ドル円見通し 米長期債利回り上昇でドル高、150円へ徐々に迫る(23/10/19)

ドル円は18日の日中も149.49円まで下げたところを買われてしっかりし、米長期債利回りが上昇する中でNY時間に149.93円まで高値を伸ばして150円に迫った。

ドル円見通し 米長期債利回り上昇でドル高、150円へ徐々に迫る(23/10/19)

米長期債利回り上昇でドル高、150円へ徐々に迫る

〇ドル円、10/18NY時間に149.93まで高値を伸ばし150円に迫る
〇10/30-31日銀金融政策決定会合での政策修正への警戒感が150円乗せへの障壁に
〇昨晩発表の米住宅着工許可件数等、今週の米指標に予想上回るもの多く、米長期利回り上昇要因に
〇FRB高官は米長期利回り水準上昇により、利上げ打ち止め示唆目立つ
〇149.50以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは150円から150.15前後への上昇を想定
〇149.30割れからは149.00前後への下落を想定

【概況】

ドル円は10月17日夜の一時的な下落で148.81円を付けたところから切り返して18日未明に149.85円を付けて10月13日未明高値149.82円を超えたが、18日の日中も149.49円まで下げたところを買われてしっかりし、米長期債利回りが上昇する中でNY時間に149.93円まで高値を伸ばして150円に迫った。
10月3日夜に150.15円を付けたところから売り注文の連鎖反応で147.41円まで急落する波乱となったこと、日銀が物価見通しを引き上げたりマイナス金利解除への動きを強めるのではないかとの見方もあり、150円乗せには躊躇している印象だ。

【日銀の政策修正への警戒感、150円乗せへの障壁に】

10月17日にブルームバーグが複数の関係者の話として日銀が10月30-31日の次回金融政策決定会合で展望リポートの2023年度と2024年度の消費者物価見通しを上方修正する公算が大きいと報じたことで報道後に一時円高反応がみられたが、18日には他のメディアも同様の記事を報じている。
日銀は10月30-31日に金融政策決定会合を開くが、2023年度の物価見通しを上方修正する方向で検討しているとされる。生鮮食品を除くコアCPIの前年度比上昇率については3%付近とされ、2024年度も2%台として3年度連続で日銀目標の2%を上回ることになるのではないかとみられる。物価見通しが上方修正されれば金融緩和政策継続の根拠も薄れ、長短金利操作における変動許容上限の引き上げや資産買い入れ停止、マイナス金利の解除等へと議論が進んで行くことも考えられる。

ただし、政府・与党内には反対も多く、大規模金融緩和による円安に支えられている大企業も多いため、早計な金融緩和政策終了はなく、前回会合で金融緩和政策の継続と必要なら追加緩和もあり得るとしたことに対する整合性もあるため、次回会合では大きな軌道修正にはならないのではないかと思われる。
10月18日には元日銀審議委員の桜井氏が「物価上昇の持続性が高まりつつある中で日銀は年内にもマイナス金利政策を解除する可能性がある」とのインタビュー記事が報じられている。

【米住宅着工堅調、FRB高官は利上げ打ち止め示唆】

10月18日に米商務省が発表した9月住宅着工件数(年換算)は前月比7.0%増の135万8000戸となり、市場予想の138万戸を下回ったものの8月の126.9万戸(128.3万戸から下方修正)から改善した。先行指標となる住宅着工許可件数は前月比4.4%減の147万3000戸となったが、市場予想の145万戸を上回った。本日の住宅着工許可件数等、今週は米経済指標が予想を上回るものが多く、米長期債利回り上昇を支えている。

NY連銀のウィリアムズ総裁は18日に、「インフレ率を当局目標の2%に戻すためには政策金利を景気抑制的水準に当面とどめるべき」、「FF金利の誘導目標レンジはピークかそれに近い水準にある」と述べて、当面は現状維持で様子を見てゆくという姿勢を示した。
FRBのウォラー理事は18日に、長期金利が上昇する中で11月のFOMCでは、とりあえず政策金利を2会合連続で据え置いて様子を見ることができるとの姿勢を示し、あと1回とされている追加利上げについても「今後数カ月の経済指標次第」「今年か来年か、あるいは全く行われないか」だとして指標次第では利上げ終了の可能性もあるとした。
最近の地区連銀総裁やFRB高官による発言では、米長期債利回りが政策金利引き上げを必要としない水準に上昇していることでFRBが利上げを見送ることが可能になっているとの見方が多い印象だ。

【米長期債利回りは連騰、ダウは反落】

10月18日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の4.91%となり、10月16日の0.09%上昇、17日の0.13%上昇からの連騰で10月6日に付けたこれまでのピークであった4.89%を超えた。30年債利回りは0.06%高の4.99%で10月16日の0.09%上昇、17日の0.08%上昇から連騰した。2年債利回りは前日比0.01%上昇の5.22%で16日の0.04%上昇、17日の0.11%上昇から連騰した。
米長期債利回りの上昇については、米連邦政府の財政悪化による国債増発懸念が債券売りを助長しているとの見方が広がっているようだ。10月7日にハマスとイスラエルの戦争状態化が始まった直後は安全資産として米国債が買われたが、現状では安全資産性よりも先行きの需給緩和見通しとFRB高官らの長期金利上昇を善しとする姿勢が利回り上昇を勢い付かせているようだ。

米長期債利回り上昇と中東情勢懸念により、NYダウは4営業日ぶりに反落して前日比332.57ドル安となり、ナスダック総合指数も219.45ポイント安と下落した。反イスラエルのデモがアラブ諸国だけではなく欧米でも広がっていることもあり、原油高によりエネルギー関連が買われても航空関連等が売られているようだ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は10月17日夜に148.81円へ急落してから18日未明に149.85円まで反騰したため、17日夜安値を目先の底とした上昇期として高値形成期を20日未明にかけて想定した。
10月18日の日中に149.49円まで下げたところを買われて149.93円まで高値を切り上げたためまだ上昇余地ありとみるが、149.49円割れからは下向きとし、149.30円割れからは戻り一巡による下落期入りとみて24日夜にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では10月17日夜の一時的急落から反騰したために遅行スパンが好転して先行スパンを上回ったが、その後も概ね両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月16日夜以降を50ポイント割れを買われて60ポイント台を繰り返し試しているためまだ上昇余地ありとみるが、45ポイント割れからは下落期入りとして30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、149.30円を下値支持線、150.00円を上値抵抗線とする。
(2)149.50円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは一段高余地ありとし、150円から10月3日夜高値150.15円前後への上昇を想定する。150円到達では再び売られやすいと注意するが、150.15円超えから上昇が勢い付く場合は150円台中盤(150.35円から150.65円)へ上値目途を引き上げる。149.50円以上での推移なら20日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)149.30円割れからは149.00円前後への下落を想定する。149円以下は反騰注意とするが、勢い付く場合には148円台後半(148.85円から148.50円)へ下値目途を引き下げる。149.30円を割り込んだ後も149.50円以下での推移なら20日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

10/19(木)
日銀支店長会議、日銀地域経済報告「さくらリポート」
17:00 (欧) 8月 経常収支・季調済 (7月 209億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 170.2万人、予想 171.0万人)
21:30 (米) 10月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (9月 -13.5、予想 -6.6)
22:00 (米) ジェファーソンFRB理事、会議挨拶
23:00 (米) 9月 中古住宅販売件数・年率換算 (8月 404万件、予想 389万件)
23:00 (米) 9月 中古住宅販売件数 前月比 (8月 -0.7%、予想 -3.7%)
23:00 (米) 9月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (8月 -0.4%、予想 -0.4%)
25:00 (米) パウエルFRB議長、講演
26:20 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動5年債入札
26:30 (米) バーFRB副議長、講演
29:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

10/20(金)
米・EU首脳会談
05:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
06:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
06:45 (NZ) 9月 貿易収支 (8月 -22.91億NZドル)
08:00 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
08:01 (英) 10月 GFK消費者信頼感 (9月 -21、予想 -20)
08:30 (日) 9月 CPI(消費者物価指数)・全国 前年同月比 (8月 3.2%、予想 3.0%)
08:30 (日) 9月 コアCPI・全国・生鮮食料品除く 前年同月比 (8月 3.1%、予想 2.7%)
08:30 (日) 9月 コアCPI・全国・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (8月 4.3%、予想 4.1%)
15:00 (独) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 0.3%、予想 0.4%)
15:00 (英) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.4%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 -1.4%、予想 -0.1%)
15:00 (英) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 0.6%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 9月 小売売上高・徐自動車 前年同月比 (8月 -1.4%、予想 -0.3%)

22:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
25:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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