『日米金利差に着目したドル買い再開か。年初来高値突破に期待』
〇今週のドル円、週前半は中東情勢緊迫化とFRB関係者に相次いだハト派発言に148.16まで下落
〇その後は、米9月PPI、CPIの予想比上振れ等に週後半にかけて、週間高値149.88まで急伸
〇ユーロドル、米金利低下に週後半にかけ1.0640まで上昇、米物価指標発表後は1.0495まで下落
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも継続、地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズは米FRBよる金融引き締め長期化観測強まりドル円をサポート
〇引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.25ー151.25、(EURUSD):1.0375−1.0650
今週のレビュー(10/9−10/13)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.07で寄り付いた後、(1)中東を巡る地政学的リスクの高まり(ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃に端を発した両者の大規模衝突)や、(2)上記1を背景とした世界的なリスク回避ムード(リスク回避の円買い圧力)、(3)ダラス連銀ローガン総裁による「米債利回りの上昇は利上げの必要性を減らすかもしれない」とのハト派的な発言、(4)ジェファーソンFRB副議長による「利回り上昇の引き締めへの影響に留意」とのハト派的な発言、(5)米金利低下に伴うドル売り圧力(中朝を巡る地政学的リスクに端を発した質への逃避の米債買い圧力→米10年債利回りが急低下)、(6)ドル円ロング勢の見切り売りが重石となり、翌10/10にかけて、週間安値148.16まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)日経平均株価の急上昇(リスク選好の円売り再開)や、(8)円金利低下に伴う円売り圧力、(9)ボウマンFRB理事による「インフレを抑制するためには金利をより高くする必要があるかもしれない」とのタカ派的な発言、(10)米9月生産者物価指数(結果+2.2%、予想+1.6%)の市場予想を大幅に上回る結果、(11)米9月生産者物価コア指数(結果+2.7%、予想+2.3%)の市場予想を大幅に上回る結果、(12)米9月消費者物価指数(結果+3.7%、予想+3.6%)の市場予想を上回る結果、(13)米新規失業保険申請件数(結果20.9万件、予想21.0万件)の良好な結果、(14)米10年債入札および米30年債入札の低調な結果、(15)米長期金利の反転上昇(米10年債利回りが4.53%から4.73%へ急上昇)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値149.88まで急伸しました。
その後も、(16)米ミシガン大学・消費者期待インフレ率(1年先期待インフレ率が予想3.2%に対して結果3.8%、5・10年先期待インフレ率が予想2.8%に対して結果3.0%)の市場予想を上回る結果が下値を支え、本稿執筆時点(日本時間10/14午前4時55分現在)では、149.50前後で推移しております。尚、今週は一部メディアより「日銀は23年度の物価上昇率を3%近くに上方修正する検討に入った」とのヘッドラインが報じられましたが、円買いでの反応は一時的なものに留まりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0563で寄り付いた後、(1)中東情勢緊迫化に端を発した地政学的リスクの高まりや、(2)上記1を背景としたリスク回避のドル買い圧力、(3)ドイツ8月鉱工業生産(結果▲2.0%、予想▲1.5%、※前年比)の市場予想を下回る結果、(4)ラトビア中銀カザークス総裁による「大幅な利上げサイクルは終了している」「インフレ見通しが2%を下回ってきたら利下げを開始できる」とのハト派的な発言が重石となり、週明け早々に、一時1.0519まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)質への逃避の米債買い圧力(米長期金利急低下→米ドル売り)や、(6)欧州株の堅調推移、(7)ECBによる金融引き締め継続観測(中東情勢緊迫化に伴う原油価格の上昇リスク→欧州圏におけるインフレ再開懸念→ECBによる金融引き締め継続の思惑→ユーロドルのショートカバー誘発)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0640まで反発しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(8)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ユーロ圏のインフレ率のピークは過ぎた模様」「ECBは利上げという行動よりも見守るという忍耐が必要」とのハト派的な発言、(9)米9月生産者物価指数の市場予想を上回る結果や、(10)米9月生産者物価コア指数の市場予想を上回る結果、(11)米9月消費者物価指数の市場予想を上回る結果、(12)米ミシガン大学・消費者期待インフレ率の市場予想を上回る結果、(12)上記9、10、11、12を背景とした米FRBによる金融引き締め長期化観測(米インフレ懸念再燃→米長期金利の反転上昇→米ドル買い再開)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0495まで下落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間10/14午前4時55分現在)では、1.0515前後で推移しております。
来週の見通し(10/16−10/20)
<ドル円相場>
ドル円は10/3に記録した安値147.38をボトムに切り返すと、週後半にかけて一時149.88まで急伸しました。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイントの上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること、日足のみならず下位足・上位足の全てで買いシグナルが点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(直近で発表された米雇用統計、米PPI、米CPI、米ミシガン大期待インフレ率は軒並み市場予想を上回る強い結果)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(今週は「日銀が23年度の物価上昇率を3%近くに上方修正する検討に入った」とのヘッドラインが流れるも反応は限定的)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性違い(日米金利差拡大に伴う円キャリートレード継続期待)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
政府・日銀による介入観測が依然として意識されてはいるものの、介入効果は限定的と考えられるため(10/3に150.16→147.38に押し下げられた後、僅か1・2週間で全値戻しを概ね達成→市場参加者は介入後のドル円急落を絶好の押し目買い機会として待ち構えている状況)、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(年初来高値150.16を試すシナリオを想定)。尚、来週は10/17に予定されている米9月小売売上高や、米当局者発言(フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、ボウマンFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁、ウォラーFRB理事、クックFRB理事、ジェファーソンFRB副議長、パウエルFRB議長、シカゴ連銀グールズビー総裁、バーFRB副議長、アトランタ連銀ボスティック総裁、ダラス連銀ローガン総裁、クリーブランド連銀メスター総裁など)に注目が集まります。
来週の予想レンジ(USDJPY):148.25ー151.25
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は10/3に記録した年初来安値1.0448(昨年12/7以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、週後半にかけて一時1.0640まで持ち直す場面も見られましたが、結局1.0500付近まで値を崩して越週する展開となっております。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイントの下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること、向こう数週間以内に「弱気のパーフェクトオーダー」の点灯が見込まれていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(国際通貨基金は今週、ユーロ圏の経済成長率見通しの下方修正を発表)や、(2)ECBによる金融引き締め休止観測(利上げサイクル終了の思惑)、(3)米FRBよる金融引き締め長期化観測、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は上記1を確認する目的で、10/17に予定されているドイツ10月ZEW景況指数に注目が集まります。市場予想を下回る結果となれば、欧州経済の先行き懸念→ECBによる金融引き締め停止の思惑を通じて、ユーロドルに強い下押し圧力が加わる展開が想定されることから、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(10/3に記録した年初来安値1.0448を試すシナリオを想定)。尚、来週は上記(ドイツ10月ZEW景況指数)に加えて、欧州当局者発言(フランス中銀ビルロワドガロー総裁、オランダ中銀クノット総裁、ポルトガル中銀センテノ総裁、デギンドスECB副総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁など)にも注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0375−1.0650
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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