ドル円 中長期の円安トレンドは継続とみるが、7月14日以降の上昇一巡での修正局面(週報11月第一週)

ドル円は1月16日安値を起点とした三段上げ型の上昇で10月31日高値151.71円まで高値を伸ばして昨年10月21日天井151.94円に迫ったところから失速している。

ドル円 中長期の円安トレンドは継続とみるが、7月14日以降の上昇一巡での修正局面(週報11月第一週)

ドル円 中長期の円安トレンドは継続とみるが、7月14日以降の上昇一巡での修正局面

〇先週のドル円、日銀の緩和策継続で1日未明に151.71まで急上昇
〇その後は当局の円安けん制、米雇用統計の弱い内容と米長期金利の低下等に149.20まで下落
〇米10月雇用統計NFP前月比15万人増にとどまり失業率は3.9%に悪化、平均時給の伸びも鈍化
〇FRB関係者からもハト派発言続き、米国の利上げ打ち止め感強まる
〇米10年債利回りは4.57%で越週、NYダウは5連騰、リスクオンの流れ出始めか
〇150.30超えからは150.50前後への上昇とその後の反落注意
〇148.80割れからは148円台前半への下落を想定

【概況】

ドル円は10月31日の日銀金融政策決定会合での金融緩和政策継続により30日深夜安値148.80円から11月1日未明高値151.71円まで急上昇したが、11月1日朝の神田財務官による「市場介入スタンバイ」発言等による円安けん制感が強まったことで利益確定売りに圧されて失速し、11月1日からの米長期債利回り低下により下落に転じ、11月2日夜に149.84円まで下げてから150.50円台へいったん戻したものの11月3日の日中はジリ安となり、3日夜の米雇用統計が予想よりも弱かった事による米長期債利回りの続落とドル安により発表後の安値で149.20円まで安値を切り下げた。

米10月雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比15万人増にとどまり市場予想を下回り、失業率が3.9%へ悪化、平均時給の伸びも鈍化したため米国の利上げ打ち止め感が優勢となり、米10年債利回りは3営業日連続低下、ユーロや豪ドルなどが上昇してドル全面安の様相となった。
ドル円は米雇用統計発表後に一段安したが、その後の戻りも鈍く、11月1日未明高値を起点とした下落一巡には至らず、まだ安値試しを続けやすい状況のまま週を終えた。

【米10月雇用統計は低調】

11月3日夜に発表された米労働省の10雇用統計では、景気判断として重視されている非農業部門就業者数が前月比15万人増となったが9月の29.7万人増を大幅に下回り、市場予想の18万人増にも届かなかった。全米自動車労組による長期ストが影響したと思われ、スト終結により11月は改善する可能性があるが、8月分が当初発表の22.7万人増から16.5万人増へ、9月分が33.6万人増から29.7万人増とされたため、この2か月分で10.1万人が下方修正されたことも含めて雇用の伸びが鈍感している印象を与えた。失業率も9月の3.8%から3.9%へ悪化した。
賃金インフレ指標である平均時給の伸び率は前月比0.2%で9月の0.3%から鈍化して市場予想の0.3%を下回り、前年比は4.1%となり市場予想の4.0%を上回ったものの9月の4.3%から鈍化した。

11月3日夜発表の米サプライ管理協会(ISM)による10月米サービス業景況指数は51.8となり、9月の53.6から悪化して市場予想の53.0を下回った。内訳では雇用状況が50.2で9月から3.2ポイント低下、価格は9月の58.9から58.6へ若干低下した。
S&Pグローバルによる10月米サービス業PMI確報値は50.6となり、速報値の50.9から下方修正されたが、9月確報値の50.1を上回った。11月1日に発表済みの10月製造業PMI確報値は速報の50から変わらずで、総合PMIは50.7となり、速報値の51.0から上方修正となったものの9月確報値の50.2から低下した。

【米国の利上げ打ち止め感】

米FRB地区連銀総裁らの発言は概ねハト派的だった。米アトランタ連銀のボスティック総裁は「米経済の現状を踏まえると一段の利上げはもはや必要ないことが示されている」、「インフレ率を目標とする2%に引き上げるために現在の金融政策は十分に抑制的だと考えられる」と述べた。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「10月の雇用統計は我々が求めている労働市場の減速を示している」、「インフレ低下を促す上で助けになる」と述べた。「一つの雇用統計に過剰反応しない、指標を見守り続ける」と述べて慎重さも示したが、指標が落ち着いた状況を続ければ追加利上げの必要性は薄いとの認識を示したと市場は受け止めた。

リッチモンド連銀のバーキン総裁は、追加利上げの必要性について「早まった判断はしない」、次回会合までに「CPIの発表が2カ月分あり、まずはこれらを精査する」とし、「利下げについてはまだ先であり、まずはインフレを落ち着かせることだ」と述べたが、追加利上げへの積極姿勢は後退を示唆する印象を与えた。
11月2日未明のFOMCでは市場予想通りに政策金利を2会合連続で据え置き、パウエル議長は会見で、「インフレ率を2%に戻す上で十分に景気抑制的かはまだ確信できない」とし慎重姿勢を示したものの長期金利上昇が引き締め効果を生じさせていることで追加利上げの確率が下がっているとの認識を示し、市場は予想よりもハト派姿勢としてドル安反応を見せたが、3日の米雇用統計もFOMCの慎重姿勢に寄与するものとしてドル安反応を継続した。

米金利先物市場においては、12月の利上げ確率は1割以下、1月の利上げ確率も1割程度であり、インフレ再燃の兆候が顕著にならなければこのまま利上げ状態を維持しつつ来年は利下げのタイミングを計ってゆく段階に入るのではないかと思われる。

【米10年債利回りは3営業日続落、ダウは5連騰】

11月3日の米長期債利回りは米雇用統計の低調さとFRB高官らのハト派寄り発言で総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.09%低下の4.57%で終了、10月21日に5.02%へ上昇したところをピークとして低下に転じ、11月1日から3日まで3営業日続落した。
30年債利回りは前日比0.04%低下の4.77%で終了、10月23日に付けた5.18%をピークに低下へ転じ、11月1日から3日まで3営業日続落した。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.15%低下の4.84%で終了、10月19日に5.26%をつけたところをピークに低下へ転じ、3日は一時4.81%まで低下した。

いずれもまだ高水準だが、米国の利上げピーク水準が見えない状況ではなくなり、このまま利上げ状態がいつまで続くのかという期間の問題へと焦点が変わってきているため、特に2年債利回りは来年の利下げ可能性も意識されつつ低下が目立ってきている。
米長期金利の低下は為替市場でのドル安要因となるが、日本の10年債利回りは11月2日時点で0.915%、2年債利回りは0.135%に過ぎず、ドル買い円売りを助長する日米金利差が拡大したままの状況は暫く続くと思われる。
一方、NYダウは前日比222.24ドル高と上昇、10月30日の511.37ドル高、2日の564.50ドル高となった大幅上昇を含めて5連騰した。ナスダック総合指数も194.09ポイント高と上昇、10月27日から6連騰した。リスクオン優勢の流れが出始めているようだ。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は1月16日安値を起点とした三段上げ型の上昇で10月31日高値151.71円まで高値を伸ばして昨年10月21日天井151.94円に迫ったところから失速している。
1月16日安値127.22円から3月8日高値137.91円までを一段目、3月24日安値129.63円から6月30日高値145.06円までを二段目とし、7月14日安値137.24円から三段目の上昇期としてきたが、10月31日高値151.71円で三段目の上昇が一巡して調整安の時期に入っている印象がある。
二段目の上昇が3か月強で上昇幅15.43円だったが、三段目の上昇も3か月強で上昇幅14.47円でほぼ同レベルの上昇を実現している。

一段目の上昇後の修正安は3月24日安値まで13営業日で8.28円の下落幅、二段目の上昇後の修正安は7月14日安値まで11営業日で7.82円安であり、それらと同レベルの修正安が入るとすれば2週から3週の下落規模で高値から8円前後規模、143円台を試すことももあるかもしれないと注意する。
ただし、政府・日銀は円買い介入を実施していない。日米金利差という円安の基本土台のほかに、日本経済の弱さそのものが円安を助長している側面も大きいため、よほど大胆な金融緩和政策の終了やマイナス金利解除と利上げサイクル入りという動きにまで発展しなければ中長期的な円安は継続してゆく可能性もあると思われる。

日足の一目均衡表では3営業日続落陰線=三羽烏で26日基準線を割り込み遅行スパンが悪化しつつある。先行スパンは148円台序盤から144円台序盤まで幅広いため、遅行スパン悪化からは先行スパンへ潜り込んで行く可能性があるとみる。先行スパンへ潜り込む場合は、再び上抜き返せないうちは下限を試す流れへ進みやすくなると注意するが、上抜き返すところからは上昇再開、一段高へ進む可能性を優先したい。

60分足の相対力指数は10月3日の乱高下後時から10月31日への高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられて失速しているため60ポイント以下での推移中は一段安余地ありとして30ポイント台への低下を想定する。上昇再開には60ポイント超えから続伸する勢いが必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月30日深夜安値148.80円を下値支持線、150.30円を上値抵抗線とする。
(2)150.00円から150.30円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。150.30円超えからは150.50円前後への上昇と、その後の反落注意とする。
(3)148.80円割れからは148円台前半(148.40円から148.00円)への下落を想定する。148.20円以下は反騰注意とするが、148.80円以下での推移か直前安値から0.80円を超える反騰がみられないうちは翌日以降の安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

11/6(月)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(9月21-22日分)
16:00 (独) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 3.9%)
16:00 (独) 9月 製造業新規受注 前年同月比 (8月 -4.2%)
17:55 (独) 10月 サービス業PMI・改定値 (9月 48.0)
18:00 (欧) 10月 サービス業PMI・改定値 (9月 47.8)
26:00 (英) ピル英中銀理事、講演

11/7(火)
未 定 (中) 10月 貿易収支・米ドル建て (9月 777.1億ドル)
08:30 (日) 9月 全世帯消費支出 前年同月比 (8月 -2.5%)
12:30 (豪) RBA(豪中銀) 政策金利 (現行 4.10%)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -0.2%)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 -2.0%)
19:00 (欧) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 0.6%)
19:00 (欧) 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 -11.5%)
22:30 (米) 9月 貿易収支 (8月 -583億ドル、予想 -603億ドル)
23:50 (米) シュミッド・カンザスシティ連銀総裁、講演
26:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会司会
27:00 (米) 財務省3年債入札(四半期定例入札)
27:30 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
28:30 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
29:00 (米) 9月 消費者信用残高 前月比 (8月 -156.3億ドル、予想 110.0億ドル)

11/8(水)
08:50 (日) 10月 外貨準備高 (9月 1兆2372億ドル)
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI・速報値 (8月 109.2)
14:00 (日) 9月 景気一致指数CI・速報値 (8月 114.6)
16:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (9月 0.0%)
16:00 (独) 10月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (9月 3.8%)
18:30 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
18:45 (欧) レーンECB理事、講演
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 -1.2%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 -2.1%)
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 1.8%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札(四半期定例入札)
27:40 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

11/9(木)
08:50 (日) 9月 経常収支・季調前 (8月 2兆2797億円)
08:50 (日) 9月 経常収支・季調済 (8月 1兆6349億円)
08:50 (日) 9月 貿易収支・国際収支ベース (8月 -7495億円)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合・主な意見(10月30-31日分)
10:30 (中) 10月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 0.0%)
10:30 (中) 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 -2.5%)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー現状判断 (9月 49.9)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー先行判断 (9月 49.5)

17:10 (欧) レーンECB理事、講演
17:30 (英) ピル英中銀理事、講演
17:35 (日) 植田日銀総裁、FT主催イベントのインタビュー
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 181.8万人)
23:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、座談会
26:00 (米) パエゼ・セントルイス連銀暫定総裁、講演
27:00 (米) 財務省30年債入札(四半期定例入札)
28:00 (米) パウエルFRB議長、パネル討論会に参加

11/10(金)
休場 米国(政府・為替・債券休場、株式・商品市場は通常取引)
08:50 (日) 10月 マネーストックM2 前年同月比 (9月 2.4%)
09:30 (豪) 豪中銀、四半期金融政策報告
16:00 (英) 7-9月期 GDP・速報値 前期比 (4-6月 0.2%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP・速報値 前年同期比 (4-6月 0.6%)
16:00 (英) 9月 月次GDP 前月比 (8月 0.2%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -0.7%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 1.3%)
16:00 (英) 9月 貿易収支・物品 (8月 -159.50億ポンド)
16:00 (英) 9月 貿易収支 (8月 -34.15億ポンド)
21:30 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (10月 63.8)
24:20 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
28:00 (米) 10月 月次財政収支 (9月 -1710億ドル)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る