ドル円見通し 10月3日夜の波乱から三角持ち合いの様相(週報10月第四週)

ドル円は10月20日夕刻に149.99円を付けた後、149.60円台へ急落、その後は持ち直しを見せたが伸び悩んで週を終えた。

ドル円見通し 10月3日夜の波乱から三角持ち合いの様相(週報10月第四週)

10月3日夜の波乱から三角持ち合いの様相

〇先週のドル円、20日に149.99円を付けた後149.60円台に急落、その後持ち直すが伸び悩む
〇18日、19日、20日とじわじわ150円に迫ったものの突き抜けられず
〇FRB議長、長期金利上昇が追加利上げの必要性を下げているとの見方示し年内の米追加利上げ観測後退
○日銀、政策の一部修正への警戒感高まる中、20日植田総裁は改めて緩和継続姿勢示す
〇149.50円以上での推移中は上昇余地あり、150円到達後は急落に注意
○150円超えから勢い付く場合、10月3日夜高値150.15円試し、さらに150.50円を目指す流れとみる
〇149.50円割れからはいったん仕切り直しの下落期に入るとみて149円台序盤への下落を想定

【概況】

ドル円は10月20日夕刻に149.99円を付けた後、149.60円台へ急落、その後は持ち直しを見せたが伸び悩んで週を終えた。一部ベンダーでは150.03円を付けたとされるが150円に対する抵抗感が強いものとなっている。
10月3日夜に150.15円を付けて年初来高値を更新し、昨年10月21日高値151.94円以来の高水準とした直後に売り注文の連鎖で147.41円急落して149.30円台へ戻す波乱が発生し、10月17日夜にも149.69円から148.81円へ一時的に急落するなど高値警戒感からの売りの連鎖で小波乱が発生した。それを乗り越えて18日に149.85円、19日に149.93円、20日に149.99円とじわじわと150円に迫ったものの突き抜けられずにいる。

米長期債利回りは10月19日に10年債利回りが利上げ状態の長期化感から一時5%に到達して2007年以来の高水準としたことがドル円を支えたが、利上げに敏感な米2年債利回りは利上げ打ち止め感から19日と20日に急落するなど動きが分かれている。パウエルFRB議長は追加利上げ余地に含みを持たせつつも最近のFRB高官が言及しているように長期債利回りの上昇が追加利上げの必要性を低下させていることに触れており、米国の年内追加利上げ観測は後退している。一方で日銀の金融緩和政策については物価見通しの上方修正についての観測記事が相次いだり、元日銀審議委員におるマイナス金利解除への言及等により年末にかけての政策修正への警戒感が強まったものの20日の植田総裁発言では緩和継続姿勢が改めて示されるなど気迷いがみられる。
今週は、日米の金融政策姿勢と温度差をみながらドル円は150円突破から一挙に円安を加速させて市場介入を招くのか、150円突破への躊躇からいったん仕切り直しの円高へと進みつつ10月31日の日銀金融政策決定会合と米FOMC待ちとするのか、方向性を探りつつ方向性を決めかねる展開で推移するのではないかと思われる。

【日銀金融政策修正への警戒感】

日銀の植田維総裁は10月20日の全国信組大会での挨拶で、「内外の経済や金融市場を巡る不確実性が極めて高い」として「現行の金融緩和政策を継続する」方針を改めて示した。総裁は「経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していく」と述べた。物価見通しでは「プラス幅を縮小する」傾向で進んだ後は、「中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まり再びプラス幅を緩やかに拡大していく」との見解を示した。
日銀は12月4日にワークショップ=多角的レビューを行うと発表している。長期にわたる金融緩和政策の功罪を検証するために12月と来年5月にワークショップを開催するとの方針を4月に示したものが具体化し、テーマは「非伝統的金融政策の効果と副作用」とした。

10月17日に一部メディアが日銀の物価見通しの上方修正見込みと報じ、18日には桜井元日銀審議委員がマイナス金利解除等による金融政策正常化へ向かうのではないかとの見通しを示したことで10月30-31日の日銀金融政策決定会合で政策の一部修正があるのではないかとの警戒感が強まっていたが、20日の植田総裁発言で警戒感はやや薄まった。
しかし、日本10年債利回りは10月20日に0.845%をつけて2013年7月以来の高水準に達しており、長期金利変動許容上限が現行の1%からさらに引き上げられるのではないかとの見方もあるようだが、日銀は同日に臨時の資金供給オペレーション(公開市場操作)を10月24日に行うと通告しており長期金利上昇を抑制する姿勢も示している。

【米FRBでは長期金利上昇が追加利上げの必要性を低下させているとの認識】

FRBは10月31-11月1日に次回FOMCを開催するが、市場は現状維持と予想し、12月FOMCでの利上げ確率も低いが、米10年債利回りは10月20日に低下したものの10月19日までは大幅上昇を続けた。
米FRBのパウエル議長は10月19日に「米景気は非常に強い」、「追加利上げの是非や金融引き締めの期間を指標やリスクに基づいて決める」と述べる一方で「最近の長期金利の上昇により政策金利引き上げの必要性が少なくなった可能性がある」とも述べた。
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、10月19日に自身による従来までの利上げ打ち止めを支持する姿勢を見直す用意があるとして追加利上げの可能性を示唆したが、10月20日にはクリーブランド連銀のメスター総裁が政策金利は「据え置く水準の近くか、その水準にある公算が大きい」として様子見の姿勢を示し、アトランタ連銀のボスティック総裁は、必要なら追加利上げもあり得るとしつつ、「2024年遅くには利下げに転じる」との見通しを示した。最近のFRB高官発言では長期金利上昇が追加利上げの必要性を低下させているとの認識を示すものが目立っている。

中東情勢と原油価格高騰への警戒感、長期金利の上昇水準とこれまで実施してきた利上げ効果の見極めなど、FRBとしては追加利上げへの積極姿勢を示し過ぎないようにしつつも早期の利下げ期待をけん制している印象だ。

【米長期債利回りは反落、ダウは続落】

10月20日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債り回りは10月16日からの4連騰で10月19日には一時5.00%をつけて2007年以降の最高水準に達したが、20日は上昇一服と中東情勢を警戒した株売り債券買いで前日比0.07%低下の4.92%で終了した。
30年債利回りは前日比0.03%低下の5.08%で終了、10月16日から4連騰し、20日も5.14%まで続伸したものの低下に転じている。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.08%低下の5.08%で終了、10月19日に5.26%をつけて2020年以降の最高水準を更新してから急落したが、20日も続落したことで上昇一服感が強まった。

一方で、NYダウは前日比286.89ドル安と下落、3営業日続落となり、ナスダック総合指数は10月17日から4営業日続落した。ダウは10月6日に32846.94ドルを付けて8月1日高値35679.13ドル以降の安値としたところから34000ドル台へ戻したものの失速しており、10月6日安値を割り込むようだと先安感が優勢となりかねないところだ。ナスダック総合指数も9月27日安値12963.16ポイントに対して20日安値12977.44ポイントで底割れに余裕が乏しくなっている。中東情勢の悪化が続けば原油価格の高騰や中東全域の地政学的リスクの高まり、投資意欲の後退とリスク回避感が強まり物流の低下による景気悪化も懸念される。中国景気の悪化による中国株の下落も影響している。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は1月16日安値127.22円を起点として3月8日高値137.91円までを一段目の上昇、3月24日安値129.63円から6月30日高値145.06円までを二段目の上昇とし、7月14日安値137.24円を起点として三段目の上昇期にある。10月3日夜に高値150.15円から安値147.41円へ急落する波乱の後は、このレンジ内で推移しているが、高値更新へ進めないものの徐々に底上げをして三角持ち合いの様相となっている。10月3日高値を超えれば三角持ち合い上放れに入り昨年10月21日高値151.94円超えへ進む可能性が高まると思われるが、上放れに失敗するか、いったん上放れしてからの反落で10月3日安値以降の底上げ基調から転落する場合は7月14日安値を起点とした上昇が一巡して下落期入りする可能性が高まると思われる。
昨年8月2日安値から10月21日高値までが3か月弱、その後の1月16日安値への下落が3か月、3月8日への上昇が2か月弱、3月24日安値から6月30日高値までの上昇が3か月強と3か月前後で一波動が一巡しているが、7月14日安値からの上昇もすでに3月を経過しているので、テクニカル的には反落に注意したい時間帯と思われる。

日足一目均衡表では遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況が続いており、10月3日夜の波乱時も26日基準線が下値支持線として機能してきたので、26日基準線が支持線として機能するうちは上昇余地ありとするが、26日基準線を割り込んでから続落に入る場合、9日転換線が低下に転じる場合は弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からは先行スパンへ潜り込む下落期に入るのではないかと考える。

日足の相対力指数は8月中旬以降は70ポイントが抵抗となり相場が高値を更新しているものの指数は高値切り上げヘ進めずに上昇力が落ちている印象があるが、50ポイント台では買われてしっかりしている。50ポイント台を維持するうちは一段高余地ありとし、70ポイント超えからは上昇が勢い付くとみるが、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台を目指してゆく下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、149.50円を下値支持線、150.00円を上値抵抗線とする。
(2)149.50円以上での推移中は上昇余地ありとみる。150円到達後の急落には注意がいるが、150円超えから上昇が勢い付く場合は10月3日夜高値150.15円試し、さらに150.50円を目指す流れとみる。
(3)149.50円割れからはいったん仕切り直しの下落期に入るとみて149円台序盤への下落を想定する。149.20円以下は反騰注意とするが、勢い付く場合は148円台後半(148.85円から148.50円)へ下値目途を引き下げる。

【当面の予定】

10/23(月)
休場 ニュージーランド、香港、タイ
岸田首相、所信表明演説
10:30 (日) 財務省政策評価懇談会
23:00 (欧) 10月 消費者信頼感・速報値 (9月 -17.8)

10/24(火)
休場 インド
14:00 (日) 日銀、基調的なインフレ率を捕捉するための指標
15:00 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 4.3%、予想 4.3%)
15:00 (独) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -26.5)
16:30 (独) 10月 製造業PMI・速報値 (9月 39.6)
16:30 (独) 10月 サービス業PMI・速報値 (9月 50.3)
17:00 (豪) ブロック豪中銀総裁、講演
17:00 (欧) 10月 製造業PMI・速報値 (9月 43.4)
17:00 (欧) 10月 サービス業PMI・速報値 (9月 48.7)
17:30 (英) 10月 製造業PMI・速報値 (9月 44.3)
17:30 (英) 10月 サービス業PMI・速報値 (9月 49.3)
22:45 (米) 10月 製造業PMI・速報値 (9月 49.8、予想 49.5)
22:45 (米) 10月 サービス業PMI・速報値 (9月 50.1、予想 49.4)
23:00 (米) 10月 リッチモンド連銀製造業指数 (9月 5)

10/25(水)
09:30 (豪) 7-9月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (4-6月 0.8%、予想 1.0%)
09:30 (豪) 7-9月期 CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (4-6月 6.0%、予想 5.2%)
09:30 (豪) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 5.2%、予想 5.3%)
17:00 (独) 10月 IFO企業景況感指数 (9月 85.7)
23:00 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.00%)
23:00 (米) 9月 新築住宅販売件数・年率換算 (8月 67.5万件、予想 68.4万件)
23:00 (米) 9月 新築住宅販売件数 前月比 (8月 -8.7%、予想 1.3%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
26:00 (米) 財務省5年債入札

10/26(木)
05:35 (米) パウエルFRB議長、挨拶
07:00 (豪) ブロック豪中銀総裁、ケント豪中銀総裁補、豪上院議会証言
08:50 (日) 9月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (8月 2.1%、予想 2.1%)
09:30 (豪) 7-9月期 輸入物価指数 前期比 (4-6月 -0.8%)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀) 政策金利 (現行 4.50%)
21:30 (米) 7-9月期 GDP・速報値 前期比年率 (4-6月 2.1%、予想 4.3%)
21:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費・速報値 前期比年率 (4-6月 0.8%、予想 3.6%)
21:30 (米) 7-9月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (4-6月 3.7%)
21:30 (米) 9月 耐久財受注 前月比 (8月  0.2%、予想 1.1%)
21:30 (米) 9月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (8月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 173.4万人)
21:30 (米) 9月 卸売在庫 前月比 (8月 -0.1%)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
22:00 (米) ウォラーFRB理事、挨拶

23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前月比 (8月 -7.1%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前年同月比 (8月 -18.8%)
26:00 (米) 財務省7年債入札



10/27(金)
08:30 (日) 10月 CPI(消費者物価指数)東京・生鮮食料品除く 前年同月比 (9月 2.5%、予想 2.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (4-6月 0.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 PPI(生産者物価指数) 前年同期比 (4-6月 3.9%)
21:30 (米) 9月 個人所得 前月比 (8月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 PCE(個人消費支出) 前月比 (8月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 PCEデフレーター 前年同月比 (8月 3.5%、予想 3.4%)
21:30 (米) 9月 コアPCEデフレーター 前月比 (8月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 コアPCEデフレーター 前年同月比 (8月 3.9%、予想 3.7%)
22:00 (米) バーFRB副議長、FRBの会議で開会の挨拶
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 63.0、予想 63.2)

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