ドル円見通し 150円の壁を意識、中東情勢悪化によるドル高優勢の流れに沿うか試される(週報10月第三週)

ドル円は10月3日の波乱を通過して上昇再開を試しており、高値更新へは進めずにいるものの7月14日安値137.24円を起点とした上昇基調を維持していると思われる。

ドル円見通し 150円の壁を意識、中東情勢悪化によるドル高優勢の流れに沿うか試される(週報10月第三週)

150円の壁を意識、中東情勢悪化によるドル高優勢の流れに沿うか試される

〇先週のドル円、13日に149.82まで上昇するも150円には届かず、週末は149円台中盤での小動き
〇中東情勢深刻化にリスク回避的ドル高がぶり返す、13日は原油急騰、有事の金買いで金急伸
〇ドル円もドル高優勢の流れに沿い150円の壁を試すか注目される
〇149.20割れからは149.00、148.75を順次試す下落を想定するが、148.75以下は反騰注意
〇149.82超えからは150円試し、150円到達で急落反応を見せずに150.15を超える場合は順次上値試しか

【概況】

ドル円は10月3日夜に150.15円を付けて年初来高値を更新して昨年10月21日高値151.94円以降の最高値としたところから数分で147.41円へ急落、直後に149.32円まで戻す波乱となったが、その後はやや落ち着いて148円台序盤で買われて149円台前半で売られる持ち合いで推移した。10月12日夜は10月10日午前安値148.15円を起点とした戻りを継続し、ドル高が優勢となる中で149.50円を超えて13日未明には149.82円まで高値を伸ばした。しかし150円へ迫る勢いに欠けて13日夜には149.43円をつけ、その後も149円台中盤での小動きに終始した。
中東情勢による米国債への安全資産買いやFRB高官らのややハト派的発言により米長期債利回りが低下してユーロ等が上昇していたのだが、中東情勢が一段と深刻化し始めていることでリスク回避的なドル高がぶり返している。13日は原油が急騰、有事の金買いでゴールドが急伸して国内の円建て金先物市場では中心限月が史上最高値を更新している。

13日未明から14日早朝にかけてのドル円は、ドル高に押し上げられる反面、ユーロ円や豪ドル円などクロス円の下落による円高感と、150円手前での上値抵抗感からやや円高優勢の動きとなった。今後はクロス円全般の下落によるドル円の上昇にブレーキのかかった状況が続くのか、ドル全面高の流れに沿って150円超えへ進むのか試されてゆくと思われる。

【150円の壁へ再挑戦するか】

鈴木財務相は13日にG20財務相・中銀総裁会合に出席し、為替市場について「為替相場の過度な変動は望ましくなく、場合によっては適切な対応を求められることもある」と述べた。これに対して随行していた財務省幹部は「市場への警告を意図したものではない」と取り繕ったものの「円相場に過度な動きが見られれば当局は対応する」とも述べており、市場による過剰反応を気にしつつも150円台へ乗せる場合には市場介入もあり得るような印象を与えている。

10月3日夜の乱高下については小規模の市場介入だったとも売り注文の連鎖反応による自然の動きとも言われて詳細は分からないが、150円到達に対する市場自身の警戒感と反落予想での売り注文の厚さを示している。値動きとしては直前高値から安値まで2.74円の下落幅であり、昨年9月22日に24年振りの市場介入で145.89円から140.36円まで5.53円の一時的な急落が発生した時よりも規模の小さい波乱だったが、役割としては9月22日の波乱と同等のインパクトを市場にもたらしたのではないかと思われる。だとすれば、昨年9月22日の市場介入では円安が収まらなかったように、現状も150円到達による一時的急落をほぼ解消している状況から高値更新へ進み、昨年10月21日高値151.94円を超えてゆく道中ではないかとも考えられる。
中東情勢は悪化しており、周辺国への波及、地政学的リスクの急上昇による原油価格高騰、世界経済への心理的悪影響等を踏まえると、実力の低下している円売りを助長してゆくものになるのではないかと思われる。

【インフレ高止まりと追加利上げの悪影響への懸念でFOMCメンバーも迷う】

10月13日に発表された米ミシガン大の10月消費者信頼感指数は63.0となり、9月の68.1から低下して市場予想の67.2を下回った。現況指数は9月の71.4から66.7へ悪化、期待指数も66.0から60.7へ低下しており景気減速感が示されている。一方では同大調査による期待インフレ率は1年先が9月の3.2%から3.8%へ、5年先が2.8%から3.0%へ上昇しており、消費者心理はインフレの高止まりないし再加速への懸念があることを示している。
10月12日に前NY連銀総裁のダドリー氏は「金利高止まりの長期化が新常態になる」とし、「長期金利上昇で資金調達コストが増大しているためFRBは追加利上げを見送るだろう」と述べた。同氏は全米自動車労組スト、学生ローン返済の再開、中東情勢などを踏まえれば向こう2か月の経済見通しは非常に不透明であり、「FRBが追加利上げをやりたくなる環境ではない」と指摘した。

フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は13日に、「利上げの影響が完全に表れるにはしばらく時間が掛かる。金利据え置きにより金融政策は役割を果たせる」と述べて追加利上げへ消極姿勢を示した。同総裁も原油高や政府閉鎖の懸念などによる先行きの不確実性を指摘している。
一方で、ボストン連銀のコリンズ総裁は9月の米CPIが高止まりしたことにより「インフレを2%に回帰させるために追加利上げが必要となる可能性がある」との自身の見方を改めて強調している。

【米10年債利回りは再び低下、ダウは反発するもナスダックは下落】

10月13日の米長期債利回りは総じて低下した。指標の10年債利回りは前日比0.08%低下の4.62%で終了した。10月6日に4.89%をつけて2007年以降の最高としたところから中東情勢悪化による安全資産としての米国債買いやFRB高官らのハト派寄り発言で低下に転じ、12日に4.53%まで低下したところから4.73%までいったん戻したものの勢いは続かずに失速した。週間では10月6日終値4.80%から0.18%低下した。
30年債利回りは前日比0.10%低下の4.76%で終了した。10月6日に5.05%へ急伸してから低下に転じ、12日に4.67%まで下げてから戻したが13日に反落したため前週比は0.20%低下だった。

2年債利回りは前日比0.02%低下の5.06%で終了、中東情勢緊迫化報道で10日に4.92%まで低下してから持ち直している。10年債や30年債は安全資産買いによる利回り低下傾向が続いているが、2年債利回りは原油の反騰によるインフレ再燃への懸念も反映して低下し過ぎに対する揺れ返しの上昇を続けているようだ。
一方で、NYダウは10月6日から11日まで4連騰し、12日に前日比173.73ドル安と反落し、13日は前日比39.15ドル高と小幅上昇したが前日の下げ幅解消には至らず。ナスダック総合指数は4連騰してから12日に85.46ポイント安と下落し、13日も166.99ポイント安と下落した。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は10月3日の波乱を通過して上昇再開を試しており、高値更新へは進めずにいるものの7月14日安値137.24円を起点とした上昇基調を維持していると思われる。
年初からの展開は、1月16日安値127.22円を起点として3月8日高値137.91円までを一段目の上昇とし、3月24日安値129.63円を起点として6月30日高値145.06円までを二段目の上昇とし、7月14日安値を起点として三段目の上昇期にある。すでに上昇も3か月を経過しており、2か月から3か月前後で上昇波動が一巡しやすい傾向にあるため反落注意期にあるが、10月3日夜の波乱時安値147.41円を割り込まないうちは底上げ基調の維持として高値更新へ進む可能性があるとみる。

日足の一目均衡表では6月30日高値を超えて一段高に入ったところで遅行スパンが好転して先行スパンも上回り、その後も両スパン揃っての好転を維持している。短期的には26日基準線が下値支持線として機能しているためまだ上昇余地ありとするが、26日基準線割れから続落する場合は弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からは7月14日以降の上昇一巡による下落期入りとみて先行スパンへ潜り込むレベルの下落を想定する。

日足の相対力指数は8月後半から70ポイント前後が抵抗となって指数自身の高値切り上げヘ進めずにいるものの50ポイント台を買われてボックス型の持ち合いを形成しているため、次に70ポイントを超えるところからは上昇が勢い付いて70ポイント台後半へ向かう可能性があるとみる。ただし、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、149.20円を下値支持線、10月13日未明高値149.82円を上値抵抗線とする。
(2)149.20円割れからは149.00円、148.75円を順次試す下落を想定するが、148.75円以下は反騰注意とし、その後に149円台を回復するところからは上昇再開とみる。
(3)10月13日未明高値149.82円超えからは150円試しとする。150円到達後は10月3日夜のような急落と反騰に注意し、148円台序盤以下は反騰警戒とする。150円到達で急落反応を見せずに10月3日夜高値150.15円を超える場合は市場介入を警戒しつつ、円の独歩安ではなくドル全面高による上昇なら150.50円、150.75円、151.00円を順次試す上昇を想定する。

【当面の予定】

10/16(月)
08:30 (豪) ジョーンズ豪中銀総裁補、講演
13:30 (日) 8月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 0.0%)
13:30 (日) 8月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -3.8%)
13:30 (日) 8月 設備稼働率 前月比 (7月 -2.2%)
16:00 (欧) ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
17:30 (英) ピル英中銀理事、講演
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調済 (7月 29億ユーロ)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調前 (7月 65億ユーロ)
21:30 (米) 10月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (9月 1.9、予想 -5.0)
23:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) 9月 月次財政収支 (8月 893億ドル、予想 -1415億ドル)

10/17(火)
05:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
06:45 (NZ) 7-9月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (4-6月 1.1%、予想 1.9%)
06:45 (NZ) 7-9月期 CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (4-6月 6.0%、予想 5.8%)
09:30 (豪) RBA(豪中銀)、金融政策会合議事要旨
13:30 (日) 8月 第三次産業活動指数 前月比 (7月 0.9%)
15:00 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 4.3%、予想 4.3%)
18:00 (独) 10月 ZEW景況感 (9月 -11.4、予想 -11.3)
18:00 (欧) 10月 ZEW景況感 (9月 -8.9)
21:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会司会
21:30 (米) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 0.6%、予想 0.2%)

22:20 (米) ボウマンFRB理事、講演
22:15 (米) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.4%、予想 -0.1%)
22:15 (米) 9月 設備稼働率 (8月 79.7%、予想 79.5%)
23:00 (米) 8月 企業在庫 前月比 (7月 0.0%、予想 0.3%)
23:00 (米) 10月 NAHB住宅市場指数 (9月 45、予想 45)
23:45 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
26:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演

10/18(水)
11:00 (中) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 0.8%、予想 1.0%)
11:00 (中) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 6.3%、予想 4.5%)
11:00 (中) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 4.6%、予想 4.8%)
11:00 (中) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 4.5%、予想 4.3%)
15:00 (英) 9月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (8月 0.3%)
15:00 (英) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 6.7%)
15:00 (英) 9月 コアCPI 前年同月比 (8月 6.2%)
15:00 (英) 9月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (8月 9.1%)

18:00 (欧) 9月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 4.3%、予想 4.3%)
18:00 (欧) 9月 コアHICP・改定値 前年同月比 (速報 4.5%、予想 4.5%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前月比 (7月 0.8%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前年同月比 (7月 1.0%)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数・年率換算 (8月 128.3万件、予想 141.0万件)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数 前月比 (8月 -11.3%、予想 9.9%)
21:30 (米) 9月 建設許可件数・年率換算 (8月 154.3万件、予想 145.0万件)
21:30 (米) 9月 建設許可件数 前月比 (8月 6.9%、予想 -5.9%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
25:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ボウマンFRB理事、イベント挨拶
26:00 (米) 財務省20年債入札
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
28:15 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演

10/19(木)
日銀支店長会議、日銀地域経済報告「さくらリポート」
07:55 (米) クックFRB理事、講演
08:50 (日) 9月 通関貿易収支・季調前 (8月 -9305億円)
08:50 (日) 9月 通関貿易収支・季調済 (8月 -5557億円)
09:30 (豪) 9月 新規雇用者数 (8月 6.49万人、予想 2.15万人)
09:30 (豪) 9月 失業率 (8月 3.7%、予想 3.7%)
17:00 (欧) 8月 経常収支・季調済 (7月 209億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 170.2万人)
21:30 (米) 10月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (9月 -13.5、予想 -6.4)

22:00 (米) ジェファーソンFRB理事、会議挨拶
23:00 (米) 9月 中古住宅販売件数・年率換算 (8月 404万件、予想 390万件)
23:00 (米) 9月 中古住宅販売件数 前月比 (8月 -0.7%、予想 -3.5%)
23:00 (米) 9月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (8月 -0.4%、予想 -0.4%)
25:00 (米) パウエルFRB議長、講演
26:20 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動5年債入札
26:30 (米) バーFRB副議長、講演
29:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

10/20(金)
米・EU首脳会談
06:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
06:45 (NZ) 9月 貿易収支 (8月 -22.91億NZドル)
08:00 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
08:01 (英) 10月 GFK消費者信頼感 (9月 -21)
08:30 (日) 9月 CPI(消費者物価指数)・全国 前年同月比 (8月 3.2%、予想 3.0%)
08:30 (日) 9月 コアCPI・全国・生鮮食料品除く 前年同月比 (8月 3.1%、予想 2.7%)
08:30 (日) 9月 コアCPI・全国・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (8月 4.3%、予想 4.2%)

15:00 (独) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 0.3%)
15:00 (英) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.4%)
15:00 (英) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 -1.4%)
15:00 (英) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 0.6%)
15:00 (英) 9月 小売売上高・徐自動車 前年同月比 (8月 -1.4%)
22:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
25:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

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