円安けん制発言とFOMCのハト派姿勢で日銀会合後の急騰幅を
〇ドル円、日銀会合結果発表後に急騰するも、昨日の円安けん制発言をきっかけに急騰一巡後の修正安
〇FOMC利上げ見送りとFRB議長ハト派姿勢を受け150.65へ下落、11/2午前序盤は150.50台に
〇12月もFOMC利上げ見送りの公算高まり米長期債急低下、為替市場はドル安反応
〇11/1発表の米経済指標はまちまち
〇ISM製造業景況指数悪化やFOMCハト派姿勢を受け米長期債利回りは大幅低下、ダウは4連騰
〇151円以下での推移中は一段安余地ありとし150.50割れからは150.25、150.00を順次試す下落を想定
〇151.00から151.30手前にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
ドル円は10月30日深夜に日銀金融政策一部修正見込みとの報道をきっかけに148.80円まで下げたが、31日の日銀会合前に買い戻し優勢となり、日銀がYCC運用を柔軟化したもののマイナス金利と長期金利抑制姿勢を維持したために会合結果発表後に急騰して11月1日早朝には151.71円を付けて昨年10月21日高値151.94円に迫った。
11月1日朝に神田財務官が市場介入について「スタンバイ」等と円安けん制発言のトーンを強めたことをきっかけとして急騰一巡後の修正安に入り、1日夜の米経済指標が冴えなかったことによる米長期債利回り低下を見て151円を割り込み、2日未明のFOMCが予想通りに利上げを見送った他、パウエルFRB議長会見も予想よりハト派姿勢だったことで150.65円へ下落、2日午前序盤には150.50円台へ安値を切り下げている。
【FOMC、12月も利上げ見送りの公算高まる】
FRB(米連邦準備制度理事会=中央銀行)は11月2日未明のFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)で市場の予想通りに政策金利を2会合連続で据え置いた。政策金利は年5.25〜5.50%で維持されて2001年以来22年振り高水準で停滞することとなった。
FOMC声明では7-9月の景気を「強いペースで拡大した」とし、前回会合の「堅調な拡大」という表現から上方修正し、雇用についても前回の「鈍化」から「緩やかな伸び」へ上方修正した。
追加利上げについてはこれまでの金融引き締めの効果や、経済・金融状況などを考慮するととし、パウエル議長は会見で、「インフレ率を2%に戻す上で十分に景気抑制的かはまだ確信できない」とし、12月会合については「何も決めていない」として追加利上げの可能性に含みを持たせたが、「長期金利の変動を見守っている」とし、10月中に議長を含めてFRB高官が繰り返し「長期金利上昇が引き締め効果」を生じさせていることで追加利上げの確率が下がっているとの認識を改めて表明するものとなった。
FOMC声明と議長会見に対して市場は予想よりもハト派姿勢であり、利上げサイクルがすでにピークに達している可能性が高まったと受け止めて米長期債利回りが急低下し、為替市場はドル安反応を見せた。
【11月1日の米経済指標はまちまち】
米民間雇用サービス会社ADPによる10月の全米雇用報告は、非農業部門民間就業者数が前月比11万3000人増となり、9月の8.9万人を上回ったものの市場予想の15万人増を大幅に下回った。
米サプライ管理協会(ISM)による10月の米製造業景況指数は46.7となり、9月の49.0から低下して市場予想の49.0を下回った。景況拡大と縮小の分岐点とされる50を12か月連続で割り込んだ。内訳では新規受注が49.2から45.5へ悪化、生産が52.5から50.4へ悪化、雇用が51.2から46.8へ悪化したが、価格は43.8から45.1へ上昇した。
S&Pグローバルによる10月米製造業PMI確報値は50.0で速報値から変わらず、9月の49.8からはわずかに上昇した。
米労働省による9月雇用動態調査(JOLTS)における非農業部門の求人数は前月比5万6000件増の955万3000件となり、市場予想の925万件を上まわって2か月連続で増加した。
【米長期債利回りは大幅低下、ダウは4連騰】
11月1日の米長期債利回りはISM製造業景況指数の悪化やFOMCのハト派姿勢を受けて急低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.19%低下の4.74%、30年債利回りは前日比0.14%低下の4.95%、2年債利回りも前日比0.14%低下の4.95%となった。12月FOMCでも利上げ見送りとの見方が優勢となり、長期金利上昇も当面のピークを付けたのではないかと思われる。
米財務省は11月1日に、11月15日に総額1120億ドルの国債を発行すると発表したが、11月から来年1月にかけては10年債が1140億ドルの発行予定で前期の8-10月期と比較して6%増となる見込み。
一方、NYダウはFOMCのハト派姿勢と米長期債利回りの急低下を好感して前日比221.71ドル高となり3営業日続伸、ナスダック総合指数は210.23ポイント高で4営業日続伸した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は10月30日深夜安値148.80円を目先の底として急伸したが、11月1日早朝高値151.71円でピークを付けて下落期に入っている。当面の安値形成期は6日深夜にかけて想定されるのでまだ下落余地ありとみる。11月1日早朝への上昇幅に対する半値押しが150.25円のため、150円台序盤まででしっかりできるか試されるところだが、週末の米雇用統計を通過して円高継続の場合には149円台へ進む可能性もあると注意したい。上昇再開には151.30円を超える上昇が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では11月2日早朝への下落により遅行スパンが悪化して先行スパンへ潜り込んでいるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパン下限のある150.25円近辺で下げ止る可能性があり、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開と仮定するが、先行スパンから転落して下げ足がさらに速まる可能性もあると注意したい。
60分足の相対力指数は10月31日深夜には90ポイントに迫ってから急低下に入り2日午前には40ポイントを割り込んでいる。55ポイント超えへ戻せないうちは一段安余地ありとし、90ポイントへ迫ってからの反落のため20ポイント前後を試す可能性もあるとみる。相場がいったん戻してから一段安する際に、指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、55ポイント超えからは上昇再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、150.50円を下値支持線、151.30円を上値抵抗線とする。
(2)151円以下での推移中は一段安余地ありとし、150.50円割れからは150.25円、150.00円を順次試す下落を想定する。150.25円以下は反騰注意とするが、150.70円以下での推移なら3日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)151.00円から151.30円手前にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。151.30円超えからは151.50円試しとその後の反落注意とするが、151.30円を超えてからも151円台を維持する場合は3日の日中に高値試しへ進みやすくなるとみる。
【当面の予定】
11/2(木)
休場、メキシコ
17:55 (独) 10月 失業者数 前月比 (9月 1.00万人、予想 1.50万人)
17:55 (独) 10月 失業率 (9月 5.7%、予想 5.8%)
17:55 (独) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 40.7、予想 40.7)
18:00 (欧) 10月 製造業PMI・改定値 (速報 43.0、予想 43.0)
21:00 (英) BOE(英中銀) 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.25%)
21:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (4-6月 3.5%、予想 4.1%)
21:30 (米) 7-9月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (4-6月 2.2%、予想 0.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.0万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.0万人、予想 180.0万人)
23:00 (米) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 1.2%、予想 2.4%)
11/3(金)
休場 日本
10:45 (中) 10月 財新サービス業PMI (9月 50.2)
16:00 (独) 9月 貿易収支 (8月 166億ユーロ、予想 163億ユーロ)
18:30 (英) 10月 サービス業PMI・改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
19:00 (欧) 9月 失業率 (8月 6.4%、予想 6.4%)
21:30 (米) 10月 非農業部門雇用者数 前月比 (9月 33.6万人、予想 18.3万人)
21:30 (米) 10月 失業率 (9月 3.8%、予想 3.8%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前月比 (9月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前年同月比 (9月 4.2%、予想 4.0%)
22:45 (米) 10月 サービス業PMI・改定値 (9月 50.9、予想 50.9)
23:00 (米) 10月 ISM非製造業景況指数 (9月 53.6、予想 53.2)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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