ドル円見通し 10月3日の急落ショック引きずり、米長期債利回り低下で上値重い(23/10/11)

ドル円は10月3日の乱高下後は148円台序盤を買われつつ149円台へ戻したところを売られる持ち合いで推移している。

ドル円見通し 10月3日の急落ショック引きずり、米長期債利回り低下で上値重い(23/10/11)

10月3日の急落ショック引きずり、米長期債利回り低下で上値重い

〇ドル円、148円台前半で買われつつ149円台を維持できずに持ち合いの様相
〇FRB高官らのハト派発言続き、中東情勢緊迫化も合わせて米長期債利回りの低下を招く
〇中東情勢の懸念も踏まえ、利上げ打ち止めでインフレ鎮静化の動き見守りたいのがFRB高官の基本姿勢か
〇ダウ、ナスダックとも連騰。中東情勢の米国経済への影響は軽微とし、株式市場はリスクオン優勢の印象
〇148.50割れからは148.15試しとし、148.15割れからは147.50前後への下落を想定
〇149.09超えからは149.50試しとみるが、149.50前後は売られやすい

【概況】

ドル円は10月3日夜に150.15円を付けて昨年10月21日高値151.94円以来の150円台に到達した直後に147.41円まで急落、149円台前半へ戻す乱高下となったが、その後は148円台前半で買われつつ149円台を維持できずに持ち合いの様相となっている。

10月7日にパレスチナのガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルに大規模な軍事攻撃を行いイスラエルが反撃してここ数十年において最大級の中東情勢緊迫化を招いているが、10月9日朝から10日午前にかけてはリスク回避型の円高反応となり10月6日夜高値149.50円から10日午前安値148.15円まで1円を超える下落幅となったが、FRB高官によるハト派発言が続いたことと中東情勢による安全資産としての米国債買いで米長期債利回りが急低下したことによりユーロやポンドが上昇、ドル円も10日夜に149円台序盤へ戻したところから再び失速している。NYダウが3連騰するなど、金融市場全般は大きな動揺やパニックがみられず比較的平静といえるが、ドル円は10月3日夜の急落ショックを引きずっており、株高によるリスクオン優勢としての円安反応はさほど見られないようだ。

【FRB高官のハト派発言続く】

ジェファーソンFRB副議長は10月9日に「追加利上げは慎重に進めることが可能」と述べ、ダラス連銀のローガン総裁が「追加利上げの必要性は低下するかもしれない」と述べるなど、FRB高官によるややハト派的な発言が相次いだが10月10日もアトランタ連銀総裁らのハト派よりの発言があり、米長期債利回りの低下を招いた。
ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は10日、長期国債利回りの上昇が利上げ幅の縮小を意味する可能性があるとし、「経済が強すぎるようであればさらに利上げをする必要があるかもしれず、勝利を宣言するには早すぎる」と述べたが、利上げの打ち止め感に含みを持たせた。
アトランタ連銀のボスティック総裁は10日、政策金利の水準について「我々は適切な場所にいる」、「政策は十分に制約的」と述べ、「利上げが必要となる可能性はあるが、私の見通しでも予想でもない」として追加利上げよりも現状維持とする姿勢を示した。

中東情勢への懸念も踏まえ、当面は利上げ打ち止めとしてインフレ鎮静化の動きを見守りたいというのがFRB高官らの基本姿勢と思われる。米金利先物市場においても11月および12月のFOMCで利上げ据え置きとなる確率は7〜8割程度となっている。

【米10年債利回りは急低下、ダウは連騰】

中東情勢緊迫化とFRB高官らのハト派姿勢により休場明けの米長期債利回りは総じて急低下した。
長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.15%低下の4.66%となった。10月6日に4.89%をつけて2007年以来の高水準を更新してから低下していたが、中東情勢を意識した米国債買いで9日の時間外取引で急低下し、10日は一時4.61%を付けた。
30年債利回りは先週末比0.14%低下の4.83%となった。10月6日に5.05%まで急伸してから低下していたが、10日は4.80%まで低下した後に4.91%へ上昇するなど乱調な動きだった。
利上げに敏感な2年債利回りは先週末比0.11%低下の4.98%。一時は4.93%へ低下し、5.02%まで戻してから上げ幅を削っている。

米長期金利の上昇一服感が強まる中でNYダウは10月6日から3連騰した。中東情勢緊迫化により9日はダウ先物が一時急落したものの米長期債利回り低下を見て切り返しに入り、前日比197.07ドル高の上昇で6日の288.01ドルからの連騰としたが、10日も134.65ドル高と続伸した。中東情勢の米国経済への影響は軽微とし、NY原油も10月9日に前日比3.59ドル高と急伸したものの10日は0.41ドル安と落ち着いており、株式市場はリスクオン優勢の印象だ。ナスダック総合指数も前日比78.00ポイント高で10月6日から3連騰した。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は10月3日の乱高下後は148円台序盤を買われつつ149円台へ戻したところを売られる持ち合いで推移している。10月5日午前安値から3日目となる10月10日午前安値148.15円から10日夜高値149.09円へ戻して再び失速気味のため、10日午前安値割れを回避するうちは上昇余地ありとし、10日夜高値を超える場合は13日夜にかけての上昇を想定するが、10日午前安値を割り込む場合は17日午前にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では10月10日夜への上昇で遅行スパンが好転したが先行スパン突破には至らず、その後は軟調推移のため遅行スパンは悪化しやすい位置にある。このため、先行スパンを上抜き返すところからは上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返せないうちは一段安余地ありとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月10日夜に60ポイントを超えたもののその後は失速しているため、55ポイント超えからは上昇再開として60ポイント台後半試しとするが、40ポイント割れからは下落継続とみて20ポイント台への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月10日午前安値148.15円を下値支持線、10日夜高値149.09円を上値抵抗線とする。
(2)148.50円割れからは148.15円試しとし、148.15円割れからは147.50円前後への下落を想定する。147.50円以下は反騰注意とするが、148.50円以下での推移か直前安値から0.70円以上の戻りがみられない場合は12日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)149.09円超えからは149.50円試しとみる。149.50円前後は売られやすいとみるが、149.50円超えから続伸する場合は149.75円から150円手前を目指す上昇を想定する。

【当面の予定】

10/11(水)
アラブ連盟外相級会合
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 4.5%、予想 4.5%)
17:15 (米) ボウマンFRB理事、講演
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (8月 0.7%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (8月 1.6%、予想 1.6%)
21:30 (米) 9月 コアPPI 前月比 (8月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 コアPPI 前年同月比 (8月 2.2%、予想 2.3%)
25:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨9月19-20日開催分
29:30 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、講演

10/12(木)
休場 ブラジル
G20財務相・中銀総裁会議(10/13まで)
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前年同月比 (8月 3.2%、予想 2.4%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前月比 (7月 -1.1%、予想 0.6%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前年同月比 (7月 -13.0%、予想 -6.8%)
14:30 (日) 野口日銀審議委員、会見
15:00 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 -0.5%、予想 0.2%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -0.7%、予想 -0.2%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 0.4%、予想 1.6%)
15:00 (英) 8月 貿易収支 (7月 -34.46億ポンド、予想 -37.00億ポンド)
18:00 (英) ピル英中銀理事、講演

20:00 (欧) パネッタECB理事、講演
20:30 (欧) ECB(欧州中銀)理事会議事要旨
21:30 (米) 9月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (8月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (8月 3.7%、予想 3.6%)
21:30 (米) 9月 コアCPI 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 コアCPI 前年同月比 (8月 4.3%、予想 4.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.7万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.4万人)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省30年債入札
26:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会議挨拶
27:00 (米) 9月 月次財政収支 (8月 893億ドル、予想 -1410億ドル)



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