来週の為替相場見通し:『円キャリートレードの継続を想定。年初来高値突破は時間の問題か』(10/21朝)

ドル円は10/3に記録した安値147.38をボトムに切り返すと、週末にかけて一時150.04まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『円キャリートレードの継続を想定。年初来高値突破は時間の問題か』(10/21朝)

『円キャリートレードの継続を想定。年初来高値突破は時間の問題か』

〇今週のドル円、10/17に148.75まで下落後、週末にかけて週間高値150.04まで上昇
〇米中の経済指標の好調、FRBパウエル議長のタカ派的姿勢がサポート
〇ユーロドル、欧州指標好調、欧州債利回り上昇等に週後半にかけ一時1.0618まで上昇
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも継続、地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性違いなどドル円相場の上昇を連想させる材料が揃う
〇来週以降、ドル高・円安トレンドが一段と強まる展開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):149.00ー152.00

今週のレビュー(10/16−10/20)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.49で寄り付いた後、(1)中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスクの高まりや、(2)上記1を背景とした伝統的金融市場のリスク回避ムード、(3)米金利低下に伴うドル売り圧力、(4)一部メディアによる「日銀が今月末に発表する展望リポートの中で2024年度の物価見通しを従来の1.9%から2%以上に引き上げる公算が大きい」との観測報道(日銀による金融緩和の修正観測→円ショートの手仕舞い)が重石となり、翌10/17にかけて、週間安値148.75まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)日米金利差に着目したドル買い・円売り(円キャリートレード)や、(7)米9月小売売上高(結果+0.7%、予想+0.3%)の良好な結果、(8)米9月鉱工業生産(結果+0.3%、予想±0.0%)の市場予想を上回る結果、(9)中国経済指標(中国7ー9月期GDP統計、中国9月小売売上高、中国9月鉱工業生産)の良好な結果(中国経済を巡る悲観論の後退→市場心理改善)、(10)ウォラーFRB理事による「経済の強さが持続する場合、より高い金利が必要になる可能性が高い」とのタカ派的な発言、(11)ボウマンFRB理事による「インフレ率は低下してきたが依然として高すぎる」とのタカ派的な発言、(12)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「インフレに関してはまだ勝利宣言をするつもりはない」とのタカ派的な発言、(13)米新規失業保険申請件数(結果19.8万件、予想21.0万件)の良好な結果、(14)米9月中古住宅販売件数(結果396万件、予想389万件)の市場予想を上回る結果、

(15)パウエルFRB議長による「力強い経済に関する追加的な証拠が得られれば利上げに値する可能性あり」「インフレは依然として高過ぎるため、更なる進展が必要」とのタカ派的な発言、(16)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りが2007年7月以来の高水準となる5.00%へ急上昇)、(17)植田日銀総裁による「粘り強く金融緩和、賃金上昇を伴う2%の物価目標実現を目指す」とのハト派的な発言が支援材料となり、週末にかけて、週間高値150.04まで上昇しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(18)米長期金利の上昇幅縮小や、(19)政府・日銀による介入警戒感、(20)週末前のポジション調整が重石となり、本稿執筆時点(日本時間10/21午前4時30分現在)では、149.85前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0507(週間安値)で寄り付いた後、(1)ユーロ圏8月貿易収支・季調済(結果119億ユーロ黒字、前回35億ユーロ黒字)の黒字幅拡大や、(2)ECBによる金融引き締め継続観測(中東情勢緊迫化→原油価格上昇→欧州圏のインフレリスク再燃→ECBによる金融引き締め継続の思惑→ユーロ買い再開)、(3)ドイツ10月ZEW現況指数(結果▲79.9、予想▲80.8)の市場予想を上回る結果、(4)ドイツ10月ZEW景況感指数(結果▲1.1、予想▲9.0)の市場予想を上回る結果、(5)ユーロ圏10月ZEW景況感指数(結果+2.3、前回▲8.9)のプラス圏浮上、(6)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(7)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「インフレは依然として危機状態から脱しきれていない」「さらなるショックによりECBの追加利上げが必要となる可能性がある」とのタカ派的な発言、

(8)中国経済指標の良好な結果(中国経済を巡る悲観論の後退→市場心理改善)、(9)ユーロ圏8月経常収支(結果277億ユーロ黒字、前回209億ユーロ黒字)の黒字幅拡大、(10)パウエルFRB議長による「利回りの上昇は追加利上げの必要性の低下を意味し得る」とのハト派的な発言が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0618まで上昇しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間10/21午前4時30分現在)では、1.0593前後で推移しております。

来週の見通し(10/23−10/27)

<ドル円相場>
ドル円は10/3に記録した安値147.38をボトムに切り返すと、週末にかけて一時150.04まで急伸しました。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(直近で発表された米雇用統計、米PPI、米CPI、米ミシガン大期待インフレ率、米小売売上高は軒並み市場予想を上回る強い結果→米10年債利回りが2007年7月以来の高水準となる5.00%へ急上昇)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は今週も粘り強く金融緩和を続ける方針を発表。今月末に予定されている日銀金融政策決定会合で展望レポートの上方修正や金融緩和の一部修正を警戒する声が高まっていますが、例え金融緩和の修正に踏み切ったとしても、日米金利差は歴然であるため、トレンドとして円買いに転じる可能性は小さい)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性違い(日米金利差拡大に伴う円キャリートレードの継続期待)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

政府・日銀による介入警戒感が意識されてはいるものの、国際通貨基金サンジャヤ・パンス副局長が「最近の円安はファンダメンタルズに沿った動きで、為替介入の要件を満たしていない」と発言したこと等を踏まえると、このタイミングで為替介入に踏み切ることは考えにくく、当方では、来週以降、ドル高・円安トレンドが一段と強まる展開をメインシナリオとして予想いたします(年初来高値150.16を突破し、昨年高値151.95に向かって上げ幅を広げる展開を想定)。尚、10/26に予定されている米第3四半期GDP速報値や、10/27に予定されている米9月PCEデフレータに注目が集まります(ブラックアウト期間に突入しているため、米当局者発言は予定なし)。米第3四半期GDP速報値や、米9月PCEデフレータが市場予想を上回る場合には、「堅調な米経済指標→米国のインフレリスク→追加利上げ観測再燃→米金利上昇→米ドル買い」の経路でドル円に強い上昇圧力が加わる展開が想定されるため、来週は週後半にかけてのアップサイドリスクに警戒が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):149.00ー152.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は10/3に記録した年初来安値1.0448(昨年12/7以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、10/12に一時1.0640まで上昇しました。その後、中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスクで一時1.0495まで反落するも、今週は再び1.06台を回復するなど、底堅い動きが続いています。但し、アップサイドより一目均衡表の分厚い雲が垂れ下がってきていることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること、近い将来に90日移動平均線と200日移動平均線のデッドクロスとそれに伴う「弱気のパーフェクトオーダー」点灯が見込まれていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、上値余地は乏しいと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(国際通貨基金は先週、ユーロ圏の経済成長率見通しの下方修正を発表)や、(2)ECBによる金融引き締め休止観測(ECBによる利上げサイクル終了の思惑)、(3)米FRBよる金融引き締め長期化観測(米10年債利回りは2007年7月以来の高水準へ急上昇)、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)、(5)中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスク(地理的に近い欧州圏への波及リスク)、(6)原油価格上昇に伴うユーロ圏のスタグフレーション懸念など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の一巡後の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は10/25に予定されているドイツ10月IFO景況感指数と、10/26に予定されているECB理事会およびラガルド総裁記者会見に注目が集まります。ドイツ10月IFO景況感調査が市場予想を下回る場合や、ECB理事会およびラガルド総裁記者会見が予想通りサプライズ無く終わる場合(政策金利の現状維持が決定されると共に、ラガルド総裁からも真新しい材料が出てこない場合)には、材料出尽くし感からユーロドルに再び下押し圧力が加わる展開が想定されるため、来週は週を通してダウンサイドリスクに警戒が必要な時間帯が続きそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0450−1.0700

注:ポイント要約は編集部

『円キャリートレードの継続を想定。年初来高値突破は時間の問題か』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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