ドル円見通し 中東情勢と米長期債利回りを睨んで149円台中盤で揉み合い
〇ドル円、10/16は149.75まで戻すも10/13高値に届かず、その後は149.50割れを買われつつ小動き
〇通貨当局者の円安けん制発言相次ぐも、円高へ進まず
〇NY連銀景況指数は低下するも市場予想を上回る、FRB高官によるややハト派的発言も
〇米企業決算の好調を反映し米株価が上昇、株買い・債券売りの流れとなり米長期債利回りは上昇
〇149.40以上での推移中は一段高余地ありとし、149.75超えからは150円台序盤への上昇を想定する
〇149.40割れからは、149.00前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は10月3日夜に150.15円へ上昇した直後に147.41円へ急落して早々に149円台前半へ反騰する波乱が発生したが、その後は148円台序盤を買われてしっかりし、13日未明には149.82円を付けて150円に再び迫った。10月3日夜の波乱も踏まえて150円到達には慎重となり、中東情勢緊迫化によるリスクオフ心理による円買いもあってその後は高値切り上げヘ進めずにいる。
10月16日は米企業決算が好調だったことによる株高が米国債への安全資産買いを後退させたために10年債利回りが上昇し、NY連銀景況指数が悪化したものの予想ほどではなかったことで149.75円まで戻したが13日未明高値には届かずにその後は149.50円割れを買われつつ小動きにとどまった。
【円安けん制発言では円高へ進まず】
10月13日に鈴木財務相はG20財務相・中銀総裁会合に出席したところで「為替相場の過度な変動は望ましくなく、場合によっては適切な対応を求められることもある」と述べて円安をけん制した。
一方で、IMF(国際通貨基金)アジア太平洋局のパンス副局長が10月14日に「最近の円安は米国などとの金利差といったファンダメンタルズを反映しており、為替介入は不要」との見方を示した。また「為替介入が妥当なのは市場の機能不全や金融安定リスクの高まり、インフレ見通しの不安定化といった場合」であり、「日本は今、どれにも当てはまらない」とした。
10月16日、財務省の神田財務官は「ファンダメンタルズから外れて変な動きがあったときには適切な対応が必要になる」、パンス副局長の発言に対しては「IMFの一職員の発言に反論もしないし、コメントもしない」とし、為替相場が激しく下落した場合に国は「金利を上げることによって資本流出を止めるか、為替介入で過度の変動に対抗する」と述べた。
円の弱さは今や、アルゼンチンペソやトルコリラの弱さとの比較が論じられるほどに弱くなっている。大企業優先の政策により低成長は保っているものの金融緩和政策を早々に止められる状況にはなく、米FRBが年内あと1回の利上げ余地があり利上げ状態は2024年も続くとの姿勢を示していることとの政策スタンスの差が日米金利差に表れていることが円安の土台であり、財務相や財務官は円安がファンダメンタルズから外れていると指摘しても世界的に見ればIMF高官の発言のように円安は理にかなったものとして受け止められている。
10月16日は神田財務官が夕刻に記者団に発言したものの夜にかけて円安反応を見せており、市場としては実弾による大規模市場介入が実施されなければ、いずれは150円の壁及び昨年10月21日高値151.94円を超えてゆくきっかけをつかみたいとの姿勢を続けるのではないかと思われる。
【NY連銀景況指数は低調、FRB高官はややハト派的発言】
NY連銀による10月の製造業景況指数はマイナス4.6となり、9月のプラス1.9から低下したが、市場予想のマイナス7.0を大きく上回った。予想ほどの悪化ではなかったために発表後はドル高反応も若干見られた。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は16日に英FT紙のインタビューにおいて、「一部で根強い物価圧力が見られるものの、米国のインフレ率鈍化が一時的な現象ではなく大勢であることは否定できない」と述べた。追加利上げ云々への言及はなかったようだが、インフレ鈍化が顕著とする見方は追加利上げを不要とする姿勢と受け止められる。
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は16日に「現在の金利水準は初めての住宅購入をほぼ不可能にしている」として長期金利上昇による住宅市場への影響が顕著であることを強調したが、政策金利については「我々は金利を維持できる段階にあると信じている」とし、当面は利上げ状態を維持するべきとの姿勢をとりつつも追加利上げへの積極姿勢ではないとの印象を与えた。
【株高債券安で米10年債利回りは上昇】
10月16日の米長期債利回りは総じて上昇した。米企業決算が好調だったことを反映してNYダウ等が上昇したため、株買い・債券売りの流れとなり利回りが上昇したようだ。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.09%上昇の4.71%で終了した。10月6日にこの間のピークとなる4.89%をつけてから低下したが、12日に4.53%をつけてから反騰している。中東情勢の緊迫化による米国債への安全資産買いとFRB高官によるハト派寄り発言が相次いだことで低下してきたが、中東情勢は大規模な地上戦突入前夜での外交努力や戦場想定地域からの避難が続いていることでやや膠着状態がみられているため、16日は安全資産としての債券買いよりも株買いが優先されたようだ。
30年債利回りは先週末比0.09%上昇の4.85%、2年債利回りは0.04%上昇の5.10%だった。
一方、NYダウは先週末比314.25ドル高と上昇、13日の39.15ドル高から続伸した。10月6日から10日まで4連騰し、12日に173.73ドル安の反落が入ったものの13日からの連騰で10月6日からの反騰基調を維持している。ナスダック総合指数も160.75ポイント高と上昇した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は10月3日の乱高下が落ち着いた後の10月10日午前安値を起点として上昇期に入ったが、13日未明高値で目先のピークを付けてややジリ安基調に入っている。16日夜の上昇では13日未明高値に届かずにいるためまだ下落余地ありとみるが、16日夜高値149.75円超えからは上昇期入りとみて20日未明にかけての上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では10月13日未明高値からの軟調推移で遅行スパンが悪化し、先行スパンへ潜り込んだが、16日夜の上昇時には一時遅行スパンが好転し、先行スパンからの転落も回避している。
149円台中盤での揉み合いのため、16日夜高値149.75円超えからは上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は40ポイント前後で買われて60ポイント前後で売られているため方向感に欠けるが、次に60ポイントを超えるところからは上昇継続とみて70ポイントを目指すと想定し、次に40ポイントを割り込むところからは下落継続とみて30ポイント以下への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、149.40円を下値支持線、149.75円を上値抵抗線とする。
(2)149.40円以上での推移中は一段高余地ありとし、149.75円超えからは150円台序盤への上昇を想定する。150円到達では10月3日夜のように売り注文の連鎖による急落も警戒されるが、反落がみられなければ上昇が勢い付いて150円台中盤へ向かう可能性もあるとみる。149.40円以上での推移なら18日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)149.40円割れからは149.00円前後への下落を想定する。149円以下は反騰注意とするが、クロス円での円高が重なって勢い付く場合には148円台後半(148.85円から148.50円)へ下値目途を引き下げる。149.40円以下での推移なら18日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の予定】
10/17(火)
13:30 (日) 8月 第三次産業活動指数 前月比 (7月 0.9%、予想 0.3%)
15:00 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 4.3%、予想 4.3%)
18:00 (独) 10月 ZEW景況感 (9月 -11.4、予想 -9.3)
18:00 (欧) 10月 ZEW景況感 (9月 -8.9)
21:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会司会
21:30 (米) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 0.6%、予想 0.2%)
22:20 (米) ボウマンFRB理事、講演
22:15 (米) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.4%、予想 0.0%)
22:15 (米) 9月 設備稼働率 (8月 79.7%、予想 79.6%)
23:00 (米) 8月 企業在庫 前月比 (7月 0.0%、予想 0.3%)
23:00 (米) 10月 NAHB住宅市場指数 (9月 45、予想 44)
23:45 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
26:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
10/18(水)
11:00 (中) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 0.8%、予想 1.0%)
11:00 (中) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 6.3%、予想 4.5%)
11:00 (中) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 4.6%、予想 4.9%)
11:00 (中) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 4.5%、予想 4.3%)
15:00 (英) 9月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (8月 0.3%、予想 0.4%)
15:00 (英) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 6.7%、予想 6.6%)
15:00 (英) 9月 コアCPI 前年同月比 (8月 6.2%、予想 6.0%)
15:00 (英) 9月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (8月 9.1%、予想 8.9%)
18:00 (欧) 9月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 4.3%、予想 4.3%)
18:00 (欧) 9月 コアHICP・改定値 前年同月比 (速報 4.5%、予想 4.5%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前月比 (7月 0.8%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前年同月比 (7月 1.0%)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数・年率換算 (8月 128.3万件、予想 138.6万件)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数 前月比 (8月 -11.3%、予想 8.0%)
21:30 (米) 9月 建設許可件数・年率換算 (8月 154.3万件、予想 145.0万件)
21:30 (米) 9月 建設許可件数 前月比 (8月 6.9%、予想 -5.9%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
25:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ボウマンFRB理事、イベント挨拶
26:00 (米) 財務省20年債入札
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
28:15 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2023.10.17
ドル円、狭いレンジ内で方向感に欠ける展開。IMF高官は日本の為替介入を不支持(10/17朝)
週明け16日(月)のドル円相場は狭いレンジ内で方向感に欠ける展開。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。