来週の為替相場見通し:『ドル円は年初来高値更新後に急反落。来週は急落後の持ち直しに期待』(11/4朝)

ドル円は年初来高値突破後に急落(148.80→151.74→149.19)するなど、値動きの荒い一週間となりました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は年初来高値更新後に急反落。来週は急落後の持ち直しに期待』(11/4朝)

『ドル円は年初来高値更新後に急反落。来週は急落後の持ち直しに期待』

〇先週のドル円、日銀会合のハト派的内容、10月介入実績無しの判明に31日に151.74まで急伸
〇買い一巡後はFRBパウエル議長のハト派的見解、雇用統計の不冴え等に週末一時149.19まで急落
〇ユーロドル、米雇用統計不冴え、米長期金利低下に週末一時1.0747まで急伸
〇ドル円、値動きの荒い一週間となるもテクニカルの地合い崩れていない
〇ファンダメンタルズもパウエル議長が利下げの可能性を強く否定する等ドル買い材料揃う
〇ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00、(EURUSD):1.0525−1.0825

今週のレビュー(10/30−11/3)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.54で寄り付いた後、(1)中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスクの長期化懸念(イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃激化)や、(2)伝統的金融市場のリスク回避ムード(日経平均株価下落→リスク回避の円買い圧力)、(3)日本経済新聞社による「日銀、金利操作を再修正へ。長期金利1%超え柔軟に」との特報記事(日銀による金融緩和修正の思惑→円ショート手仕舞い活発化)が重石となり、週明け海外時間に、週間安値148.80まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)日銀金融政策決定会合の無難通過(日銀はYCCの上限である1%を超える取引を容認する柔軟化措置を決定→事前予想の範囲内→円売り再開)や、(5)展望リポートにおけるコアコア(除く生鮮食品・エネルギー)見通しの慎重な水準設定(2024年度・2025年度共に2.0%を下回る1.9%に設定)、(6)植田日銀総裁による「物価目標達成の十分な確度持って見通せる状況になお至ってない」「粘り強く金融緩和を続ける方針」とのハト派的な発言、(7)外国為替平衡操作の実施状況 (9/28ー10/27)における「介入実績ゼロ」の結果報告(10/3に発生したドル円急落の背景が、政府・日銀による為替介入では無かったことが判明)、(8)米10月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数(結果102.6、予想100.5)の市場予想を上回る結果、(9)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、翌10/31にかけて、年初来高値151.74まで急伸しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(10)急ピッチな上昇に対する反動売り(昨年高値151.95を背にした戻り売り圧力)や、(11)神田財務官による「一方的で急激な動きを懸念している」「過度な変動に対してはあらゆる手段を排除せず適切な行動をとる」「介入を含めた準備状況はスタンバイ」との円安牽制発言(政府・日銀による介入警戒感)、(12)米10月ADP全米雇用報告(結果+11.3万人、予想+15.0万人)の市場予想を下回る結果、(13)米10月ISM製造業景況指数(結果46.7、予想49.0)の市場予想を下回る結果、(14)米FOMCでの政策金利の据え置き決定(FF金利誘導目標を5.25ー5.50%で据え置き)、(15)パウエル議長による「長期金利上昇に注意を払っている」「サイクルの終わりに近づいている」とのハト派的な見解発表(年内追加利上げ観測後退)、

(16)米新規失業保険申請件数(結果21.7万件、予想21.0万件)の冴えない結果、(17)米7ー9月期単位労働コスト速報値(結果▲0.8%、予想+0.3%)の市場予想を下回る結果、(18)米10月非農業部門雇用者数(結果+15万人、予想+18万人)の市場予想を下回る結果、(19)米10月平均時給(結果+0.2%、予想+0.3%)の市場予想を下回る結果、(20)米10月失業率(結果3.9%、予想は3.8%)の予想比悪化、(21)米長期金利の急低下(米10年債利回りが米FOMC前に記録した4.93%から4.48%へ急低下→米ドル急落)が重石となり、週末にかけて、一時149.19まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/4午前5時00分現在)では、149.45前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0566で寄り付いた後、(1)スロバキア中銀カジミール総裁による「利上げサイクルが終了したと宣言するのは時期尚早」とのタカ派的な発言や、(2)ドイツ7ー9月期GDP速報値(結果▲0.8%、予想▲1.0%)の市場予想を上回る結果、(3)ユーロ圏10月経済信頼感(結果93.3、予想93.0)の市場予想を上回る結果、(4)ユーロ圏10月サービス業信頼感(結果+4.5、予想+3.4)の市場予想を上回る結果、(5)ユーロ圏10月鉱工業信頼感(結果▲9.3、予想▲9.5)の市場予想を上回る結果、(6)欧州株の堅調推移、(7)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力が支援材料となり、翌10/31にかけて、一時1.0675まで急伸しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(8)ユーロ圏7ー9月期GDP速報値(結果+0.1%、予想+0.2%)の市場予想を下回る結果や、(9)ユーロ圏10月消費者物価指数速報値(結果+2.9%、予想+3.1%)の市場予想を下回る結果、(10)イタリア中銀ビスコ総裁による「ECBはこれまで急激な利上げを行っており今後数カ月は慎重な対応が必要」とのハト派的な発言、(11)ギリシャ中銀ストゥルナラス総裁による「ECBはターミナルレートに到達したと思われる」とのハト派的な発言、(12)フランス中銀ビルロワドガロ総裁による「フランスではインフレが明らかにピークを過ぎた」とのハト派的な発言、(13)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0517まで反落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(14)米FOMCのハト派的な結果(政策金利の据え置き決定+パウエルFRB議長によるハト派的な発言)や、(15)ドイツ10月製造業PMI確報値(結果40.8、予想40.7)の市場予想を上回る結果、(16)ユーロ圏10月製造業PMI確報値(結果43.1、予想43.0)の市場予想を上回る結果、(17)米7ー9月期単位労働コスト速報値の市場予想を下回る結果、(18)米10月雇用統計の冴えない結果、(19)米金利低下に伴うドル売り圧力、(20)欧州株の堅調推移が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0747(9/14以来、約1カ月半ぶり高値圏)へと急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間11/4午前5時00分現在)では、1.0725前後で推移しております。

来週の見通し(11/6−11/10)

<ドル円相場>
ドル円は年初来高値突破後に急落(148.80→151.74→149.19)するなど、値動きの荒い一週間となりました。日足ローソク足は週末にかけて幾つかのサポートポイント(一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド、21日移動平均線)を割り込みましたが、依然として強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立している為、テクニカル的に見て、地合いは崩れていない(足元の下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整→売り一巡後に再び上昇トレンドに回帰する)と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長は米FOMC後に記者会見で「追加利上げの可能性」に触れなかったものの、一方で「利下げの可能性」についても時期尚早であると強く否定。また、「米金利の高止まりが実質的な金融引き締め効果をもたらしているため追加利上げの必要性が低下している」との見解についても、裏を返すと、米FOMC後の米長期金利の急低下を受けて「追加利上げの必要性が増している」と受け止めることが可能)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は日銀金融政策決定会合後の記者会見で金融緩和の継続姿勢を再強調)、(3)日米金融政策の方向性の違いとそれに伴う円キャリートレードの継続期待、

(4)政府・日銀による為替介入実施の難しさ(国際通貨基金サンジャヤ・パンス副局長は先月、「最近の円安はファンダメンタルズに沿った動きで、為替介入の要件を満たしていない」と発言→足元のドル高・円安は投機的な動きではなく、日米金利差に起因した完全なファンダメンタルズ要因であるため、為替介入の大義名分を作りづらい)、(5)株式市場の持ち直し期待(米長期金利の上昇一服→株高・リスクアセット上昇→市場心理改善→リスク選好の円売り再開)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続(売り一巡後に反発に転じるシナリオ)をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はブラックアウト期間明けの米当局者発言(カンザスシティ連銀シュミッド総裁、ダラス連銀ローガン総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、セントルイス連銀パエゼ総裁代理、パウエルFRB議長)に注目が集まりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は10/3に記録した年初来安値1.0448(昨年12/7以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて一時1.0747(9/14以来、約1カ月半ぶり高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲下限、21日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド)を上抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、強い売りシグナルを示唆する「弱気のパーフェクトオーダー」や「ダウ理論の下落トレンド」が継続している点には留意が必要でしょう(上方には90日移動平均線や200日移動平均線、一目均衡表雲上限などのレジスタンスポイントが位置しているため、1.0800近辺では上値が重くなる公算大)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(国際通貨基金は先月、ユーロ圏の経済成長率見通しの下方修正を発表。ECB専門家調査でも、ユーロ圏の成長率予測が下方修正)や、(2)ECBによる金融引き締め休止観測(ECBは先週、11会合ぶりに政策金利の引き上げを停止→利上げサイクル終了)、(3)米FRBよる金融引き締め長期化観測(米FOMC後に米長期金利が急低下→利上げ余地が生まれる構図)、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の一巡後の反落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州当局者発言(デギンドスECB副総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ラトビア中銀カザークス総裁、レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミスト、ベルギー中銀ウンシュ総裁、アイルランド中銀マクルーフ総裁、スペイン中銀デコス総裁、クロアチア中銀ブイチッチ総裁、フランス中銀ビルロワドガロ総裁、ラガルドECB総裁)に注目が集まりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0525−1.0825

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は年初来高値更新後に急反落。来週は急落後の持ち直しに期待』

ドル円日足

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