想 49.3)
17:55 (独) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 42.3、予想 42.3)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 43.8、予想 43.8)
18:30 (英) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 46.7、予想 46.7)
23:45 (米) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 49.4、予想 49.4)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 46.7、予想 47.7)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)
24:00 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会
25:00 (米) パウエルFRB議長、トークイベント
28:00 (米) パウエルFRB議長、クックFRB理事、討論会


注:ポイント要約は編集部

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